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続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。

「スコーピオン・ファイター」
原題:蠍子戰士
英題:Operation Scorpio
製作:1992年

監督:黎大[火韋](デイヴィッド・ライ)
脚本:陳子慧(デイヴィッド・チャン)/黄炳耀(バリー・ウォン)/呂秀鳳
武術指導:元徳
武術顧問:劉家良(ラウ・カーリョン)/元奎(ユン・ケイ)
出演:錢嘉樂(チン・ガーロッ)/劉家良(ラウ・カーリョン)/羅美薇(メイ・ロー)/元振(ウォン・ジン)/胡楓(ウー・ファン)/他



<ようやく見つけた私的「幻の逸品」! その内容とは…??>
 今や配信サービスや宅配レンタルで気軽に映画を見られる時代になりましたが、それでも見つからない「幻の逸品」があって歯がゆい経験をした方は多いと思います。
私も『ブラッド・ブラザーズ』('90)や『無敵のゴッド・ファーザー』('74)など、巡りあわせの悪さで長年出会えなかった作品がいくつもあり、本作もそのひとつでした。

 この作品は私が15年以上探していた物で、東京や大阪に遠出しても見つけられなかったのですが、数年前に近場の店に置いてあったのをゲット!
発見した時は思わず呆然としてしまい、嬉しさと同時に「こんな近くにあったとは…」と言いようのない徒労感に苛まれたのを覚えています(苦笑

 まぁそんな私事は置いといて…本作は多くのカンフー映画を監督してきた巨匠・劉家良(ラウ・カーリョン)の主演作で、敵役に韓国出身のテコンドー使い・元振(ウォン・ジン)が配されています。
この凄腕ふたりの大暴れこそが最大の売りといえますが、実際に作品を引っ張っていく主人公は錢嘉樂(チン・ガーロッ)が担当。彼も演技やアクションで八面六臂の活躍を見せていました。

<吼えろウナギ? 起てスコーピオン!>
 まず率直な感想を申しますと、この映画はなかなかに”ヘンテコ”な作品です。
なにしろ主人公が使うのは料理拳にウナギ拳。「名は体を表す」を地で行きすぎるサソリ拳や、それと互角に戦うマッチョマンなど、インパクト抜群の構図が次々と飛び出します。
 物語は、漫画家を夢見る費玉書(錢嘉樂)の妄想からスタート。彼は正義感だけは人一倍強く、身売りされていた小茹(羅美薇)を助けようとして、父親(胡楓)ともども袋叩きにされてしまいます。
錢嘉樂たちは胡楓の友人である阿一(劉家良)の世話になり、彼の営む食堂で働くことになりますが、羅美薇を雇っていた悪党たちの手が伸びてきて…と、ストーリーの方は随分とシンプルです。

 本作の難点はこのストーリー部分にあり、主人公のふたりがアクションを魅せるのは(話の都合により)後半までお預け。錢嘉樂演じる費玉書の成長がやや遅いのも、もどかしさを感じてしまいます。
またラストに関しても投げっぱなし感が強く、「香港映画ならこんなものでは?」という意見もあるでしょうが、少なくとも悪徳刑事(袁信義)がどうなったかは描いた欲しかったところです。
一方、主人公を見返りもなしに庇い、トレーニングや助太刀まで買って出るマッチョマン(陳治良)の聖人っぷりは実に爽快でした(ちょっと「モブサイコ100」の肉体改造部をほうふつとさせます)。

<劉家良VS元振! 新旧アクション俳優のドリームマッチは必見!>
 そんなわけで作品としてはボチボチ…と言わざるを得ないのですが、そんな本作の評価を爆上げしてるのが、先述した劉家良と元振の存在です。
劉家良が演じるのはお得意の師匠役で、その厳格さはやや控えめ。しかし終盤で吹っ切れてからは今までのうっぷんを晴らすかのように拳を叩き込み、三節棍をあやつって大奮闘!
 その熟練した立ち回りは風格すら感じさせますが、そんな彼と互角に張り合うのが超ファザコン男の元振であり、キレッキレの足技でド派手な殺陣を見せていました。
彼の長所は、アクロバティックな動きを替え身なしで演じられるポテンシャルにあり、本作ではサソリ拳という非現実的な拳法を見事に演じ切っています。

 本作のタイトルが元振の演じる役を指している事からも分かるように、まさにこの作品は「元振の実力をプレゼンするための映画」といっても差し支えありません。
長年見たいと思っていましたが、期待以上のアクションを見せてくれて大満足の作品。ちなみに、あまり言及できませんでしたが錢嘉樂もがっつり体を張って活躍しているのでご安心を。でもウナギ拳は流石に…

「冷血十三鷹」

原題:冷血十三鷹
英題:The Avenging Eagle
製作:1978年

監督:孫仲(スン・チュン)
脚本:倪匡(ニー・クァン)
武術指導:唐佳/黄培基
出演:狄龍(ティ・ロン)/傅聲(アレクサンダー・フーシェン)/谷峰(クー・フェン)/王龍威(ワン・ロンウェイ)/高雄(エディ・コー)/他


<ふたりのスターが魅せる!アクションとサスペンスの二重奏!>
 …という訳で、今回から更新を再開します。以前の調子に戻るまで時間はかかるかと思いますが、できるだけ頑張っていきたいと思います。皆さん、どうか今後も当ブログを宜しくお願い致します!
さて一発目の更新は、60年代から80年代にかけて香港映画界でトップレベルの製作会社として隆盛を誇ったショウ・ブラザーズ(邵氏兄弟有限公司)の作品から、数ある傑作のなかのひとつをご紹介します。

 本作の主演は、のちに『男たちの挽歌』('86)で名をはせる狄龍(ティ・ロン)と、28歳の若さで亡くなった悲劇のスター、傅聲(アレクサンダー・フーシェン)がつとめています。
2人ともショウ・ブラザーズでは幾つも主演作を撮っていた名俳優で、狄龍は硬派で真面目な好漢を、傅聲は人懐っこい陽性のキャラクターを得意としていました。
しかし、この作品では2人そろって陰のあるシリアスな役柄を演じており、単なる友情ではない複雑な関係で結ばれた両者が、強大な敵を相手に戦い抜く姿をスリリングに描いています。

 物語はいわゆる「抜け忍もの」で、恐るべき犯罪組織”鉄船幇”から足抜けした殺し屋の戚明星(狄龍)と、彼につきまとう謎の青年・卓一帆(傅聲)が話の中心となります。
逃げた裏切者を狙い、”鉄船幇”から放たれたのは、13人の殺し屋で結成された”十三鷹”と呼ばれる男たち。かつてその一員だった狄龍は、組織を抜ける経緯を語りますが、傅聲は素性を明かしません。
やがて、”鉄船幇”の首領(谷峰)こそが倒すべき敵だと確信した狄龍らは、最後の追っ手(王龍威・高雄ら)を撃退。ついに敵の本拠地へと足を踏み入れますが、そこで明かされた真実とは…?

<功夫アクションはこう魅せる!名優たちと製作陣の職人芸!>
 この作品の売りは主演を飾る2大スターの魅力にあり、狄龍は殺し屋としての宿命に向き合う姿を、傅聲は影のある人物像を見事に演じ切っていました。
ストーリーについても抜かりはなく、狄龍が改心する展開はベターに感じてしまうかもしれませんが、ラストで意外な展開が待ち受けており、強烈な印象を残しています。
 また、作品を盛り上げる一助となっているのが、奥行きを感じるカメラワークです。本作で撮影を担当したのは、のちに『セブンス・カース』('86)などを監督する藍乃才(ラン・ナイチョイ)その人。
スローや画面効果を巧みに使い、上からのショットや立体感のある構図を駆使するなど、平面的にならない画作りが徹底されているのです。

 そんな名カメラマンの援護を受けて作られたアクションの数々は、どれも工夫に富み、ひとつとして同じ立ち回りがない特徴的な殺陣に仕上がっています。
なにしろ、本作の登場人物たちは誰もが特徴的な武器を持っているため、必然的にファイトスタイルの大幅な差別化が図れています。
 とりわけ目を引くのが三節棍をふるう狄龍の活躍で、並みいる強敵たちを見事な三節棍さばき(分離してヌンチャクとしても使える優れもの)で倒していくさまは実に痛快!
時には「実力差のある相手をどう始末するのか?」といった駆け引きもあり、ラストのVS谷峰ではサプライズ展開を交えつつドラマチックな攻防戦が繰り広げられていました。
 監督の孫仲は、ショウ・ブラザーズで武侠片の秀作を手掛けてきた職人監督ですが、本作は間違いなく最高傑作のひとつに数えられる作品であることは間違いありません。
ファンからの人気の高さも納得の逸品。現状で日本版DVDの入手は難しいですが、もし見る機会があれば是非とも目を通しておくべき作品といえますね。

お初の方は初めまして。ご存じの方はお久しぶりとなります、龍争こ門です。


前サイトでの更新停止から7年も経ってしまい、随分とお待たせしてしまいました。
長期にわたりブログが休止状態になったのは、私事が立て込んでいたためです。
長々と説明するのも難なので簡潔に言うと、

・持病を発症して入院・手術(完治済み)
・仕事の転職
・コロナ感染(完治済み)

このあたりの影響が大きかった気がします。
一応、ブログに触れない間も趣味として映画鑑賞は継続していました。
最近では『決戦!九龍城塞』が最高!…でしたが、その話は別の機会にて。
 

当初、gooブログの終了に伴い、前サイトは閉鎖を検討していました。

しかし、長い間運営していたこともあり、愛着があったのも事実…。
というわけで、新天地でもう少し続けてみようと思い立った次第です。

ただ、思い立ったのが本当にここ最近になってからだったので、十分な周知ができず申し訳ありません(汗

新ブログでは新規投稿はもちろん、アバウトな内容のままになっている過去記事の修正なども全面的に行っていくつもりです。
本格的な再開はもう少ししてからになると思いますが、その時はまた宜しくお願い致します。

 

管理人:龍争こ門


「ブラッド・ブラザーズ」
原題:Blood Brothers/No Retreat, No Surrender 3: Blood Brothers/Karate Tiger 3
中文題:親兄弟
製作:1990年

▼独立プロダクションの雄として活躍し、陳星(チン・セイ)や成龍(ジャッキー・チェン)などのスターを育て上げてきた呉思遠(ン・シーユエン)は、80年代の半ばに新たな挑戦を始めました。
まだ香港映画界が成熟期の只中にあった頃、彼は海外市場への本格的な進出を決意。流行をたくみに取り入れ、そこにカンフー映画のテイストを織り交ぜた“香港資本の格闘映画”の製作に着手します。
 『シンデレラ・ボーイ』では李小龍(ブルース・リー)を、『キング・オブ・キックボクサー』では功夫映画タッチの修行を盛り込み、『キング・オブ・キックボクサー/ファイナル』では少林寺を舞台にしました。
そんな中、本作では東洋的なビジュアルを完全に廃し、スケール感の大きなストーリーを設定。『レイジング・サンダー』のローレン・アヴェドンと、キックの世界王者であるキース・ヴィダリを主演に迎えたのです。

■空手道場の指導員であるローレンと、CIA捜査官のキースは不仲の兄弟。今日は元CIAエージェントの父(ジョセフ・キャンパネラ)の誕生会だったが、ここでも口論になってしまう。
だが、その日の晩にテロリストのリオン・ハンターが現れ、襲撃されたジョセフは非業の死を遂げた。ローレンたちは仇討ちを誓うが、両者が手を取りあうことは決して無かった。
 まずキースはCIA本部から「この件から手を引け」と忠告されるが、父の遺した資料からリオンの足取りを掴んだ。この資料を見たローレンは兄を出し抜き、フロリダに飛ぶと密かにテロ組織へ潜入した。
遅れて到着したキースは、元恋人でテロリストの一員だったワンダ・アキューナの力を借り、テロ組織に近付こうとする。その動きを察知したリオンは、新入りのローレンに彼の暗殺を命じた。
 この事態は兄弟の機転によって解決するが、意外な黒幕の登場によってローレンの正体が暴かれてしまった。芋づる式にキースも捕まり、2人は「空港に来るモザンビークの大使を襲撃しろ」と強要されてしまうことに…。
だが、この事件の裏にはアメリカ大統領暗殺と、さらなる陰謀が隠されていた。血を分けた兄弟=ブラッド・ブラザーズは、国家の危機を救えるのだろうか!?

▲実を言うと、本作は私が呉思遠プロデュースの格闘映画で唯一見ることの出来なかった作品でした。このタイトルを探して市外や隣県のレンタル店、ネットの通販やオークションサイト、果ては大阪・東京の中古ビデオ屋まで足を運んだものです。
ところが、必死の捜索にも関わらず『ブラッド・ブラザーズ』は発見できず、もう視聴は無理かな…と諦めかけていましたが、数年前に某氏の厚意により入手することが出来ました。誠に恐縮ですが、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。

 さて作品についてですが、やはり呉思遠にハズレなし! 今回も濃厚な格闘アクションが何度も繰り広げられ、加えて主人公ふたりのキャラクターもしっかり立っていました。
兄弟が仲直りするまでのシークエンスが雑だったり、展開が強引なところも幾つかありますが、全体としては破綻もなく纏まっています。動員されたエキストラやロケーションの規模も半端ではなく、呉思遠の力の入れようが窺えます。
 そして肝心のアクションシーンでは、梁小熊(トニー・リャン)の指導による派手な立ち回りが展開! ローレンのバネの良さ、キースの華麗な蹴りが十二分に生かされており、前半では駐車場での集団戦が印象に残りました。
また、単にハードなだけのアクションに拘らず、時には茶目っ気のあるファイトで息抜きを挟むこともあります(キース暗殺の顛末など)。やや作品のタッチから浮いている感がありますが、これも作品が深刻になりすぎないための措置なのでしょう。
 注目はラストバトルで、ローレンとキースの前にテロの首謀者・リオンとその腹心が立ちはだかります。ここから始まる2VS2の目まぐるしい乱戦、足場を使った立体的な殺陣は、まさに本作最大のクライマックスといえます。
ラスボスを担当したリオンは中国拳法を駆使し、主役2人を圧倒する姿はまさに現代の白眉道人! 決着の付け方だけは不満ですが、実力派のアクションスターを相手に一歩も引かない暴れっぷりは、実に堂々たるものでした。
細かな粗はあるものの、最初から最後まで丁寧に作られている“香港資本の格闘映画”有数の傑作。ぜひともDVD化を望みたいですが…そういえば飛行機に乗せて放置されたモザンビークの大使って、あの後どうなったんでしょうか?(爆


廣東鐵橋三
英題:Cantonen Iron Kung Fu/Iron Fisted Warrior/The Iron Hand Boxer
製作:1979年

梁家仁(リャン・カーヤン)は町の運送屋で働く力自慢の若者。ケンカの腕もめっぽう強く、今日も友人の胖三(パン・サン)や丁華寵たちとダベったり、八百屋の李超(本作の監督も兼任)と腕比べをしていた。
そんな彼らの前に、馬金谷がリーダーを務める謎の一団が現れる。連中は謎の黒幕に命じられ、武術大会を主催して挑戦者を募りはじめた。どうやら誰かを探しているらしく、最近になって町に来た王鐘(ワン・チン)は意味深な反応を見せる。
 案の定、武術大会は馬金谷たちが勝ち続け、挑戦した李超も重傷を負ってしまう。友の仇を討つべく、梁家仁は町の有力者にして武術の達人・王侠のもとで武術の特訓を始めるのだった。
しかし、リベンジしたい気持ちが先走った梁家仁は、修行も満足に受けていない状態で大会に参戦。おかげで強大な馬金谷には歯が立たず、さらには容体の悪化した李超が死亡してしまう。彼は自らの行いを反省し、修行に集中することを誓った。
 一方、武術大会では馬金谷に代わって李登財が挑戦を受けていたが、達人である王鐘の前に完敗する。これを機に馬金谷たちは暗躍を開始し、梁家仁の友人たちが次々と犠牲になっていく(なぜ梁家仁の友人たちが襲われたのかは不明)。
敵の内情を探ろうとした丁華寵が、そして王侠までもが敵の魔手に倒れ、これに気を良くした黒幕・高飛(コー・フェイ)が遂に姿を現した。しかし梁家仁も黙ってはおらず、憎き馬金谷との対決に挑もうとする。
 戦いは一進一退で進むが、そこに突如として王鐘が介入。実は彼こそが馬金谷たちの探していた人物であり、高飛と敵対する存在だったのだ。梁家仁は死闘の末に馬金谷を倒し、本懐を遂げると修行の日々へ戻っていった。
そのころ、王鐘は高飛との最終決戦に臨んでいたが、実力は相手が一枚も二枚も上手。たちまち劣勢に立たされ、助太刀に現れた梁家仁が立ち向かうのだが…!?

 本作は『飛竜カンフー』で監督デビューを飾り、この直後に『必殺のダブルドラゴン』を手掛けることになる李超の監督作です。当時流行していた『酔拳』の便乗作で、実在の拳法家・鐵橋三を扱ったコメディ功夫片として作られています。
このスタッフとキャストなら『必殺の~』と同じハイテンションな快作を期待してしまいますが、実際の作品はわりと大人しめ。笑える描写はそこそこありますが、本筋はシリアスかつ人死にが多いため、コメディとしては微妙な出来です。
 恐らく、監督の李超はストーリーに一捻りを加え、他のフォロワーとは違った作品を目指したのでしょう。しかしこの目論見は裏目に出てしまい、単に物語を解り辛くしただけで終わっています。
思えば、彼は『飛竜カンフー』でもコメディに失敗しており、本作で同じミスを繰り返したことになります。李超もその点は自覚していたらしく、より娯楽性を高めた『必殺の~』で見事に雪辱を晴らしていますが、それはまた別の話…。

 一方でアクション描写に関しては、梁家仁を筆頭に実力派の俳優が揃っているため、平均以上のクオリティは保たれていました。ただ、豪快なムーブで押し切っていた『必殺の~』と違い、ややメリハリに欠けている感があります。
ラストバトルの梁家仁VS高飛も、両者の動きは相変わらず力強さに満ちているものの、本作ならでは!と言えるような個性が感じられません。次回作の『必殺の~』で主役を増員し、解りやすい拳法を用いたのは今回の難点を省みた結果なのだと思われます。
決して完成度は高くありませんが、のちの傑作を生み出すための下地になった重要な作品。本作を見た上で『必殺のダブルドラゴン』を見返すと、また違った発見があるかもしれませんね。