『プロジェクトS』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「プロジェクトS」
原題:超級計劃
英題:Project S/Supercop 2
製作:1993年

▼これまで内輪のキャスティングとアクションに依存していたジャッキーにとって、『ポリス・ストーリー3』は自らのスタイルを大きく変える作品となりました。
唐季禮(スタンリー・トン)による開放的なスタント、コメディエンヌではない闘う女性・楊紫瓊(ミシェール・ヨー)の登場、硬軟織り交ぜたジェットコースターの如きストーリー……これまでと違って功夫アクションよりスタントに尺が割かれ、楊紫瓊がジャッキー以上に目立ってしまっているなど、細かな不満はあります。が、この作品はそれまでの安定感とマンネリが一体化した作風から脱皮し、ジャッキーが新たな方向性を示した記念すべき作品といえるのです。
本作は、そんな『ポリス・ストーリー3』から楊紫瓊が役柄そのままにスピンオフし、監督&武術指導も同じく唐季禮が務めた作品です。主なキャストはジャッキー映画よりも唐季禮作品の関係者が多く、間接的にではありますが、のちにハリウッドでも組むことになる于榮光(ユー・ロングァン)とジャッキーが初コラボした作品でもあります。また、劇中ではジャッキーが『ポリス・ストーリー』の役でゲスト出演し、曾志偉(エリック・ツァン)と女装したままドタバタする一幕が含まれていますが、正直これはいらなかったかも(笑

■中国公安部の楊紫瓊は人質事件の解決を依頼され、元軍人の恋人・于榮光と共に犯人グループの撃退に成功する。しかし于榮光は香港で仕事をすることが決まり、楊紫瓊とは喧嘩別れになってしまう。
…それから半年後、香港では狄威(ディック・ウェイ)ら強盗団による警備会社襲撃事件が発生。彼らの手によって警備システムの設計図が盗まれ、中国本土から来た人間による犯行と断定された。そこで中国から楊紫瓊が派遣され、香港警察の刑事である周華健(エミール・チョウ)&樊少皇(ルイス・ファン)に協力することとなった。
 手始めに顔が割れている強盗団の1人を尾行し、アジトを襲撃してメンバーの1人を逮捕、狄威の弟を射殺した。ところが、驚くべき事に強盗団のリーダーはあの于榮光で、彼はかつての仲間と協力して香港中央銀行を襲撃する計画に加わっていたのだ(設計図強奪はこの下準備)。
楊紫瓊がいると知った于榮光は再会を喜ぶが、その蜜月も長くは続かなかった。逮捕されたメンバーが于榮光の出入りと前後して奪還されたため、彼が強盗団の一味だと発覚したのである。善と悪、互いに別れて闘う事となった楊紫瓊と于榮光だが、2人の関係は思いもよらぬ形で決着を迎えてしまい…。

▲本作はすれ違う男女の悲恋を描いていますが、唐季禮らしくアクションまみれの内容となっているため、恋愛関係の描写は必要最低限の頻度に抑えられています。ただ、今回はこれまでの唐季禮作品とは違ってスタントシーンがあまり無く、ストーリー面とアクション面の両方で物足りなさを感じてしまいました。
物語はかなり凡庸なもので、意外性のある展開は一切無し。狄威の弟が殺されたり于榮光が任務に私情を挟むという描写なども、これといってストーリーに反映されるような事はありませんでした。これがいつもの狄威なら「あんたのせいで弟が死んだんだ!」と于榮光に詰め寄ったり、最後に裏切って西洋人側に付いたりすると思ったのですが、まさか単なるメンバーの1人のままで終わるとは…。また、于榮光が強盗に加担したのは国家に不満があった云々ではなく、単に金が目的だったというのは犯行動機として弱い気がしました。
 アクションについては楊紫瓊も樊少皇も見事なファイトで応え、于榮光も銃撃戦などで十分な活躍を見せています。しかし先述したとおり、本作には唐季禮作品では恒例のデンジャラス・スタントが無く、個々の対戦カードも不備が目立ちます。
まずは序盤、人質事件の主犯格としてシンシア・ラスターこと大島由加里が出演しているのですが、楊紫瓊との絡みはごく僅か。次に中盤の狄威襲撃シーンでは、応戦するのが于榮光と周華健なので楊紫瓊とは闘わず流局。そしてラストバトルで再び狄威と闘う機会が巡ってきますが、楊紫瓊がデカい外人と戦っている間にあっさり樊少皇に撃退されてしまいました。大島由加里や狄威という強豪が眼前にいながら、楊紫瓊とのガチンコ対決が実現しなかったのは本当に悔やまれます。
ところでラストを見ていて思ったのですが、あの水圧と水量なら倒れたとしてもギリギリで隔壁の向こう側に押し流されていてもおかしくないはず。もしかしたら、カメラワークから外れた号泣している楊紫瓊の背後で、彼が気まずそうに立っていたりして(爆