続・功夫電影専科 -80ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「レッド・ドラゴン」
「ジャッキー・チェン/新・怒りの鉄拳」
原題:新精武門/精武拳
英題:New Fist of Fury
製作:1976年

●ハリウッドに君臨する唯一無二の功夫スター、成龍(ジャッキー・チェン)。今も『ダブルミッション』『ベスト・キッド』等で活躍を続け、役者としても様々な境地に挑戦し続けており、その勢いは止まるところを知らない。だが、ジャッキーはその地位に至るまで、様々な挫折と失敗を繰り返してきた…そこで今回の特集では、成功の影に隠れたジャッキーの"失敗"を追っていきたいと思います。

 『廣東小老虎』で主演デビューを果たし、ゴールデンハーベストの『少林門』でメジャー作品にも顔を出したジャッキーは、程なくして羅維(ロー・ウェイ)という男と出会った。
彼は香港映画最大手のショウブラザーズに在籍していた映画監督であり、のちにゴールデンハーベストの立ち上げに呼応して移籍し、そこで李小龍(ブルース・リー)の主演作を手掛けた男である。台湾で独立を果たした後もその時の栄光が忘れられなかった羅維は、しばしば自身の作品で『怒りの鉄拳』を模した作品を撮り続けていくのだが、そんな彼が目をつけたのがジャッキーだった。
 突然の大抜擢を受け、李小龍の後釜として担ぎ出されたジャッキーであったが、ここで彼は最初の失敗に遭遇する。当時、まだ自分のスタイルを確立できていなかったジャッキーは、本作で十分に個性を発揮することができなかった(劇中の演技も「状況に流されるだけのお調子者」にしか見えない)。功夫シーンについても同様で、韓英傑(ハン・インチェ)の指導した殺陣は良く出来ているものの、印象としては少々地味だ。無闇に李小龍の物真似をしないで、実際に霍元甲が得意としていた迷踪拳を持ってくる辺りはセンスの良さを感じるんだけど、これはちょっと惜しいなぁ…。

 ただ、これらの失敗はジャッキーが引き起こしたものではなく、あくまで周囲の状況がそうさせた結果であるため、ジャッキー1人を責めるべき事例ではない。むしろ疑問に思うのは、本作で脚本まで担当した羅維その人に対してである。
本作は『怒りの鉄拳』の続編というだけあって、苗可秀(ノラ・ミャオ)を登場させるなどして体裁を取り繕っているが、作品そのものの出来は喜ばしいものではない。そもそも『怒りの鉄拳』とは李小龍の最高傑作であり、日本人の横暴に怒りを燃やした主人公が中国人の力を見せつけ、最後には儚く散っていくというストレートかつダイナミックな物語が魅力の1つであった。しかし、本作にはそういった勢いが圧倒的に欠けており、ストーリーに漂う陰惨さを払拭してしまうほどのパワーを持つ主人公すら存在しないのだ。
また、本作では精武門の看板が日本人に破壊され、側で見ていたジャッキーが立ち上がるという展開になるのだが、どうもこのへんの「立ち上がる動機」という部分が弱い気がする。なにしろ、ジャッキー自身は日本人に加担する中国人に叩きのめされた事はあるが、日本人そのものに対して迫害を受けた経験は1度しか無いのだ(それどころか中盤までは自ら功夫を習おうともしない)。一番活躍しなければいけない主人公に、十分な「立ち上がる動機」を与えてやれなかった時点で、本作の失敗は確定したようなものである。
 結局、前作からのスケールダウンが著しく、興行的にも惨敗を喫してしまった本作であるが、さすがに羅維もこれには懲りたようで、以後はジャッキーに李小龍の真似をさせるような事は控えるようになった(ただし別のスターで試そうとしたケースは何度かある)。羅維のプロダクションに在籍してからはヒット作にも恵まれず、ジャッキーにとって不遇の時代が続いていくわけだが、同時にそれは自分のスタイルを確立させるための充電期間であったとも言えるのではないだろうか?(次項に続く)


虎猛威龍/魔神威龍/紅狼
英題:The Red Wolf
製作:1995年

▼本作は袁和平(ユエン・ウーピン)の監督作としては後期に位置する作品で、今のところ袁和平が撮った最後の現代アクションものである。主演は『プロジェクトA2』でジャッキーの部下を演じた何家勁(ケニー・ホー)だが、本作のメインはなんといっても倪星(コリン・チョウ)の活躍っぷりだろう。
『全力反弾』で銀幕デビューを果たした倪星は、サモハンや羅鋭(アレクサンダー・ルー)など各方面から注目されるほどのポテンシャルを持ち、悪役として李連杰や甄子丹とも真っ向勝負を演じた本格派だ。『マトリックス・リローデッド』でハリウッドデビューを飾り、近年は『ドラゴン・キングダム』でジャッキー&李連杰を相手取るなど、まだまだ勢いの衰えぬ功夫スターの1人である。惜しむらくは、悪役路線へ転向するタイミングが余りにも早すぎたため、主演俳優として代表作を残していないこと。今でも主演作を撮るのは遅くないと思うのですが…。

■物語は豪華客船を舞台にした『ダイハード』で、船員の何家勁&女スリの鍾麗[糸是](クリスティ・チョン)が、乗客を人質に取ったテロリストと切った張ったの大勝負を繰り広げるというものだ。テロリストのメンバーは倪星を筆頭に、女殺し屋の呂少玲(エレイン・ルイ)、サモハンと『死角都市・香港』で闘ったロバート・サミュエルズとロイ・フィラー、袁和平と『クライム・キーパー』でも組んだ曹榮など、"いかにも"な面々が揃っている。
豪華客船のクルーに化けて潜入した倪星一味は、船長から金庫室のマスターキーを奪い去ると、船の指揮系統を掌握。何家勁は一味が船長を射殺したところを目撃するが、倪星の策略によって監禁されてしまう。時を同じくして鍾麗[糸是]も一味の正体を知り、何家勁と共に外部への連絡を試みるのだが…。ちなみに、何家勁を助けようとして殺された親友に扮しているのは、『笑太極』でドラ息子を演じた陳志文である(嫌な奴をよく演じる彼が、本作のようなイイ人に扮するのは非常に稀である)。
 結局、事態は更なる大事件に発展。鍾麗[糸是]を含む乗客が人質となり、残された何家勁は孤軍奮闘の戦いに身を投じていく。一方、人質サイドでは呂少玲の挑発によって内乱が発生し、支配人の黎小田(マイケル・ライ)たちが命を落としていた。鍾麗[糸是]はシングルマザーから託された少女と共に逃げ出し、ヤケクソ戦法で呂少玲を撃破!何家勁とも合流し、いよいよ倪星との最終決戦に挑むが、恋人だった呂少玲を殺された倪星も怒りに燃えていた。
激しい銃撃戦の末、倪星は少女の体に爆薬を巻きつけて何家勁らをおびき出し(『ラッシュ・アワー』の元ネタはこれか?)、最後の闘いが始まった。果たして、生き残るのは何家勁か?倪星か?

▲そんなに悪い出来ではないのだが、いまひとつインパクトに欠ける作品だ。ストーリーは前述の通り『ダイハード』そのまんまで、本作ならではの要素といえるものが何一つとして見出せない。メインキャラが死んでしまう展開はギョッとしたが、これもサモハン映画によくある「要らなくなったキャラの切捨て」を連想させてしまい、逆に悪い印象を与えている。本作は興行的に大失敗したそうだが、こんなお話では失敗したのも当然である。
次に功夫アクションに関してだが、袁和平お得意のシチュエーション・バトルは少なめで、せいぜい滑る床を使った闘いや電流デスマッチがあった程度。かつて甄子丹を起用して現代アクションを撮っていた頃は、ザコとの対決からタイマン勝負に至るまで趣向を凝らしていたのに、本作での簡素さはとても残念である。最後の何家勁VS倪星はそれなりに良かったが、爆弾をセットされた少女を殺陣に絡めていればもっと面白そうなバトルになったはず。『太極神拳』のときもそうだったけど、当時の袁和平は絶不調だったのだろうか?
内容そのものは不幸な出来だったが、倪星と袁和平が初めて手を組んだ作品。これが後に『マトリックス・リローデッド』や『SPIRIT』『ドラゴン・キングダム』への出演に繋がったと思うと、無下には否定できないところであります(爆


時來運轉
英題:Those Merry Souls
製作:1985年

▼1980年代の日本では、ジャッキーを中心にサモハン・元彪(ユン・ピョウ)らBIG3が絶大な人気を得ていました。映画館やTVではジャッキー以外の2人が出た作品も積極的に流され、一時代を築いたと言っても過言ではありません。そんなBIG3の人気絶頂期に何故か日本公開を果たさなかったのが、この『時來運轉』です。
主演はBIG3の中でもっとも身軽な元彪で、製作元はサモハン主催のボーホーフィルム。出演者も洪家班を中心に当時の"おなじみの顔"が大勢出ており、福星シリーズの曾志偉(エリック・ツァン)と馮淬帆(フォン・ツイフェン)も出演しています。しかし本作は一度も劇場公開されず、その後もビデオ化すらされていないのです。一体これはどうしたことなのでしょうか…?

■元彪と曾志偉は映画でスタントダブルを担当する武師コンビ。馮淬帆はその元彪の父親なのだが、実は彼は死者の魂をあの世へ案内する水先案内人を生業としていた。
ある日、危険なスタントに挑戦した曾志偉が失敗して重症を負った。彼の危機を知った馮淬帆は、自分と同じ水先案内人・鐘發が奪おうとしていた曾志偉の魂を守り通すが、案内人のルールを破ったことで馮淬帆は死んでしまう(ちなみに馮淬帆が死んだ場所は『ポリス・ストーリー』の永安百貨)。
 父親の死を乗り越え、新たな生活の再スタートを切ろうとする元彪だったが、今度は彼が水先案内人を世襲するハメになってしまった。悪くすれば元彪もいずれは馮淬帆と同じ運命に…?そこで彼は、曾志偉の父で風水の達人・林正英に助けを求めた。とりあえず交霊術で馮淬帆の霊を呼び出してコンタクトを取るのだが、水先案内人の元締めである"魂の使者"の怒りを買ってしまう。
"魂の使者"は元彪たちに乗り移って大暴れを繰り広げるも、激しい戦いの末に封じ込めることに成功する。全ては終わった…かに見えたのだが!?

▲本作はさながら香港版『エクソシスト』ともいうべき作品で、完成度の高いホラー映画でもあります。ホラーといっても、ギャグあり功夫アクションありと内容は盛りだくさんで、往年のサモハン・ホラーのような土着的なグロさは無し。さすがは『魔界天使』を撮った劉家榮、このへんの演出は手馴れたものです(とはいえ当方はまだ『魔界天使』は未見なのですが)。
しかし、そのホラー映画という肩書きが本作の日本公開を見送らせてしまった最大の原因だったと考えられます。当時、日本ではBIG3に功夫アクションが一番に求められていて、それ以外の演技は重要視されていませんでした。恐らくは本作も日本へ売り込まれたはずですが、「純粋な功夫映画ではないこと」が原因で、配給会社から敬遠されてしまった…のではないかと思われます。
 でも、本作にもちゃんと功夫アクションは存在します。オープニング早々に元彪VS特別出演の劉家榮によるバトル、クラブやビーチでの洪家班を相手にした乱闘、そしてラストの乗り移って乗り移られての騒動など、激しいアクションが繰り広げられています。
特に注目すべきはラストバトルで、ここでは"魂の使者"が曾志偉や林正英に次々と憑依し、しっちゃかめっちゃかな闘いが行われます。恐怖と笑いが同時に描かれた秀逸なシーンですが、そのテイストは後の『霊幻道士』に引き継がれ、キョンシー映画の立ち回りの基礎となっていきます。当時、実験的にホラー映画を製作していたサモハンですが、本作でもホラーとアクションの両立を目指していたのです。
 本作は『霊幻道士』の公開後なら日本でもウケたはずですが、残念ながら作られたのは先の先。『霊幻道士』が公開された後も、様々なキョンシー映画や元彪主演作がソフト化される中でスルーされ続け、現在に至っています。このまま日の目を見ないまま放置するのは惜しいと思うんだけどなぁ…。
なお、本人役でサモハンがカメオ出演し、元彪が読んでいる雑誌(嘉禾電影)の表紙にジャッキーがチラッと登場してます。このへんの描写は製作サイドが日本公開を視野に入れていた名残り…だったりするのかな?


賭命走天涯
英題:My Life's on a Line/60 Second Assassin
製作:1978年

▼この映画は映画史に名を残すほどの超大作ではないが、功夫片にとって大きな転換期となった1978年という年のまっただ中にあった作品である。
1978年といえば、かの劉家良(ラウ・カーリョン)が大傑作『少林寺三十六房』を作り出し、サモハンが『ブルース・リー/死亡遊戯』の製作に尽力し、張徹(チャン・ツェー)監督が『五毒拳』を公開していた頃に当たる。一方、台湾でも郭南宏(ジョセフ・クオ)が『ドラゴン太極拳』を放つなど、凄まじい勢いで傑作が生まれていた年でもあるのだが、そんな流れの中で一際異質な作品が産声を上げている。そう、成龍(ジャッキー・チェン)主演作『蛇拳』『酔拳』の登場だ。
 今までに無かった明るい主人公と、ギャグを交えた高度な功夫アクションは一瞬にして市場を席巻し、功夫映画界の流れを180度変えてしまったのである。本作はそんな1978年に作られた作品だが、コメディ功夫片ではない。そのシリアスな作風はどちらかというと武侠片に近いものがあり、ラストまでダークな物語が繰り広げられている。
だが、本作は中盤に石天(ディーン・セキ)を出演させることで、コメディ功夫片のムーブメントに乗ろうとしている。全体的な雰囲気から考えても石天の出演は「後付け」的な感が強く、恐らくはコメディ功夫片のブームに呼応した製作スタッフによって、急遽付け足された(追加撮影やニコイチという訳ではない)シークエンスだったのではないだろうか?

■(今回は視聴したのが英語版だったので、ストーリーはかなり推測入っています・爆)
 孤高の殺し屋・萬里鵬は、次から次へと現れるターゲットと勝負を繰り広げていたが、それは死と隣り合わせの危険な生業であった。英題の「60 Second Assassin」とは萬里鵬の事で、彼はいつも父の形見の懐中時計を持ち歩いており、1分以内に標的を倒すというプロフェッショナルでもあったのだ。そんな修羅の道に疲れていた萬里鵬は引退も考えていたが、彼の雇い主である梁家仁は「最後にひと仕事をしてもらおうか」と指示を飛ばした。
最後の仕事を引き受けた萬里鵬は、時を同じくして1人の少年と出会っていた。彼は父親を亡くしているらしく、少年の境遇に親近感を覚えた萬里鵬は功夫を教えることを承諾。萬里鵬と少年は実の親子のような時間を過ごしていった。少年の祖父・蘇真平も萬里鵬に好意的であったが、実は蘇真平こそが今回の仕事のターゲットだったのだ(たぶん)。
さっそく萬里鵬は蘇真平と闘うが、間に入った少年が巻き添えを食らい、不幸にも命を落としてしまった(!)。絶望した萬里鵬は家を飛び出すのだが、彼を監視していた梁家仁の手下×2が乱入。まるで少年の後を追わされるかのように、蘇真平とその娘も惨殺されてしまう。怒りの火の玉と化した萬里鵬は、梁家仁の手下×2を死闘の果てに叩きのめすと、雇い主の梁家仁に戦いを挑むのだが…。

▲陰惨な物語ではあるものの、息をつかせぬ展開に引きこまれる秀作である。本作の監督はこれが初仕事となる王重光で、『七歩迷踪/七歩迷蹤』でも見せたテンポの良い物語をここでも構築している。人並みの幸せを望もうとも、所詮は血塗られた殺し屋でしかない萬里鵬。ラストに向かうにつれて因果応報の容赦ない展開が続き、最後の最後には衝撃のラストが待ち構えているのだが、それは実際に視聴してお確かめ下さい(爆
 主演の萬里鵬はあまりスターらしくない風貌ではあるが、逆にそれが一筋縄でいかない本作にリアリティを生んでいる。彼は本来武術指導家として活躍している人で、俳優としては『フラミンゴ殺法 天中拳』のラスボスが一番有名か。もちろん武術指導家なので功夫アクションもキレキレであり、力強い手技とシャープな蹴り技を全編に渡って披露している。
そんな萬里鵬と対立し、最後に闘う相手が梁家仁というのも中々面白い組み合わせだ。本作での梁家仁はラストまでこれといってアクションを見せないが、最後の萬里鵬VS梁家仁戦では恐ろしいまでのハイテンションな動きを見せ、『癲螳螂』を髣髴とさせる狂人拳?を迫力たっぷりに熱演している(もっとも製作は本作の方が先だが)。デブゴン関係を除けば、間違いなく当時の梁家仁のベストバウトと呼べる闘いだろう。
 ストーリーが少々解りづらいのが難点だが、完成度の高い功夫アクションと萬里鵬の辿る運命が衝撃的な作品。ちなみに石天さんは中盤でのご登場となるのだが、今回は片目にアザのあるドラ息子に扮していて、美人を見ると発作を起こすというバカキャラを熱演している(笑)。正直言って、石天さんの出てくるパートだけ完全にコメディ功夫片っぽくなっていて、「ここだけ追加撮影したのか?」と思ってしまうぐらい浮いている。
シリアスな物語の息抜き的なパートであることは理解できるのだが、ここまで浮いてしまうと作品の雰囲気そのものを壊している気がしないでもない。もうちょい抑え気味の演出にしてくれればなお良かったんだけどなぁ…。


[イ火]頭小子
英題:Kung Fu Cook
製作:1982年

▼洪金寶(サモ・ハン・キンポー)主演の『カンフー・シェフ』から先立つこと27年前、功夫ミーツ料理人というジャンルをいち早く取り上げた1本の映画が存在した。それが今回紹介する『[イ火]頭小子』で、主演はなんと唐炎燦(トン・ウェンチャイ)が務めている。
唐炎燦は様々なプロダクションを渡り歩いた中堅俳優で、どちらかというと脇役や二番手三番手のような役柄を演じることが多かった人である。初期はショウ・ブラザーズで巨匠・張徹(チャン・チェ)の監督作に出演し、『嵐を呼ぶドラゴン』『少林寺列伝』『カンフー東方見聞録』で活躍。その一方で外部の作品にも参加しており、『湮報復/大報復』や『截拳鷹爪功』などのバッタもん李小龍作品で顔を見せている。
 そして、唐炎燦は80年代に入ると同時にショウブラから飛び出し、なぜかジャッキー率いる成家班へと異動。初期の成家班メンバーとして、ゴールデン・ハーベストに移籍して間もないジャッキーのアシストを見事に勤め上げていた。…が、ジャッキーにとっても唐炎燦にとっても転換期といえるこの時期に、何をトチ狂ったのか唐炎燦はジャッキーのバッタもんみたいな映画に主演するという暴挙を演じてしまったのだ。
本作に登場する"特別ゲスト"のことも考えると、ジャッキーから「なにやっとんじゃ唐炎燦!」とお叱りを受けそうなところであるが…詳しくは後述にて。

■開始早々、いきなり楊斯&江島が張力(本作では冒頭のみの出演)と敵対している。どうやら財宝の地図を巡って争いを繰り広げているようだが、江島が繰り出した神打術によって張力が負傷。あわやというところで元武が助けに入るが、闘いの中で地図は行方知れずとなってしまう。
それから数年後(?)、ヤクザの親分となった楊斯は金帝を配下に従え、とある食堂にショバ代を要求していた。暴れまわる金帝たちに対し、立ち向かったのは食堂でコックを務めていた唐炎燦であった…のだが、こっそり彼を助けていた1人の老人がいた。この老人こそが本作の鍵となる人物であるが、驚いたことに演じているのはジャッキーの父ちゃん・陳志平なのだ!一体どういうルートで出演にこぎつけたのか非常に気になるところである(笑
 さて、楊斯は唐炎燦を自軍に引き入れようと画策?するのだが、もちろん簡単に従うはずがない。ひょんな事から楊斯に幽閉されていた元武と出会った唐炎燦は、楊斯のところから逃げるついでに殺されかかった元武を救出。特に理由は無いものの、唐炎燦は元武&再会した陳志平から交互に功夫の修業?を受けるのであった(それにしても、ここまで功夫の修行に動機のない展開も珍しい)。
その後、ストーリーの後半からは純金のヒョウタン(このアイテムがどういう物なのかいまいち不明)を巡っての争奪戦となり、財宝の地図は元武が隠し持っていたことが発覚する。唐炎燦&元武が地図を頼りに捜索した結果、土の中から奇妙なツボが出土した。そこに財宝を狙って楊斯が現れ、続いて江島も到着。更には陳志平までもが参戦するのだが、果たしてお宝の正体とは…?

▲ストーリーは支離滅裂だし、コメディ描写もどちらかというと空回り気味。そればかりか、コメディ功夫片の必須科目であるヘンテコ拳法と修行シーンすら登場しないので、ストーリーも功夫アクションも非常に素っ気ないものに仕上がってしまった珍作である(苦笑
好意的な見方をすれば、ヘンテコ拳法に依存しないコメディ功夫片を目指したとも考えられるが、デブゴン映画のように画期的な部分があるわけでもないので、本作が何を言いたかったのかが全く見えてこない。アクションシーンでは突然ディスコやサッカーっぽくなったりと、拳法の動きそのもので笑わせるのではなく、表面上のギャグやBGMだけで笑いを取ろうと努力している。これはこれで革新的な試みだったと言えなくも無いが、その代償として功夫アクションから迫力が失われ、ラストバトルまでもがサエない結果に終わってしまったのは非常に残念である。
 主演の唐炎燦は十二分に熱演しているものの、キャラクター描写が薄味だったことが災いしてか、主演なのにまったく印象に残らないという悲惨な結果を迎えている。これは元武や江島たちも同じで、どのキャラにもインパクト不足という問題が生じているのだ(これは演出面での問題が大きいか)。陳志平の出演はそれだけで衝撃度は高いが、功夫のセンスが無いのに赤鼻じいさんの真似をやらせるのは流石に無茶だったのではないだろうか?(爆
もしタイトル通りに、コックをモチーフにした拳法を身に付けた唐炎燦が活躍する映画であったなら、本作の出来も少しは違ったはず。せっかくの初主演作がこんな結果になっちゃうとは、唐炎燦も頭を抱えたに違いない。ところで、その唐炎燦は『プロジェクトA』に参加してからプッツリと出演作が途絶えている。もしかして、本作を見たジャッキーが唐炎燦の肩を叩いて「唐炎燦、ちょっと話したい事があるんだ」と自社に呼びつけて…(以下、邪推すぎるので検閲)