
「抜け忍」
製作:2009年
▼忍者映画というものは海外で盛んに作られてきましたが、そのどれもが陳腐で奇天烈なものばかり。金髪の外人がカラフルな忍装束に身を包み、真昼間にチャンバラもどきのアクションを見せるという光景は、我々日本人からすれば異様なものにしか見えませんでした。
それならば、忍者の本場といえる日本が「本格派忍者映画」を作れば、過去の忍者映画に負けない凄い作品を作ることができるのではないでしょうか?
しかし現在の邦画界でそういう奇異な作品を望む声はほとんどありません。それでも忍者映画を製作したいのなら、流行のアイドルなどを起用した『SHINOBI』のような映画か、或いは香港映画の縮小コピーで奇をてらった『血蜘蛛の十蔵』のような映画を作るしかないのが現状なのです。
本作はその中で後者に該当する作品であり、『伊賀の乱』系列などを撮った千葉誠治が監督を務めてます。千葉氏は何故か谷垣健治や下村勇二といったドニー門下の精鋭と縁があり、谷垣導演の『隠忍術』などにも参加。本作では下村氏がアクション指導を担当し、香港系の忍者アクションを作り上げています。
■時は織田信長が伊賀忍者を壊滅させる数年前の頃。凄腕の下忍・肘井美佳は、今日も任務を遂行して帰路に着いていた。幼馴染の泉政行や義兄の虎牙光揮とは親しいのだが、色狂いの下忍頭・島津健太郎とは対立している。どうやらこの男、何か良からぬことを企んでいるようだが…。
折りしも、伊賀の里では下忍たちが謎の刺客によって次々と暗殺されるという事件が起きていた。下忍を指揮する上忍たちは何の行動も起こそうとせず、肘井たちは苛立つばかりだ。そして刺客の魔手は、ついに肘井の理解者であった里の長にまで及んでしまう。
この混乱に乗じた島津は、クーデターを起こして伊賀の里を掌握。邪魔な肘井を始末しようと企み、大勢の追っ手を彼女へ差し向けた。肘井はこれに怯むことなく立ち向かい、島津に捕まった仲間を助けようとする。果たして、謎の刺客の正体とは…?
▲この作品、本筋となるストーリーは本当にこれだけしかありません。多少のどんでん返しはいくつか用意されてはいますが、サブストーリーなどは一切存在しないのです。そのせいか尺も短く、非常にミニマムな作品になっていました。
大体、「強いくノ一がいました、悪い下忍頭がいました、刺客が伊賀の里に入り込んでしまいました、色々あって下忍頭は倒されました、刺客の正体は○○でした、おしまい」…だけじゃ余りにもボリューム不足です。
また、本作のクライマックスでは謎の刺客と肘井の戦闘は無く、あからさまに続編を作れそうな終り方をしています。この手のVシネ作品にありがちな事ですが、作品のオチを付けようとせずに宙ぶらりんな幕引きで済ませてしまうのは、ちょっとどうかと思いますね。そういえば『血蜘蛛』も『男組』こんな感じだったような…(汗
そんなわけで作品自体は良い出来とは言えませんでしたが、下村氏の指導したアクションシーンは光っています。主人公の肘井美佳は激しいソードアクションに挑戦しており、なかなか良い動きを見せていました(彼女は全編に渡ってほぼノンスタントでアクションを演じ切っています)。
その他の役者さんたちも大いに奮戦していて、とりわけ虎牙光揮の暴れっぷりが見事でした。リアルヒッティングっぽい演出をしておきながら実際にヒットさせていない箇所が幾つかあったのは残念ですが、全体的にとても見ごたえのあるアクションだったと思います。
格闘アクション的には満点ですが、単純なストーリーが水を差す惜しい作品。今現在はこのような作品しか出来ないけれど、いつか日本の映画界は「本格派忍者映画」を創り出して欲しいと、私は切に望んでいます。