『冷血十三鷹』('78) | 続・功夫電影専科

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。

「冷血十三鷹」

原題:冷血十三鷹
英題:The Avenging Eagle
製作:1978年

監督:孫仲(スン・チュン)
脚本:倪匡(ニー・クァン)
武術指導:唐佳/黄培基
出演:狄龍(ティ・ロン)/傅聲(アレクサンダー・フーシェン)/谷峰(クー・フェン)/王龍威(ワン・ロンウェイ)/高雄(エディ・コー)/他


<ふたりのスターが魅せる!アクションとサスペンスの二重奏!>
 …という訳で、今回から更新を再開します。以前の調子に戻るまで時間はかかるかと思いますが、できるだけ頑張っていきたいと思います。皆さん、どうか今後も当ブログを宜しくお願い致します!
さて一発目の更新は、60年代から80年代にかけて香港映画界でトップレベルの製作会社として隆盛を誇ったショウ・ブラザーズ(邵氏兄弟有限公司)の作品から、数ある傑作のなかのひとつをご紹介します。

 本作の主演は、のちに『男たちの挽歌』('86)で名をはせる狄龍(ティ・ロン)と、28歳の若さで亡くなった悲劇のスター、傅聲(アレクサンダー・フーシェン)がつとめています。
2人ともショウ・ブラザーズでは幾つも主演作を撮っていた名俳優で、狄龍は硬派で真面目な好漢を、傅聲は人懐っこい陽性のキャラクターを得意としていました。
しかし、この作品では2人そろって陰のあるシリアスな役柄を演じており、単なる友情ではない複雑な関係で結ばれた両者が、強大な敵を相手に戦い抜く姿をスリリングに描いています。

 物語はいわゆる「抜け忍もの」で、恐るべき犯罪組織”鉄船幇”から足抜けした殺し屋の戚明星(狄龍)と、彼につきまとう謎の青年・卓一帆(傅聲)が話の中心となります。
逃げた裏切者を狙い、”鉄船幇”から放たれたのは、13人の殺し屋で結成された”十三鷹”と呼ばれる男たち。かつてその一員だった狄龍は、組織を抜ける経緯を語りますが、傅聲は素性を明かしません。
やがて、”鉄船幇”の首領(谷峰)こそが倒すべき敵だと確信した狄龍らは、最後の追っ手(王龍威・高雄ら)を撃退。ついに敵の本拠地へと足を踏み入れますが、そこで明かされた真実とは…?

<功夫アクションはこう魅せる!名優たちと製作陣の職人芸!>
 この作品の売りは主演を飾る2大スターの魅力にあり、狄龍は殺し屋としての宿命に向き合う姿を、傅聲は影のある人物像を見事に演じ切っていました。
ストーリーについても抜かりはなく、狄龍が改心する展開はベターに感じてしまうかもしれませんが、ラストで意外な展開が待ち受けており、強烈な印象を残しています。
 また、作品を盛り上げる一助となっているのが、奥行きを感じるカメラワークです。本作で撮影を担当したのは、のちに『セブンス・カース』('86)などを監督する藍乃才(ラン・ナイチョイ)その人。
スローや画面効果を巧みに使い、上からのショットや立体感のある構図を駆使するなど、平面的にならない画作りが徹底されているのです。

 そんな名カメラマンの援護を受けて作られたアクションの数々は、どれも工夫に富み、ひとつとして同じ立ち回りがない特徴的な殺陣に仕上がっています。
なにしろ、本作の登場人物たちは誰もが特徴的な武器を持っているため、必然的にファイトスタイルの大幅な差別化が図れています。
 とりわけ目を引くのが三節棍をふるう狄龍の活躍で、並みいる強敵たちを見事な三節棍さばき(分離してヌンチャクとしても使える優れもの)で倒していくさまは実に痛快!
時には「実力差のある相手をどう始末するのか?」といった駆け引きもあり、ラストのVS谷峰ではサプライズ展開を交えつつドラマチックな攻防戦が繰り広げられていました。
 監督の孫仲は、ショウ・ブラザーズで武侠片の秀作を手掛けてきた職人監督ですが、本作は間違いなく最高傑作のひとつに数えられる作品であることは間違いありません。
ファンからの人気の高さも納得の逸品。現状で日本版DVDの入手は難しいですが、もし見る機会があれば是非とも目を通しておくべき作品といえますね。