ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム (Live, 1970.8.22) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム (Live, 1970.8.22)
Recorded and Shooted Live at the 田園コロシアム, 東京, August 22, 1970 

Also released the album “ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム”, Polydor MP-9361~2, 2LP, February 20, 1971
(Tracklist)
00:00 素晴らしい旅行
02:40 スージー・Q
06:41 アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー
11:13 MC
11:40 ルート66!
14:17 ドッグ・オブ・ザ・ベイ
17:16 ルーキー・ルーキー
20:04 トラベリン・バンド
22:32 都会
25:42 [ オリジナルメドレー ] 
花の首飾り~坊や歌っておくれ~モナリザの微笑み~青い鳥~坊や歌っておくれ
30:22 ヘイ・ジュテーム
34:22 エニーバディズ・アンサー
39:39 ハートブレイカー
45:58 怒りの鐘を鳴らせ
49:45 ラヴ・ラヴ・ラヴ
[ ザ・タイガース ]
沢田研二 - ボーカル、タンバリン
岸部修三 - ベース、コーラス
森本太郎 - リードギター、コーラス
瞳みのる - ドラムス
岸部シロー - リズムギター、タンバリン、コーラス
(ゲストミュージシャン)
クニ河内 - キーボード
(Original Polydor “ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム” LP Front Cover & Side A Label)

 このライヴの会場はかつて東急東横線田園調布駅下車徒歩3分にあった多目的スタジアム「田園コロシアム」(昭和11年/1936年設立、昭和64年/1989年閉鎖)で、元々大正時代から慶應大学の野球練習場だった跡地に建てられ、主にテニス選手権に使用されており、音楽コンサート会場として使用されたのはこのタイガースのワンマン・ライヴ(当時の呼称では「リサイタル」)が初めてだったそうです。そしてこの野外コンサートはザ・タイガース6作目のアルバムにして初の2枚組ライヴ盤『ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム』としてレコード化されるとともに、約1時間分の抜粋が映像で残されました。オリジナル・メンバーの加橋かつみ(リード・ギター、ボーカル)が昭和44年(1969年)3月に脱退(実際は渡辺プロによる強制追放)後、バンドはベーシストの岸部修三の弟、岸部シローを迎えて活動していましたが、タイガースには熱狂的なファンがついていたものの昭和43年がピークだったグループ・サウンズのブームは昭和44年を迎えると急速に下火になり、昭和44年から昭和45年にかけて大半のバンドが活動休止・解散に追い込まれていました。またビートルズやローリング・ストーンズを始めとするビート・グループの流れをくんだ日本のグループ・サウンズと当時最新の英米のニュー・ロックの解離も昭和44年以降には大きくなり、英米ロックの日本流翻案を指針としていたバンド勢も急激に音楽性の変化を求められることになります。グループ・サウンズNo.1人気を誇るタイガースもその趨勢には逆らえず、デビュー・アルバムにしてライヴ盤『ザ・タイガース・オン・ステージ』(1967年11月5日発売)以来のライヴ盤『ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム』はタイガース初の2枚組LPにして(そして1971年7月10日発売の次作『ザ・タイガース・フィナーレ』は1971年1月24日の日本武道館・解散コンサートを収めたベスト・アルバム的ライヴ盤ですから、唯一の)ニュー・ロック・アルバムになりました。
 オリジナル盤2枚組アナログLP『ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム』では、この1970年8月22日の田園コロシアムでのコンサートは以下のように収録されています。90分を越える収録時間ですから、一部の曲には編集が施され、曲順もコンサート通りではないかもしれませんが(実際、1時間の抜粋ライヴ映像とはかなり曲順が異なるようです)、曲目はほぼ田園コロシアム・リサイタルの全貌を収めたものと思われます。

(Side A)
①ホンキートンク・ウィメン
②サティスファクション
③スージーQ
④アイ・ブット・ア・スペル・オン・ユー
⑤ルート66
⑥ドック・オブ・ザ・ベイ
(Side B)
①ビー・ジーズ・メドレー: 獄中の手紙~ ワーズ〜ジョーク
②ルーキー・ルーキー
③コットン・フィールズ
④監獄ロック
⑤トラベリン・バンド
⑥ラレーニャ
⑦ホワット・アイ・セイ
(Side C)
①都会
②ザ・タイガース・オリジナル・メドレー : 花の首飾り〜坊や歌っておくれ〜モナリザの微笑~青い鳥~坊や歌っておくれ
③スマイル・フォー・ミー
④散りゆく青春
⑤美しき愛の掟
⑥想い出を胸に
⑦ヘイ・ジュテーム
(Side D)
①エニバディ・アンサー
②ハート・ブレイカー
③素晴しい旅行
④怒りの鐘を鳴らせ
⑤ラヴ・ラヴ・ラヴ

 タイガースがデビュー前から得意としたストーンズ、加橋かつみさん在籍時から取り上げてきたビージーズのカヴァーに加え、CCRやグランド・ファンク・レイルロードのカヴァーが目立ちます。加橋さんの愛唱曲のドノヴァンの「ラレーニャ」、また加橋さんのリード・ヴォーカル曲だった「花の首飾り」は岸辺シローさんが歌っており、のちのタレント活動のイメージからは大きく違って、アメリカ遊学帰りでミュージシャン間でも洋楽センスの高さで一目置かれていたというシローさんは加橋さんのパートを補って違和感のない、見事な歌唱です。タイガースは本作収録の約半年後には解散してしまいます。また沢田研二さんは本作に先だって1969年12月15日に初ソロ・アルバム『JULIE』を成功させており、同作はタイガース5作目で1970年12月15日発売のフォーク色の強いスタジオ盤『自由と憧れと友情』よりも高いチャート順位(オリコン2位)を達成していました。映像版で1曲目に収められている「素晴らしい旅行」も、タイガースのシングルA面としては初めての沢田研二さんのオリジナル曲です。この田園コロシアム・リサイタルの時点で渡辺プロの画策としては(沢田さんと岸辺修三さんをPYGに、森本さんとシローさんを「タロー&シロー」に、引退の意志を固めていた瞳さんは意向通りに)、タイガースはすでに解散までのスケジュール(半年後!)が織りこみ済みだったと思われますが、それだけにこの大会場コンサートでは渡辺プロのコントロール以上にやりたいことを思いきりやる、タイガース自身の指向通りのライヴが行えたように思えます。観ごたえのあるライヴ映像です。また加橋さん在籍時に、質量ともにこのくらい充実したコンサート映像が残されていないのが残念な気もしてきます。