続・功夫電影専科 -162ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「空手ヘラクレス」
碼頭大決鬥/碼頭小子/碼頭龍虎鬥
Chinese Hercules
1973

●タイトルだけなら超有名なこの作品、やっと見る機会がありました。かつて『死闘伝説』に強烈なトレーラーが紹介されていましたこの作品は、李小龍ブームに沸き返る1974年に日本でも公開されています。ちなみに当時は功夫映画の事を"空手映画"と呼んでいましたので、タイトルには作中登場しない空手の名が冠されているということです。ちなみに当ブログでは"空手映画"=千葉真一のカラテ映画で統一しておりますので、ご注意のこと。
さてこの作品、いわゆる『ドラゴン危機一発』形式のものです。ニセ李小龍作品や凡百の低予算カンフー映画にありがちなペラペラの筋書きで、なかなか闘おうとしない主人公が親しい仲間を殺された挙句怒り爆発アイヤー!って展開なのです。特にコレといった見どころもないし、はっきり言ってつまんないです。
主演の陳惠敏(チャーリー・チャン)はお世辞にもカッコいいとは言えない風貌であり、貧相なルックスからは逆に弱々しいオーラが漂ってます(実際はボクシングチャンプだったり他の作品でも良いアクションはしていますが…)。作品自体も貧相で低予算な作りが見え見えで、なにしろ舞台が寂れた港とちっぽけな町のみ!アクションにも思い切りが無く、この作品に楊斯(ヤン・スエ)がいなかったらどうなっていたのだろうと心配にさえなりました。
その楊斯も自慢の筋肉は迫力あるものの、本作での見せ場はそれ"だけ"です。『燃えよドラゴン』ヒットで引っ張られたジム・ケリーが『黒帯ドラゴン』に出演したように、便乗する気満々で作られてるのが明らかです。それにしても、こんな作品でも日本で堂々劇場公開されたのは、当時の熱気溢れる李小龍ブームを象徴する一例とも言えますねぇ…自分も体験したかったです。


截拳鷹爪功
Jeet Kune the Claws and the Supreme Kung Fu
Fist of Fury 3
Chinese Connection 3
1979

▼李小龍の傑作『ドラゴン怒りの鉄拳』には多くの続編・リメイク・偽物・便乗作品が存在する。ジャッキーの『新精武門』、呂小龍の『忠烈精武門』『達摩鐵指功』『火燒少林門』、巨龍の『最後の精武門』、甄子丹の電視劇版とその数は膨大で、『死亡遊戯』と並び李小龍作品ではよく関連作が作られる事で知られている。そして今回紹介する本作は、今まで『精武門續集』と精武門作品に縁のある何宗道(ホー・チョンド)主演の新たな精武門の物語である。
…とまぁ大げさに書いてはいますが、いつもの李小龍バッタもん作品であります(笑

■『怒りの鉄拳』のラストで死んだ陳真こと李小龍の遺影と遺骨を手に、ひとりの男がマカオ(?)の田舎へと降り立った。男はそこでもはびこっていた日本人(この手の作品ではお馴染み魏平澳(ウェイ・ピンアオ)も登場)にケンカを売られるが一蹴する。彼は何宗道…今回は陳真の弟役で、盲目の母とイタズラ好きなお調子者の弟・韓國才の待つ故郷に帰ってきたのだ。…って、何宗道はまだしも、韓國才が李小龍の血縁者とはムリありすぎな気がしないでもないが(爆
何宗道は母と共に李小龍を弔うと、地元にもあった精武門へ挨拶に向かった。そこには道場主の劉鶴年と師範代の唐炎燦(トン・ウェンチャイ!)がおり、道場を切り盛りしていた。だが新参者の姿に唐炎燦はライバル心むき出しだった。一方、魏平澳は日本人の方野(軍関係者でもなければ何かの道場を持っている様子もないが…一体何者?)からある伝言を聞かされていた。
「陳真という男を知っているか?もう死んでるが、上海で俺たちの同胞をずいぶんと手こずらせたらしい。その弟がこの近くに来ているらしい。禍根を断つべく、我々はそいつを抹殺する!」
…かくして、日本人達による何宗道の抹殺計画が行われる事となった。魏平澳は手始めに何宗道の家を襲撃したり、唐炎燦にちょっかいを出したりと動き始めた。その唐炎燦だが、どうやら劉鶴年の娘の事が気になる様子。気になるので四六時中監視し尾行し…ってそれじゃ犯罪だよ(笑)!なかなか想いの伝わらない(当たり前だ)唐炎燦は、酒を煽ったり、大道芸をしている米雪ら親子を襲ったり、何宗道とケンカをしたりと狼藉の数々を行い、劉鶴年からもクギを刺された。
そこに注目した魏平澳は、唐炎燦をこちら側に引き込んでしまおうと画策し、彼の飲んでいた酒にあやしげな薬を忍ばせた。その夜、何故かムラムラして眠れない唐炎燦は魏平澳の言葉もあり、劉鶴年の娘に夜這いをかけた。その際、仰々しい音楽で夜這いに向かう唐炎燦と、黄金の寝間着で寝ている娘さんが爆笑モノだ(笑
結局、劉鶴年に見つかり唐炎燦は破門となる。魏平澳はまんまと日本人陣営に唐炎燦を誘い、改めて何宗道抹殺計画をスタートさせた。その計画の内容は、顔を隠して連続殺人事件を起こし、次に娘さんが何宗道にプレゼントした服を唐炎燦が着て劉鶴年を殺害し、全ての罪を何宗道になすりつける…という、ものすごく回りくどい作戦だった。
作戦は成功し、何宗道は捕まってしまう。その頃、日本人たちの大ボスである谷峰(クー・フェン)が方野たちと合流していた。「何宗道を手筈通りにハメて監獄送りにしてやりまさぁ」と話をしていたが、それを聞いていた米雪親子が舞い戻り、娘さんに何宗道の無実を訴えた。そこへ事実隠蔽をもくろみ唐炎燦が現れ、戦闘となる。誰が正しいのか困り果てた娘さんは、なんと劉鶴年の墓前で自決してしまった(!)。やっと得た娘さんを死なせてしまった唐炎燦の胸中は…。
続いて米雪親子は何宗道を助け、早くこの地を立ち去ろうと持ちかける。最後にひと目母と会ってからと言う何宗道…だが、母と韓國才は日本人たちに殺されていた。怒りに振るえる何宗道は、怒りの鉄拳を振るう!

▲話の方はちょっと寄り道ばかりという印象を受けますが、まぁそこそこといった感じでした。このあと何宗道は方野ら日本人たちを倒し、最後に谷峰との死闘となります…が、ここで大きな矛盾が発生するのです。
というのも、何宗道は母と韓國才を殺したのが日本人とは知りません。そして何宗道は獄中にいたので娘さんが死んだ事も、大ボスの谷峰が現れた事も、唐炎燦が事件に荷担していた事も知らないのです。なのに何宗道は日本人のアジトへとアチャーっと乗り込んでいきます(爆)。この直前まではダメなりに頑張っていた本作ですが、どうしてこんな事になったのでしょうか?
私が思うに、「何宗道の暗殺計画」という物語が進んでいくうちに精武門らしくない展開へと進んでいったので、焦った製作サイドが急きょ精武門らしい展開に持っていった…というのが真相のようです。ではこの矛盾だらけの後始末をどうしたのかというと、それは唐炎燦が死に際に何宗道に詫びるという形で解消する…つもりだったんでしょうが、土手っ腹に日本刀が貫通した状態で延々と喋る唐炎燦の姿はシュール過ぎます(笑
辻褄合わせに大失敗した本作ですが、劇中の功夫アクションは思ったより悪くありません。バッタもん作品にはありがちですが、これだけが唯一の救いかも知れません。あとは要所要所で笑わせてくれる唐炎燦の存在も光っていました(爆


「ストリート・ソルジャー」
「ストリート・ソルジャー/炎の逆襲」
STREET SOLDIERS
1990

●本作の筋書きは、主人公たちタイガース(野球団みたいな名前だが、町の治安を守る愚連隊のような集団)とストリートギャングの一味との血で血を洗う抗争を描いた物語なのだが、作中空手道場の師範として主演し、製作も兼ねたジュン・チョンのおかげか、アクション・ストーリー共になかなかの良作となっている。
アクションはどちらかというと蹴り技中心のテコンドーに近いスタイルなのが特徴だが、本作の注目どころといえば、何と言っても黄正利(ホアン・チェン・リー)が、ジェイソン・ウォン名義で参加している点に尽きるだろう。今回の黄正利はギャングのボスと共に刑務所を出所し、ジュン・チョンらタイガースと戦っていくのだが、やはりその電光石火の蹴り技は凄く、ラストにおけるジュン・チョンVS黄正利の対決は一番の見所と思われる。
話自体は暗くて単調で、『L.A.ストリート・ファイターズ』の時のような泥臭い迫力も薄れ気味だが、他のマーシャルアーツ作品の中では別格のクオリティであり、香港映画に目のなれた人でも満足して見られることだろう。ジュン・チョン関連作はこの他にも『サイレント・アサシン』があり、今後も要注目と思われる。
ところで1つ気になるのが、この時期の黄正利の動向である。黄正利はこの前後に『レイジング・サンダー』『フューチャー・ハンター』といった海外作品に連続して出演している(『レイジング~』は一応香港映画だが)。やはり彼も他のスターのように海外進出を夢見ていたのだろうか?しかし、この4年後に黄正利は韓国映画『ボス』に出演したのを最後に銀幕から遠のいている。彼の映画人生の晩年にあったこの不可解な動きは、果たして何を意味していたのだろうか…?


「フィスト・オブ・レジェンド/怒りの鉄拳」
原題:精武英雄
英題:Fist of Legend
製作:1994年

▼本作はかの李小龍の名作『ドラゴン怒りの鉄拳』のリメイク作品である。『精武門』関連作品といえば、これまでにジャッキーが続編の主人公を演じたほか、甄子丹、梁小龍が電視劇で陳真に扮し、バッタもん李小龍を含めれば相当数になるだろう。
肝心の出演陣は李連杰を筆頭に、かつて『怒りの鉄拳』のオファーを受けながらも出演が果たせなかった倉田保昭、キックボクサー出身の周比利(ビリー・チョウ)、さらに"最後の功夫スター"錢小豪(チン・シウホウ)、ヒロインに中山忍を迎えて単なるリメイクではない様相をみせている。

■物語は日本から幕を開ける。陳真こと李連杰は日本の大学に留学して学業に励んでいたが、倉田さんを通じて師匠の訃報を聞き、一路上海に帰ることになった。
師匠の死因が不確定で、かつ他流試合の最中に倒れたことを怪しんだ李連杰は、その時師匠が戦った相手である芥川さん(演じるは樓學賢(ジャクソン・ラウ)という人)のいる虹口道場へ行くと大暴れを展開。芥川さんは呆気なく倒れ、李連杰は「師匠はきっと謀殺されたに違いない」と確信する。
翌日、警察の立会いのもとで検死解剖が行われることとなり、李連杰は師匠の棺を兄弟子の錢小豪と共に墓から掘り出した。検死の結果は毒殺で、道場の仲間たちは身内の犯行だといぶかしむ。それから李連杰は道場で弟弟子の育成に励んだが、一方でないがしろにされ続ける錢小豪はあまりいい気分ではなかった。
この一連の事件は、精武門を潰そうと企む日本軍の藤田(周比利)の仕業だった。周比利はまず邪魔者の李連杰を失脚させるべく、敗北した芥川を殺害してその罪を彼に擦り付けた。李連杰は仕方なく精武門を去り、日本からやってきた中山忍と掘っ立て小屋で暮らすことになってしまい、錢小豪も李連杰に嫉妬して歓楽街へと走ってしまう。
空中分解状態となった精武門…そこに日本軍から挑戦状が送られてきた。相手はなんと倉田さん!倉田さんは李連杰の元へ向かったが、本当は倉田さんは軍部に肩入れしたくなかったこともあり、勝負は引き分けのうちに終わった。その後、再会した李連杰と立ち直った錢小豪は、打倒周比利のために特訓を開始する。敵は虹口道場にいる日本軍人周比利!二人の前に、とてつもない壁が立ちふさがるのだが…!?

▲まず凄いと思ったのが、ラストの李連杰と周比利の一騎打ちだ。とにかく拳を打ちまくる李連杰だが、周比利は不動!殴っても蹴っても倒れない!お前は怪物か!前哨戦の錢小豪VS周比利も周比利が片手片足しか使ってないで勝ったのもまた凄まじい。倉田さんと李連杰との対決もかなりのもので、年齢を感じさせないスピーディーな、世代を超えたドラゴン同士の対決は一見の価値ありだ。
しかし本作で気になったのは錢小豪の扱いである。張徹作品から新たなスターとしてデビューした錢小豪だが、90年代に入ってからは損な役ばかりな気がしてならない。同じく李連杰と共演した『大地無限』では裏切り者だったし、『セブンス・カース』ではいいところを周潤發に持っていかれ、その後もこれといった代表作がないまま現在に至っている。
どちらかというと兄弟の錢嘉樂(チン・ガーロッ)の方が活躍している気がするし、彼は近年も俳優のみならず監督業へ進出するなど精力的だが、錢小豪については最近活躍は全く聞こえてこない。このまま埋もれるには惜しいと思うのだが…それは錢小豪の今後の躍進に期待しよう。


「ジャッキー・チェンのヤング・タイガー」
「ドラゴン・ファイター」
女警察/師哥出馬/日可出馬
Police Woman/Rumble in Hong Kong
The Young Tiger/Here Come Big Brother
1971

●ジャッキーが駆け出しの頃に出演した作品で、主演は同じ七小福の元秋…そう、『カンフーハッスル』で元華の奥さんを演じていたあの人である。彼女は甘家鳳(フェニックス・キム)の別名を持ち、本作以外では何故か巨龍(ドラゴン・リー)作品などにも出演している。
本作はタイトルにあるようなジャッキー主演作ではなく、実際の主役は『五福星』でおなじみの秦祥林(チャールス・チン)である。脇には李文秦(リー・マンチン)や張午郎なども顔を覗かせており、話は麻薬組織の事件に巻き込まれたタクシードライバーの秦祥林が、刑事の元秋と共に組織をブッ潰すというありがちな話だ。肝心のジャッキーは比較的登場頻度が高い敵のチンピラ役で、最後に秦祥林と一騎打ちを演じて見せている(ナゼか頬に巨大なほくろがついている)。
武術指導は袁祥仁(ユエン・チョンヤン)とジャッキーだが、製作プロダクションの大地影業がめちゃ極小の貧乏会社だった為か、たった2カットのみで続くアクションシーンなど、予算の関係で出来ませんでしたと言いたいような場面が連発していて、かなり物悲しい(爆)。なお、これがジャッキーの初武術指導作品でもある。
大地影業はこれともう一つ日本でソフト化されている『ファイティングモンキー昇龍拳』(同じくジャッキー端役出演作だが、主演っぽく売っている反日映画)を製作し、続いて『死党』なる作品で再び秦祥林を呼んで製作している。その時ジャッキーもそれに端役出演しているらしいが、その出演のきっかけは当時京劇学院から出たばかりで一人つっぱっていた彼に、秦祥林が「もう一回出てみない?」と誘ってきてくれた事が始まりだったという。ジャッキーは彼から「映画館で客の反応を見ることが大切だ」とか俳優として大切な話をしてくれて、今も感謝しているとか。
この情報は芳賀書店発行の「ジャッキー・チェン」という書籍の中で触れられていた話で、秦祥林の人柄が偲ばれる面白いエピソードである。ということは、この2人がのちに『五福星』で再開するのは必然だったのかもしれない。運命とは面白いものですねぇ。

…と、ここでレビューが終わりそうなものなんですが、この逸話にはちょっとした謎が残っています。それは『死党』という作品の事です。『死党』は大地影業制作、秦祥林主演でジャッキーは端役と先の本にもあったんですが、ネットで探してみてもそんな作品は無いのです。
ものの話によると大地影業は上記の『順天立地』と本作を作った後すぐに潰れたという話ですし、秦祥林のフィルモグラフィーを調べてみてもそのような作品は見当たりません。一体『死党』とはいかなる作品だったのか、そもそも存在する作品であるのか否か…まだまだ謎は尽きません。