『Angry Tiger/Spirits of Bruce Lee』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


Angry Tiger/Spirits of Bruce Lee
製作:1973年

▼李小龍が香港を席巻した頃、多くのバッタもんスターが現れた。が、バッタもんとまではいかずとも、李小龍的なアプローチを試みた既存のスターたちもいた。白彪、田鵬、そして本作の主演である陳惠敏(チャーリー・チャン)もそうだった。彼の場合は日本初お目見えとなった『空手ヘラクレス』の時からそんな感じで、『空手ヘラクレス』は拳を封印した陳惠敏が楊斯を倒すという薄っぺらい『ドラゴン危機一発』的な作品だった。
そしてこの映画も同じ様に『危機一発』の要素を持ち込んだものである。なにしろ『危機一発』同様にタイ(フィリピン?)で撮影されているからだ。熱気ムンムンのド田舎で濃い顔の男どもを陳惠敏が倒す本作は『危機一発』を髣髴とさせる。中文タイトルが不明で、もしかすると本作はタイ映画の可能性も考えられるが…。

■タイへ兄を探して降り立った陳惠敏は、そこで悪党を蹴散らす現地のナイスガイと出会った。
しかし兄は行方不明となっており、陳惠敏は兄を探してタイの地を放浪する。その後、滞在しているホテルの支配人のつてで華僑のおじさんと知り合えた陳惠敏。おじさんの家は喫茶店を経営しており、そこには都合よく可愛い娘(仮にタイの苗可秀と呼称します)もいたりした。
ところが従業員のデブが兄のペンダントを持っているではないか?デブとタイの苗可秀曰く、陳惠敏の兄は必死に何かを伝えようとしながら事切れ、2人にペンダントを渡したという。埋葬されていた兄と対面し、悲しみに暮れる陳惠敏は、必ず仇を討つと墓前で誓うのだった。
 それからおじさんの家へお世話になることになった陳惠敏だが、とある賭け事で兄の時計を担保として出している男を発見!そいつを問い詰めたところ「別の男からもらった」と言う。その時計を譲ったオヤジに「兄貴を殺したのは貴様か!?」と詰め寄る陳惠敏。オヤジが言うには"ミン・パン・チェン"という名のボスの命令でやったと白状した。
"ミン・パン・チェン"は功夫使いの手下を多く保有する悪党の親玉で、陳惠敏はタイの苗可秀らを巻き込みたくないと申し出るが、あくまでおじさんは協力すると言ってくれた。が、そんないい人たちを巻き添えにしないように、陳惠敏は皆が寝静まった夜に行動を開始した。
 敵の屋敷に潜入する陳惠敏(ちょっと『燃えよドラゴン』っぽい)。しかしボスを討ち損ね、なんとか屋敷からナイスガイの手を借りて脱出に成功した。一方で敵も黙っておらず、おじさんの家に火を放ったが、一行は既に脱出していて事なきを得た。「俺のとばっちりでこんなことに…!」足に怪我を負っている陳惠敏は涙を呑んだ。
そこからナイスガイの屋敷探索を挟んで(ナイスガイはやっぱり潜入捜査官だった!)、ついに傷の癒えた陳惠敏はおじさん一行と共に(笑)敵の本拠へと乗り込む!
 どうにかボスを打ち倒すがおじさんがやられ、更に敵に取り囲まれる陳惠敏一行!東映カラテ映画のようなムチ使いと日本人武道家(ただの浴衣着たおっさん)とのバトルの行方は…!?

▲本作を一言で表すなら、「綺麗な陳惠敏主演作」といったところだろう。
陳惠敏の主演作にはドロドロとしたエロいシーン、敵味方が容赦なく殺される、陳惠敏自身も役柄があまりいいものではない、そもそもストーリーが陰惨…といった点が挙げられる。ところが面白い事に、本作にはそれらの要素が全く無いのだ!死んでるのは敵ばかりで、味方の犠牲もラストまで最小限に抑えられている。
そればかりかアットホームな雰囲気のおじさん一行とのやりとり、『ドラゴン危機一発』とは間逆のエンディングなど、いつもの陳惠敏作品にはなかったポイントが多く見られる。アクション・ストーリー共にあまりいいものではないが、彼の作品としてはかなり小奇麗な一本だ。正直同じ『危機一発』的な作品としては『空手ヘラクレス』より本作が好きかな?