
「少林寺武者房」
原題:少林與武當
英題:Shaolin and Wu Tang/Shaolin VS Wu Tang
製作:1984年
●劉家輝(リュウ・チャーフィー)がショウブラではない外部のプロダクションで製作した初監督作品である。とはいえ、共演者は王龍威や鄭少秋(アダム・チェン)に李海生などのショウブラ系列のスタッフでまとめられている。印象としては、ミニマムなショウブラ作品といった趣きだ。
少林派(日本版では金剛派)の劉家輝と武當派の鄭少秋は、互いの親が流派違いで対立してばかりだが大の親友だった。しかし少林派と武當派の武術を研究していた清朝の王龍威は技を盗もうと画策。鄭少秋の父を茶会に招待したと見せかけて毒を盛り、鄭少秋の父は自ら鄭少秋の剣に貫かれて死んでしまう。
鄭少秋も投獄されるが、危機を救うべく劉家輝が潜入。彼と同室だった行きずりの女に鄭少秋を治療させて、見事脱出に成功した。劉家輝とその妹、鄭少秋と行きずりの女は逃走を続けるが、劉家輝の妹の勘違い気味の報告によって劉家輝と鄭少秋の間に亀裂が生じ始める。
だが、王龍威軍団の襲撃によって劉家輝の妹が命を落としてしまう。そこに武當派が現れて父を殺した鄭少秋を連れて行くのだが、そこだけ見た劉家輝は武當派が自分の妹を殺したと勘違い。一路復讐のために少林寺へ行き、修行を重ねる。一方、武當派で尋問を受けた鄭少秋も更なる技に磨きをかける。
時は流れ、一流の武術家になった劉家輝は王龍威の親善試合へ出場すべく、李海生と戦いこれを打倒する。そして少林派と武當派それぞれの代表が相対するのだが、武當派の代表は鄭少秋だった…。
正統派の功夫片を次々と打ち出した劉家良、変則的な作品で新たな香港映画を形作った劉家榮ら兄とは違い、この劉家輝の作品作りは至って平凡だ。ラストは駄々っ子の王龍威(笑)を説き伏せ、少林派と武當派が和解するというオチで終わるのだが、王龍威が生きたままだと死んでいった劉家輝の妹と鄭少秋の父が全然浮かばれない気がする。個人的には鄭少秋の話に聞く耳を持たない武當派もヤな感じだったし(理念は解るが、これだと利用されっぱなしで後味が悪い)、だいぶアラも目立った。
修行シーンは『少林寺三十六房』などの焼き増しで、中にはオリジナルそのまんまな修行も登場する。アクションは劉氏兄弟が担当したので文句なしだが、あまり劉家輝監督作としての特色が見い出せず、兄たちの作品へ「右へ倣え」としたようで印象は薄い。
ちなみに冒頭の劇中登場しない謎の男たちによる演舞は、"少林派から独立した武當派の成り立ち"を説明したもの。ここらへんもちょっと劉家良チックな演出でしたね。

「戦神 ムーン・ウォリアーズ」
原題:戰神傳説
英題:The Moon Warriors
製作:1992年
●監督はサモハン!武術指導は元奎と程小東!主演は劉徳華(アンディ・ラウ)!…と、申し分のないスタッフ揃いだったのに、まずまずの結果に終わってしまった作品である。特別悪い出来というわけではないが、この陣容ならば、もう少し面白そうなものが出来たのではと思われる。
国を追われた皇子・鍾鎮濤(ケニー・ビー)は臣下の張曼玉(マギー・チャン)らと共に逃避行を続けていた。彼らを亡き者にしようと企む鍾鎮濤の弟・王宵(ケビン・ウォン)は刺客を放つが、偶然通りかかった漁村の青年、劉徳華に阻止される。負傷した鍾鎮濤を介抱した劉徳華はしばらく一行を自分の村に迎え入れるが、王宵の追求が迫った。
そこで劉徳華だけが知っている洞窟へ隠れたが、そこは鍾鎮濤も知らなかった王の墓だった。このまま留まる訳にもいかないので、一行は村から出立し、隣国の張翼(チャン・イー!)に救援を求む事にした。だがその道中に王宵と交戦となり、なんとか劉徳華と張曼玉が脱出。鍾鎮濤は王の墓へと逃げ延びた。
張翼の元には鍾鎮濤の許婚である梅艷芳(アニタ・ムイ)がいたが、間髪入れずに襲い来る王宵の軍団に一行は散り散りとなり、2人になってしまった劉徳華と梅艷芳は、黒服の刺客に襲われながらも仲間達と合流すべく進んでいく。
黒服の刺客の正体は張曼玉だった。彼女は鍾鎮濤の命を狙うために王宵から遣わされたスパイだったのだが、いつしか鍾鎮濤に情が移り…。一方、ようやく合流できた一行だったが、旅の道中で梅艷芳は劉徳華に心を寄せつつあった。揺れる二人の女は張曼玉が張翼らを殺害したことで対立に発展する。不穏な空気の中、遂に迫った王宵の軍が現れるのだが…。
一見すると一貫した物語のように見えるが、実際はちぐはぐなストーリーだ。序盤の流れで追跡劇かと思いきや、後半から話は王の墓と漁村で戦闘を展開し、梅艷芳たちの恋愛模様も中盤から唐突に挟み込まれる。ご都合的な展開も目立ち、終盤で漁村の人々が皆殺しにされる展開も頂けない。しかもラストはかなり救えないものになっており(悲恋の恋としたかったのだろうが、敵味方共にほぼ全滅という陰惨な結果であるため、成功していない)、サモハン作品としてはイマイチな出来だ。
アクションも元奎お得意のワイワーワークと程小東の重力無視アクションが絡むかと思いきや、蓋を開ければ古装片にありがちな「クルクル舞ってキンキン斬りあう」無個性なチャンバラと化していた。本作独特の要素といえばシャチが出てくることぐらいで、それ以外は当時流行した古装片モノの定番パターンばかり。新鮮味が1つも感じられなかったのは残念でした。
ところで錢嘉樂(チン・ガーロッ)…どこにいたっけ?(爆

黄飛鴻四大弟子
英題:The Four Shaolin Challengers
製作:1977年
●黄飛鴻とは、香港映画ファンにとっては説明不要の中華英雄である。その下には5人の弟子たちがいて、黄飛鴻と共に幾度も銀幕に姿を現している。梁寛を筆頭に、肉屋の林世榮、凌雲楷、出っ歯の暴牙蘇、鬼脚七らは、それぞれ名だたる演者たちが扮してきた。そして今回のこの作品はその弟子たちが活躍する物語である…とは言っても、タイトルにあるとおり1人だけ(暴牙蘇が)戦力外通告をされる事になるのだが(爆
本作で登場する弟子たちを演じているのは李錦坤(ラリー・リー)、梁小龍(ブルース・リャン)、白彪(バイ・ピョウ)、黄元申(ウォン・ヤンスン)という、豪華なのか地味なのか微妙なメンバーだ。というか、いつもデブな人が扮している林世榮を李錦坤が演じている点が納得できないような…(林世榮はサモハンや呉明才などといった太目の人がよく扮する)。
ちなみに主役格の出演者の中で1人だけよく解らない人がいる…李錦坤だ。梁小龍は言わずもがな、白彪や黄元申は日本公開作もある中で、ただ1人この人だけは詳しい事が不明なのだ。しかもトビー・ラッセルの『死闘伝説TRUBO!!』では「ブルース・リーの跡継ぎになれたかもしれない人」として大フューチャーされて紹介されている。恐らくは海外で人気があるのだろうが、気になるところである。
話は、黄飛鴻門下である李錦坤の道場が悪党どもに悩まされていて、彼を助けに梁小龍・白彪・黄元申たちが立ち上がるというもの。黄飛鴻があまり出てこないところを見ると、本作は4人の弟子たちがそれぞれ独立した後のことを描いているのだろうか?
物語はその後、敵の親玉であるヒゲオヤジが4人の助っ人(リーダー格が『激突!キング・オブ・カンフー』で高雄の道場破りに来た男)を呼び、最終的に全面対決となる。しかしこのクライマックス以外は、本作のアクションは総じてあまり良い出来ではないのだ。
もともと全体的に功夫アクションも少なめな本作は、ストーリーもこれといったインパクトは無く進んでいく。しかしメインとなるのが黄飛鴻の4大弟子なんだし、アクションを控えめにしたせいで本末転倒な結果に終わってしまっている。その代わりクライマックスでは各人とものびのびと激闘を繰り広げているが、これもちょっと長いような気がする。要するに本作は、功夫アクションの配分が悪かったというところだろう(武術指導は黄梅と黄志強)。
味付け次第では大化けした可能性もあっただろうが、残念ながら佳作止まりか。

「必殺4 恨みはらします」
英題:Sure Death Revenge 4
製作:1987年
●藤田まこと主演の人気時代劇、『必殺仕事人』の劇場版第4作である。とは言っても、私自身はあまり『必殺』シリーズは見た事がありませんが、千葉真一や真田広之らJAC勢が参戦しているとあらば見逃せない!…という事で視聴に至った訳です。
前評判は賛否両論でどんな作品かよく解らなかったが、藤田の組する番所に新たな奉行、真田広之が就任するところから物語は幕を開ける。時を同じくして、旗本愚連隊というラリった連中のバカ騒ぎに巻き込まれ、傘作りの老人が暴れ馬から子供をかばって死亡するという不幸な事件が発生した。
ちょうど倍賞美津子に会っていた(密会していた)藤田は事の騒動を目撃するが、そこには奇妙な手裏剣が…?その後、仕事人に長屋の者から当然の如く「旗本愚連隊を始末して欲しい」と依頼が来るも、そこに現れたのは流浪の仕事人・千葉真一だった。ターゲットを巡って小競り合いを続ける藤田と千葉ちゃん。だが、この事件の裏には真田広之の黒い陰謀が渦巻いていた…。
『必殺』シリーズには馴染みのない自分ですが、本作において藤田以外の仕事人がほとんど見せ場がない事が気になりました(多彩なキャラクターが特徴の仕事人シリーズでこれはどうなのだろうか?)。そして倍賞美津子が藤田に復讐心を煽る為だけのキャラクターにしか見えなかったが、まぁこれは復讐の物語である『必殺』シリーズとしては当然のことかと思われます。
そしてアクションだが、JACの派手な殺陣が祟ったのか作中では吹き替えスタントが多用されていた。しかもかなり解りやすいスタンドインで、特にクライマックスでは藤田まことのアクションのほぼ8割が吹き替えによるものとなっている。スタント多用についてあれこれ言う事はないのだが、問題はその隠し方だ。
例えば、『酔拳』で袁小田(ユアン・シャオティエン)もスタントを使用している。こちらも高い割合で吹き替えがされているが、武術指導を担当した袁和平の隠し方は上手く、初見時はまるで袁小田が全部やっているような錯覚を受けた。しかしJACの隠し方は暗い場所で殺陣を展開したりするかなり苦しい隠し方だ。やはり、ここは経験の差が出てしまったというべきなのだろう。
本作は吹き替えのごまかし方は微妙だったが、そのアクションについては(スタント込みで)かなり迫力がある。ラスト手前での千葉真一VS蟹江敬三は無人となった長屋をブチ壊しながら縦横無尽に駆け巡る激しいバトルを披露。これは間違いなく『将軍家光の乱心 激突』の緒方拳VS千葉真一のプロトタイプだ。よくよく考えると『激突』では緒方拳らスタントの隠し方にも進歩が見える。あの大作は本作の経験が生かされた末のものだったのだ。
続く藤田まことVS真田広之という異色の対決は結末が残念だが、これは『リーサル・ウェポン4』のメル・ギブソンVS李連杰と同じく、「どう考えても勝てないからこの方法しかなかった」という制作側の声が聞こえてきそうな気がする(実際は役者のスケジュールが合わなかったための苦肉の策らしい)。
しかし演技面では、千葉ちゃんは外道な暗殺者と思わせておいて深みのある仕事人を演じ、真田は最後に強烈な正体を明かす事でインパクトを残している。全体の感想としては、個人的にはそれほど悪くなかったといった感じか。ここから更に体当たりアクションへと向かい『リメインズ』に繋がる事を考えると感慨深いです。
それにしても『魔界転生』といい『吼えろ鉄拳』といい…成田三樹夫はよく真田さんに殺されますねぇ(笑

名單/黒名單
英題:Black List/Ninja Heat/Ninja Terminator
製作:1972年
●かつて、ショウ・ブラザーズでしがない中堅俳優としてくすぶっていた陳星(チェン・シン)は、呉思遠と出会って『蕩寇灘』『餓虎狂龍』『猛虎下山』等の作品で才能を開花させ、一躍功夫スターとなった。その後も渋い顔立ちとマッチョな体格から繰り出される力強い技の数々は、多くの功夫映画に足跡を残している。
『新精武門』でジャッキーと闘い、『怒れるドラゴン・不死身の四天王』ではジミー先生を差し置いて鹿村泰祥と激突を繰り広げ、日本でもそこそこ知名度のある陳星…本作はそんな彼が最も輝いていた時期に作られた作品で、自身のイメージにぴったりの無骨な作りとなっている。
ひとり刑務所を後にした陳星。そこに弟の于洋(ユー・ヤン)が現れる。于洋は「アニキはハメられたんだ!アニキを刑務所に放り込んだ連中はこいつらだ!」と陳星に訴える。于洋から手渡された紙には于洋が洗い出した幾人かの敵の名前があり、陳星は怒りに震えつつ自分を刑務所送りにした悪党どもに復讐を誓うのであった。
出だしは、陳星の標的となる面々が顔見せがてらにアクションを披露するのだが、その顔ぶれもなかなか渋い面子ばかり…というか暑苦しい連中ばかりだ(爆)。オープニングの登場順に陳惠敏(チャーリー・チャン)、山怪(サムソン・カイ)、方野、陳元(チェン・ユアン)らが現れ、視聴者にその実力を見せつけていく。ターゲットはこの4人…陳星は于洋と共に死出の旅路に出立した。
最初に陳星らは山怪を撃破し、陳元も根城であるビリヤード場に踏み込んで仕留めた。陳惠敏は先手を打って陳星を捕らえるが、脱出を許し逆襲を受けて倒れた。残るは陳星の恋人を奪った方野のみだが…?
絡み役には李文泰(リー・マンチン…山怪の手下でバーテン役)、李家鼎(リー・ガーデン…陳元の手下)、陳流(陳惠敏の手下)、更には梁小龍(ブルース・リャン…山怪の手下としてクラブの乱闘に参加)まで登場していてなかなか豪華。梁小龍についてはいまいち確かではないが、陳惠敏や陳元や李家鼎ともども、陳星の『餓虎狂龍』で共演しているので、その縁でちょっとだけ本作に出演したのではないかと思われる。
アクションは制作年代を考慮しても結構な出来映えで、ストーリーも単なる復讐劇ではなく西部劇タッチのハードボイルドな作風だ。悪役に対しての扱いも含めて興味深いものがある(形はそれぞれだが敵にも守るべきものがあり、みんな最後はそれに手を伸ばして死んでいく…まぁ元ネタはありそうですが)。根本こそ『太極八蚊』『胡惠乾血戰西禅寺』と同じ"辻斬りの旅"なので至極単純ではあるが、要は味付け次第ということですね。
なお、上記画像は本作のものですが、内容と全然関連性がないバカジャケでして…まぁ言わなくても解りますね?(爆