『四大跛拳』('79) | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。

四大跛拳
別題:四大殘拳
英題:The Four Invincibles
製作:1979年

監督:鍾國仁(本作では華仁名義)
武術指導:韓國材(ハン・クォツァイ)/宋金來
出演:谷峰(クー・フェン)/韓國材(ハン・クォツァイ)/宋金來/杜少明/黄杏秀(セシリア・ウォン)/鄭麒膺/他



<単なるエピゴーネンか、それとも…? 脇役俳優たちの奮戦記!>

 まず最初にぶっちゃけてしまいますが、この作品はかなりクセのある代物です。
物語は、邪悪なカンフー道場によって盲目・聾唖・隻腕にされてしまった3人の若者(杜少明・韓國材・宋金來)が、くだんのカンフー道場から追放された師範(谷峰)に鍛えられ、復讐を遂げるというもの。
この”ハンディキャップを抱えた4人組によるリベンジ”というストーリーは、あきらかに『残酷復讐拳』('78)からコンセプトを拝借しており、演出には『酔拳』('78)の影響も見られます。

 しかし、修業が始まると思ったら敵を追い払う仕掛けを作るだけの無駄なシーケンスや、主人公たちのせいで村娘が犠牲になるくだりなど、印象のよろしくない展開が多々あります。
キャスト面では、主演級のスターを配置せず、あえて脇役俳優たちをメインに据えた大胆な試みがなされています。が、ストーリーが凡庸な本作では役者陣を上手く活かせておらず、どうにもパッとしません。

 その一方でアクションはそれなりのレベルを保っており、ふだんは脇役に徹している俳優たちが大手を振って活躍しているさまは中々に新鮮です。
終盤ではラスボスの鄭麒膺、その娘の黄杏秀(実は谷峰の娘)も加わり、盛り上がりを見せたところで主人公たちの切り札・”四大跛拳”が炸裂します!
 この”四大跛拳”、どんな技かというと…なんと知●●●者の動きを模したデンジャラスすぎる拳法(本作のポスターなどで谷峰たちがしている謎ポーズがこれ)なのです。

香港映画には、他にも同じようなモチーフの拳法を扱った『大殘拳』('80)のような作品もありますが、こういうネタを堂々と扱えてしまえるあたり「やっぱ香港映画ってすげぇな…」と改めて痛感しました(汗

……と、話をここで切り上げてもいいのですが、この作品にはもうちょっと込み入った事情があったりします。

<あの拳法は実在した!? 「洪佛派」の宗師たちと”四大跛拳”>

 本作は英題で画像検索するとロビーカードなどがヒットしますが、その中に”白毛照宗師”や”洪錦培師傳”といった人物の名前が列記されています。はたしてこれは誰なのでしょうか。
調べたところ、彼らは洪家拳と佛拳の流れをくむ「洪佛派」の歴代宗師で、映画人ではなく本物の武術家。白毛照は六代目の宗師で、またの名を洪照成といい、1921年に中国から香港へと移り住んだそうです。

 その洪照成が身障者のために作ったのが”四大跛拳”という拳法だそうで…要するに本作、実在の武術(!)を映画的な誇張を加えて描いた作品なのです。
洪錦培は八代目の宗師にあたり、80年代に日本のテレビ番組(!!)に出演して1分間に238発の拳打を放ったという逸話をもち、”四大跛拳”で検索すれば彼自身による演舞の映像も見つかります。
その中で見せる動きは本作の終盤で谷峰たちが見せた拳法に近く、本作が実は忠実なアクション設計を試みていたことが分かります。

 確かに、本作そのものは取るに足らない作品かもしれませんが、その陰には実在する中国拳法の秘術があった――
ひょっとすると、今までイマイチと断じていた数々のカンフー映画にも、こうした意外な背景が存在するのかもしれません。

 

 ところで、作中で谷峰を叱咤して”四大跛拳”を伝授する老師を演じたのは、一部資料だと石天(ディーン・セキ)となっていますが、データベースサイトによってその扱いはまちまち。

IMDbでは出演していると表記されている一方、HKMDBに石天の名は未記載だったりと、サイトによって判断が割れています。老人メイクで顔が分かりづらく、実を言うと私にも判別がつきませんでした(爆