
「天使行動」
原題:天使行動
英題:Angel/Iron Angels
製作:1987年
▼現在も続く女闘美アクションの歴史は『皇家師姐』シリーズから始まった。それまで女性が主役の功夫片は幾つも存在したが、ヒロインが屈強な男たちに体ひとつで立ち向かい、命知らずのスタントで渡り合う姿は香港の観客に新たな衝撃を与えた。『皇家師姐』は第7作まで続くロングヒットとなり、ジャッキーや元奎(コリー・ユン)らもこの流れに続いている。
そんな中にあって、国際的なキャストと体当たりアクションで市場に切り込んだのが本作だ。それまで普通の女優であった李賽鳳(ムーン・リー)が女ドラゴンに転向した最初の作品であり、日本では西城秀樹が出演した事でも知られている。アイドル女優&日本人ゲストのアクション映画初体験…普通なら色々と気を遣うことになりそうな雰囲気だが、そこは遠慮を知らぬ香港映画。派手な銃撃戦や凄まじい肉弾戦を用意して、初々しい両者を盛大に歓迎していました(笑
■黄金の三角地帯を警察に襲撃され、マフィアの楊群(ピーター・ヤン)らは激怒していた。幹部である大島由加里の提案で、すぐさま襲撃作戦に関わった関係者や捜査官たちへの報復作戦が開始される。これに手を焼いた警察総監(王侠)は、特殊部隊エンジェルズに協力を要請。李賽鳳・西城秀樹・呂少玲(エレイン・ルイ)らエンジェルズに、アメリカの麻薬捜査官・方中信(アレックス・フォン)を加えた4人は、組織に捕まった人質を救出すべく動き出していく。
一方、暴走した大島が楊群を殺害したことで、組織は完全に彼女の私物となっていた。エンジェルズと組織の戦いは次第に激しさを増すも、幾多の危機を乗り越えて人質の奪還に成功する。ところが、組織の幹部だった黄正利(ウォン・チェン・リー)から「報復とは別に計画が動いている」と聞かされ、方中信が詳細を探るため敵陣に突っ込んでしまった。方中信からの情報で、組織が金塊の密売を計画している事をキャッチしたエンジェルズは、二手に分かれて行動を開始するが…。
▲もはや語り草になっているが、本作のアクションはとにかく凄まじいの一言に尽きる。肉弾戦に特化した『皇家師姐』に対抗して、火薬量を増やすことでイメージの重複を避けているが、もちろんそれだけの作品ではない。人命軽視のカーチェイスから始まって、過剰なほどの火薬が炸裂する銃撃戦、命知らずのデンジャラス・スタント、そして功夫アクションの全てが異様な迫力で描かれている。本作をただの便乗作品にさせまいとする製作側の執念のようなものすら感じられるのだ。
出演者は全員スタントマン状態で、もちろん李賽鳳と西城も無茶なアクションに借り出されている。特に可哀想なのが西城で、アクション未経験の身だというのにいきなり黄正利と戦わされ、ヘリから吊るされるのだから堪ったものではない(そんな過酷な注文に対してキッチリと応える西城も凄い)。李賽鳳に至っては西城以上のスタントを求められ、ラストのVS大島由加里では女同士の壮絶なドツキ合いを繰り広げている。この一騎打ちはまさに"死闘"と呼ぶに相応しいバトルで、数ある女闘美アクションの中でも五指に入る名勝負と言えるだろう。
また、かつての功夫スターたちがチラホラと顔を覗かせているのもファンには嬉しいところで、エンジェルズのボスに姜大衛(デビッド・チャン)、組織の幹部として江島(冒頭にだけ登場)が顔を見せている。
先述の黄正利や王侠もそうだが、当時の動作片には売れ線の俳優だけでなく功夫スターを起用するケースが多々ある。これは時代が移り行く中、時流から取り残されつつある旧来のスターたちに対する救済措置だったのかもしれない。先人の思いを無為にせず、活躍の場を提供することで、かつて彼らの元で働いていた作り手たちは報いたのだろう。
…その後、本作の成功を糧に続編が作られる運びとなり、その作品の武術指導にとんでもない男が招集されることになるのだが、それについては次回にて!

少年蘇乞兒
英題:The Young Vagabond
製作:1985年
▼1985年。かつて香港映画界の頂点に君臨していた業界最大手ショウ・ブラザーズにも、とうとう最後の時が訪れようとしていた。
同社の体制に反発したスタッフが次々と離脱し、対抗馬だったゴールデンハーベストも急成長を遂げた。観客の需要は功夫片から現代劇に代わり、更にはショウブラの立役者であった邵仁枚(ラミー・ショウ)が死去…勢いを失ったショウブラは映画製作から撤退し、活躍の場をTVへと移すこととなった。
本作はそんな断末魔の年に作られたもので、『酔拳』で有名な酔いどれ師匠「蘇乞兒」を題材にしたコメディ功夫片なのだが…既に当時は現代アクションが主流となっており、コテコテの功夫片を作るにはあまりにも時機を逸している。
『ヤング・マスター』を意識した作風といい、どうしてこの時期に本作みたいな映画を作ったのか、まったくもって意図が解らない作品なのだ(ただし、製作年度に関しては1982年説もある)。
■劉家輝(リュー・チャーフィ)と汪禹(ワン・ユー)は良家の御曹司だが、いつも問題を起こしてばかりの暴れん坊兄弟であった。
行く先々でトラブルを起こす2人は、親の薦めで洋風の学校(カトリックハイスクール?)に編入させられるも、騒動を起こしたせいで劉家輝は退学処分に。結局、前に通っていた学校へ舞い戻った劉家輝であったが、教師の白彪(ジェイソン・バイ)が酔拳の達人だと知り、彼に酔拳を教わろうと思い立った。
その後は色々とドタバタが続き、劉家輝が同級生だった黄曼凝の家に居候したり、黄曼凝の父親が警察隊長の谷峰だったり(ここの流れが『ヤング・マスター』にそっくり)、白彪の宿敵である王龍威が彼を殺害したり、その王龍威が次の目標を劉家輝に定めたりとユルい展開が続いていく(この間ずっとギャグだけで話が進むため、功夫アクションを期待している人にはかなり厳しいかもしれない)。
ところが、ラスト15分ごろに黄曼凝や劉家輝の親族全員が殺害される(!)という急展開を迎え、激怒した劉家輝は乞食の格好で王龍威と対決する。この劉家輝の姿が『ヤング・マスター』の黄仁植(脱獄する時)と酷似していて、がむしゃらな戦法で勝利するあたりも『ヤング・マスター』似。最後は王龍威の首筋を食いちぎった劉家輝が雄叫びを上げたところで唐突に映画は終わる。
▲王晶(バリー・ウォン)が脚本を担当しているせいか、本作はとにかくコメディ描写が多い。
そのため功夫アクションの割合は少なく、蘇乞兒が主人公なのに目立ったバトルは3~4回ぐらいしか用意されていない。それならそれでコメディ描写が楽しければ良いのだが、本作のギャグはくどい上に笑えないものばかり。功夫片なのにサッカーの試合をしたりと、王晶らしいフリーダムさはあるんだけど…。
また、劉家輝・汪禹・白彪・王龍威・關鋒と猛者が揃っているのに、劇中の功夫アクションは精細さを欠いている。王龍威の部下が繰り出すムカデ部隊?はゴチャゴチャしているだけで、殺陣も雑さばかりが目に付く。そのうえ、作中で劉家輝が習った酔拳は実戦で全然使わないし、汪禹と關鋒はロクな見せ場も無いまま退場している。ただでさえ功夫アクションが少ないのに、いくらなんでもコレは酷いよ!(涙
ショウブラ晩年の動乱期に作られた作品だが、屋台骨が傾いてるだけあって散々な内容となっている本作。同じタッチの『弟子也瘋狂』はキャスティングが豪華なのでまだ見られたが、本作の場合は上記の通りの出来なのでスルーしてもOKかと。ただ、最後の劉家輝VS王龍威はそこそこ壮絶だったりします(しかし時間が短すぎる上に結末が…)。

「新・ピィナッツ」
製作:1997年
●昔から功夫片や格闘映画では、たびたび夢の対決というイベントが組まれてきました。普段顔を合わせない者同士が拳を交える姿は、ファンにとってはマンネリを打破する嬉しいサプライズであり、製作側にとっては作品に大きな価値を与えられる便利な手段でもありました。
香港では夢の対決そのものをメインに映画製作を行った会社もあるほどですが、ハリウッドでは制約があるのか実現しづらい傾向にあります。では、我が日本の夢の対決事情はどうなっているのでしょうか?
和製格闘映画といえば、まず思い浮かぶのがJACの空手映画ですが、意外にもJAC作品での夢の対決は皆無と言っていいほど少ないのです(仲間うちの対戦が多かったため)。
90年代以降はVシネを舞台に様々な対戦カードが実現しており、代表的なところでは『覇拳』の塩谷庄吾VS慮恵光、『ザ・格闘王』のケイン・コスギVS倉田保昭、『ボディガード牙』の大和武士VS松田優、『拳鬼』の阿部寛VS石橋雅史などが挙げられます。
実を言うと、Vシネ業界における格闘スター同士の共演は珍しい事では無いのです。そもそも製作本数自体が多いので、共演だけに限定しても相当数に上ります。そんな夢の対決が比較的実現しやすい環境にあるVシネ作品から、今回は清水宏次朗と岸本祐二のW格闘スター(新旧BE-BOPコンビ!)が共演した作品を紹介してみましょう。
本作は竹内力主演作『ピィナッツ/落華星』の続編ですが、特にこれといって関連性の無い?アクションVシネです。ストーリーは清水&岸本の凄腕ヒットマンコンビが10年ぶりに日本へ帰国し、かつて仕事を手伝ったことのある極道幹部・石橋保から警護を依頼され、巨悪と闘っていくというもの。
主役の2人はそれぞれ担当するエピソードがあり、清水は「石橋と彼の為に夢を失った女・大竹一重の関係」を、岸本は「中国から連れてこられた女の妹を助ける&新人歌手との恋模様」を受け持っています。
色々な出来事が交錯するハードボイルドな群像劇…といった感じの物語ですが、正直言って作品そのものはそれほど面白くはありません。というのも、繰り広げられるエピソードのほとんどが月並みな内容で、全てにおいて凡庸な出来に終始しているのです。
この思い切りに欠ける演出は、同じ佐々木正人の監督作『新書ワル 復活篇』と非常によく似ており、アクセントの利いた山場が無い点も一緒。本作ならではといえる要素も無く、既視感がバリバリの状態になっています。
また、清水VS岸本の対決は味方同士なので当然あるはずもなく、今回の夢の対決はもちろんお預け。格闘アクションは例によって「暗いシーンばかりで役者が見づらい」という極悪パターンで、殺陣のレベルもそこそこ止まりでした。
ちなみにプロレスラーの安生洋二・高山善廣・山本健一らゴールデンカップスが敵の刺客として出演しているのですが、動きが遅いので宝の持ち腐れに終わっています。強いて言えば、清水VS敵幹部のタイマン勝負だけは唯一面白かったと言えるかもしれません。
良い素材が揃っていながら、各々の個性を上手く引き出せなかったために寸詰まりとなってしまった惜しい作品。最近はストーリーを複雑化させた映画が目立ちますが、シンプルなストーリーでも演出次第でこうなってしまうとは…映画とは本当に難しいものです。
ところで本作には続編もありますが、こちらでは夢の対決が実現しているのか否か?気になるところなんですが、本作を見た後では期待して良いものかどうか…(汗

Ninja Terminator
製作:1985年
●最近はノーマルな作品紹介が続いていたので、ここいらでド外道な映画を1つイってみよう。
本作は、これまでに当ブログで何度か紹介した香港のインチキ映画会社IFD film & artsによって作られた、ニコイチニンジャ映画のひとつである。元ネタは林子虎(ジャック・ラム)主演の韓国産動作片だが、監督と脚本を担当した何誌強(ゴッドフリー・ホー)の手によって、見るも無惨な代物と化している。なお、林子虎は過去にも同社から被害を受けた過去があり(『Ninja Champion』『Ninja Empire』)、今回で3度目の災難となった。
ストーリーは黄金像を巡ってニンジャのリチャード・ハリソンらが闘う話と、そのとばっちりを受けた(?)林子虎が闘う話の2つが同時進行していく…というもの。今回はニコイチパートにもそこそこ力が入っており、悪のニンジャとして高飛や江島といった(IFDにしては)豪華な面子が起用されしている。そして最大の見どころは、元ネタ部分で林子虎に立ちはだかる最強の敵に、あの黄正利(ウォン・チェン・リー)が扮しているという点だ。
黄正利は悪ニンジャの下部組織の首領(※何誌強の改変設定)で、なぜか巨大な金髪カツラを着用している変な風貌のキャラだ。いささかマヌケな面構えに見えるが、いざ闘いとなると得意の三段蹴りや蹴り足ビンタを炸裂させ、映画の全てをかっさらう大暴れを展開!アクションの見せ場はラストしか無いが、登場しただけで画面が一気に引き締まるあたりは「流石シルバーフォックス!」といったところか。
一方、黄正利には迫力で劣るものの、主役の林子虎だって負けていない。相手を飛び越えて回し蹴り、切り返しの早い連続蹴り、空中蹴りなどお手の物。バリエーションだけなら黄正利にも匹敵するほどで、彼の高い身体能力を存分に堪能することができる。この強者2人が闘うラストバトルも充実した内容であり、これには嬉しいサプライズを受けました(ただし決着の付き方がアホすぎるので、黄正利ファンには辛いかも?)。
多少の中だるみこそあるものの、この手のニンジャ映画としてはマシな部類に入る出来。高飛のニンジャアクションは特に面白くないけど、林子虎VS黄正利のガチバトルだけは一見の価値有りかも。本作も『Zombie vs Ninja』のように、元ネタにだけ集中して視聴すればいいタイプの作品だと思います。それにしても、黄正利の着用していた金髪カツラは一体何だったのやら……(苦笑

「ドラゴンアームズ/危険的刑事」
原題:火爆行動/危險的警事
英題:Avenging Trio/Dragon Arms
製作:1989年
●う~ん…何なんだろうこの作品は?本作は日本でもリリースされた動作片で、主演は劉家輝(リュウ・チャーフィ)となっているが、色々と謎の多い映画である。
まず日本版ビデオのパッケージからして突っ込みどころ満載で、劉家輝の紹介で「『少林寺への道』でトップスターの地位を築いた云々~」と記されているが、『少林寺~』は黄家達の主演作である。また、監督の表記が「ルーチャン・クー・(原文ママ)」になっているなど、失笑モノの誤記がかなり目立つのだ(笑)。まぁこのへんはご愛敬の範疇なのだが、問題はここからだ。
本作は台湾の名匠・郭南宏(ジョセフ・クオ)がプロデュースし、製作会社も宏華公司だとされているが、作中の表記やデータサイトでは出品人も製作会社もまったく違っている。おまけに正式な原題はビデオ版の『危險的警事』ではなく『火爆行動』が正解らしい。監督もビデオ版だと魯俊谷になっているが、こちらも本当は陳棘男(陳[車専]男?)なる人だそうで……もう何が何だか解らなくなってきたぞ??
詳しい事は私も解らないが、恐らく本来は別の会社が作った作品を郭南宏の宏華公司が改題し、表記をいじくったのではないだろうか?郭南宏は自身の作品に追加撮影などをよく行い、たびたび改題されるケースも多いと聞く。本作もそういう流れで宏華公司名義となり、そのバージョンが日本でパッケージ化された…ということなのかもしれない。
色々と複雑な裏事情を孕んでいそうな本作だが、その中身も無駄に複雑なものだった。物語は英題にもあるとおり、かつて黒社会の曹達華(チョウ・ダッワー)によって父親を殺された3人の若者(劉少君・周秀蘭ら)が、復讐の為に闘う姿を描いたものである。これに刑事の劉家輝と李麗麗(リリー・リー)、曹達華と対立している梁家仁(レオン・カーヤン)も絡んでくるのだが、ゴチャゴチャしていて非常に解りづらいのだ。
しかも、実際の主人公は劉家輝ではなく3人の若者たちである。劉家輝は前半で主役級の活躍をするものの、中盤以降は3人組と交代。彼らが偽札を巡るトラブルに絡む展開となるが、仇である曹達華はあっさり警察に捕まってしまう。最後は梁家仁VS警察VS3人組(周秀蘭は警察側の人間なので正確には2人)の銃撃戦となり、梁家仁は逮捕。劉少君らも連行されるが「曹達華の逮捕に貢献したので賞金が出るぞ!」と喜んで劇終となる…って、仇討ちはいいのかよ!?
一方、アクション描写に関しては特に悪くないのだが、どちらかというと出来は並程度。劉家輝や李麗麗の貴重な現代アクションは堪能できるけど、どうしても迫力不足というか決め手に欠けている感があり、凡庸な印象しか抱けない。劉家輝VS梁家仁の対戦も、殺陣次第ならもっとスゴいものが出来ただろうし、主役の3人組も動けるのだからラストバトルに参加させておけばよかったんだけど…。
結局、一番活躍しなければいけない3人が放置され、劉家輝が美味しい所を全て独占してしまった本作。3人組と劉家輝のどちらをメインにしたいのか、銃撃戦と功夫のどちらをメインにしたいのか、偽札事件と抗争事件のどちらをメインにしたいのか…あらゆる場面で優柔不断な印象を受けるが、もしかして劉家輝のスケジュールが調整できなくてこうなっちゃったのか?