五つの赤い風船 - FLIGHT(アルバム第5集part2) (URC, 1971)
五つの赤い風船 - FLIGHT(アルバム第5集part2) (URC, 1971) :
Recorded at アオイスタジオ, April 8, 9, 11, 12, 24 & May 9, 10, 14, 1971
Released by URC Record URG-4007, July 10, 1971
ジャケットアート・木村道弘
全曲作詞作曲・西岡たかし, expect as indicated.
(Side A)
A1. ボクは風 - 3:34
A2. そんな気が… - 4:22
A3. つまらない… - 8:27
A4. 小石をけってみよう - 2:46
A5. ふる里の言葉は - 4:13
(Side B)
B1. 風がなにかを - 3:50
B2. 同じ穴のなんとかさ! - 4:01
B3. めめずはん - 0:47
B4. キリンさん - 2:43
B5. 淋しいサイの目 (作詞・浅井彰) - 8:43
B6. さァ、これでやっと - 4:24
[ 五つの赤い風船 Five Red Balloons ]
西岡たかし - vocal, guitar, 12strings guitar, flat mandolin,timpani
東祥高 - piano, organ, celesta
藤原秀子 - vocal
長野隆 - vocal, bass, piano
・『僕は広野に一人いる』(URC, URL-1026~7, May 1972) *2LP、ロサンゼルス録音・スタジオ&ライヴ
・『ゲートは終わり~解散記念実況盤』(URC, URL-1028~30, October 1972) *3LP、1972年7月30日・8月31日の解散コンサートを収録
の2作で解散してしまい、西岡たかしも「五つの赤い風船は1971年で解散したかった」と証言しています。五つの赤い風船のアルバムは、『イン・コンサート』までの4作のアルバムを編集したメジャー発売の日本ヴィクター盤『五つの赤い風船 - フォーク・アルバム(第一集)』(日本Victor, 1969)、『五つの赤い風船 - フォーク・アルバム(第二集)』(日本Victor, 1971)と西岡たかしのソロ・アルバム『溶け出したガラス箱』(URC, 1970)をすでにご紹介していますので、この『NEW SKY(アルバム第5集part1)』『FLIGHT(アルバム第5集part2)』を2枚合わせて1作として日本のロック・アルバム・トップ50の47位に上げている1957年生まれのイギリスのロック・ミュージシャン&音楽批評家、ジュリアン・コープの日本のロック史研究書『ジャップロック・サンプラー』2007の評を引いておきましょう。上から目線の表現や読者の予備知識を顧慮しないアーティストやアルバムへの言及(しかしエムティディとの類似の指摘はさすがです)に反発する方もいらっしゃるかもしれませんが、そのあたりもイギリス人らしい批評と言えます。
●47位・五つの赤い風船
『NEW SKY』『FLIGHT』
『時計じかけのオレンジ』のサントラに収録されたエリカ・エイゲンの「灯台守と結婚したい」、モー・タッカーがヴェルヴェット・アンダーグラウンドで歌ったバラード「アフター・アワーズ」と「アイム・スティッキン・ウィズ・ユー」、そして『天国から落ちた男』でスティーヴ・マーティンとバーナデッド・ピーターズがデュエットする超キュートな端唄「イチゴの片思い」――こんな曲が半数を占めるアルバムを想像してほしい。それと同時に、ティム・バックレーがストレート・レコードから出したLP『ブルー・アフタヌーン』と、カルチャーの超スウィートな『トゥー・セヴンス・クラッシュ』を合わせたようなスタイルで、けれどもエムティディの『芽生えの時』風に男女が歌う、多幸感に満ちた陶酔的なコズミック・フォーク・バラードも数曲収録したアルバムを想像してほしい。さらにそうした楽曲の一部が、ロルフ・ウルリッヒ・カイザー風に12インチ・アナログ盤の片面すべてを占めていると想像してほしい。OK、じゃあ後はそうしたLPが2枚あり、それがアンダーグラウンド・レコード・クラブというカルト・レーベルから1年置きにリリースされたと想像してもらえたら、これで五つの赤い風船の出所が正確につかめるはずだ。それは都会的なトーチ・ソング、田舎のアツアツな屋内キャンプファイア、そして超越的にトリップした瞑想的スペース・フォークの奇妙な混成だ。いずれのLPも、コズミックに広々とした見開きのジャケットに包まれ、メインのヴォーカルは女性シンガーの藤原秀子が取っている。曲を書いたのはそこそこ伝説的な日本のアルバム、だが正直、わたしにはあまりピンと来ない『溶け出したガラス箱』の立役者だった西岡たかし。しかしながらこの2枚のLPは大いに気に入っているので、47位に忍ばせてみた。というのも'70年代初期のジャパニーズ・フォーク・シーンにはほとんど関心が持てないというのに、この2作品だけは四六時中聴いている始末なのである。というわけでこのレヴューでは、2枚のLPを同時に取り上げさせてもらったが、2012年までにはみんなにもこのレコードをチェックする時間が取れているはずだし、できれば気に入っていてほしいと思っている。
(翻訳・白夜書房2008年)
(旧記事を手直しし、再掲載しました。)