追憶:香港映画レーベル(01)『タイム・ソルジャーズ/愛は時空を超えて』 | 続・功夫電影専科

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「タイム・ソルジャーズ/愛は時空を超えて」
原題:急凍奇侠
英題:The Iceman Cometh
製作:1989年

▼これまで、日本では様々な香港映画がソフト化され、多くの人々に親しまれてきました。その中には単一のレーベルとしてまとめられた作品も少なくありません。そこで今月は、80年代から現在に至るまで発表されてきた、香港映画レーベルをフィーチャーしてみたいと思います。
トップバッターを務めるのは、ファンなら誰もが知っている「香港エンターテイメント」シリーズです。香港エンターテイメントはポニーキャニオンが打ち出したレーベルで、ゴールデンハーベスト作品を中心に大量の映画をリリースしました。
 その本数はじつに膨大で、とても数え切ることができません。李小龍(ブルース・リー)の主演作やドキュメント、ジャッキーが端役時代に出演した映画、許冠文(マイケル・ホイ)の主演作、香港ノワールに現代動作片などなど…。
また、名調子でおなじみの香港ファンタスティックビデオシリーズもファンには思い出深いでしょう。香港エンターテイメントは90年代前半くらいまで続き、その間には映画祭も行われていたそうです。
 日本語吹替えの実装が微妙に遅く、画質にやや難があったりしますが、この質と量は半端ではありません。当時の日本における香港映画市場において、同レーベルが果たした役割は大きかったと言えます。
そんなシリーズから、今回は91年の映画祭で上映された本作をセレクトしてみました。本作は元彪(ユン・ピョウ)が主演した伝奇アクションで、彼と同じ七小福から元華(ユン・ワー)も参戦。ヒロインには張曼玉(マギー・チャン)が扮しています。

■舞台は明朝時代の中国。朝廷に仕える親衛隊の副隊長・元彪は、皇帝の近親者を惨殺した極悪人・元華を20日以内に捕らえよとの命を受ける。元華は輪廻の台と呼ばれる神器を用い、別の時代へと逃走を図った。
元彪は彼と共に別の時代に飛ばされ、雪山で取っ組み合ううちに谷底へと没する。…それから長い歳月が過ぎ、現代の中国で氷漬けになった2人が探検隊により発見された。
 探検隊は、彼らの調査と称してアメリカへ行こうとする(当時は天安門事件の直後)が、立ち寄った香港で2人が復活。元彪は周囲の光景に驚くが、ひょんなことから売春婦の張曼玉と遭遇する。
彼女は家電に驚く元彪に戸惑いつつも、彼を用心棒or召使いとして家に置いた。当初はトラブルが続発したものの、時が経つにつれて2人は徐々に打ち解けていく。だが、一方で復活した元華が悪事の限りを尽くしていた。
 あるとき元彪は、張曼玉が自らの身分を偽わっていたと知るが、同時に彼女に恋心を抱いていることにも気付く。しかし、そこに元華が現れて張曼玉を誘拐。彼女を助けるために元彪は毒を飲み、自らの心のうちを明かすのだった。
その後、元彪は戦いの果てに病院に担ぎ込まれ、なんとか一命を取り留めた。一時は張曼玉と別れることも考えたが、この件は元華の追求が及んだためウヤムヤに。そんな中、あの輪廻の台が香港で展示されるとの一報が舞い込んだ。
元華は最新兵器を持って明朝に戻り、自ら王になろうと画策していた。奴の野望を止めるべく、元彪は新たな剣を作って決戦に備える。果たして、時空を超えた戦いの結末は…?

▲タイムスリップにラブストーリーを絡めた異色作ですが、これはなかなかの良作でした。香港でヒットを飛ばし、甄子丹(ドニー・イェン)主演のリメイク版まで製作されていますが、それも納得の逸品と言えます。
まず印象的なのがカメラワークの数々です。広大な雪山を背景にした立ち回り、元彪と張曼玉が闊歩する香港の町並み、そして終盤で剣を構えた2人とその背後に広がる百万ドルの夜景など…。その場その場に適した画作りはバッチリ決まっています。
 また、時代の変化に戸惑いつつも己の本分を貫く元彪や、びっくりするくらい強気な張曼玉など、各々の個性も際立っています。元華もパンツ一丁になって張曼玉に迫ったり、明朝に炊飯器を持ち帰ろうとするなど、極悪人ながらユニークな一面を見せていました(笑
でもオチについてはちょっと弱かったような気がします。最後に現れた彼が何者なのかは観客の想像に委ねている感じですが、いささか唐突な感じがしてしまい、張曼玉がそっくりさんに乗り換えただけに見えてしまいました。
 アクション面では、元彪率いる元家班が見応えのあるパフォーマンスを見せています。走行中の車の屋根に飛び乗る危険なスタント、火花散るソードバトルの迫力は成家班や洪家班のアクションにも劣りません。
ラストの元彪VS元華の一戦も見事で、スピーディな肉弾戦がひたすら展開されます。両者は他の作品でも拳を交えていますが、本作のバトルはワイヤーワークや余計な特殊効果が一切ないため、元彪と元華のありのままの実力を堪能することができました。
さて、香港映画の黄金期だった80年代が終わり、時代は90年代へと突入していきます。時とともに香港映画界は変化を遂げ、日本でも新たな香港映画レーベルが次々と参入してくるのですが…続きは次回にて!