『キル・オール!! 殺し屋頂上決戦』 | 続・功夫電影専科

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「キル・オール!! 殺し屋頂上決戦」
原題:Kill 'em All
製作:2012年

▼『SAW』の大ヒット以降、閉鎖された空間で極限状態に置かれる人々の恐怖を描いた、いわゆる”ソリッド・シチュエーション・スリラー”というジャンルが流行りました。本作はその流れに乗った格闘映画ですが、非常に充実したキャストを誇っています。
現役スタントマンにして本作のファイト・コレオグラファーを兼任するティム・マン、『チョコレート・ファイター』でジージャー・ヤーニンの母を演じたアマラー・シリポン『NO RULES』で主演を張ったジョニー・メスナーなどなど…。
 さらに『ジャガーNo.1』のジョー・ルイス、元祖少林寺スターの劉家輝(リュー・チャーフィー)まで出演しているのですから、これで期待するなと言う方が無理というものです(笑
ただ、格闘映画では有名スターの共演を生かせないケースが多く、しかも本作の監督はあの『バンコック・アドレナリン!!!』と同じ人。これらの条件を踏まえたうえで、覚悟しながら視聴に至ったのですが…。

■ある日突然、8人の殺し屋たちが”殺戮ルーム”と呼ばれる場所に監禁された。そこに窓はなく、固く閉じられたドアと毒ガスの排出口があるだけだ。彼らは謎の男の命令によって、最後の1人になるまで殺しあう羽目になってしまう。
次々と殺し屋たちが死んでいく中、ティム・ジョニー・アマラーの3人は毒ガスの排出口を塞ぎ、どうにか脱出に成功する。しかし、外の部屋では大勢の狂人や刺客たちが待ち構えていた。果たして彼らは生き残る事が出来るのか?そして謎の男の目的とは!?

▲ストーリーは大したものでもないし、途中でソリッド・シチュエーションという枠から外れてしまっている本作ですが、その欠点を補って余りあるのが格闘アクションの濃密さです。
本作は登場人物の物語を最低限に省略し、アクションを詰め込めるだけ詰め込みまくっています。そうなると殺陣のレベルが問題になってきますが、ティムの振り付けたアクションはスピード感に富み、出演者たちも大いに張り切っていました。
 アクロバットな動作から武器戦闘までこなすティム、体当たりのファイトを見せるアマラーの動きは実に素晴らしく、他の殺し屋たちも負けていません。個人的には本作が遺作となったジョー・ルイスの荒々しい立ち回りが印象的でした。
ラストバトルとなるティム&アマラーVS劉家輝も迫力満点で、圧倒的な実力を誇る劉家輝に翻弄される2人が、一瞬の隙を突いて逆転に転じるシークエンスはとても爽快です(欲を言えば、もうちょっと各々のファイトスタイルを差別化して欲しかったかな?)。
 『バンコック~』では主人公に感情移入ができなかったのですが、本作は徹底的にアクション押しの展開で攻めてくるため、そうしたフラストレーションは感じません。適当気味なストーリーさえ気にしなければ、本作は至高の格闘映画だと言えるでしょう。
ところで本作はタイでロケーションが行われており、出演者やスタッフもタイに縁のある人が多いように思えます。ひょっとしてこの作品、アメリカ映画じゃなくてタイ映画なんでしょうか?