
中原[金票]局
英題:The Ming Patriots/Revenge of the Patriots/Dragon Reincarnate
製作:1976年
▼あらゆる意味で功夫映画史に残る貴重な顔合わせが見られる作品だ。まず主演の何宗道(ブルース・ライ)はバッタもん李小龍として有名な人だが、バッタもんである事を嫌った本人はそれまでの芸名だった黎小龍という名を捨て、何宗道と改めた。それでも完全にバッタもんの呪縛から逃れる事が出来なかったものの、いくつかの秀作を残している。本作はそんな彼にとってバッタもんの呪縛から完全に解き放たれて作られた作品の1つで、製作は第一影業が務めている。
その第一影業は『片腕カンフーVS空とぶギロチン』で劉家良(ラウ・カーリョン)と劉家榮(ロー・カーイン)の大物武術指導家を呼び寄せたが、両名は本作の武術指導も担当した。これによってバッタもん李小龍と劉家班という、奇跡の共演が果たされたのだ(ちなみに呂小龍は新人時代をショウブラで過ごしているが、劉家良らとの接点は無い)。
更に本作の価値はこれだけではなく、黄家達(カーター・ウォン)にも注目したい。黄家達はデビュー時期がGHで、その後は郭南宏(ジョセフ・クオ)などといった台湾映画に活路を見い出している。そのため彼もまた劉家班との接触は無く、唯一ショウブラに出演した『カンフー東方見聞録』では劉家輝(ゴードン・リュウ)と闘っているが、この作品で張徹と諍いを起こした劉家良は撮影途中で作品から降りてしまったので、ギリギリのところで劉家良とのコラボは果たせなかった。また、黄家達は『黒殺』で劉家班の小候と共に出演しているが、こちらでも出演パートが違うので惜しくもすれ違っている。
そんな訳で本作は、そんな何宗道・黄家達・劉家班の三者が一堂に会するという、まさに夢の取り合わせが実現した作品なのだ。
■明朝が倒れ、新たに清朝政府が立ち上がった動乱の時代…明朝の残党狩りと機密文書の入手を企む皇帝の張翼(チャン・イー)は、傘下の山茅(サン・マオ)らを率いて各地に検問を張っていた。明の姫を守る黄家達は検問突破のために孤軍奮闘し、姫とその側近を逃がす事には成功するが張翼の鉄指拳に倒れてしまう。逃走を続ける姫は、側近と顔なじみだった何宗道の[金票]局(何宗道の部下に龍方が登場)へと駆け込み、安全な場所まで脱出しようと決死行に挑んだ。
道中、襲ってきた山茅を倒して客棧に立ち寄るが、何宗道と因縁を持つ清朝派の陳惠敏(チャーリー・チャン)と遭遇。更に第2の刺客として龍飛(ロン・フェイ)が現れ、ここで姫の側近が命を落としてしまう。何宗道の妹である嘉凌(ジュディ・リー)を仲間に加えた一行は、姫の所持する宝や秘密文書を一緒に持ち運びするのは危険と判断し、豚肉に隠して川に流して運ぶことに…って、もうちょいマシな運び方は無かったんだろうか(笑
一方で龍飛は陳惠敏と共に進軍を続け、茶店での待ち伏せ作戦で何宗道らは一網打尽にされてしまった。激しい尋問の末に追い詰められる何宗道たちだったが、謎の酔っ払い(演じるはなんと『幽幻道士』の金塗!)の助けを借りて危機を脱出。なおも迫る敵勢に龍方を失うが、憎き陳惠敏を倒してこれに報いた。
しかし遂に張翼が何宗道たちの前に現れ、一転して絶体絶命の窮地に追い込まれる。張翼は何宗道らに決闘を挑んでくるが、流石に相手は手強い。そこに再び金塗が現れ、実は自分は明の残党の仲間だったことを明かし、残党軍による攻勢が始まった。こうして形勢は一気に逆転、改めて何宗道・嘉凌・金塗は張翼と相対し、ここに残党リーダーの喬宏(ロイ・チャオ)も参戦!張翼の強さの秘密だった小瓶(阿片?)を奪い、最後の死闘が幕を開ける!
果たして勝敗の行方は、そして機密文書の中身とは…?
▲この映画は、香港映画でお馴染みの[金票]局を取り扱った作品である。[金票]局とは要するにボディガード業のことで、主に積荷や金品の護衛に当たった役職のことを言う。功夫片では時たま見られる職業であり、詳しくは『超酔拳』『雙辣』等に描かれている。
第一影業といえば『不死身の四天王』『妖怪道士』のような、台湾映画らしい泥臭さの残る作品を多く作っている。だが本作は豊富なエキストラを導入し、ロケーションやスケールはショウブラ映画に匹敵する豪華さを確保。よく台湾映画では敵の皇帝の側近が2~3人だったりするが、この作品では最後まで大勢の兵が動員されており、第一影業がこの映画に並々ならぬ力を入れていた事がよく解る。また、キャスト面でも何宗道・黄家達・嘉凌・龍方・張翼といった賑やかな面子が揃っており、オールスター映画として見ても中々面白い。
功夫アクションはさすが劉家良といった感じのハイクオリティな殺陣で、何宗道は今回もいまいちパッとしない印象ながら(爆)他の作品で見せなかった鋭い技を決めている(やっぱりこの人は武術指導でだいぶ出来が左右されるなぁ)。注目の黄家達は序盤だけのゲスト出演だったが、こちらもこちらで映画の幕開けを盛り上げる熱演を見せた。その他にも異色の金塗VS張翼なんて対決もあったりするなど、功夫アクション・ストーリー共に中々の傑作だ。
前述したとおり何宗道の印象が薄いため、何宗道のベスト作品とは言えないところではあるが、第一影業が製作した作品の中では破格の逸品だったのではないだろうか。