
「リング・オブ・ファイア/炎の鉄拳」
Ring of Fire 2 Blood and Steel
1992
●B級マーシャルアーツ映画お馴染みの顔、ドン・"ザ・ドラゴン"・ウィルソンの主演作である。レンタルビデオ店でB級アクション映画を探していると、イヤでも覚えてしまうようなクセのある名前が特徴だ(笑)。実際にもマーシャルアーツのチャンピオンで、少し昔の格闘技雑誌などに名前を見つけることができる。
絵に描いたようなベタベタで結婚を控えていたドンとヒロインが宝石強盗に遭遇する場面から物語は始まる。現場に居合わせたドンは強盗の一人を得意の格闘技で取り押さえるが、その混乱の巻きぞえでヒロインが負傷する。
強盗たちは病院に収容された仲間を奪還しようとするが、同じ病院にヒロインを入院させていたドンと鉢合わせ、今度は強盗のリーダーが逮捕される。だがその後リーダーは脱走し、ヒロインは誘拐されてしまった。ドンはヒロインを救うべく、敵が潜む地下へ仲間と共に突入したが…。
なんとなく派手なカースタント、安上がりな舞台や衣装、貧相な設定…まさにB級アクションの王道をつっ走る本作だが、もっと問題な事があった…肝心のドンがアクションでぜんぜん動けていないのだ!一挙一動がいちいち動作を止めているので非常に遅く見え、むしろ敵のザコの方がいい動きをしていたたので、いつドンが負けるのかと別の意味でハラハラした(苦笑
ドンの仲間たちもそれぞれその筋の格闘技チャンピオンらしいが、誰一人してドンと同レベルで(エリック・リーの三節根捌きはボチボチか)、もしかしたら殺陣師が悪かったという考えもありうるので、一概にドンをドン臭いと断定するわけにはいかないけど…。
ストーリーはこの後たいした起伏も無いまま、地下でドンが次から次へと(自分より動きがいい)敵を倒していくだけの寂しいシーンが淡々と続いていくもので、睡魔が襲いくること必至。これじゃあ『キング・オブ・キックボクサー2~4』も期待できなさそう…。

「レイジング・サンダー」
中文題:綻親阡/紅克星
英題:Raging Thunder/No Retreat, No Surrender 2/Karate Tiger 2
製作:1988年
▼(※…中文題の"阡"はこざとへんに朱という文字でしたが、変換できないので別字にしてあります)
今作の製作はシーゾナルという事で、呉思遠が製作総指揮、主演は以前にも紹介した『キング・オブ・キックボクサー』で呉思遠と組んだローレン・アヴェドン、そして白人レディ・カンフースターの代表格であるシンシア・ラスロックが出演しいる。
シンシアはその昔、同じく呉思遠の手による白人マーシャルアーツ映画『シンデレラ・ボーイ』のオーディションに現れ、その技量で呉思遠を感嘆させたという逸話をどこかで聞いた。この事がのちに彼女を『レディハード/香港大捜査線』で香港映画にデビューさせるきっかけとなったらしいが、ジャッキーや袁和平を一流に育て上げた名匠・呉思遠がこの逸材を放っておく筈がない。今回彼女がこの作品に出演したのはその縁故だったようだ。
一方、敵サイドには『南拳北腿』以来のシーゾナル常連・黄正利(ウォン・チェン・リー)が出演。そのスケールと迫力、加えて見事な功夫アクションから、私としてはシーゾナルの白人クンフー映画では一番の傑作と思っています。
■主人公のローレンはベトナムの億万長者の娘であるヒロインを訪ねてベトナムの地を踏んでいた。ローレンがここに来た目的は、他にもベトナム戦争帰りの兵士だった友人にも会う予定があった。
友人を訪ねて道場でシンシアと対決したりしながら、ようやくヒロインと会えたローレンは、お互いの将来を誓い合い幸せの絶頂だった。しかし、二人の幸せは突如彼女を誘拐した謎の一団によって打ち砕かれることとなる。
その裏にはソビエト政府が企む国家的陰謀が隠されており、誘拐されたヒロインを救うべく、ローレンはベトナム帰りの友人とシンシアを仲間に加え、巨躯の将軍マシアス・ヒューズとそれに従う黄正利が待つ密林へと向かうのだが…?
▲ストーリーは当時『ランボー』で流行った"ベトナム帰還兵もの"の流れを組む内容であるが、爆破シーンやスタントのレベル、そしてアクションシーンにおいての監督・元奎(ユン・ケイ)の技量は賞賛されるべき出来上がりで、ラストのローレンVsマシアス・ヒューズの対決は、個人的にはローレンのベストバウトだと思っている。私としてもこういった白人マーシャルアーツ作品にありがちな"トロい"アクションが少ないのでスッキリ見ることができて満足。不満があるとすれば黄正利の扱いが気になりもしたが、なかなかの秀作でした。
気になったこととしては、製作や脚本に『蛇拳』『死亡の塔』で呉思遠作品に縁のある白人カンフースターのロイ・ホラン(彼は本作中にもチョイ役出演)が一枚噛んでいる事だ。作中彼の意見がどの程度作品に反映されたのだろうか?

廣東十虎與後五虎/廣東十虎與役五需/廣東十虎
Ten Tigers Of Kwang Tung/Ten Tigers From Kwangtung
1980
▼広東十虎…それは黄麒英、鐵橋三、蘇乞兒、譚敏、鐵指陣、蘇黒虎、黄澄可、王隠林、黎仁超、鄒宇昇らの事だ。それぞれが類稀なる拳法の使い手であり、様々な形で功夫映画に軌跡を残している。
有名どころを挙げれば、黄麒英は黄飛鴻の父。蘇乞兒といえば『酔拳』の袁小田おじいちゃんで名を知られている。本作はその広東十虎の物語で、狄龍(ティ・ロン)に傅聲(フー・シェン)を筆頭に"五毒"の全メンバー、韋白(ウェイ・パイ)や銭小豪(チン・シュウホウ)、さらに後期張徹作品の常連である王力と龍天翔らを加えて、オールスター作品ともいえる陣容となっているのだ(それにしてはスケールが乏しいけど)。
■賭場にやって来た王力は、どうやら陳樹基演じる梁小虎と共によからぬ企みを考えている様子だ。その側でバカ騒ぎをやらかしていたのが龍天翔・銭小豪・蕭玉・陳漢光・林志泰で、彼らがタイトルの"後五虎"、広東十虎の弟子たちだ。早速その場で林志泰が殺られ、その横には血文字で「梁恩貴の息子、梁小虎が父に変わって仇討ちを」…というメッセージが?
…物語は数年前にさかのぼる。反朝を志す革命家・谷峰(クー・ファン)は作戦に失敗して逃走中の身。名前を変えるなどして逃げていたが、清朝の将軍・梁恩貴こと王龍威(ワン・ロンウェイ)に追われていた。そんな彼を助けたのは狄龍演じる黎仁超。反清の志である谷峰を国外へと脱出させるため、狄龍は谷峰の逃亡を手助けする。傅聲演じる譚敏や、韋白演じる黄麒英と狄威(ディック・ウェイ)演じる黄澄可も合流した。
さらに孫建(スン・チェン)演じる王隠林や鹿峯(ルー・フェン)演じる蘇黒虎を仲間に引き入れるために傅聲が彼らと闘うのだった。それにしてもこの傅聲Vs五毒…今まであったようで無かった対戦だ。傅聲が張徹映画で共演するにしても郭振鋒(フィリップ・コク)ぐらいが打倒で、しかも毎回仲間同士なので対戦もそんなに無い。そこに今回の五毒との対決は中々嬉しい巡りあわせだ。
このあと江生(チャン・ジェン)とも対決する傅聲だが、残念ながら1人だけ…羅奔(ロー・マン)とだけは本作中で手合わせが実現していない。こちらは傅聲Vs五毒の本格的邂逅となる『唐人街小子』まで持ち越しとなるが、それはまた別の話…。
ここに谷峰脱出のために広東十虎のうち6人までが集結。だが、対する王龍威側も決して手を拱いているわけではなかった。不自然な広東十虎の集まりように何かを感じ取った王龍威は、彼らに残りの広東十虎をぶつけることを考えつく。郭振鋒演じる蘇乞兒と楊熊演じる鐵橋三、江生演じる鄒宇昇、羅奔演じる鐵指陣らを騙し、同士討ちを仕組んだのだ。しかし『酔拳』いらい蘇乞兒は大酒飲みってデフォルトなのだろうか?本作でも郭振鋒はガブガブ飲みまくってます。
その後どうにか谷峰の仲裁で誤解は解け、10人は王龍威を倒すために一致団結。待ち構えていた敵勢と入り乱れての闘いは大混戦の様相を見せたが、最後は狄龍が王龍威の頭を砕いて倒したのだった。
…話は戻って、王龍威の仇をとるために行動を進める王力と陳樹基。蕭玉は王力のチエの輪と隠し武器に、陳漢光は陳樹基のだまし討ちに命を散らしてしまう。残る龍天翔と銭小豪、近づく陳樹基を敵と悟っておちょくりまくり、功夫鍛錬と称してボコボコにした挙句にブチ殺すのだった(どっちが悪党なんだか…)。
残った2人は師匠の郭振鋒と鹿峯の指示で動いていたが、王力の仲間の関鋒も姿を現して激闘が開始される。さらに師匠2人も加勢し、死闘の幕が上がった!
▲張徹がやりたかったことはなんとなく解る。『少林虎鶴拳』で劉家良は親子2代にわたる復讐劇を描いたが、本作では師と弟子の2代にわたる因縁の決着を描いたものなのだ。しかし張徹がよく使うフラッシュバック形式にしたのが不味かった。これでは完全に独立した形の物語が平行して進んでいるかのようではないか!まるでフィルマーク…とまでは言い過ぎだが、ニコイチ映画のようにも見て取れる。
狄龍が出てくる過去の雰囲気は『少林寺列伝』に近く、本作のほとんどを占めている事で印象深いものになっている。銭小豪らが出てくる現在は次々に仲間が殺され、残酷なシーンもあったりして、まるで五毒作品のような雰囲気を感じさせる。はっきり言ってこの二つの部分は、ほとんどテイストが違うといってもいいのだ。
これがちゃんと時系列になっていて、ストーリーも都合のつくものだったらかなり面白くなったのではないだろうか?功夫アクションに限っては、どちらのパートも満足できるものだったのだが…。

「花嫁はギャングスター」
我老婆係大[イ老]
My Wife is a Gangster
2001
●最初から最後までどこを楽しめばよかったのか理解に苦しむ作品だった。
いきなり結論から言ったが、本作の問題は主人公の性格設定にあったと思われる。
ストーリーは韓国ヤクザの女ボスである申恩慶(シン・ウンギョン)がガンに侵された姉から「死ぬ前に貴女の花嫁衣裳が見たい」という言葉を受け、結婚を決意する。しかし生まれながらに血で血を洗う任侠の世界に生きていた申恩慶には女らしさの欠片も無く、オマケに敵対組織も動いてくるわと、果たして一体どうなるか…というもの。
話だけを聞けば恋を知らない姉御が右往左往するコメディと思うかもしれないが、やたらアクションシーンが血生臭くて凄惨だわ(武術指導は『無問題2』でユンピョウと闘った大韓ファイター・元振(ウォン・ジン))、肝心の恋愛過程も申恩慶のキャラが冷徹すぎてちっとも感情移入できない始末だ。
申恩慶はその後中年オヤジの朴相勉(パク・サンミョン)と結婚する。朴相勉は相手が怖い女組長とは知らないで結婚させられたので、以降かなりヒドい扱いを受ける事になる。一応表面上はコメディのような筋立てで話は運ぶものの、新婚初夜を拒否されたかと思うと今度は無理矢理組み敷かれたり(姉が今度は「貴女の子供を見たい」と言ったため)、全然笑えない。
この他にも先述の過程でエロい(悪く言えば下品な)描写もあったりと、ドン退きする要素満載だ。
できるならもう少し申恩慶のキャラクターを砕けたものにして、戸惑ったり困ったりといった人間的な表情を見せる場面ぐらいあったなら感情移入できただろう。あるいは冷酷だった申恩慶が結婚を機に人の情に触れ、次第に感情に変化が…という話もありえたと思う。でも、それでは組長という設定に説得力が…う~ん。
私が主人公の設定がダメだと思ったのはそういう原因がある。同じような原因で損をしている作品には『ワンチャイ天地雷鳴』『ドラゴン電光石火98』『新・少林寺三十六房』などがあるが…なぜかドニーの作品が多いな。
演出次第でもうちょっとどうにかなったかと思う作品。続編も作られたが、果たしてこちらは…?

通天老虎
The Master Strikes
1979
▼程小東(チン・シウトン)…個人的に、私はこの人のアクションはあまり好きじゃありません。
確かに『ドラゴン・イン』『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』等で見せたワイヤーアクションの数々は幻想的で素晴らしいものだと思っています。しかしあまりにもピョンピョンと空を舞うせいで、そのアクションに「重さ」が感じられないのです。功夫アクションには流れるような素早さも大事ですが、それ以前に力強さを見せられる「重さ」が無いことには、アクションがどうしても軽く見えてしまうのです。
はっきり言うと「ワイヤー多用し過ぎ」ということなんですが、今回紹介するこの作品は程小東が功夫スターとして主演したもので、つまりは彼のワイヤーを多用しない頃のアクションが拝めるとあって、その存在を知った頃から気になっていた作品のうちのひとつでした。
監督及び製作はあのジミー先生の傑作『戦国水滸伝/嵐を呼ぶ必殺剣』を生み出した高寶樹(カオ・パオシュ)というお方。共演には凄腕テコンドーマスターの[上下]薩伐(カサノバ・ウォン)、『龍虎門』の孟元文が控え、傑作功夫映画として評価が高いとの事ですが…??
■ある屋敷に拳法家の[上下]薩伐が呼び出されてきた。そこの旦那様である任世官(ジェン・シークン)は大事なヒスイの像を警護してほしいと依頼するが、実は[上下]薩伐は極度の心配性男だった。寝ても覚めてもヒスイの像が入った箱を手放さなかった[上下]薩伐だが、数日後に任世官へ箱を返してみると、なんと中のヒスイの像が消えている!?
途方に暮れる[上下]薩伐は飲み屋で酒をあおっていたが、そこで孟元文と程小東(若い!)に出会った。孟元文と程小東は博打大好きなボンクラコンビで、武術の腕はそこそこあるらしい。
ところが、唐突に始まった乱闘のさ中に孟元文がなぜか大回転!それを凝視した[上下]薩伐は何とパーになってしまった!話を聞いた孟元文は「任世官がイカサマ使ってすりかえたんだよ!」と看破するが、あまりの心労から[上下]薩伐は完全にパーになってしまう。
ボンクラ2人は[上下]薩伐をほっといて(笑)金になりそうなヒスイの像の話に飛びついた。まず2人が向かった先は任世官の屋敷だが、そこには高雄(エディ・コー)の一団がいた。高雄らもまたヒスイの像を狙っており、次から次へと骨肉の裏切りバトルが展開される。孟元文と程小東は任世官の執事だったオヤジからヒスイの像のありかを聞き出そうとするが、そのオヤジも任世官の仲間に殺され、その仲間も同じように口封じで殺されてしまった。
アテもなく道中をさすらう2人は、腹が減ったので道端にいた酔っ払いジジイから酒を奪おうとしたが、コメディ功夫片だと酔っ払いジジイ=超強いというのは世の常で、逆に2人はボコボコにされてしまう。
無計画なボンクラ2人は、なぜかこのジジイに弟子入り志願をする。1回のレッスンにつき酒1タルの授業料を要求され、せっせと酒屋から酒を盗み出していく(笑)。結局、ボンクラ2人は修行が終わる前に出て行ってしまい、今度は路上でインチキ賭博で儲けようとした。
次に2人は[上下]薩伐から情報を聞き出そうとしたが、相変わらずパーなので話が進まない。話が進まないのをいいことに娼館でのぞきを繰り返すボンクラ2人…ていうか、頼むから話を進めてくれ!
そんな2人をよそに、任世官は[上下]薩伐の暗殺を企んで3人の刺客を送りこんだ。なんとか返り討ちにした2人は任世官の企みを知る一方で、高雄は任世官&裏切った相棒の女と闘っていた。任世官はヒスイの像を独り占めするべく、高雄と女を殺す。
そして遂に(?)対決の時!孟元文と程小東Vs部下を引き連れた任世官との熾烈なバトルが繰り広げられる!パーな[上下]薩伐は相手の区別なく襲ってくるのでほとんど三つ巴状態だ(笑)。このトンチキなバトルを制し、最後に得をするのは誰だ!?
▲まず本作には大きな欠点が2つあった。具体的に任世官が何を狙っているのかがよく分からなかった事と、主役である孟元文と程小東の行動があまりにもバラバラだった事だ。
前者は字幕無しのVCDだったのでよく掴めなかったが、問題は後者。この直前に主人公が2人という同じシチュエーションの傑作・『識英雄重英雄』を見ていたせいか、目的が不明瞭でやりたいほうだいやっているこの2人のせいで物語が進まないように見えた。『識英雄重英雄』の梁家仁&高飛コンビも多少の寄り道はしていたが、こちらの孟元文&程小東コンビは寄り道しすぎで全体の統一性に欠けてしまっているのだ。
『識英雄重英雄』とはストーリーの構成で一歩先んじられたような本作だが、ではダメなのかと言うとそうでもなく、功夫アクションはこちらが一枚上手といった感じだ。特に暴走機関車状態で電光石火の蹴りを放つ[上下]薩伐が凄く、主役の2人も見事な立ち回りを見せている。ラストなんかもうムチャクチャで、パーの[上下]薩伐は誰彼構わず蹴りまくるわ相変わらず任世官は強いわと大乱闘!
特に理由も無く繰り広げられるその他の功夫場面も素晴らしいし、本作はこの激しいアクションによって救われた感がある。こりゃあすごいぞ程小東!なのにどうしてワイヤーの方へ行ってしまったのだろうか…?もっとこちらの肉弾戦を膨らませていれば、これはこれで良質のスタイルが確立できたと思うのだが。