
「デッドロックII」
原題:UNDISPUTED II: LAST MAN STANDING/UNDISPUTED 2
制作:2006年
▼それにしても、つくづくアイザック・フロテンティーンという男は奔放な人である。
『ブラック・ソルジャー』で世界観の構築に失敗したアイザック監督は、それ以降の作品では徹底して格闘アクションありきの舞台設定を打ち出している。『アルティメット・ディシジョン』では銃器の使えない孤島、『人質奪還』では四方八方敵だらけの戦地、そして本作は逃げ場の無い監獄と裏の闘技場…といった具合に、とにかく格闘アクションを盛り込むための仕掛けを重視している。そのため格闘映画ファンからも絶大な信頼を寄せられているアイザック監督だが、今回の舞台である監獄はちょっと新鮮味に欠けていた。
監獄アクションというものは大体ストーリーが決まっている。何らかの事情で主人公がムショ入りし、厳しい監獄の掟を体験しつつ巨悪(大抵は悪徳刑務所所長だが、背後にマフィアなどの大きな後ろ盾が存在する場合があり、刑務所内での勢力闘争にも巻き込まれる)と対峙し、仲の良くなった囚人が死んだり他の囚人と打ち解けたりして、最終的には刑務所から出る(暴動・脱獄・司法取引など)…という一連の流れはよくあるパターンだ。
■マイケル・ジェイ・ホワイトは落ち目のボクサーチャンピオン。遠くロシアの地でくだらないCM出演の仕事を引き受けていたが、刑務所兼裏の闘技場を主催するマフィアが彼を狙っていた。この裏の闘技場では賭け事で巨額の金が動いているのだが、現チャンプのスコット・アドキンスがあまりにも強すぎるので賭けのバランスが崩壊しつつあった。そこでマフィアはマイケルを無実の罪で監獄送りにし、スコットにぶつけようと企んだのだ。
当然逮捕されたマイケルはこれに従うはずも無く、刑務所所長やスコットに反発してばかり。その都度懲罰を受けたりしながらも、遂にはスコットと戦うために裏の闘技場へと降り立った。しかしスコット側がマイケルのセコンドに付いた同室の囚人を麻薬で買収。薬を一服盛られたマイケルはあっという間に倒されてしまった。意識を取り戻したマイケルはその囚人を問い詰めようとするのだが、囚人は良心の呵責から自殺してしまっていた。スコットににじり寄るマイケルは勢いで所長を殴り飛ばし、極寒の雪の中で晒し物にされてしまう。
しかし他の囚人たちが庇ってくれたおかげで一命をとりとめたマイケルは、かつて特殊部隊に属していた車椅子の老人から指導を受け、雪辱を晴らして刑務所から出るために猛特訓を開始した。拳闘士であるマイケルは足技に対する耐性が無いため、まずはスコットが繰り出す蹴り技封じを身に付け、続いて関節技も体得した。様々な者の思いが交錯する中、最後のリングへと挙がるマイケルは、スコットとのリベンジマッチに挑む!
▲監獄プラス格闘映画…過去にもこの手の作品は存在したし、本作も上記のパターン通りに進んでいく。要するに監獄アクションというものは、いかにこのパターンから他と違うものを創り出すか(それでいて完全にパターンから逸れてしまってはいけない)で良し悪しが決まってくるものである。そういう意味では定石通りのパターンに終始し、オチが尻すぼみになってしまった『NO RULES/ノー・ルール』は良い作品だったとは言えないのだろう。
本作も物語の前半まではよくある展開ばかりで「う~ん…」と思っていたのだが、後半で同室の囚人が死んでからは物語のトーンが徐々に変わっていく。最初こそはマフィアや所長に対して恨みの念を抱いていたマイケル。刑務所に入る前からその横柄な態度は一貫されており、鉄格子の向こうへ行ってしまった後も彼は頑なに我を貫いている。しかし彼は屈辱的な敗北や車椅子の老人との出会いで変わり、ライバルと決着を付けるためにひたすらトレーニングに打ち込んでいくのだ。
このマイケルの心境の変化は、そのまま彼のファイトスタイルにも現れている。マイケルは落ちぶれてはいるが元チャンプというだけあって、その腕前はかなりのもの。しかし彼の拳は本能の赴くままに振り上げられ、動きもどこかぎこちなかった。一方スコットは冷酷非常ではあるものの、卑怯な真似を一切嫌うという根っからのファイター気質な性格の持ち主で、彼の拳や蹴りに一切の迷いは感じられない。
だが、今度こそ勝利を手にするために自身を改めたマイケルの拳は、ラストの決戦で伸びやかにスコットへと炸裂する。このへんの主人公の演出と格闘シーンの演出が同調する様は、ただ殴りあうだけのマーシャルアーツ映画では、滅多にお目にかけられない秀逸な場面だ。監獄アクションとマーシャルアーツ映画の凡庸さを一度に脱却してしまうとは、流石は格闘映画バカ一代・アイザック監督である。マイケルVSスコットという夢の対決だけでも十分お釣りが返ってくる秀作。格闘映画ファンは必見だ!