
潮州怒漢
英題:The Hero of Chiu Chow/Hero of the waterfront
製作:1973年
▼李作楠監督作、アイザック・フロレンティーン監督作、鮑學禮監督作、松田優主演の格闘映画と、今月は大作や傑作を中心にレビュー構成を組んでいるが、今回はスーパーキッカー譚道良(タン・タオリャン)初主演作の登場である。その類稀なる足技で名高い譚道良は、本作に出演後は李小龍の後釜を求めていたゴールデンハーベストで数本の作品に主演。その後は李作楠など名匠の元で活躍を続けていった。
彼自身はご存知の通りプライベートでの素行の悪さが有名だが、技量に関しては文句無し(ただし足技限定で・笑)のお方である。そんな彼が最初で最後の劉家良(ラウ・カーリョン)とコラボを果たしたのが本作で、劇中の功夫アクションはすこぶる良質だ。李小龍と張徹作品に譚道良の足技を加えたそのスタイルは、後年の足技を格好良く見せようとしすぎる譚道良スタイルとは一線を画しており、今見ると中々新鮮でもある。
■物語はタイトルそのまんまに、港の労働者と悪らつな雇い主との攻防を描いた物語である。大勢の労働者たちに対し、雇い主側が給料の支払いに応じなかったことが原因で、港町は一触即発の状態となっていた。この騒動に功夫の達人である譚道良が乗り出し、問題の解決に奔走していく事になる…のだが、雇い主側は断固として支払うことを拒否し続け、遂には目障りな譚道良を潰してしまおうと強硬手段に乗り出した。
これにより身内が殺された譚道良は雇い主である苗天に反旗を翻し、本拠地である製鉄所に押し入って苗天を倒す(この場面、もしかして『酔拳2』の元ネタか?)のだが、真の敵は苗天を裏で操っていた知事・孟昭勲だった。孟昭勲は先手を打って譚道良の母や妻子を誘拐し、殴りこみに現れた譚道良を卑怯な手段で戦闘不能にしてしまう。妻子や母と共に監禁された譚道良は怪我を押して脱出を図るが、途中で母が死んで脱出が発覚してしまう。
四方八方敵だらけという不利な状況の中、譚道良は孟昭勲とその一味を相手取って最後の死闘を繰り広げるが…。
▲労働者と雇い主との対立…これと同様の図式は『空手ヘラクレス』でも展開されていたが、本作に動員されるエキストラや功夫アクションのクオリティは、『空手ヘラクレス』とは比較にならないほど大きい。
劉家良の参加も含め、いかに譚道良を売り出そうとプッシュしていたかが窺い知れるが、一方でストーリーはやたらめったら暗いのだ。オチは『レディ・ハード/香港大捜査線』の逆パターンだし、悲劇の連続だけで押し切る物語はジャッキーの『ファイティングモンキー昇龍拳』を髣髴とさせるほど。どうしてこんなにネガティブな内容になってしまったのだろうか?
当時のヒット作である李小龍の『危機一発』『怒りの鉄拳』や張徹の諸作品は、全て悲劇とその反動で爆発させる功夫アクションが必須だった。本作もそれにあやかって悲劇に走ったようだが、李小龍や張徹は悲劇であっても中身は面白かったのに対し、本作では単に悲劇"だけ"で終わっているのだ。
悲劇という引き金は容易に引けるが、傑作となるには的を射抜かなくてはならない。本作は残念ながらその的を外してしまった…ということなのだろう。ところで本作の根本となる雇い主と労働者たちの骨肉の争いだが、どことなく近年の派遣切り騒動を彷彿とさせる気がするのは気のせいだろうか…(爆