レディー・ガガ「デイヴッド・ボウイ・トリビュート」 | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

レディー・ガガ - デイヴィッド・ボウイ・トリビュート (Grammy Award, 2016.2.15)
レディー・ガガ Lady Gaga - デイヴッド・ボウイ・トリビュート Tribute to David bowie at Grammy 2016 (Live, TV Broadcast, 2016)
Shooted and Recorded at Grammy Award, February 15, 2006 

1. Space Oddity
2. Changes
3. Ziggy Stardust
4. Suffragette City
5. Rebel Rebel
6. Fashion
7. Fame
8. Let's Dance
9. Heroes
Total Time: 6:25

 これはすごい。6分25秒のメドレーでデイヴッド・ボウイの代表曲を一気に9曲(!)駆け抜けています。アレンジも完璧なら振り付けも完璧、このままマキシ・シングルとしてリリースしても良いほどの完成度です(音質は先に上げたリンクの方が良いですが、画像はステージの固定ショットだけなので、パフォーマンスは音質・画質とも劣りますが後に引いたリンクの方が楽しめます)。デイヴッド・ボウイは1947年1月8日生まれ、2016年1月10日に享年69歳で癌により亡くなりました。晩年1年間は余命宣告を受けて家族との休暇や観光を楽しみつつ、69歳の誕生日に遺作としてアルバム『★(Black Star)』をリリースした二日後の逝去でした。『★(Black Star)』は全米No.1ヒットとなり、2017年度グラミー賞で5部門を獲得する大ヒット作になりますが、それに先立ってボウイの逝去から1か月後、2016年度グラミー賞でボウイの追悼コーナーが設けられ、それを担当したのがこのレディー・ガガの「デイヴッド・ボウイ・トリビュート」ステージです。
 ここでのレディー・ガガ(1986~)さんは、同年4月に亡くなるプリンス(1958~2016)の後継者とも言えるような冴えまくったパフォーマンスぶりで、ガガさんが生まれる前のデイヴッド・ボウイのヒット曲の数々を見事にメドレー化しています。1曲目「Space Oddity」はボウイの初ヒットとなった曲で1969年のアルバム『スペイス・オディティ (David Bowie)』収録、2曲目「Changes」はボウイ自身がフェバリット・アルバムに上げるグラム・ロック前夜の『ハンキー・ドリー (Hunky Dory)』(1971年)冒頭曲、3曲目「Ziggy Stardust」と4曲目「Suffragette City」は言わずと知れた1972年の大出世作『ジギー・スターダスト (旧邦題『屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群』The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars)』より、5「Rebel Rebel」は1974年の『ダイアモンドの犬 (Diamond Dogs)』と、ここまでは年代順で、6「Fashion」は1980年の『スケアリー・モンスターズ (Scary Monsters)』、7曲目はアメリカでNo.1ヒットとなった「Fame」(ボウイのオリジナル・ヴァージョンはジョン・レノンが参加)で1975年のアルバム『ヤング・アメリカンズ (Young Americans)』より、8曲目は'80年代ボウイの最大のヒット曲になった1983年の「Let's Dance」(『レッツ・ダンス (Let's Dance)』収録)、そしてメドレー最後の9曲目「Heroes」は1978年のドイツ録音アルバム『英雄夢語り (ヒーローズ) ("Heroes")』で、有名な「we Can Be Heroes Just One Day」のフレーズで結ばれます。パフォーマンス時間が6分半、そこにボウイの代表曲を一気に10曲近く詰めこむとなったら、これに勝る選曲はないでしょう。もっとも年代の新しい曲は「Let's Dance」ですが、同曲以降ボウイは国際的な大ヒット・シングルを放っていないので、あえて「Space Oddity」から「Let's Dance」までから選曲したのは妥当なトリビュート・パフォーマンスと思えます。

 これに足すとすれば1973年のアルバム『アラジン・セイン (Aladdin Sane)』からの「The Jean Genie」や1976年のアルバム『ステイション・トゥ・ステイション (Station to Station)』からの「Stay」、1977年のベルリン録音アルバム『ロウ (Low)』からの「Sound and Vision」あたりでしょうが、ストーンズ風の「The Jean Genie」は「Rebel Rebel」とかぶりますし、最後に「Heroes」で盛り上げるなら「Stay」や「Sound and Vision」は割愛というのも実に「わかっている」選曲です。ボウイの逝去を受けて1か月、グラミー賞授賞式にデイヴッド・ボウイ・トリビュート企画が組まれてレディー・ガガが担当することになったのは1月下旬でしょうから(おそらくプリンスにも打診されたと思われますが、この2か月後に急逝してしまうプリンスにはすでに余力はなかったでしょう)、3週間以下、実質2週間程度で持ち時間から逆算したセットリスト、アレンジ、ミュージシャンとダンサーの手配、ステージセット、パフォーマンスのリハーサルが練られたと思うと、日本の紅白歌合戦の企画ステージなどとは大人と子供ほどの企画力と実力差を感じます。ガガさん自身のセルフ・プロデュース力なしにはこれだけのステージはこなせる訳はなく、ボウイ全盛期のアルバムを聴きこんでいないと(また数々のボウイのライヴ映像を観ていないと)これだけの出来にはならなかったと思える、ステージの中心となるガガさん自身が選曲もアレンジも振り付けも仕切ったパフォーマンスです。6分半でクラブ公演の1セットあまりの観応えがあり、これができたのは全盛期のボウイ自身と全盛期のプリンスくらいと思うと、特にガガさんの音楽に関心のない筆者さえ圧倒されるばかりです。