続・功夫電影専科 -36ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「少林寺英雄伝」
原題:少林英雄榜
英題:Abbot of Shaolin/A Slice of Death
製作:1979年

●時は清の時代。反清復明を掲げる少林寺は、抵抗活動に必要な武器の設計図を調達すべく、武當派の重鎮・楊志卿のもとへ姜大衛(デビッド・チャン)を派遣する。しかし楊志卿の弟弟子である羅烈(ローリェ)は、少林寺への協力に断固として反対した。
半年後、設計図の収集と鍛錬を終えた姜大衛は帰路に着くが、少林寺は先手を打った清朝の攻撃によって壊滅。ただ1人生き残った彼は、少林寺の再興と清朝打倒を目指して出奔する。
 やがて姜大衛の元には徐少強や呉杭生といった若者たちが集い、寺の再建も順調に進んでいく。だが一方で、密かに清朝と結託した羅烈は楊志卿を暗殺し、旅を続ける姜大衛に迫ろうとしていた。
楊志卿の弟子である李麗麗(リリー・リー)と合流した姜大衛たちは、熾烈な戦いの末に広州からの脱出を決意する。敵の包囲網をかわしながら進む一行だが、彼らの前に宿敵・羅烈が立ちはだかった!

 本作は非常にオーソドックスな少林寺映画で、洪家拳の源流を築いたとされる至善大師が主役となっています。他にも白眉道人を始め、洪熙官や五枚といった伝説上の人物が一堂に会している…のですが、作品としては驚くほど小ぢんまりとしていました(苦笑
製作したのが天下のショウ・ブラザースなので、セットやエキストラの規模は独立プロ作品の比ではありません。しかし、少林寺が焼き討ちされて少林英雄が集まり、白眉道人を倒すという大河ドラマをたったの79分(!)に収めているのです。
 尺が短いので当然ストーリーも駆け足気味。繰り広げられるドラマも必要最低限に絞られ、張徹(チャン・ツェ)や劉家良(リュー・チャーリャン)が手掛けた少林寺映画とは趣を異にしています。
では本作は面白くないのか?と思ってしまうところですが、監督を担当した何夢華(ホー・メンファー)の演出はテンポが良く、意外とそつなくまとまっていました。他作品を意識したキャスティングや、若き大師を爽やかに演じた姜大衛も印象的です。
 ただ、アクションもストーリーと同様に薄味で、やや決め手に欠けているように感じました。武術指導の祥は、『非情のハイキック ~黄正利の足技地獄~』 や『武状元』等で見事な立ち回りを構築しているのですが…。
あっさり風味の作品ではあるものの、少林寺の興亡や少林英雄たちを簡単に知ることができるので、本作は少林寺映画の入門編に適しているといえる…かもしれませんね(爆


十八羅漢拳
英題:18 Fatal Strikes/18 Deadly Strikes
製作:1978年

●少林僧の聞江龍は清朝政府の将軍・司馬龍とその手下に追われていた。司馬龍は恐るべき鷹拳の使い手で、十八羅漢拳を身に付けている聞江龍ですら歯が立たない。戦いの末に傷付いた彼は、山菜取りをしている董[王韋](トン・ワイ)と石天(ディーン・セキ)の兄弟に救われた。
あるとき2人は、めっぽう腕が立つ謎の女・沈海蓉と出会い、悪漢に襲われそうになった彼女を助けた。意気揚々とその場を立ち去る2人だが、待っていたのは先程の悪漢たちによる手痛いお礼(笑)だった。
 強くなりたいと思った董[王韋]たちは、全快した聞江龍から修行を受けることになる。徐々に力を付けてきた董[王韋]は、あるとき清朝の追っ手に襲われていた沈海蓉と再会し、窮地に陥っていた彼女を再び救い出した。実は彼女は反政府グループの一員だったのだ。
この時、董[王韋]の技を見た清朝の史仲田は聞江龍との関係を疑い、石天にも襲撃を仕掛けたが軽くいなされた。しかし司馬龍が直々に乗り出してきたことで、事態は一気に急転する。
石天の口を割らせようとした司馬龍は、彼が好いていた染物屋の娘を殺害。これに激怒した董[王韋]は史仲田を倒すが、司馬龍によって完膚なきまで叩きのめされ、自宅を放火された挙句に石天を殺されてしまった。
復讐に燃える董[王韋]は、石天たちの墓前で修行の仕上げに突入する。聞江龍が沈海蓉の叔父だと判明する中、敵の襲来を予感した董[王韋]たちは先手を打って罠を仕掛けた。遂に始まる最後の闘い…生き残るのは董[王韋]か!?司馬龍か!?

 明らかに低予算の功夫片ですが、高度なアクションと役者の頑張りによって支えられた作品です。欧米では人気が高いようで、司馬龍の異名である”シェイキング・イーグル”は本作で見せたファイトスタイルが由来となっているのだとか。
主演の董[王韋]は『燃えよドラゴン』で李小龍に指導を受けていた少年役で知られ、のちに武術指導家として大成。今も現役で活動を続けており、本作では武術指導を袁家班の袁祥仁(ユエン・チョンヤン)と共同で兼任しています。
 本作では明るい好青年を演じていますが、個人的には彼よりも石天の奮闘っぷりに目を惹かれました。本作の石天はお笑い担当のキャラですが、コメディ的な見せ場よりもアクションと演技に力を注いでいます。
特に、好きだった娘を殺された際の演技が印象的で、亡骸を抱きかかえながら荒野を往く姿には泣かされます。最終的には非業の死を遂げてしまいますが、コメディ功夫片とは一味違った石天の姿は、ファンならずとも必見といえるでしょう。
 このように演技面では石天に譲った董[王韋]ではありますが、彼と袁祥仁が共同で作り上げたアクションシーンは豪快そのもの。ダイナミックかつテクニカルな技の応酬は見応があり、こちらに関しては董[王韋]が主導権を得ていました。
ラストバトルでは手がつけられないほど強い司馬龍と、それでも立ち向かう董[王韋]による攻防戦がスリリングに描かれています。ストーリーは特にどうってことはないものの、この手の作品としては上々の出来だったのではないでしょうか。


「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」
「ランダウン」
原題:The Rundown
製作:2003年

ドゥエイン・ジョンソンはマフィアお抱えの借金取立人。マフィアに借金を作ったせいで今の仕事に就いているが、将来は足を洗ってレストランを開きたいと思っていた。
そんな彼に最後の仕事が言い渡される。雇い主のボス曰く、「息子のショーン・ウィリアム・スコットを連れ戻してこい」とのこと。肝心のショーンはアマゾン奥地で宝探しをしており、現地に飛んだジョンソンはすぐに彼を見つけ出した。
 だが、現地で金鉱を採掘している独裁者のクリストファー・ウォーケンが、お宝の在りかを知るショーンを狙って動き出した。たちまち追われる身となった2人は、町をクリストファーから取り戻そうとする抵抗軍と遭遇する。
両者は誤解から対立するも、リーダーであるロザリオ・ドーソンの取り成しで事なきを得た。ところがクリストファーたちの襲撃で抵抗軍は大打撃を受け、逃げ出した3人は利害の一致によりお宝を探すことになった。
紆余曲折の末、手に入れたお宝はロザリオが抜け駆けして持ち去り、ジョンソンとショーンはなんとか目的地の飛行場に辿り着けた。しかし彼女がクリストファーたちに捕まったと聞き、2人の男は町へと戻っていく。大勢の敵が待ち構える中、戦いの結末は…!?

 かつてWWEのトップスターとして君臨し、現在は俳優として活躍するドゥエイン・ジョンソン。今や肉体派スターの一角として数えられる彼ですが、同じWWE組の格闘俳優であるスティーヴ・オースチンとは違う道のりを歩んでいます。
スティーヴは大作映画とは縁遠いものの、そのキャリアはマーシャルアーツ映画一色です。一方、ジョンソンはマーシャルアーツ映画から距離を置いており、一時はSF映画やファミリー向け作品に顔を出していました。
 「このままアクション映画から卒業するのでは…?」と危ぶまれたジョンソンですが、近年は格闘要素のある作品への出演が増えつつあり、今後に期待したいスターの1人といえるでしょう。
本作は、そんな彼が俳優活動を始めて間もない頃の主演作で、かなり大味な仕上がりとなっています。全体的に作り込みが甘く、勢い任せでB級感丸出しのストーリー展開には賛否が分かれますが、笑える場面も多かったので個人的にはOKでした。

 それより気になるのは作中における格闘シーンの質です。ジョンソンのようなレスラー系の役者は、殺陣の振り付けが悪いと木偶の坊になりやすく、その傾向はキックボクサー系の役者より極端であるといえます。
しかし本作では、成家班出身の鄭繼宗(アンディ・チェン…役者としては『アルティメット・ディシジョン』の用心棒役が印象深し)が動作設計を担当しているため、そのような事態には陥っていません。
 ジョンソンの無骨なファイトスタイルは力強さに富み、もたつく間もないので安心して見ていられます。適度にワイヤーワークも加味されており、中盤のアーニー・レイズJr戦、終盤におけるムチ使いトリオとの対決も迫力満点でした(特にアーニーが見せる電光石火の早技が凄い!)。
映画としてはどうしようもなくB級ではありますが、深く考えずにアクションだけ楽しむなら最良の逸品。個人的にはこのまま格闘アクション路線を突き詰めて、いつかスクリーン上でザ・ロックVSストーンコールドの激突を見せて欲しいですね。


「若い貴族たち 13階段のマキ」
英題:The 13 steps of Maki/Maki's 13 Steps
製作:1975年

●野良猫グループを率いる志穂美悦子は、チンピラたちから「13階段のマキ」として恐れられていた。今日も彼女たちはヤクザを相手に大乱闘を繰り広げていたが、傲慢な社長令嬢・大原美佐をシメたせいで恨みを買うことになる。
怒り心頭の大原は、父親(近藤宏)の仕事上のパートナーである大門組組長・名和宏の力を借り、陰湿な報復を開始。対する志穂美もやり返すが、名和は大門組にとっても邪魔者であった彼女を警察に逮捕させ、仲間たちをシャブ漬けにしてしまう。
 実はこの名和という男、近藤が経営する旅行会社の共同経営者になろうと目論んでおり、加えて大原を我が物にしようとしていた。名和の正体を知った大原は用心棒の南条竜也に助けを求めるが、あっさり名和にバレたため離反は失敗に終わった。
一方、少年院に収監された志穂美は女囚たちと敵対し、名和と通じている看守・室田日出男からも目を付けられていた。しかし大原から仲間たちの惨状を聞き、脱獄してリベンジを果たすことを誓う。
近藤を謀殺され、刺し違えてでも名和に復讐しようとする大原。なんとか脱獄に成功し、仲間や南条たちの敵を討とうとする志穂美。相反する2人の女は、それぞれの決意を胸に最後の戦いを挑む…!

 またもや志穂美悦子の主演作の紹介ですが、本作はどっちつかずの演出で居心地が悪くなってしまった『華麗なる追跡』とは違い、一貫してハードなタッチで描かれていました。
なにしろ原作を手掛けたのがあの梶原一騎ですから、容赦のないエロス&バイオレンスがこれでもかと炸裂しています。そのためストーリーはかなり暗く、救いの無さもハンパではありません。
 また、主人公と仲間たちは固い結束で結ばれた集団として描写されていますが、その本質はアウトローそのもの。大原に対する必要以上の報復などを見ても解るとおり、その行動に「信念」はあっても「正義」は存在しないのです。
おかげで志穂美たちに感情移入するのは難しく、作品と視聴者の間に大きな隔たりを生じさせています。非常に魅力を感じる映画ですが、同時に見る人を選ぶ作品…ともいえるでしょう(印象としては『激突!殺人拳』に近いかも)。
 ただし格闘アクションは今回も冴えており、悦ちゃんの凛々しいファイトが堪能できます。最終決戦では真紅のダブルヌンチャクを振るい、巨漢の用心棒と激突!このへんについては満足のできる内容でした。
石橋雅史のような達人クラスの相手がいないのは惜しいですが、志穂美の見せる悲壮感ただよう立ち振る舞いからは、『女必殺拳』シリーズとはまた違った凄みを感じます。
決して万人にはオススメ出来ないものの、計り知れないパワーを秘めている本作。千葉真一のおいしいゲスト出演、悦ちゃんが歌う独特なハーモニーの主題歌(爆)など、他にも見どころが数多く存在するので、とりあえず見て損は無いと思います。


「華麗なる追跡」
英題:The Great Chase
製作:1975年

●新進気鋭の女性レーサー・志穂美悦子。その正体は国際的な麻薬捜査官で、麻薬密輸の汚名を着せられて死んだ父親の復讐を誓っていた。そんな彼女に千載一遇のチャンスが訪れる…仇敵とされる組織の一員・山本昌平の足取りが掴めたのだ。
巧みな七変化と仲間たちのバックアップにより、志穂美は徐々に組織へと近付いていく。そして調査の末に、敵の幹部が元・刑務所長の沼田曜一と、父親と同じ航海士だった石橋雅史だと判明する。
 だが、組織のボスである国会議員・天津敏は、志穂美の親友・田中久子から情報を入手し、一転して反撃を開始した。これにより仲間たちは無残にも殺され、捕まった彼女を助けようとした田中も命を落としてしまう。
組織に潜り込んでいた諜報員の郷治に救われた志穂美は、怒りの火の玉となって最後の戦いに挑む。凄まじい死闘の中で、彼女が見たものとは…!?

 本作は『女必殺拳』で華々しい活躍を見せ、JACを代表するスターとなった志穂美悦子が主演したアクション活劇です。作品のテイストは『女必殺拳』に近いものの、華麗?な七変化やマッハ文朱のゲスト出演が功を奏し、やや明るめの作品に仕上がっていました。
しかし悪趣味な演出も多く、特に天津敏の倒錯しまくったキャラは完全に一線を越えています(苦笑)。また、最初こそアイドル映画的な明るさを見せた本作ですが、ストーリーが進むにつれて陰惨な展開が増えていき、最終的には『女必殺拳』と似た結末を迎えてしまいます。
 本作に限らず、当時の志穂美が演じる役柄はいつも血生臭さに満ちていました。『女必殺拳』三部作と『必殺女拳士』では復讐に燃える女拳士、『激殺!邪道拳』『ゴルゴ13』『吼えろ鉄拳』『里見八犬伝』では壮絶な死を遂げます。
『少林寺拳法』『百地三太夫』ではお転婆な姿も見られますが、こちらも宙吊りになって死んだり兄が腕を斬られたりと、やはり一筋縄ではいきません。彼女が最後まで可愛く振舞えたのは、『激突!合気道』くらいでしょう(『女必殺五段拳』は未見)。
確かに闘う悦ちゃんの姿は美しく、上記の作品は面白いものばかりです。とはいえ、等身大の愛らしい彼女をもっと見てみたかったのも事実。本作は明るさと悪趣味さが入り混じった作風となりましたが、アイドル映画路線を貫いていれば違う結果になったと思います。

 『女必殺拳』とは違う路線を目指すも、結局は李紅竜のイメージから脱し切れなかった本作。その反面、アクションシーンでは危険なスタントに挑戦することで、鮮烈な印象を与える事に成功しています。
中でもクライマックスの採石場における爆破シーンは凄まじく、志穂美のすぐ側でドッカンドッカン噴煙が巻き上がる様はスリル満点です。のちにJACはスタント面に特化していく事になりますが、本作はその雛形だったのかもしれません。
 志穂美VSマッハ文朱の女ドラゴン対決、おなじみ石橋雅史のファイトも光りますが、残念だったのは奇々怪々な用心棒たちがほとんど活躍しなかったこと。ラストで志穂美とタイマンで闘う相手が、石橋だけというのは寂しいものがありました。
全体的にはそれなりに面白いものの、イビツで他作品と代わり映えしない演出が引っかかり、個人的には今一歩でした。ところで1つだけ気になるのですが、石橋雅史はなぜ死んだ途端に爆発したんでしょうか?(爆