アイアン・バタフライ(6) デンマークTV 1970 (MV, 1970) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

アイアン・バタフライ - デンマークTV 1970 (MV, TV Broadcast, 1970)
アイアン・バタフライ Iron Butterfly - Live at Danish TV 1970 (Full Concert) :  

Soundtracks Released by Purple Pyramid Records, as the album " Live in Copenhagen 1971", CLP 1909 (CD), 2014
Audio & Video Remastered by Bruno Samppa, 2015
Restored Footage (no watermarks / timecodes)
All Songs written by Bushy, Ingle, Dorman, Pinera, Reinhardt except 01,03 with Lyrics by Robert Woods Edmonson, and 05 written by Ingle only.
(Tracklist)
01. Soldier In Our Town - 4:16
02. Stone Believer - 4:43
03. Easy Rider - 3:45
04. Butterfly Bleu - 23:55
05. In-a-Gadda-Da-Vida - 24:27
[ Iron Butterfly ]
Ron Bushy - drums, percussion
Doug Ingle - keyboards, percussion, lead vocals
Lee Dorman - bass, vocals
Mike Pinera - guitar, talk box, lead vocals
Larry "Rhino" Reinhardt - guitar, vocals 

 2017年になってDVD化されたアイアン・バタフライの発掘映像が本作で、デンマークのテレビ用の1時間の公開ライヴを収録したものです。ジャケットでは1970年とされていますが実際は1971年4月の収録と判明しており、いずれにせよマイク・ピネラとライノ・ラインハルトという二人のスーパー・ギタリストを迎えた5人編成の最強ラインナップ、しかしギターがエリック・ブランだった本来のバタフライとは音楽性が変わってしまったアルバム『Metamorphosis (変身)』'70のプロモーション・ツアー終盤のヨーロッパ・ツアーからの収録です。このヨーロッパ・ツアーからは'71年1月24日のストックホルム、1月26日のコペンハーゲンのコンサートがラジオ中継されており(セットリストはどちらも同一)、アメリカのPyramid Recordsから2014年にCD化され発売されていましたが、ストックホルムもコペンハーゲンの方も映像が残っているようでストックホルムはオフィシャル、コペンハーゲンはコレクターズ・プレスでDVD化されているようですが、そちらの映像はサイト上にアップされていないようですし、ストックホルムとコペンハーゲンの収録はコンサート会場ですので(イエスとダブルビルのコンサートで、コペンハーゲンのCDではバタフライとイエスのジョイント・ジャムセッョンが収録されています)、B/W映像ながら観客を入れたテレビ用のスタジオ・ライヴの本作はハイ・クォリティーな映像では随一でしょう。1時間で全5曲(!)中「ガダ・ダ・ビダ」以外の4曲は『変身』からの選曲、スタジオ盤では14分の「Butterfly Bleu」が24分弱に、またスタジオ盤で17分だった「In-a-Gadda-Da-Vida」が24分を越える長時間演奏になっているのは圧巻ですが、ピネラとライノ、特にヴォーカルでもギターの特殊エフェクターのトーク・ボックスでも大活躍するピネラの存在感が本来のリーダーでリード・ヴォーカリストのダグ・イングルを圧倒しており、オルガンのみならずエレクトリック・ピアノを併用したイングルのキーボード・プレイにもオルガンに徹していたブラン在籍時代のバタフライの時のような覇気と冴えが見られないのが気になります。ピネラとライノを中心としたバンドとすればこのバタフライの2ギター編成のサウンドは凄まじく、しかも余裕でこなしている実力には圧倒されます。しかしイングルの存在感の稀薄さでも伝わってくるように、すでにこれはダグ・イングル率いるオリジナル・バタフライのコンセプトではなく、バンドとしての寿命はここまでで、これが最後の輝きだったのでしょう。他のメンバーが次のバンド活動に移っていった中、「ガダ・ダ・ビダ」の楽曲印税で一生生活できるほどになったイングルはバタフライの解散とともにローカル・バンドでたまに演奏するくらいの事実上の引退を選びます。このライヴを観てもイングルだけがテンションの低い様子なのは明らかで、これが最後の仕事だという思いがあったのでしょう。時期的には早いストックホルムの発掘ライヴを差し置いてこちらを先にご紹介するのは、ライヴ映像を堪能していただきたかったからです。ついでに通販サイトの解説文もご紹介しておきましょう。
[ 商品説明:メーカーインフォより ]
ニューロック花盛りの60年代末期にあって17分にも及ぶ「In-A-Gadda-Da-Vida」を大ヒットさせ、3000万枚を売ったという歴史的な名バンド。しかし、彼らの"バンド"としての実力はほとんど知られていません。本作に収められているのは、1970年に出演したデンマークのテレビ番組"DANISH TV"。IRON BUTTERFLYは70年代に突入するや、次代のハードロックに座を譲るように解散していったわけですが、その最終作『METAMORPHOSIS』リリース時代の映像です。モノクロ番組なのですが、その画質はデジタル収録/配信に慣れきった現代の眼でもで音声も鉄壁なSBDでありそのクオリティーは完璧!1時間枠のスタジオライヴ番組だけに、通常コンサート通りとはいきませんが、その分生演奏の機微は最高級。セットは当時の新作『METAMORPHOSIS』から4曲「Soldier In Our Town」「Stone Believer」「Easy Rider」「Butterfly Bleu」が披露され、ラストに必殺の「In-A-Gadda-Da-Vida」が締める構成。メンバーも『METAMORPHOSIS』と同じ5人編成です。縦横無尽のドラミングが暴れまくり、艶やかなスライドギターが宙を舞う。そのスペーシーでサイケデリックなサウンドは、60年代末期でしかあり得ない。何と言っても凄いのは幻想感。大暴れするビートも、囁くようなワウワウも、狂ったトーキングモジュレーターも、すべてがブッ飛んでいる。本人たちは熱く情熱のままにロックしているだけなのでしょうが、同じ情熱で今演奏しても、絶対に生まれ得ないカオスが渦巻く。現場で吸い込んでいる空気そのものにナニかが混じっているようなトリップ感が耳直結SBDで流し込まれ、脳ミソの中に小宇宙で広がっていくのです。こればかりは「百聞は一見にしかず」。千万の単語を連ねても伝わらないでしょうが、本作を一瞬でもご覧いただけば感じていただけるでしょう。IRON BUTTERFLYは元より、GRATEFUL DEADやVANILLA FUDGE、ジミヘン、CREAM、初期PINK FLOYD等々の名作群が発散していたのと同じ匂い……いえ、それ以上。生演奏だからこその濃度、映像だからこその密度までも伴って、ムンムンに薫ってくるのです。ピッキング1つ、ピアニッシモからフォルテシモへのダイナミズム……そのすべてがスタジオライヴだからこそ鮮烈で、映像だからこそどこまでもサイケデリック。これが"60年代"という時代がたどり着いた結論であり、"70年代"へと受け継がれていったもの。それが一体何だったのか。私たちが愛して止まない"ロック"とは、本当は何者なのか。それを極上のPROショットで2017年に伝えてくれる永久保存の1枚。

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)