続・功夫電影専科 -8ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「ドラゴン/ブルース・リー物語」
原題:Dragon: The Bruce Lee Story
製作:1993年

『ブルース・リー物語』は、数々の逸話を元に“映画スター”の李小龍(ブルース・リー)に迫った作品でした。しかし、プライベートの彼に関する言及は少なく、後発の伝記映画は“人間”としての李小龍に着目するようになります。
本作はまさにその先駆けで、“映画スター”であり“人間”でもあった李小龍を見守り、長い時間を共にしたリンダ・リー・キャドウェル夫人の著書を映像化。彼が香港を旅立ち、道場を立ち上げ、映画スターになるまでを簡潔に描いています。
監督のロブ・コーエンや主演のジェイソン・スコット・リーは、リンダ夫人の「本当の夫を知って欲しい」という熱意を汲み取り、それぞれがベストに近いパフォーマンスを発揮。完成した作品は2時間以上の長尺が苦にならないほどの、高い品質を誇っています。

 ストーリーは虚実入り混じった構成になっていますが、李小龍とリンダ(演じるはローレン・ホリー)の関係を丹念に描いており、そこが他の伝記映画と一線を画すポイントとなっています。
李小龍の転機となる出来事には必ずリンダが関わっていて、挫折を経験した夫と励まし合ったり、家庭を顧みなくなった夫と口論になるなど、2人の複雑な関係が赤裸々に描写されていました。
特に後者のシーンはとても生々しく、自身の心情を吐露する李小龍の姿には、華々しいアクションスターの面影はありません。実際にこのような出来事があったかどうかは別として、彼もまた“人間”であったと思わせるに足る描写となっています。
 また、こちらは他の伝記映画でも触れられている話ですが、偏見との戦いや華僑社会との確執などもしっかりと描かれ、当時の李小龍を取り巻く環境を肌で感じることができました。
この他にも、リンダと母の関係・『ドラゴン危機一発』公開時の盛り上がり・小粋なキャスティングなど、感慨深い点を挙げればキリのない本作。しかし、それでもやはり気になる箇所は幾つか存在します。

 例えば、あれだけ截拳道に心血を注いでいた李小龍が、『グリーン・ホーネット』出演後に映画の事しか考えなくなったのは「?」と思ってしまいました(実際は香港に帰ってからも截拳道の開発は継続)。
また、早すぎた死を予感させる“悪霊”の存在についても、やや浮いた印象を受けます。“悪霊”の存在が意味するところは解りますが、その描写がまるでB級ホラー映画のように見えてしまい、ここだけはちょっと乗れなかったです。
 しかし、ジェイソンの見せる演技はとても真に迫っているし、殺陣のクオリティもハリウッド映画としては破格のレベルに達しています。中でも中盤のジェイソンVS張午郎(ジョン・チャン)、製氷工場でのVSオン・スー・ハンは、本作有数の見せ場でしょう。
成家班の中核を成した張午郎と、『キング・オブ・キックボクサー』『ブラッド・スポーツ2』などの傑作格闘映画で腕を磨いたオン。この2人の猛者を相手に一歩も退かず、見事な立ち回りで対抗したジェイソンの技量には、目を見張るものがあります。
 ちなみに本作のファイト・コレオグラファーは張午郎本人が、截拳道の指導はジェリー・ポティート(李小龍の直弟子)が担当。ジェイソンはジェリーに弟子入りしていたらしく、『タイムコップ2』でも両者はタッグを組んでいます。
さらにこれは余談ですが、ジェリーには他にも多くの弟子がいて、格闘俳優のマイケル・ワースもその1人だとか。『ストリート・クライム』に何故ジェリーが関わっていたのか不思議でしたが、こういう裏事情があったんですね。

 最高のスタッフが揃い、李小龍の隠された一面を追い求めた力作。あまり大きいことは言えませんが、粗筋が決まっている伝記映画というジャンルで、ここまでドラマチックに纏め上げられた作品もなかなか無い…のではないでしょうか。
さて次回は、あの謎に包まれた作品に日本のスタッフが挑戦! 私個人としても非常に思い出深い、終わりなきデス・ゲームの世界に飛び込みます!


「ブルース・リー物語」
「カンフーに生きる ブルース・リー物語」
原題:李小龍傳奇
英題:Bruce Lee True Story
製作:1976年

●1940年11月、ひとりの赤子がサンフランシスコの片隅で産声を上げました。親も兄弟も役者という芸能一家で育った彼は、香港へ帰郷すると子役として正式にデビュー。ドラゴンの名を冠した芸名を名乗り、人々からこう呼ばれるようになります――李小龍、と。
というわけで、今月は李振藩こと李小龍(ブルース・リー)の生誕77年目を記念して、彼を題材にした伝記映画をいくつか紹介してみたいと思います。
 武術家にして探究者、そして世界的なスターであった李小龍は、32歳という若さでこの世を去りました。彼は勇猛な魅力に満ちている一方で、どこか超人然とした雰囲気を漂わせています。志半ばでの死により、その神秘性は更に増したと言えるでしょう。
そんな彼の生い立ちを多くの人々が知りたがったのは、至極自然な流れだったのかもしれません。彼の死後、偉大なドラゴンを題材にした映像作品の製作が活発化し、とりわけドキュメンタリーと伝記映画は大量に作られました。

 本作は李小龍が亡くなって間もない頃に製作された伝記映画で、何宗道(ホー・チョンドー or ブルース・ライ)が主演したバッタもん映画のひとつとして知られています。
しかし監督は『酔拳』の呉思遠(ウン・スーユエン)が務め、製作は『猛虎下山』『カンフー風林火山』の恒生電影公司が担当。過去のバッタもん伝記とは一線を画した、リアリティ優先の演出を心掛けたのです。
 ストーリーは李小龍の人生をおおまかに辿っており、最初に何宗道が病院に担ぎ込まれるシーンから幕を開け、オープニングを挟んで彼の青年期(渡米する直前)からスタート。ハリウッドで挫折を経験する下りまでは、概ね史実通りの展開が続きます。
本作で目を引くのは、実際にアメリカ・タイ・ローマなどでロケを行い、作品にリアリティを持たせようとしている点です。主演作の撮影シーンにおいても、セットや立地を可能な限り再現しようとしており、呉思遠の意気込みが垣間見えます。
 また、李小龍に詠春拳を教えた葉問(イップ・マン)の役を、葉問の長男である葉準(イップ・チュン)本人が担当。ここで何宗道VS葉準という興味深い対戦が行われますが、背景をよく見ると葉問の直弟子・招允の名が見えます。
実は本作には、詠春拳指導として招允の実子・招鴻鈞が参加しているのです(もしかして冒頭の道場は招鴻鈞が経営する本物の武館?)。招鴻鈞が関わっているのは何宗道VS葉準のシーンのみと思われますが、バッタもん映画としては破格の陣容です。

 本作はこうしたリアリティの積み重ねにより、底抜け伝記の『詠春截拳』『一代猛龍』を上回るスケール感と、説得力のある描写を作り上げることができました。
しかし、何宗道が『ドラゴン危機一発』の撮影に臨む辺りから、徐々にフィクションの割合が増えてしまうのです。せめて倉田保昭との親交や、羅維(ロー・ウェイ)との確執などを描いてくれたら面白かったのですが、本作はその辺にまったく触れていません。
 おかげで主演作に関する話題はさらっと流され、何宗道が喧嘩を売られる→相手の挑発に乗る→返り討ちにするという展開が延々と続くことに…。さらに“精武指の開発”という意味不明な修行シーンが付け加えられ、作品の崩壊に拍車を掛けていきます。
最後は李小龍の死因についての考察が始まり、暴漢による暗殺説、丁珮(ティン・ペイ)とヤってたら死んだ腹上死説、生存説が生々しい映像と共に展開。最初のリアリティへの拘りはどこへやら…何とも評価に困るオチになっていました(苦笑
 アクションについては梁少松(梁小龍の叔父)の指導により、意外と派手な立ち回りが見られます。が、一部の対戦相手が明らかに動けていなかったりと、こちらも一筋縄ではいきません(李海生や馮克安の扱いも実に勿体無い!)。
余計なフィクションを省き、もっと入念なリサーチを行っていれば傑作になれたかもしれない作品。呉思遠の監督作としても失敗作ですが、同時期の伝記映画の中では抜きん出た存在なので、話のタネに見てみるのも良い…かもしれませんね(爆
さて次回は、かつて李小龍が辛酸を舐めたハリウッドが彼の伝記映画を製作! 李小龍を愛する人々が語った、よりドラマチックなドラゴンの姿とは……続きは次の更新にて!


「絶対王者ボイカ」
原題:Boyka: Undisputed IV/Boyka: Undisputed
製作:2016年

▼香港映画界で下積み時代を過ごし、『人質奪還』で彗星の如く現れたスコット・アドキンス。今や次代の格闘スターとして確たる地位を築いた彼ですが、その地位を確立するのに一役買ったのがアイザック・フロレンティーン監督でした。
見応えのあるアクション演出に定評のあるアイザック監督は、初期の作品でチャド・マックィーンやドルフ・ラングレンといった既存のスターを起用。香港帰りのスコットを発掘し、以後も何度となくタッグを組んで傑作・佳作を撮っています。
 『人質奪還』でスコットに肩慣らしをさせたアイザック監督は、『デッドロックII』で監獄の格闘王・ボイカというキャラクターを創造しました。この役はスコットにとって当たり役となり、続編の『Undisputed III: Redemption』で主役に昇格したのです。
本作はその続編となるシリーズ最新作で、早期の日本公開が待たれる……と言いたいところですが、実はこの作品はNetflixで日本語版が配信済みだったりします(爆
そのため今回の特集で取り上げるのは不適当なんですが、ソフト化もTV放送も未定だしギリギリ未公開作扱いで良いかな?と、超強引な解釈でトリに持ってきてしまいました(でも本作と『III』の日本版は猛烈に欲しい!)。

■前作で自由の身となったボイカ(スコット)は、真っ当なファイターとして活躍していた。今日も必死に食い下がるエミリアン・デ・ファルコを下し、大きな格闘イベントへの参加資格を得ることができた。
だが戦いの末にファルコは死亡し、スコットは激しい罪悪感に苛まれる。ファルコの遺品の中には妻との写真があり、いたたまれなくなったスコットは彼女に謝罪すべく、一路ロシアへと向かった。
 ところが到着してみると、ファルコの妻は孤児院経営のためにマフィアから借金をしており、連中の経営するクラブで働かされていた。マフィアのボス(アロン・アブトゥブール)からは色目を使われ、孤児院には門番までもが張り付いている。
スコットは彼女に陳謝し、先の試合のファイトマネーを渡そうとするが、「それは血塗られた金よ」と拒絶されてしまう。そこでスコットは意を決し、借金の帳消しを賭けてマフィアの主宰する格闘試合に挑んだ。
 アロンから持ちかけられた三本勝負に身を投じるスコットと、次第に心境を変化させていくファルコの妻。やがてスコットはマフィアお抱えのトップ選手(ブラヒム・アチャバクフ)をも倒し、やっとの思いで三本勝負を制した。
これで借金は消え、スコットも今から帰国すれば例の格闘イベントにギリギリで間に合う。だが非道なアロンは更なる勝負を強要し、かつてスコットが収監されていた刑務所で新王者となった怪物(マーティン・フォード)を呼び寄せていた。
目の前で希望を握り潰されたスコットは、圧倒的に不利な状況で最後の戦いに臨む…!

▲本作はアイザック監督が製作に回り、トドール・チャプカノフという人が監督に就任。その点では若干の不安を感じていましたが、ド派手な格闘シーンとド直球のストーリーは今回も変わっておらず、シリーズの名に恥じない傑作アクションに仕上がっていました。
今回のテーマは「贖罪」となっており、今まで闘争本能の赴くまま戦っていたボイカが人のために立ち上がるという、実に印象深い内容となっています。
 本作のボイカは人間的に成長し、『II』で見せた凶暴性は影を潜めています。中盤では孤児院の子供たちに見守られながらトレーニングをするという微笑ましいシーンもありますが、大胆な行動力とラフな戦闘スタイルは健在。今回も縦横無尽に暴れていました。
ドラマに関してはアクションの邪魔をせず、それでいてキッチリと簡潔に描くアイザック監督の作風が継承されており、違う監督になっても違和感はほとんど感じられません。

 そして本命のアクションシーンですが、こちらは近年にわかに注目されているティム・マン(同じアイザック監督の『ニンジャ・アベンジャーズ』も担当)が指導しており、最初から最後まで凄まじい格闘戦のオンパレードとなっていました。
序盤のスコットVSファルコからして気合の入り方が違っており、三本勝負ではスコットのバネを生かした無重力バトルがこれでもか!と炸裂。どの勝負も対戦相手にバリエーションがあって、見応えのあるファイトが展開されています。
 一戦目は普通のタイマンで、鮮やかな蹴りを放つスコットの技量に目を奪われます。続く二戦目では1VS2の変則マッチ(相手の1人がティム・マン)となり、休む間もなく交互に襲いかかる相手との目まぐるしい接戦が見ものです。
そして三戦目では『ザ・サンクチュアリ』で用心棒トリオの一角を担い、『マキシマム・ブラッド』『キルオール』などにも顔を出していたブラヒムが立ちはだかり、スコットに負けない身軽さと足技で互角に渡り合っていました。
 個人的にはこの三戦目が一番好みなんですが、最後に控えていた筋肉ダルマのマーティンとのバトルも実に壮絶。鎧のような筋肉に打撃が効かない中、彼は筋肉で覆われていない頭部を中心に攻撃し、徐々に体勢を崩そうと試みますが…。
正直なところ、本作のラストバトルは相手のビジュアルこそ凶悪ですが、技術や立ち回りの機敏さで言えば『II』のVSマイケル・ジェイ・ホワイト、『III』のVSマルコ・サロールに比べると一歩及ばずといった感じです。
しかしアクションは全体的に高いレベルを保っており、胸のすくラストも含めて“『デッドロック』シリーズにハズレ無し!”と言える出来だったと思います(でもドタキャンされたスコットのオーナーはちょっと可哀想かも・苦笑)。
 と、そんなわけで今月は国内未公開のマーシャルアーツ映画に迫ってきましたが、まだ見ぬ注目作は他にも存在するはず。思えば未公開の功夫片は沢山見てきましたが、格闘映画の未公開作については開拓の余地が大いにあると言えるでしょう。
もしかしたら今回のような特集をまた開催するかもしれないので、その時はまた未知なる格闘アクションに酔いしれ、大いに楽しんでいきたいと思っています。それでは、本日はこれにて……――(特集、終わり)


Sworn to Justice
製作:1996年

シンシア・ラスロックの登場は格闘映画にとって革命であり、香港映画界にとっても異例の事態でした。香港におけるアクション女優といえば、その多くが舞踊や京劇を立ち回りのベースにしており、必ずしも純粋な武術家ではありません。
しかしシンシアはバリバリの格闘家であり、空手や演武で数々の栄冠を手に入れています。順応性も非常に高く、香港映画という特異な環境に臆することなく挑み、その有り余るポテンシャルを遺憾なく発揮し続けました。
本作は、そんな超本格派のシンシアがアメリカに渡ってから撮った作品で、注目すべきは主人公と恋仲になる青年役に『シンデレラ・ボーイ』のカート・マッキニー(!)が扮している点にあります。

■ごく普通の心理学者であり、格闘技にも精通していたシンシアは、あるとき自宅を強盗団に襲われてしまう。妹と甥が殺害され、彼女自身も殺されかけるがギリギリで脱出。どうにか九死に一生を得るのだった。
悲しみに暮れる中、警察から妹の遺品であるブローチを返却された彼女は、犯行当時の様子を残留思念から読み取っていく。実はシンシアは格闘技のほかに超能力を会得しており、これを活用して自警活動を行っていたのだ。
 彼女はこの能力を駆使し、妹たちの仇を討とうと立ち上がった。事件を担当する刑事のトニー・ロビアンコ(往年の名優。元ボクサーだったためか劇中でチラっと格闘戦を見せている)は、その行動をいぶかしんでいるようだが…。
その一方で、シンシアは仕事先で知り合ったカートと親密になり、徐々に距離を縮めていた。ところが、仕事で立ち合った裁判で提示された証拠品が、強盗団に関与した物であったことが発覚する。
なおも敵に接近しようとするシンシアと、彼女の孤独な戦いに気付きつつあるカート。やがて自身の上司が謀殺されたことから、怒りに震えるシンシアは敵のアジトへと突入する。果たして敵の正体とは? そして2人の運命は…!?

▲カートは『シンデレラ~』でヴァンダムと激闘を繰り広げたことで知られていますが、残念ながらスターとしては成功せず。その後はTVドラマを中心に活動し、格闘映画への出演も本作のみに留まっています。
とはいえ、共演したシンシアとは思遠影業の擬似アメリカ映画(カートは『シンデレラ~』。シンシアは『レイジング・サンダー』)に主演した仲であり、このコラボは実に興味深いと言えるでしょう。
 また、本作にはかつての格闘スターが結集しており、『ショウダウン』ケン・スコット『キックボクサー2』ヴィンス・マードッコ『デスマッチ』イアン・ジャクリンが参加。この他にもマコ岩松などが脇を固めています。
…しかし、90年代の格闘映画では充実したキャストを使い潰す傾向にあり、本作でもこれらの格闘スターとシンシアはまともに絡んでいませんでした(涙
 まず期待されたシンシアVSカートは一切無く、手合せもジャレつく程度。ヴィンズは強盗団のメンバーですが、彼女と少し殴りあっただけですぐに爆殺され、イアンに至っては普通の修理工(ケンにぶっ飛ばされるだけ)という扱いです。
ケンは強盗団のリーダーとして立ちはだかり、ラストで棍棒を持つシンシアにヌンチャクで勝負を挑みます。ここでようやくまともな勝負が見られるかと思いきや、今度は黒幕が横槍を入れてきて勝負は中断…どこまでガッカリさせるんだよコレ!(号泣

 とはいえ、その後に控えているカートVSケンは“亜流『ベスト・キッド』同士の対決”でもあるし、勝負の内容も充実。全体のアクションもレベルが高く、香港時代を彷彿とさせる俊敏なファイトが見られました。
実は本作のアクション指導には、imdbによるとエリック・リーと共同で元德(ユエン・タク)が参加しているとのこと。同サイトの出演履歴には『Mr.マグー』などのハリウッド作品にもスタントで出演している…と書かれています。
 香港映画っぽい立ち回りもあったため、私は元德の登板というサプライズに驚いていたのですが、情報によると実際に参加したのは元德ではなく孔祥德(香港時代のラスロック出演作でも何度か動作設計を担当)なのだそうです。
彼は後半の修理工場における戦いでも、妙に強いザコ役(こちらも最初は元德だと勘違いしてました・汗)としてシンシアと対決。宙返りを見せ、派手に回転しながら車に激突したりと、メインキャスト以上の軽快な動きで妙に目立っていました。

 …と、なんだかアクションの事ばかり書いてしまいましたが、ストーリーの方はこれといって特筆すべき点はありません。ややサービスシーンに力を入れているようですが、それ以外はごく普通の格闘映画といった感じです。
超能力という奇抜な設定も、作品の雰囲気を壊さない程度の描写となっており、身の丈に合ったジャンルで勝負に出たスタッフの判断は間違っていないと言えるでしょう。まぁ、格闘スターたちの扱いは間違いだらけでしたが…(爆
そんなわけで、ちょっとだけ長めにお送りしてきた今回の特集も、次回でついにクライマックス! 今度は監獄から来た格闘王が挑む、最強最後のビッグマッチに着目します!


Man from Shaolin
中文題:少林漢(正字は簡体字表記)
製作:2012年

●少林寺の僧侶であったペン・チャン・リー(Peng Zhang Li)は、事故で母親を亡くした姪(ジャスミン・ガランテ)の面倒を見るため、アメリカ最大の都市であるニューヨークに移住。小さな武術スクールを切り盛りしながら、慎ましやかに暮らしていた。
しかし、幼いジャスミンとの接し方に悩んだり、武術スクールで弟子の1人(ブライアン・エイムズ)が道場破りを連れてきて問題を起こしたりと、面倒なトラブルが頻発していく。
 ペンは少林寺の故事から打開策のヒント(?)を得ようとするが、状況はまったくもって好転しない。遂にはスクールが閉鎖に追い込まれ、ブライアンに絡んでいた連中に喧嘩を売られた挙句、銃撃を受けるという事件まで起きてしまった。
なんとか大事には至らなかったが、この出来事によりジャスミンはペンの元から引き離されてしまう。そのとき、“少林寺から来た男”が下した決断とは…!?

 本作はペン・チャン・リー(本作ではLi Zhang名義)という謎の中国人武術家が、主演・製作・武術指導・監督を務めた怪しげな武術映画です。話によると少林寺に在籍していた本物の武僧…らしいのですが、検索しても中華系サイトに彼の名は見当たりません。
米国のwikiによると、ペンさんは3歳の頃から少林寺で修行し、22歳になると寺から出立。渡米した先で『Shaolin Ulysses: Kungfu Monks in America』というドキュメンタリーに出演し、それが映画事業に関わるキッカケとなったそうです。
 2010年には初の監督主演作である『The Last Kung Fu Monk』を発表し、抗日アクションの『The Resistance』などを立て続けに製作。いずれも中国との合作であり、作品の持つ雰囲気もマーシャルアーツ映画とは一線を画しています。
そんな中で本作は“少林寺から来た男が直面する試練”を描いており、タイトルからして功夫アクションが炸裂する活劇を思わせます。しかし本作では功夫よりも、叔父と姪の関係を描いたドラマとしての面が強調されていました。

 確かに劇中には悪党も出てくるし、功夫アクションの割合も少なくありません。ただし本作では、少林僧という肩書きが通用しない大都会で、どうにか必死に生きようとする主人公の姿が主題となっているのです。
そのため作品の空気は重く、勧善懲悪とは程遠いストーリーが展開されていました。個人的には「そういう方向で攻める作品なのか…」と興味深げに見れましたが、活劇を期待して視聴する人にとっては、やや退屈に感じるかもしれません。
また、主演のペンさんはアクションこそ一級品ですが、そのルックスは完全に普通のおっさんなので、スター性が致命的なレベルで不足しています。愛嬌にも乏しく、せめてもう少し砕けた演技をしてくれれば、もっと感情移入できたのですが…。
 ただ、アクションシーンでは香港映画に近い機敏なバトルが見られるので、その点に関しては上々と言えるでしょう。劇中ではペンさんが少林寺にまつわる故事を思い出し、自らが登場する回想シーンで激しいファイトを見せています。
現実の戦いでは、中盤で道場破りとペンさんが戦い、後半には悪漢たちを蹴散らすシークエンスも。ストーリー的にラストバトルは無いかな…と思いきや、最後の最後に道場破りと再戦が果たされ、短いながらも見事な攻防を披露していました。
 格闘映画なのに少林僧が主役で、功夫ではなくドラマが中心になるという異色中の異色作。日本ではまったく無名の作品ですが、マーシャルアーツ映画にはこういった作品がまだまだ沢山あるのかもしれませんね。
さて次回は、あの懐かしの女ドラゴンが満を持しての登場! さらには某作で主演を飾って以降、しばらく音沙汰を聞かなかったあの格闘俳優と共演するのですが…詳細は次回にて!