『天空伝説/ハンサム・シビリング』 | 続・功夫電影専科

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「天空伝説/ハンサム・シビリング」
原題:絶代雙驕
英題:Handsome Siblings
製作:1992年

▼90年代に起きた武侠片ブームは、各方面へと様々な影響を及ぼした。このブームの火蓋を切った『黄飛鴻』系列にあやかって少林英雄を持ち上げる者がいれば、脚光を浴びた俳優を起用して2匹目のドジョウを狙う者、そして武侠小説の映像化に挑もうとする者など、ありとあらゆるパターンの武侠片が作られていた。
本作は『スウォーズマン』で強烈なキャラクターに扮した大女優・林青霞(ブリジット・リン)を担ぎ出した作品で、加えて劉華(アンディ・ラウ)も出演。監督にはシネマシティの立役者である曾志偉(エリック・ツァン)を向かえ、単なる便乗作品でない気概を見せている。
ちなみにこの作品、元々は武侠小説が原作であり、1979年にショウブラザーズでも映像化されている。私はショウブラ版を見ていないので、本作がショウブラ版のリメイクなのか、あるいは別物なのかまでは解らない。が、原作者の名前を見て一抹の不安を感じた。そう、この映画の原作者はトンデモ超展開を得意とする、あの古龍(クー・ロン)だったのである。……なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ?(爆

■江湖のはずれにある悪人の谷で、正義の使者・張敏(チャン・マン)が十悪人という集団を「飢饉の人々を殺した罪」で殺そうとしていた。本当は裏切り者によって濡れ衣を着せられていただけなのだが、あくまで張敏は十悪人の罪を許そうとしない。そこへ張敏の元夫・苗僑偉(ミウ・キウワイ)が現れ、命を賭して張敏の暴挙を阻んだ。そのとき苗僑偉が連れていた子供は十悪人に引き取られ、引き下がった張敏も養女を育てようとしていた。
時は流れて18年後、十悪人に育てられた赤ん坊は劉華(アンディ・ラウ)に成長し、「武術大会へ出場して裏切り者2人を探してほしい」と十悪人から頼まれ、育ての親である呉孟達(ン・マンタ)らと共に出奔した。大会の開催地へ向かう道中、劉華は張敏に育てられて正義の使者となった林青霞と遭遇する。彼女の事が気になる劉華は、開催地に到着するなり林青霞のことを探ろうとするが、林青霞も劉華のことが気になりつつあった。
 そんなこんなで開催された武術大会は、準決勝までに劉華・林青霞・大会主催者の張國柱・馮克安の養子呉鎮宇(フランシス・ン)の4人が出揃っていた。時を同じくして、劉華は大会そっちのけで林青霞に接近しつつあったが、何としてでも娘を勝たせようと企む張敏が介入し、林青霞に毒薬を飲ませるという暴挙に出てしまう。
そして迎えた準決勝での劉華VS林青霞戦。見かねた張敏が乱入するという事態が起きるが、この機に乗じて張國柱が張敏を謀殺。劉華と林青霞は目の前で母親を殺されてしまった。ところが、事態の収拾に武林のお偉方(正体は見てのお楽しみ・笑)が登場し、呉鎮宇のタレコミによって張國柱の悪事は露見してしまう。これで事件は一件落着かと思われたが、実はすべて呉鎮宇が仕組んだ計画だったのだ。
 呉鎮宇は力こそ無かったが、武術大会の優勝者に授けられる奥義を虎視眈々と狙っており、奥義を身に付けると武林のお偉方の力を奪い、更なるパワーアップを果たした。こうして武林の覇権を手に入れた呉鎮宇だが、悪の栄えた例は無し。苗僑偉の犠牲によって蘇えった林青霞と劉華は、力を失ったお偉方から「二人剣」という奥義を伝授され、打倒・呉鎮宇に挑むのだった。

▲本作は曾志偉プレゼンツの作品だが、本当に彼が監督したのか疑ってしまうような出来である。
無駄に残酷で下品な演出を加えたり、劉華と林青霞のラブストーリーを中途半端に描いてしまうなど、曾志偉の監督作にしては消化不良な箇所がところどころで目に付く。また、武林のお偉方が登場→呉鎮宇パワーアップまでの展開には驚かされたが、裏切り者の件が完全に放置されたまま終わっているのは頂けない。超展開は古龍のお家芸だが、いくらなんでもコレはなぁ…。
 功夫アクションにも思い切りが無く、作品の舞台となる武術大会も適当な扱われ方をしている。
まず最初に予選大会が始まるのだが、信じられないことに闘いの様子はサラッと流されるのみで、2分少々でもう準々決勝に到着。さらに出場者が逃げ出して(!)即座に準決勝へ進んでしまうのだ。そりゃあジックリと大会を描写しすぎるのはナンセンスだろうが、ここまで端折ってしまうのもどうかと思う。
さらに功夫アクションの端折り問題はラストバトルにも影響していた。最後の決戦で劉華らは「二人剣」という技を使用するのだが、これが単に手を繋いで剣を飛ばしているだけにしか見えないという代物。それどころか呉孟達が放ったアホ技の方が役立っている上に、バトル自体も5分と経たず終わっている。殺陣自体もワイヤーで飛ぶだけのありきたりなアクションで、特に面白いものではなかった。
 並みの便乗作品ならともかく、本作はあの曾志偉が撮った作品だ。しかし本作には曾志偉らしい独創性が見出せないばかりか、複線放置・功夫アクション無視・人命軽視といったネガティブポイントばかりが目立っている。やはり、さすがの曾志偉でも古龍作品を料理するのは難しかったのだろうか…?