
「極東黒社会」
「極東黒社会 Drug Connection」
英題:Drug Connection
製作:1993年
●バブル崩壊に見舞われ、混迷を極めていた経済大国日本。中でも新宿歌舞伎町は人種の坩堝(るつぼ)と化し、これに目を付けたイタリアン・マフィアが麻薬市場の進出を目論んでいた。
一方、歌舞伎町では新興の香港マフィアが台頭し、台湾マフィア(ボスの補佐役は『力王』で四天王を演じた杉崎浩一)と血で血を洗う抗争を展開。この衝突に、フリーの麻薬密売人であった役所広司と近藤真彦も巻き込まれていく事となる。
激化するマフィアの抗争に対し、警視庁はNYから潜入捜査官のショー・コスギを招き入れ、一匹狼の刑事・中条きよしと共に捜査へ当たらせた。ひょんな事からショーは役所と出会い、奇妙な縁で結ばれるのだが…。
やがて役所の仲間だった売人が香港マフィアの刺客・林偕文に殺され、彼らとマフィアの龍頭・王羽(ジミー・ウォング)の対立は決定的なものに。その過程で北原佐知子がジミー先生に暴行されるが、たまたま居合わせた近藤によって助け出された。
役所もまた、ショーと因縁のあるジェシカ・ランスロットと出会い、襲いかかって来た林偕文をショーと共に撃破。意を決してジミー先生の麻薬工場に殴り込むが、敵の逆襲によって近藤と北原が犠牲となってしまう。
怒りに燃える役所は、弱腰の警察に見切りを付けたショーや中条、ジェシカたちと共同戦線を組んだ。かくして、彼らは香港マフィアと軍門に下った地元ヤクザ、そして提携を目論むイタリアン・マフィアを一掃すべく、最後の戦いに挑む!
本作は日本・アメリカ・香港・台湾から国際色豊かなキャストを迎え、過剰なバイオレンスとドンパチで彩ってみたら、思いっきり収拾がつかなくなった作品です(苦笑
ストーリーとしては、武闘派の香港マフィアが好き勝手やりまくり、対抗馬の台湾マフィアは困り顔。そこに日本とイタリアの悪党が乗っかってくるという構図なんですが、次々と人が死んでいく上に新勢力が乱立するので、話が無駄にややこしくなっています。
キャラクターの設定も荒唐無稽で、いくらなんでも役所が外人部隊出身というのは無理ありすぎ(爆)。売人なのに知り合いがヤク中になったら動揺しまくる近藤、決戦に参加するには動機が薄いジェシカなど、こちらもムチャ振りだらけでした。
中条が死んだ事に誰も触れないまま向かえる最終決戦も、唐突な伏線回収やメインキャラの壮絶な死が相次ぎ、まさに混沌の極みと化しています。最後の役所とショーのやり取りも抽象的すぎて(伏線はあるけど)、誰しも呆気に取られる事は間違いないでしょう。
そんな中、我らがジミー先生は香港マフィアの元締めとして登場し、モノホンの迫力でスクリーンを席巻。本作で唯一リアリティを感じさせるキャラクターを演じていますが、彼が立ち回るシーンは一切ありません。
私が本作を視聴したのは、『片腕カンフー対空とぶギロチン』でジミー先生を知って間もない頃でした。彼に加えてニンジャスターのショー・コスギまで参加していると知り、夢の共演やアクションに随分と期待しました。
しかし本作のアクションは銃撃戦がメインで、ショーの格闘戦もほんの僅か。対戦相手もジミー先生や林偕文(彼は『ドラゴン特攻隊』でジャッキーとの対戦経験アリ)ではなく、非・アクション俳優の役所広司という選出にはガッカリしてしまいました。
当時の私は銃撃戦より肉弾戦を好んでいたため、ラストバトルはとても退屈だったと記憶しています。終盤でジェシカを人質に取られる展開になった際は、「やっと素手の勝負が!」と浮き足立ったものです(←直後に期待は裏切られますが)。
ところで本作には欧陽龍という中国系の俳優が出演しています。彼はショーの相棒として登場し、ラストバトルでは永倉大輔(当時は長倉大介名義)とともに自爆するんですが、ネットで検索しても出演作が見当たりません。
調べたところ、彼の正体は歌手の欧陽菲菲の弟にしてチェリストであるNana(欧陽娜娜)の父親。現在は台北で市会議員に就任しているそうで、私はてっきり王建軍(本作に出演しているそうですが詳細は不明)の変名かと思っていました(汗
結局、作品としては地雷級の失敗作ではありますが、ジミー先生の存在感だけは特筆すべき珍品。これ以後、ジミー先生は映画界から距離を置き、しばらく本作が最後の映画出演作として扱われていました。
しかし、長年の沈黙を破ってついに天皇巨星が復活を果たす時が訪れます。宇宙最強の男を相手に、伝説の女ドラゴンを従えたジミー先生が見せる“恐怖”とは…詳細は次回にて!

「いれずみドラゴン 嵐の決斗」
原題:龍虎金剛
英題:The Tattooed Dragon
製作:1973年
●背中に龍のいれずみを背負った風来坊・王羽(ジミー・ウォング)は、強盗団から奪われた義援金を見事に取り返した。しかし思わぬ逆襲に遭い、深手を負った彼は何処ともなく姿を消してしまう。
一方こちらは片田舎の村でノンビリと暮らす許冠傑(サミュエル・ホイ)。彼は村長の一人娘・張艾嘉(シルビア・チャン)との結婚を夢見ているが、どうにも踏ん切りがつかずにいた。彼は傷付いたジミー先生を発見し、療養のため自宅に匿うこととなる。
そのころ強盗団の頭目・田俊(ジェームス・ティエン)は、ジミー先生に奪われた義援金のことは一旦保留し、別の悪事を企てようとしていた。彼曰く、ある村に巨大な地下鉱脈が眠っており、秘密裏に村ごと乗っ取ってしまおうと言うのだ。
田俊は村に賭場を作らせ、ギャンブル中毒にした村人を借金漬けにした挙句、担保として土地の権利書を簒奪。着々と乗っ取り計画を進めていくが、その村こそジミー先生が身を寄せている場所だった。
やがて許冠傑の友人・李昆(リー・クン)が博打にのめり込み、悲観した妻子が心中するという悲劇が起きる。村長も強盗団に袋叩きにされ、この状況を見かねたジミー先生は怪我を押して立ち上がった。
まず手始めに賭場で大博打を仕掛け、連中から村人の金と権利書を巻き上げた。さっそくリベンジに現れた強盗団だが、彼と許冠傑の敵ではない。かくして人々の財産は返還され、事件の解決を見届けたジミー先生は村を去ろうとする。
だが、この状況に業を煮やした田俊が自ら動きだし、たちどころにジミー先生の存在を察知。連中は許冠傑を殺害し、それを知ったジミー先生は一目散に賭場へと乗り込んだ。今…ここに、嵐の決斗が幕を開ける!
『燃えよドラゴン』の登場によって、日本では未曾有のカンフー映画ブームが巻き起こりました。そのムーブメントは凄まじく、あっという間に方々の映画館に「ドラゴン」の名を冠した作品が溢れ返ったのです。
ジミー先生も『片腕ドラゴン』で日本に上陸し、その知名度を極東の地にも知らしめました。本作もその1つで、製作は嘉禾電影ことゴールデンハーベスト、監督は羅維(ロー・ウェイ)、ロケ地はタイという『ドラゴン危機一発』的な陣容で製作されています。
作品としては可もなく不可もない…といった感じの出来で、ジミー先生らしい奇抜さは低め。台湾では気心の知れた監督とやりたい放題していた彼も、香港映画大手の会社でキャリアのある監督と組む場合、流石に譲歩しなければならない点があったのでしょう。
また、速効で察せてしまう許冠傑の死亡フラグ、じっくり描きすぎて気が滅入ってしまう心中シーンなど、マイナスポイントもいくつかあります(李昆のギャンブル中毒設定も『スカイホーク鷹拳』と被っていますが、こちらは本作の方が先だった模様)。
しかし全体としては悪くない出来で、なかなかの力作に仕上がっていました。
確かにストーリーはありきたりではあるものの、禁欲的で正義感にあふれる主人公はとても魅力的だし、キャラクターの立たせ方も上々。デビュー間もない許冠傑と張艾嘉も初々しく、芸達者な演技を見せるワンちゃんにも目を引かれます。
敵となる強盗団はずっと同じ面子ばかりで精彩を欠きますが、ラストバトルでは実力を見せてこなかった田俊が奮戦し、豪快な回し蹴りでジミー先生に肉迫! 対するジミー先生も全編に渡ってエネルギッシュな動作を見せ、荒っぽい立ち回りを披露しました。
ちなみに終盤でジミー先生は田俊を燃やして倒すんですが(苦笑)、ここでの火だるまスタントを田俊は替え身なしで演じています。しかも見るからに薄着で、バトルの行方より田俊の安否のほうが気になってしまいました(爆
『ドラゴン危機一発』を期待すると肩透かしを食らうものの、全体的に堅実な作りを保っている逸品。なお、本作の配給は東映が行っていたそうですが、そのことがジミー先生と日本を再び結びつけることになります。
そんなわけで次回は、時を経てダークなオーラを纏ったジミー先生が歌舞伎町に出現! 無駄に豪華なキャストが集結した底抜け超大作の全貌とは…詳細は後日にて!

「ドラゴンVS不死身の妖婆」
原題:英雄本色
英題:Knight Errant/Dragon Fist
製作:1973年
●ひと口に功夫片といっても、その価値は取り合わせの妙によって決まります。たとえ主役が強くても、物語や設定が洗練されていなければ野暮ったくなり、逆に基礎がしっかりしていても主役に華が無ければ、一気にショボく見えてしまうものです。
例えば、『酔拳』では主人公が軽薄なボンクラ青年で、師匠も小汚いジイさんという(当時としては)斬新な設定となっていました。一方でストーリーも青年の成長物語として完成されており、この完璧な取り合わせが同作を大ヒットへと導いたのです。
仮に主人公がジャッキーではなく、愛想のない無骨な俳優だったら『酔拳』は違う結末を辿ったでしょう。また、ジャッキーが主役でも赤鼻じいさんや父親が無残に殺されるストーリーだったら、ここまでの支持は得られなかったと思います。
さて、なんだが前置きが長くなってしまいましたが、こうした取り合わせの妙を凄まじい変化球で繰り出しつづけた俳優が存在します。…そう、我らが王羽(ジミー・ウォング)です。
ジミー先生は、片腕の主人公が盲目のギロチン坊主と戦う『片腕カンフー対空とぶギロチン』、主人公が化物じみた空手家軍団と戦う『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』など、余人には想像もつかない取り合わせでスクリーンを彩ってきました。
その極北…変化球どころかデッドボール級の取り合わせを実現させたのが、この『ドラゴンVS不死身の妖婆』です。本作はジミー先生が倉田保昭と初共演を果たした作品で、ともに全盛期だった2人の対決が見どころの1つとなっています。
しかし、ジミー先生は真っ向から戦うだけのストーリーを良しとせず、タクシー運転手の主人公と不死身の妖婆が殺し合いを展開するという、あまりにも狂ったシナリオに挑戦。その結果、他に類を見ないクレイジーな作品と化していました(笑
物語は、割腹自殺を果たした帝国軍人の遺児である三兄弟が、謝金菊(ツェ・カムガク)の元で激しい修行を受けている場面からスタート。このシークエンスは異様にテンションが高く、ぶっ壊れた日本語とも相まって見る者を圧倒たらしめます。
三兄弟は倉田と龍飛(ロン・フェイ)と山茅(サン・マオ)に成長しますが、同時に喧嘩っ早いジミー先生によるアットホームなドラマも進行し、両者の関係性がまったく見いだせぬまま話は進んでいくのです。
その後、ジミー先生の父・魏蘇が三兄弟の父親を死に追いやったと説明が入り、三兄弟は台湾へと上陸。ここからツッコミどころがさらに増えますが、車のブレーキを細工されたジミー先生の顛末は、製作当時だれも疑問に思わなかったんでしょうか?(苦笑
やがて父と従弟の高雄(エディ・コー)を傷付けられ、妹をさらわれたジミー先生は三兄弟を返り討ちにするものの、今度は謝金菊が降臨! ここの演出は『片腕カンフー~』を凌駕する程の恐ろしさに満ちていて、最後まで目が離せませんでした。
さて、あまりにも無茶なストーリーに目を奪われがちですが、アクションの方はジミー先生お得意のケンカスタイルで、今回もテンポのいい立ち回りが楽しめます。脇役の高雄にも見せ場があり、全編にわたってアクション満載の賑やかな作りとなっていました。
一方で敵となる三兄弟は、長男の倉田さんが別格の存在という設定になっていて、龍飛と山茅の活躍は抑え気味。終盤の連戦でも龍飛たちは呆気なく倒されますが、倉田さんだけはヌンチャクや蹴りを武器にジミー先生を追い詰めていきます。
このへんの采配は、当時大スターだった倉田さんを立てるための計らいだったのでしょう(『不死身の四天王』の陳星みたいに)。しかし、そうした打算を跡形もなく吹き飛ばしたのが、ラストに待ち受けるジミー先生VS謝金菊の死闘でした。
謝金菊は気功術を会得していて、打撃どころか車で轢いてもノーダメージ。功夫片に攻撃の効かない敵は何人かいますが、ここまで化け物じみたキャラはそうそういません(得体の知れなさで言えば銀魔王より数段上)。
必死で食い下がるジミー先生と彼女の対決は、功夫片というよりホラー映画のノリに近く、そのインパクトは劇中の誰よりも強烈だったと言えるでしょう。しかし、本作を見ていると「取り合わせの妙ってなんだろう?」と考えてしまいますが…ま、いいか(爆
数あるジミー先生の主演作の中でも、奇抜さという点においてはトップクラスに君臨する本作。なんとも強烈な代物だったので、次回は第一次ドラゴンブームにて日本公開された、ちょっと大人しめの作品で箸休めしたいと思います。

唐人票客
英題:The Screaming Tiger/Screaming Ninja/Wang Yu, King of Boxers
製作:1973年
●改めて顧みると、王羽(ジミー・ウォング)ことジミー先生の映画には、日本をネタにした作品が多いことに気付かされます。
ごくごく普通の旧日本軍を皮切りに、機関車で中国大陸を行脚するサムライ、トンファーを操る素浪人、戦うたびに扇子を破り捨てる用心棒などなど…。内容に日本が関与しているか否かに関わらず、彼の主演作にはこうした要素が付き物となっているのです。
どうしてジミー先生はここまで日本をネタにし続けているのか? 詳しい事は解りませんが、一連のバラエティに富んだ描写からは抗日的な意図は感じられません(人によっては日本を小馬鹿にしているように見えるかもしれませんが・苦笑)。
恐らく、ジミー先生は面倒臭い思想などに左右されず、ただ単に面白そうだから日本のエキゾチックな面に着目しているのだと思われます。本作もそうしたジミー流のエキゾチック・ジャパンが炸裂した映画で、これがまたトンデモない作品に仕上がっていました。
物語は、故郷の漁村を壊滅させられたジミー先生が来日するところからスタート。当初は仇である日本人に憎悪を燃やしますが、スリで在日中国人の張清清と知り合い、なんやかんやで正義のために戦う事となります。
仇敵を探すジミー先生は、地元のヤクザと結託する空手師範・龍飛(ロン・フェイ)の一派と対立し、その龍飛を追って台湾から来た武芸者・魯平と遭遇。同じく龍飛と敵対する剣術道場の剣士・康凱とも出会い、丁々発止の戦いが展開されます。
この作品、ジミー先生が暴れるパートは彼らしい唯我独尊っぷりに溢れていて、問答無用でヤクザや相撲取りをボッコボコにする姿には、ある種の爽快感すら感じました(爆
しかし、ドラマパートは入り組んだ人物関係が災いしたのか、やや回りくどい内容となっています。ジミー先生が不在となる場面も多く、もっと主人公が前面に出てくるストレートな作品であったなら、評価は変わっていたかもしれません。
また、この手の作品にありがちな狂った日本描写についても、序盤の縁日(でかい団扇や鯉のハリボテが乱舞する異次元空間)がピークで、あとはそのまま下り坂。主役不在で繰り広げられるアクションシーンの数々も、今回はやや精彩を欠いていました。
ですが、伝説となっているジミー先生VS龍飛のラストバトルは異様な迫力となっており、ここだけでも本作は必見と言えます。敵の1人(武術指導兼任の黄飛龍)から龍飛が仇敵だと聞き出したジミー先生は、彼と雌雄を決しようとします。
すると両者は全力疾走で貨物列車に飛び乗り、貨車から貨車へとジャンプしながらド突きあいを披露! 走行する列車から転落しそうになる無茶なスタントを挟みつつ、鉄橋で落とすか落とされるかのデスマッチ(こっちもノースタント!)へ移行するのです。
鉄橋から川に落ちても戦いは続き、実にジミー先生らしい手段(笑)で決着が付きますが、それは見てのお楽しみ。どうやらジミー先生は、当時大ヒットを記録した『餓虎狂龍』のマラソンバトルに着目し、自分もやってみたいと思ったのでしょう。
よくよく考えれば、アクションの連続で畳み掛けるマラソンバトルと、勢い任せのジミー流スタイルには近い物があります。本作はアクションとスタイルの擦り合わせが合致し、功を奏した好例といっても過言ではありません。
さて、まだまだジミー先生inジャパンな作品は沢山ありますが、明日はその中でも最高に凶悪な代物が登場します。トンチキな日本描写のインパクトを凌駕し、見る者のトラウマにもなりかねない恐るべき敵の正体とは…詳細は次回にて!

「冷面虎 復讐のドラゴン」
「ジミー・ウォング/冷面虎 復讐のドラゴン」
原題:冷面虎/冷面虎 京都之旅
英題:A Man Called Tiger
製作:1973年
●今年はハリウッドのジャッキー映画特集を筆頭に、ニコイチ映画、KSSのVシネマ、『天地大乱』の思い出、ジェイソン・スティサム主演作、佳元周也作品、中国産の功夫片、未公開の格闘映画、李小龍の伝記映画など、多彩な企画をお送りしてきました。
そして今月は10回連続特集のオーラスであり、2017年を締めくくるに相応しいテーマとして、我らがジミー先生こと王羽(ジミー・ウォング)の作品をセレクト! 特集の回数にちなんで、厳選した10本のジミー映画をお届けしたいと思います。
さて、当ブログとしては久々となる大ボリュームの特集ですが、まずは先月に引き続いて李小龍(ブルース・リー)に縁のある作品から紹介してみましょう。
皆さんもご存じの通り、本作は『ドラゴン 怒りの鉄拳』を撮り終えた羅維(ロー・ウェイ)が、李小龍の次なる主演作として企画していた作品です。しかし李小龍は出演に難色を示し、『ドラゴンへの道』の撮影でローマに旅立ってしまいます。
そこで羅維はジミー先生を代役に立て、李小龍作品になじみのあるキャストを大量投入。全編に渡って日本ロケを敢行し、気合十分で撮影に挑みました(このとき二本撮りで一緒に作られたのが『海員七號』)。
ストーリーは京都にふらりと現れたジミー先生が、流しの岡田可愛や協力者の笠原玲子と出会いつつ、非業の死を遂げた父親の謎を探っていくというもの。ここに衣依(マリア・イー)や岡田の父親にまつわる謎、二組のヤクザによる策謀のドラマが展開されます。
本作はジミー先生の主演作にしては珍しく、日本に関するトンチキな描写などは一切ありません。ストーリーも様々な謎が絡むサスペンスとなっており、ハードボイルドなタッチは最後まで一貫されていました。
ただ、作品としては単なる主人公の復讐劇でしかなく、日本ロケを行ったわりには小ぢんまりとした印象を受けます。李小龍が本作の主演を蹴ったのも、エンターテイメントとしての華やかさや、スケール感に欠けていたから…なのかもしれません。
その他にも、終盤における強引な種明かしや急展開、この人まで死なせなくてもいいのに…と思ってしまうラストなど、疑問符が浮かぶ部分も多々ありました。サスペンスタッチの物語が良かっただけに、竜頭蛇尾で終わってしまったのは実に残念です。
一方、アクションシーンでは手数よりも勢いが重視され、ジミー先生らしい喧嘩ファイトが繰り広げられています。敵幹部の韓英傑(ハン・インチェ)、相棒役の田俊(ジェームス・ティエン)との対戦も、相変わらず荒々しい迫力に満ちていました。
劇中ではロープウェイでの宙吊りスタント(浜名湖に飛び込むシーンは人形?それとも本人?)、狭い路地でのカーチェイスも盛り込まれており、アクション的には十分満足できる内容です。
ラストではジミー先生が殺し屋の仲子大介・ヤクザのボスである田豊(ティエン・ファン)・同じくボスの若杉玄といった面々と激突! 語り草となっているジミー先生の片足連続蹴りなど、最初から最後まで見どころ満載の好勝負となっています。
惜しむらくは、ジミー先生が韓英傑を倒す際に使った謎の武器が、それっきりの登場となってしまっている点でしょうか。私はてっきり最後のVS若杉で使うかと思っていったので、普通に決着がついた時は少々ガッカリしてしまいました(苦笑
作品としては悪くないものの、詰めの甘さで佳作になりそこねた作品。とはいえ、全体のクオリティは『海員七號』よりも上なので、決して見て損はないはず。ジミー先生らしさなら『海員七號』、ストーリーなら『冷面虎』に分があると言えるでしょう。
さて次回は、またもやジミー先生が日本に上陸! わけのわからない奇祭、なんちゃって相撲取りたちが乱舞する異形のジパングに迫ります!