
下南洋
英題:Tough Guy/Black Dragon
製作:1974年
▼(※…画像は本作を収録したDVDパックのものです)
再びロン・ヴァン・クリフ&白彪(バイ・ピョウ)主演の長江電影作品だが、本作はロンが香港映画にデビューした記念すべき最初の作品だ。作品としてはやはり李小龍を意識した作風で、話の内容は『ドラゴン危機一発』を連想させる。こうして見てみると『怪客』『唐手[足台]拳道』は『ドラゴン怒りの鉄拳』モチーフ、『龍争虎鬥精武魂』は『燃えよドラゴン』モチーフで特色が分けられており、いっそ白彪主演の『死亡遊戯』風な作品や『ドラゴンへの道』風の作品を、監督・魯俊谷の味付けで見てみたかった気がしないでもない。
■白彪は田舎で畑仕事に勤しむ純朴な青年で、フィリピンで成功して帰ってきた兄・劉鶴年の姿に憧れを抱き、自分もフィリピンで一旗挙げようと出立を決意する。こうして海の向こうへ出稼ぎに来た白彪だが、ケンカをしている謎の黒人・ロンと遭遇したり、スリの陳流と知り合ってトラブルに遭遇したりと、まずは波乱の船出となった。
そんなこんなで白彪は港で積荷を運ぶ労働のバイトに就くも、例によって労働環境はかなり劣悪。粗暴な職員と悶着を起こしたが、功夫の腕を上司の高岡に見込まれてバイトから職員のリーダーへと飛び級でランクアップした(笑)。そんな時、白彪の前にシマを荒らす謎の連中が殴りこみを仕掛けてきたが、その中にロンの姿があった。彼らを撃退した白彪は報酬として高岡に風俗へ連れてってもらい、そこで無理に働かされていた風俗嬢を助け出す。が、そこに再び現れたロンは「お前は自分のやっている事が解っているのか?」と、意味深な言葉を投げかけた。
この風俗嬢は白彪にホの字になるが、彼女の口から高岡たちが裏でアヘンの密売をしている事を聞かされ、高岡の元に乗り込んだ彼は事実を目の当たりにしてしまう(ロンたちは麻薬を蔓延させる高岡たちと闘っていたのだ)。真実を知った白彪はロンと和解して高岡のところへ直談判に出向いたが、社員契約を結んだ際の書類が元で自由に動く事が出来なかった(このへんの展開がちょっと不明瞭)。高岡たちをとっちめるには契約書が邪魔だ…そこで白彪の話を聞いた陳流は高岡たちのアジトへ潜入し、半殺しの目に遭いながらも契約書の入手に成功した。
こうして大手を振って闘えるようになった白彪はアヘン蔵を占領。当然高岡たちは黙っているはずもなく、用心棒としてデブの東洋人・ヒゲの白人・金髪白人・そして何と劉鶴年の4人を召集した(劉鶴年の勤め先が高岡のところだったらしい)。特に一番手強いのが劉鶴年で、陳流が殺されて風俗嬢は敵の手に落ちてしまう。怒りの火の玉と化した白彪は単身敵地に乗り込み、高岡と用心棒軍団を相手取って死闘を演じるのだが、その先には悲劇の兄弟対決が待ち構えているのだった。
▲本作は白彪の完全主演作で、抵抗メンバーの1人としてロンは要所要所で出てくるが、どちらかというとサブキャストの位置に落ち着いている。
しかし作品としては『唐手[足台]拳道』『龍争虎鬥精武魂』よりも出来が良く、最後の白彪VS劉鶴年で白彪がトドメを刺さない事以外は、取り立てて不満を感じることはなかった。功夫アクションは李小龍的なスタイルだが、派手な回し蹴りを連続で繰り出すダイナミックな殺陣で、最後に白彪が敵陣へ乗り込んで大暴れするシーンはとても迫力がある。先に述べた白彪VS劉鶴年は決着の付け方と尺の短さこそアレだが、『龍争虎鬥精武魂』に続いて再び劉鶴年のポテンシャルの高さに気付かされました。
だが本作で一番おいしい役どころだったのは、何といっても陳流だろう。陳流といえば意地悪そうな悪役や汚れ役で功夫映画ではお馴染みの脇役俳優だ。『闘え!ドラゴン』では吹き矢の殺し屋、『風拳鬼手の道』では何宗道を裏切る側近、『雑家高手』では青白い顔の狂人、『獣 KEDAMONO』では極悪刑事を憎々しげに演じている。そんな彼が本作では「軽薄だが友達思いの相棒」という、韓國才あたりがよく演じているような役に扮しているのだから驚きだ。
白彪が鶏肉を食べてる横で文句を言いながら饅頭を食ったり、友の為に敵のアジトへ潜り込んだり、風俗嬢との交流では卑しくない笑顔を見せたり…こんな好感を抱けるような陳流なんて、果たして今まで見たことがあるだろうか?もしかしたら、ここだけでも本作は見る価値があるかも知れません(笑