一本未完的漫畫
英題:Fatal Comic
製作:2002年
監督:胡家勤
脚本:梁志明
武術指導:陳耀倫
出演:釋小龍(シク・シウロン)/江止[女尼](”止”は草冠が付くのが正字)/姜皓文/麥德羅(マック・タックロー)/他
<未完のマンガをめぐる物語? 元子役スター・釋小龍のチャレンジ!>
今回は前回に引き続き、マンガに縁のある作品をご紹介します。と言ってもマンガの実写化作品ではなく、タイトルになっている”未完成のマンガ”がキーワードとなる、ちょっと変わった作品です。
主演は、名子役として活躍した釋小龍(シク・シウロン)。かつては『チャイナ・ドラゴン』('95)などで名をはせたものの、本作当時の時点で14歳…さすがに昔の演技で通すのも難しくなる頃合いです。
いかにして子役から俳優へ脱皮すべきか――まさに過渡期のまっただ中にあった釋小龍ですが、じつは2003年から2008年の間に2度の海外留学を経験し、その間は俳優業を中断しています。
この作品は1度目の活動中断前に撮影された作品のひとつで、フィルム撮影ではなくビデオ撮りで製作されています。
主人公である中学生の天行(釋小龍)は、人気漫画家の刑智健(姜皓文)を父に持ち、父の女友達である嘉嘉(江止[女尼])とともに平和な日々を送っていました。
ところがある日、彼は何者かによって父を殺害されてしまいます。犯人は完成直前のマンガ原稿を一部焼却しており、悲しみに暮れる天行は父の遺志を継ぎ、マンガの続きを書こうと決意するのです。
父の旧友である編集者(麥德羅)の後押しを受け、嘉嘉と協力して執筆活動に専念する天行。その一方で、彼はマンガから着想を得ながら(?)殺人事件の真犯人を探し始めます。
果たして真犯人の正体は? 犯行現場で原稿が焼き捨てられていた理由は? そして犯行の証拠は…?
ようするに本作は未完成のマンガをめぐるサスペンスであり、その合間にマンガの内容が劇中劇として展開されるユニークな構成となっています。
劇中劇パートでは、マンガのキャラクターを釋小龍ら主要キャストが兼任し、おもなアクションはこちらで展開されます。
<あの名作のパロディ炸裂!? 逆境を超えた先に掴んだ栄光とは>
ただ残念なのは、全体的なクオリティが今一歩である…という点でしょうか。
まず劇中劇パートですが、安っぽいコスプレで無理やりマンガ的な表現を仕立てており(中にはほぼ普段着みたいなキャラも…)、凡庸なストーリーとあいまってショボさが強調されています。
サスペンスのほうも登場人物が4人と極端に少ないため、真犯人が誰なのかバレバレ。推理の描写も大雑把で、そもそも「マンガを描いて推理!」という話そのものに無理がありました(爆
一方でアクションのレベルは可もなく不可もなしといった感じで、ビデオ撮りのため動きや演出が安っぽく見えてしまうという難点も抱えています。
それでも注目したいのがストーリーの後半、劇中劇パートのクライマックスの連戦です。
まず最初に釋小龍と戦うのは黒づくめのオカマ4人組! 敵は目まぐるしい蹴りのコンビネーションで迫り、仲間が組んだ腕に足をかけて飛びかかり…って『サンダーアーム/龍兄虎弟』('86)だこれ!
続いて場所がガラリと変わり、立ちはだかったのは大勢の空手家軍団! ぐるりと周りを取り囲まれるも、釋小龍は得意の李三脚でバッタバッタとなぎ倒し…って『ドラゴン怒りの鉄拳』('72)だこれ!
…と、こんな感じでラストバトルでは有名作品からネタを頂戴しており、ほとんどパロディといってもいいようなアクションが繰り広げられるのです。
ちなみに空手家戦ではヌンチャクだとそのまんますぎると判断されたのか、ここではトンファーで戦っています(苦笑
さらにこの後、マスク姿のラスボスとワイヤーアクションで戦う最終戦もありますが、こちらのインパクトは弱め。あとはサスペンスパートの最後にちょろっと釋小龍VS麥德羅なんて顔合わせもありました。
その後、釋小龍は地道にキャリアを築き、現在は大陸で配信向けの作品などで活躍。主演だけでなく監督業(!)にも乗り出すなど、目覚ましい躍進を続けています。
アクションスターとして再ブレイクを果たした彼ですが、その栄光の陰には苦闘の時代があった。そう思うと本作の存在も決して無駄ではなかった…のかもしれませんね。