格闘映画総特集(終)『拳 アルティメット・ファイター』 | 続・功夫電影専科

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「拳 アルティメット・ファイター」
原題:HONOR
製作:2006年

●これまで二ヶ月に渡って続いてきた格闘映画特集も本作でいよいよラスト。今回も再び本物の格闘家を起用した作品で…って、なんだか最近のマーシャルアーツ映画はこんな触れ込みばっかだなぁ。ロレンツォ・ラマスとかジェフ・ウィンコットとか、90年代に活躍していた格闘映画スターたちはどこにいっちゃったんでしょうか?
ジェイソン・バリーは軍を退役し、養父であるロディ・バイパー(!)のもとへ戻ってきていた。警察官だったバイパーは職を退き、現在は小さな飲食店を経営しようとしているようだが、街ではラッセル・ウォンら悪党グループが幅を利かせていた。このラッセルという男、かつてはジェイソンとも旧知の仲だったのだが、今では外道に堕ちて冷酷非常な男となっていた。
レミー・ボンヤスキー、ドン・フライ、西冬彦といったそうそうたる顔ぶれを部下に従え、反抗した船木誠勝の日本料亭をぶち壊したりとやりたい放題の限りを尽くすラッセル。その暴力の矛先はジェイソンとバイパーの元にも及び、遂にはバイパーの店が襲撃されて昔馴染みだった刑事が命を落としてしまう。怒りを爆発させたジェイソンはラッセルの元に向かい、虚しき死闘のゴングが響き渡るのだった…。
まず本作で目を引くのがロディ・バイパーの存在だ。バイパーと言えば千葉真一の『リゾート・トゥ・キル』や、ミスコン版『ダイハード』だった『ハードネス』なんかに出ていた往年の格闘映画スターだ。しかし本作では「これがバイパーか!?」と驚くほどの老けっぷりで、それどころか職場を引退した優しき父親という役柄があまりにもハマっており、かつての面影はほとんど残っていない。これには誰もが残念がるだろうが、その判断は早計至極。なんと本作の大詰めで、今まで寛大だったバイパーがブチ切れて悪党どもをボコボコにしてしまうのだ!さすがに途中でスタミナが切れてしまうが(笑)、それでも最終決戦にまでバイパーは参加し、幹部のドン・フライと対決するのである。私はまさか老齢のバイパーが格闘アクションまでやってのけるとは思っていなかったので、この展開には大きな衝撃を受けました。
ちなみに本作はジャケ裏の解説で「また裏社会の格闘大会か」と思ってレンタルした作品だが、どちらかというとオリビエ・グラナーの『エンジェル・タウン』に近い感じ。バイパーたちとジェイソンのやり取りも少々冗長であり、それほど大した作品ではなかった。だが一方で格闘シーンは出来が良く、ちゃんとレミー・ボンヤスキーやラッセルらも動けているように撮れている点は中々よさげ。ちょっと編集で見づらい部分もあるが、ここまで紹介してきた最新の格闘映画では最もいいファイトだった事は確実だ。ただ1つだけ言わせてもらえるなら、ラストバトルの乱戦は一組ずつじっくり見せるタイプでやって欲しかったなぁ…とは思いますが(笑

という事で、今回の特集では90年代の秀作群と2000年代の新たなマーシャルアーツ映画を甲乙織り交ぜて紹介してみました。これら2つの世代の作品を見渡してみて解ったのは、現在のマーシャルアーツ映画界に大きな人材がいない…という事です。この点は香港映画や邦画も抱える問題で、類稀なる実力を持つ人間が徐々に業界から消えていくのは万国共通の悩み。この問題は今回紹介した作品群を比較するとよく解りますが、最近の作品になるにつれて特色の薄い作品になっていく様子が見て取れます。
最近は映画技術が発達し、アクション超人たちの登場も話題になっていますが、本当に格闘映画はこのままでいいのだろうか?格闘家ぐらいしか動ける人材がいなくなってしまうのではないのだろうか?…その答えは、これからも作られていくであろう数多のマーシャルアーツ映画たちの中にあるはず。今後格闘映画がどのような変化を見せるのかは、拳と拳で闘う男たちが作り上げていく事でしょう(またも逃げ気味の結論で、この項は〆…苦笑)。