ジャップロックサンプラー・トップ50(ジュリアン・コープ選) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

Julian Cope (1957~)

 前回ご紹介した「Krautrocksampler TOP50」(『Krautrocksampler: One Head's Guide to the Great Kosmische Musik - 1968 Onwards』1995より)に続いて、イギリスのミュージシャン兼音楽批評家、ジュリアン・コープの著書『ジャップロックサンプラー (Japrocksampler: How the Post-war Japanese Blew Their Minds on Rock 'n' Roll)』(2007, 日本語訳2008、奥田祐士訳・白夜書房刊)巻末のコープ選「ジャップロック・トップ50」を転載します。「クラウトロック・トップ50」と違うのは、「クラウトロック」ではアーティストのアルファベット順に50作のアルバムが上げられていたのに対し、「ジャップロック・トップ50」はコープの評価と好みによって順位がつけられたリストになっていることです。統一前の東西ドイツでもっとも国際的に成功したのはクラフトワークとスコーピオンズでしょうが、ノヴァーリスやスコーピオンズ、アクセプトら英米ロックのスタイルのプログレッシヴ・ロックやハード・ロックのバンドはコープの定義する「クラウトロック」からは除外されていました。同様に、どころか『ジャップロックサンプラー』ではさらにコープは徹底していて、日本の国内チャートで成功を収めたバンドは一切無視に近く、現代音楽家がロックにアプローチした実験的作品や、アンダーグラウンド・シーンのバンドの海賊盤、ほとんど知られない無名バンドの自主制作盤を積極的に選出しています。通常「日本のロック名盤」として上げられるのは、『ジャックスの世界』『切狂言』『SATORI』『マジカル・パワー』『悪魔と11人の子供達』『外道』『一触即発』など、ほんの数枚しかありません。
 コープが突出した存在として上げるのは1位~5位のフラワー・トラベリン・バンド、スピード・グルー&シンキ、裸のラリーズ、ファー・イースト・ファミリー・バンド(また前身バンドのファーラウト)、寺山修司の劇団「天井桟敷」の座付音楽家だったJ・A・シーザーで、特にフラワー・トラベリン・バンドの『SATORI』についてはレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ブラック・サバスの最高傑作をもしのぐロック史の古典、ジャップロック不動のNo.1アルバムとしています。はっぴいえんどに連なるフォーク・ロック~ソフト・ロックのバンドを一切無視しているのも痛快で、この50作を聴いている日本本国のリスナーこそむしろ少ないほどの、とんでもない「日本(ジャップ)ロック」名盤リストをツッコミながらお楽しみください。しかもコープが持ち上げたせいで、欧米でのCD復刻やYouTubeへのアップまで、このコープ選ジャップロック・トップ50は持続的な反響と支持層を呼んでいるのです。
Japrocksampler: Top 50 Albums compiled by Julian Cope

The list from the book 'Japrocksampler', by Julian Cope:  

1. フラワー・トラベリン・バンド『SATORI』(Atlantic, 1971) :  

2. スピード・グルー&シンキ『前夜-イヴ-』(Atlantic, 1971)
3. 裸のラリーズ『Heavier Than A Death in The Family』(Ain't Group Sounds, 1995)
4. ファー・イースト・ファミリー・バンド『多元宇宙への旅』(Columbia/ Land, 1976)
5. J・A・シーザーと悪魔の家『国境巡礼歌』(Victor, 1973)
6. LOVE LIVE LIFF + ONE『Love Will Make A Better You』(King, 1971)
7. 佐藤充彦とサウンドブレーカーズ『恍惚の昭和元禄』(東芝Liberty, 1971)
8. 芸能山城組『恐山』(Victor/Invitation, 1976)
9. 小杉武久『キャッチ・ウェイブ』(CBS Sony, 1975)
10. J・A・シーザーと悪魔の家『邪宗門』(Victor, 1972)
11. ファーラウト『日本人』(Columbia/DENON, 1973)
12. 裸のラリーズ『Blind Baby Has Its Mothers Eyes』(Japanese Rock, 2003)
13. 東京キッドブラザース『書を捨てよ街へ出よう』(Victor, 1971)
14. ファー・イースト・ファミリー・バンド『NIPPONJIN』(Vertigo, 1975)
15. スピード・グルー&シンキ『スピード・グルー&シンキ』(Atlantic, 1972)
16. ピープル『Ceremony - Budda Meets Rock 仏教とロック』(テイチク, 1971)
17. ブルース・クリエイション『悪魔と11人の子供達』(Columbia, 1971)
18. フラワー・トラベリン・バンド『メイド・イン・ジャパン』(Atlantic, 1972)
19. Karuna Khyal(カルナ・カヤール)『ALOMONI 1985』(Voice, 1974)
20. 裸のラリーズ『溺れる飛べない鳥は水羽が必要 (YODO-GO-A-GO-GO)』(10th Avenue Freak Out, 2005)
21. 佐藤充彦&ニューハード・オーケストラ『邪馬台国』(東芝Far East, 1972)
22. マジカル・パワー・マコ『マジカル・パワー』(Polydor, 1974)
23. タージ・マハル旅行団『Live Stockholm July, 1971』(Drone Syndicate, 1998)
24. マジカル・パワー・マコ『ジャンプ』(Polydor, 1977)
25. クニ河内とかれのともだち『切狂言』(King/London, 1970)
26. ブラスト・バーン『DEBON』(Voice, 1974)
27. 石川晶とカウント・バッファローズ『ウガンダ』(東芝, 1972)
28. フラワー・トラベリン・バンド『エニウェア』(Philips, 1970)
29. J・A・シーザーと四瑠舞『身毒丸』(Victor, 1978)
30. 外道『外道』(Trio Record/Showboat, 1974)
31. 裸のラリーズ『December's Black Children』(Not on label, 1989)
32. だててんりゅう『1971』(Dragon Freak, 1996)
33. イースト・パイオニック・シンフォニア『イースト・パイオニック・シンフォニア』(L.A.M. Record, 1976)
34. ツトム・ヤマシタ&佐藤充彦『ものみな壇ノ浦へ』(Columbia, 1971)
35. タージ・マハル旅行団『July 15, 1972』(CBS Sony, 1972)
36. 一柳慧『オペラ横尾忠則を歌う』(The End, 1969)
37. タージ・マハル旅行団『August 1974』(Columbia, 1974)
38. 青蝕器『organs of blue eclipse (1975-77)』(シワ, 2005)
39. 湯浅譲二『舞踏劇のための音楽』(Omega Point, 2004)
40. グループ音楽『Music For Group Ongaku』(Rare Sound Art, 1996)
41. ファー・イースト・ファミリー・バンド『地球空洞説』(Columbia/MU Land, 1975)
42. ジャックス『ジャックスの世界』(東芝Express, 1968)
43. 3/3『さんぶんのさん』(LLX, 1975)
44. ブルース・クリエイション『白熱のブルース・クリエイション』(URC/Kitty, 1989)
45. オムニバス『幻野』(URC/創世記レコード, 1971)
46. 一柳慧/マイケル・ランタ/小杉武久『IMPROVISATION SEP, 1975』(Iskra, 1975)
47. 五つの赤い風船『New Sky』『Flight』(URC, 1971)
48. ○△□『まるさんかくしかく』(private press, 1973)
49. 四人囃子『一触即発』(東宝/TAM, 1974)
50. ヘルプフル・ソウル『ソウルの追求』(RCA Victor, 1969)