
「真一文字 拳」
製作:2009年
▼本作はミニシアター(だっけ?)で上映された短編映画で、ジャッキー映画のオマージュに溢れた意欲作です。上映時は『聖白百合騎士団』なるアイドルムービーと2本立てで封切られており、尺が53分と短いのは2本合わせて映画1本分の尺に収めるためのようです。
実を言うと、私はこの映画には全然期待していませんでした。なにしろ、ここのところ邦画アクションが不作続き(『殴者』『拳 FIST』等々…)だったこともあって、「コレもカンフーとか茶化したヌルい作品なのでは?」と思っていたのですが…。
■ここは中国の奥地。風牙神拳を今に伝える老師・七本足の弟子であった鈴木信二は、無法者の殺し屋・辻本一樹(キャラが『笑拳』の任世官まんま!)によって師匠を殺されてしまう。
師匠は死に際に鈴木が日本人であったことを告げ、彼に帰国を促すと共に「お前はまだ拳法の真髄を極めていない」との言葉を遺した。というわけで鈴木は師匠の遺言を受け、さっそく日本の男子校へと編入した(校名は「十八羅漢」)。彼はお笑い部を覗いていたところを勧誘され、「拳法の極意を掴むにはここしか無い!」と、半ば勘違いしつつも入部するのだった。
しかし、元々お笑い芸人を目指していたわけではない鈴木は、なかなか他の部員たちと噛み合わなかった。1つの事に集中しすぎ、周りが見えなくなることが彼の欠点であったのだが…。そんな鈴木の姿を見ていた部長は、かつて部員が死ぬという事故が起きた「お笑い修行」を伝授しようと決意する。で、その修行というのが『蛇拳』の修行そっくり!そりゃ素人がやったら死ぬよ!
そのころ、学芸会の抽選で一番人気の時間帯をお笑い部に奪われた演劇部が、お笑い部をぶっ潰そうと企んでいた。演劇部の部長は荒くれ者たちを向かわせ、更には中国から刺客を大金で雇っていたのだが、その刺客というのが辻本一樹と三省拳士だった。『酔拳』で山怪がやってたのと同じ博打に挑戦した部長は襲撃されて死亡(?)。お笑い部の部員4人も返り討ちにあってしまう。
鈴木は「むやみに拳法を使うな。ただし仲間が5人ぐらいやられたら遠慮はいらん」という師匠の言葉を守り、仲間の1人を人身御供にすると勇ましく敵へ立ち向かった。ザコは全員倒したが、今度は辻本と三省拳士が姿を現す。果たして、お笑いを身に付けた鈴木は師匠の仇を討てるのだろうか?
▲全体的にヌルい作品だし、尺が尺だけに物語も強引な部分があります。しかし、本作はジャッキー映画に大きなオマージュを捧げた作品であり、そこかしこに愛を感じる作りになっていました。
そのパロっぷりは徹底されていて、冒頭のナレーションに石丸博也氏を起用し、挿入されるBGMも「拳法混乱」や「成龍拳」にそっくり。格闘シーンの殺陣もジャッキー映画の完全コピーで、ジャッキーのファン(特に『拳』シリーズを劇場公開で見た世代)なら爆笑必至の場面が繰り広げられるています。
とりわけ凄かったのが劇中の格闘アクションです。本作ではジャッキー風のアクションを丁寧に再現しており、役者さんたちもその難解な動きに頑張って挑んでいます。中でもラストバトルの再現度が高く、鈴木VS三省拳士と鈴木VS辻本のバトルを見る前に、是非とも『笑拳』と『蛇鶴八拳』に目を通しておくことをオススメします。なお、鈴木は最後に笑拳ではない別の拳で戦いますが、それは見てのお楽しみです(笑
マイナスポイントに関しても補足しておくと、本作におけるお笑い描写が中途半端である点や、必要以上に血の流れる演出などは自粛して欲しかったかなぁ…とは思います。しかし、背伸びをしすぎて自爆した『拳 FIST』や、エロ要素が邪魔な『くノ一VS女ドラゴン』よりマシな作品であることは確か。かつてのジャッキー映画ファンなら必見の作品です!