謎のカルト・ムーヴィー&サウンドトラック | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ザ・ヴァンパイアズ・サウンド・インコンポレーション - サイケデリック・ダンス・パーティー (Mercury, 1969)
A1 The Lions And The Cucumber
A2 Psycho Contact - Part One
A3 There Is No Satisfaction
A4 Psycho Contact - Part Two
A5 The Message
A6 Psycho Contact - Part Three
(Seite 2)
B1 Ghosts Or Good And Bad Onions
B2 Psycho Contact - Part Four
B3 Countdown To Nowhere
B4 Psycho Contact - Part Five
B5 Droge Cx 9
Released by Mercury International 134 615 MFY, 1969
[ The Vampires' Sound Incorporation ]
Manfred Hübler (?) - composer, arrangement
Siegfried Schwab (1945.4.5-2024.1.11) - composer, arrangement, featuring guitarist
Profile: An obscure German 1960's psychedelic exploitation band, the project of soundtrack composer Manfred Hübler, and notable for featuring Sigi Schwab, aptly playing a music of that eccentric Wolfgang Dauner Quintett "Oimels" style, yet so much more chic and clichéd, sometimes towards Okko's "Sitar & Electronics" realms.

 このアルバムはYouTubeのお薦め動画に出てきて知ったので、何のインフォメーションもなしに聴くのがいいと思います。これでもけっこう変な物までくまなく聴いてきたつもりですが、本作が紹介された文献を見たことがありません。一応1969年のドイツ産サイケデリック・ロックのアルバムですが、2016年にスペインのインディー・レーベル、Wah Wha RecordsからLP再発されたきりで、CD化も行われていなければコレクターズ・アイテムとしてUnofficialリリースも行われていないため、ほぼまったくの無名盤と言って良いでしょう。一応各種ディスコグラフィー・サイトで調べてみたところ、作曲家のマンフレッド・ヒュブラーと作曲家・ギタリストのジークフリート・シュワブによるプロジェクト・アルバムだそうで、ジークフリート・シュワブについては生没年も判明しましたが、マンフレッド・ヒュブラーについては本作以外にはやはりシュワブとの共作名義で1995年に『Vampiros Lesbos: Sexadelic Dance Party』というアルバムをリリースしている以外調べがつきませんでした。ディスコグラフィー・サイトによると本作はウォルフガング・ダウナー・クインテットのジャズ・ロック作『Oimels』に似たスタイルを持ち、オッコー(Okko)のエキゾチック音楽『Sitar & Electronic』と似たサウンドが散見されるアルバムとされています。ジャンルとしては「Rounge」「Psychedelic」で、一種のサイケデリック・ロック風ムード音楽です。
Manfred Hübler & Siegfried Schwab - Vampiros Lesbos: Sexadelic Dance Party (Crippled Dick Hot Wax 022, 1995)
 ところがヒュブラーとシュワブの手がけた仕事を追ってみると、本作(そして1995年リリースの『Vampiros Lesbos: Sexadelic Dance Party』)はどうやら1971年7月西ドイツ公開・1973年スペイン公開の西ドイツ・スペイン合作映画『Vampyros Lesbos』(Fénix Films/CCC Telecine Film, Directed by Jesús Franco)のサウンドトラックとして使われた、というのが実態だったようです。より正確に言えば、1971年の映画『Vampyros Lesbos』のサウンドトラックに1969年の本作『The Vampires' Sound Incorporation』が使用され、映画用に再編集されたサウンドトラック・ヴァージョンが1995年になって再録音、またはリミックスされ『Vampiros Lesbos: Sexadelic Dance Party』としてリリースされた、という流れになるようです。しかも「初のレズビアン吸血鬼映画」という『Vampyros Lesbos』はヨーロッパで好評を博してヒット作となり、1995年にリバイバル公開され、1995年版の『Vampiros Lesbos: Sexadelic Dance Party』は全英オルタナティブ・チャートでトップ10ヒットになった、というから驚きです。サイケデリックなラウンジ・ジャズ・ロックが受ける要素は‘90年代イギリスのクラブ・シーンでは十分にあった訳で、なんとトルコで1970年6月~7月に5週間で撮影されたという『Vampyros Lesbos』は耽美系の吸血鬼ホラー・レズビアン・ポルノ映画のようですが、本作がヒットしたため監督のジェス・フランコはレズビアン・ホラー・ポルノ映画を次々と撮り、映画は2000年に初DVD化(日本盤DVD『ヴァンピロス・レスボス』も2003年代発売)、2008年にはマシュー・サリバ監督により忠実なリメイクが製作されており、今や一種のカルト・ムーヴィー化されているようです。音楽記事で始めたつもりがカルト映画の紹介記事になってしまいましたが、映画のオリジナル・ポスターに加え、YouTubeに予告編、タイトルバック、名場面集が見つかりましたので、ご興味をそそられた方はご覧ください。
Trailer: