『幫規』('82) | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。

幫規
別題:幇規/身在洪門
英題:Gang Master
製作:1982年

監督:徐小明(ツイ・シウミン)
脚本:徐小明(ツイ・シウミン)
武術指導:袁祥仁(ユエン・チョンヤン)
出演:惠天賜(オースティン・ワイ)/白彪(パイ・ピョウ)/陳觀泰(チェン・カンタイ)/谷峰(クー・フェン)/梁小龍(ブルース・リャン)他



<香港映画最強の男よ、永遠に―――>


 先月、香港のアクションスターである梁小龍(ブルース・リャン)が亡くなられました。
70~80年代にかけて多くのカンフー映画に出演し、そのエネルギッシュなアクションでスクリーンを席巻。一時は映画界を離れるも、『カンフーハッスル』('02)で電撃的な復活を果たします。
2010年にはNHK制作のドキュメンタリー「それはブルース・リーから始まった」で倉田保昭と再会を果たすなど、近年まで精力的に活動を続けていただけに、突然の訃報には私もたいへんショックを受けました。

 そこで今回は、梁小龍をしのんで出演作の中から本作をピックアップ。当時の香港映画最大手のスタジオであるショウ・ブラザーズの作品に彼が出演した、珍しい作品をご紹介します。
ショウ・ブラザーズは巨大なスタジオと多くのスターをかかえた大規模なプロダクションで、外部のスターを招き入れることは滅多にない排他的な政策を行っていました。
かつて下積み時代、絡み役として同社の作品に参加していた梁小龍にとっては、まさに”凱旋”ともいえる出演となったわけですが、同じ凱旋作の『破戒』('77)とは違い、本作には助演として参加しています。

<”幫規”を破ったのは誰だ!? 名監督が見せるサスペンスの妙>


 元朝(モンゴル)の支配に抵抗する漢民族の反抗組織”潜龍幫”では、リーダーである幇主が死去。幇主の養子である伏中原(惠天賜)は、その後継者として就任の儀式に臨んでいました。
しかし、副幇主の妻だった石夫人(劉雅麗)が彼の就任に異を唱え、「伏中原は漢人ではなくモンゴル人である」とする書面を突き付けます。
さらには殺人の濡れ衣まで着せられた伏中原は逃亡を余儀なくされる事に…。果たして彼は本当にモンゴル人なのか? 陥れたのは誰なのか? 様々な謎を絡めながら、物語は意外な方向へと進みます。

 中文字幕のみでは物語の把握が大変な作品ですが、サスペンスタッチで展開されるドラマはなかなかに見応えがあり、主人公がたどる数奇な親子のストーリーに引き込まれます。
本作の監督は歌手も殺陣もできる才人・徐小明で、梁小龍や武術指導の袁祥仁とはTVドラマ『大侠霍元甲』('81)で組んだ仲。もしかすると梁小龍の本作出演はその繋がりでの起用だったのかもしれません。
 ただ、たしかに思惑が錯綜する物語は面白いんですが、それだけに派手なビジュアルは控えめ。ラストで伏中原がとる行動には驚かされますが、その後の断罪シーンはちょっと蛇足と思ってしまいました。
とはいえ、本作のタイトルが”幫規(組織のルール)”である以上、この結末を避けて通ることはできなかったのでしょう。

<梁小龍ショウブラに舞う! 映画を彩るギミック・カンフー!>


 さて、本作では惠天賜が逃亡者となり苦悩する伏中原を、陳觀泰が単なる悪役と思いきや実は…?な元朝の将軍・莽依圖を演じていますが、皆さんが気になるのはやはり梁小龍の役どころでしょう。
梁小龍は伏中原の兄弟分・張華に扮し、組織と友情のあいだで板挟みになる役を熱演しています。登場してすぐに惠天賜と戦い、将軍暗殺に挑むシーンでは梁小龍VS陳觀泰という実力派スター同士の対決が実現!
 その後、陳觀泰との戦いで負った手傷により物語からしばらく退場し、後半でやっと復帰…かと思いきや衝撃の展開が! そしてラストバトルでまさかの復帰を果たし、惠天賜&梁小龍VS黒幕の激闘が始まります。
本作のアクションは袁祥仁が手掛けているだけあって質が高く、各所で繰り広げられるアクションはどれも趣向に富んでいます。このラストバトルでも、梁小龍の足技に頼らない殺陣が構築されていました。

 また、もうひとつ注目したいのが中盤での惠天賜VS元德(出っ歯のメイクがすごい・笑)。元德は大工道具を操って戦う風変わりなキャラで、ここだけコメディタッチの演出に切り替わっています。
このギミックにあふれた戦い方は、本作の直近に作られた袁祥仁の参加作品(『ミラクルファイター』('82)など)そのまんまのノリで、惠天賜が袁日初(サイモン・ユエン・ジュニア)に見えるほどです(汗
まったく作風の違う本作でもこうした殺陣を作ってしまうあたり、袁祥仁がどれだけギミック・カンフー路線にお熱だったのかがうかがえます。ほんとに好きだったんだなぁ…。

 ショウ・ブラザーズという檜舞台で、助演ながらアクションで大きな存在感を示した梁小龍。その卓越したアクションセンスと個性は世界にも通用しうる、まさに唯一無二のものでした。
もう二度と彼の新たな活躍を見ることはできませんが、彼が遺したきら星のような作品群は永遠に輝き続けています。今はただ、数々の名作に思いをはせながら、梁小龍の冥福を祈りたいと思います…。

R.I.P. Bruce Leung