
神拳大戰快鎗手
英題:Return of the Chinese Boxer
製作:1977年
▼数々の奇天烈なアイデアで功夫映画ファンを楽しませてくれるジミー先生。そんな彼の作品の中でも、最も奇抜な作品として有名なのがこの『神拳大戰快鎗手』です。
かつて私はジミー先生の『片腕カンフー対空とぶギロチン』で大きなショックを受けました。お世辞にも功夫の腕前は上手くないように見えるものの、次から次に登場する強烈なキャラクター、そして極悪非道な主人公の姿は未曽有のインパクトを私に与えてくれたのです。
そして今回紹介するこの作品は、その時感じた衝撃を再び体感させてくれる程の衝撃作でした……。
■(※…本作はかなり奇抜な話なのでオチまで書いていますが、そのオチはかなり強引に解釈しているので参考程度にご覧ください)
物語はとある日本の武家屋敷から始まる。そこでは中国の皇帝を暗殺する計画が練られており、薛漢(シェ・ハン)の率いる暗殺団が派遣される事となった。機関車に乗って中国大陸を進む(!)暗殺団は、途中で盗賊団の襲撃を受けるものの、なんとか都へと到着する。
こうして連中は皇帝への謁見に臨んだ…のだが、既に皇帝も暗殺団の存在には気づいており、あの盗賊団も実は皇帝が差し向けた刺客であった。結局、暗殺団は謁見中に行動を起こすことが出来ず、計画を変更して外出中の皇帝を襲うことにした。だが、暗殺団の放った刺客は神拳の使い手・ジミー先生によって倒されてしまう。
暗殺団はターゲットを皇帝の娘に変えるが、またしてもジミー先生の妨害により失敗。二度も顔に泥を塗られた暗殺団は彼の命を狙い、くノ一と全身にナイフを装備した用心棒を派遣する。しかし、『片腕カンフー対空とぶギロチン』でも見せた重力無視の歩行術と必殺パンチを習得しているジミー先生の敵ではなかった。
もはや皇帝のことなどすっかり忘れ、ジミー先生を倒すのに躍起になっている暗殺団御一行。彼らは格闘トーナメントを開催し、ジミー先生に勝てる実力者を探し出そうとしていた。金剛(カム・コン)や高飛(コー・フェイ)といった武芸者たちの戦いは支離滅裂を極め、最終的には金剛の優勝で幕を閉じたようだ。
一方、くノ一は中国在住のサムライガンマン・龍飛(ロン・フェイ)に協力を依頼していた。2人は暗殺団とは別に行動しようとしているようだが…?あくる日、暗殺団の金剛は皇帝の娘を襲撃しようとしたが、ジミー先生に圧倒的な実力差を見せつけられて完敗する。
金剛は敗北を恥じて切腹し、暗殺団は次に2番手の柔道家を呼び出そうとした。ところが、彼は先のトーナメント後に現れた謎のムエタイコンビから挑戦を受け、巧みなコンビネーションの前に負けて腹を切ってしまっていた。薛漢は彼らを言いくるめてジミー先生と戦わせるが、こんなイロモノでは当然勝てるはずもなかった。
ここまで来ると後が無い暗殺団は、なんと先のトーナメントで死亡した龍世家・高強・高飛をゾンビとして蘇生!皇帝の娘を誘拐し、ジミー先生に彼らをぶつけたのである。これにはさすがのジミー先生もお手上げ…かと思いきや、そこに以前襲いかかってきたナイフの用心棒が再び登場する。
ジミー先生は彼を利用し、どうにかゾンビを撃退することができた。残るは薛漢とくノ一、そして龍飛だ!早々に薛漢を始末してくノ一を捕らえると、そこに龍飛が完全武装でやって来た。二丁拳銃だけでも厄介なのに、銃身の多い異様な銃まで持ち出してきた龍飛には、今度こそジミー先生も絶体絶命なのか?!
だがしかし、ジミー先生はこんなこともあろうかと自分のダミー人形をしこたま並べた物置を用意していた(笑)!卑怯千万な戦いの果てに、勝利したのは当然のようにジミー先生であった。そのころ、誘拐された皇帝の娘は日本に拉致され、皇帝暗殺の黒幕の元に引き渡されていた。
そこで彼女は、驚くべきことに黒幕を殺して自らも自殺してしまう。全ては遥か彼方の悪を倒すための皇帝の策であり、彼女の尊い犠牲をもってして行われた決死行だったのだ(推測)。遠方の地で果てた皇帝の娘のことを想いつつ、ジミー先生は荒野へと消えていくのだった…。
▼徹頭徹尾濃縮ジミー映画!もう凄すぎてロクな言葉が出てきません!噂には聞いていましたが、まさかこれほど凄まじい映画だったとは…。
とにかく本作は最初から最後まで徹底してジミー作品らしいアバンギャルドさに満ち溢れています。いつにもまして卑怯で強いジミー先生、何の脈略もなく始まる格闘トーナメント、これはゾンビですか?と問いたくなるような死者トリオ、そしてダミー人形の館……次から次へと飛び出すアイディアの数々には、誰であろうと抱腹絶倒間違いなしです。
これまでジミー先生は数々のバカ映画を手掛けてきましたが、本作は他の諸作と比べてネタの濃さが半端ではなく、まさに「ジミー作品らしさ」を結晶にして抽出したらこうなるんだろうな…という感じの作品に仕上がっています。
まさにジミー作品の総決算というべき本作。脚本はあの支離滅裂な展開で有名な古龍(クー・ロン)が担当していますが、今回はその支離滅裂さが良い方向に働いた貴重な成功例と見ていいかもしれませんね。…しかしジミー先生、こんな映画まだまだあるんですよね?(爆