女性とADHDの苦しみ | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

女児のADHDは発見されにくい。なぜ静かに苦しみ、思春期以降に悪化するか? 
 今回はForbes Japanのネット記事から全文引用させていただきます。ADHD(注意欠陥・多動性障害)という診断の難しく、対処の困難な発達障害・症候群について理解の一助になれば幸いです。 

 一般的に、小学生の男児が注意欠陥・多動性障害(ADHD)に苦しんでいるだろうと予測することは容易である。しかし、女児は、成人女性も含めてADHDと診断されることが少ないため、病名を知ることなくその症状に苦しんでいるのだ。なぜこうしたことが起きるのか、説明したい。 注意欠陥・多動性障害(ADHD)は基本的に男児に起こりうる、との誤解がある。しかし実際は、女児の診断される頻度が数倍低いだけである。ある報告によると、ADHDの女性の50~75%が、自分の診断を知らずに生活しているという。これはADHDの女性たちの生活、仕事、自尊心に影響し、深刻な健康問題や法的問題にまで発展する可能性がある。 

■落ち着きのない男の子、だけじゃない

 ADHDは神経系の発達障害であり、平均して10%の子供にみられる。注意力の維持、教育や仕事への集中力、衝動性、過剰な運動などに関連した症状が複合的にあらわれる。そして、今後何十年もの間、たとえベストを尽くしたとしても、締め切りを忘れたり、指示を混乱させたり、空港に到着する日を間違えたりすることがあるのだ。 「ADHD」という言葉から連想されるのは、教室で飛び跳ねる小学生である。しかし、この症状は男子に限ったことではない。臨床心理学者でネイキッド・ハート基金の専門家であるタチアナ・モロゾワは、「女性や少女にも、男性や少年と同じADHDの症状が見られます。しかし、女性の場合、不注意、過剰な社交性、忘れっぽさ、過剰なおしゃべり、時間管理の困難さなどが多くみうけられ、男性の場合、多動性や衝動性がより多くみうけられるのです」と語る。 タチアナ・モロゾアと共に働く小児神経科医のスヴャトスラフ・ドヴブニャは、小児期にはADHDの女児と男児の比率は1:3だが、年齢が上がるにつれてこの差は小さくなるという。これにはいくつかの理由があるが、主な理由としては、医師や教師、親が、衝動性や多動性といった、通常男児に見られるADHDの症状に注意を向けやすいという事実があげられる。注意欠陥に関連する症状は、通常、ぼんやりしたり怠けたりすることにあらわれる。結局のところ、衝動性や多動性を特徴とする人の場合、それを無視することは難しい。他人から見て目立つからだ。

 もうひとつの理由は、ADHDの女児や女性は不安障害やうつ病を発症しやすく、注意欠陥に伴うADHDの症状をさらに覆い隠してしまうため、診断やケアが行き届かないということだろう。 また、女児がADHDと診断されるのは、男児より平均5年遅い。エストロゲンが分泌される思春期以降に症状が顕著になるからだ。男児の場合、思春期を迎えるとADHDの症状は通常減少するが、女児の場合は違う。女性のADHDの重症度は、ホルモン周期によって決まることが多い。月経前のホルモンの変動は、症状の悪化につながるのだ。さらに、エストロゲンとプロゲステロンのレベルが上昇すると、ADHD治療薬の効果が減少する可能性がある。 このように、明らかな性差があるにもかかわらず、研究は主に男性のADHDに焦点を当てている。女性のADHDを研究する科学的研究の量は徐々に増えてきているが、男性や男児に関する同様の研究よりもまだ少ない。さらに、ADHDの外面は社会的偏見に影響される。一般的に女性は、衝動的な浪費、気分の落ち込み、せっかちな性格があると信じられている。その結果、医療的ケアが必要な人が診断やサポートを受けられる機会が限られるのだ。

◼️女性と女児は沈黙の中で苦しんでいる

 2023年、『Journal of Attention Disorders』誌は、女性と女児におけるADHDの発現に関する研究の系統的レビューを発表した。著者らは、大人になる前に診断を受けなかった場合、感情的な幸福感、人間関係を形成・維持する能力、支配感などに影響を及ぼすといった、長期的な否定的結果をもたらす可能性があると結論づけた。診断の見逃しや遅れは、女性の自尊心、精神的健康、全体的な幸福に悪影響を及ぼす可能性がある。著者らは、女性や女児が「沈黙のうちに苦しむ」ことがあまりにも多いことを強調している。 ADHDはまた、薬物やアルコールの乱用、危険な性行動、欠勤、犯罪といった破壊的な行動を引き起こすこともある。だからこそ多くの女性にとって、診断は命綱なのだ。自分に何が起きているのかを理解することで、症状に対処する力が湧いてくる。 ADHDはしばしば経済的な問題と関連している。Guardian Moneyが行った調査によると、ADHDの人は、病気でない人に比べて衝動的な支出をする可能性が4倍高いことがわかった。さらに、借金に直面する可能性も3倍近く高いという。別のスウェーデンの研究では、経済的な困難がADHD患者の自殺リスクが4倍高いことと関連していることが示された。同時に、ステレオタイプに起因する軽率な浪費癖を恥じるのは女性である。

■ADHDでは出世できない? 

 アメリカ心理学会によると、ADHDの女性に対する支援や治療がないことは非常に危険で、診断を受けていない女性に比べて、若くして自殺を図ったり、怪我をしたりする可能性が2~3倍高いという。ADHDが発見されないと、双極性障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害につながる可能性がある。 ADHDは男性の症候群であると考えられており、女性におけるその発現は気分の浮き沈みと関連しているという事実に加えて、この疾患は他の神話とも関連している。ADHDの人は出世できないという誤解があるのだ。あるいは、甘やかすとADHDになり、罰は教育の最良の方法であると。ほとんどの場合これは逆効果となり、子どもにしばしば非常に深刻な心理的問題をさらに引き起こす。もうひとつの神話は、テレビやガジェットがすべての原因だというものだ。タチアナ・モロゾワは、「このような誤解は、単に別の禁止事項を生むだけで、適切な支援プログラムを見つける助けにはなりません」と語る。

 医師の間でも、ADHDについてはよくある誤解がある。境界性パーソナリティ障害と混同したり、性格的な特徴だと決めつけたり、中には女性を嘲笑する人さえいるのだ。ほとんどの人はこの症候群をよく理解しておらず、女性に現れるADHDを探すことはまずない。今のところ、多くの専門家の間では、ADHDがどのようなものかについては気難しい男の子を連想するのが支配的である。 ADHDは治すことはできないが、多くの症状は対処することができる。ADHDの人は千差万別で、年齢とともにニーズも変わるため、万能なアドバイスはない。そのため、支援プログラムは柔軟であるべきだ。 例えば、集中するために周囲の雑音が助けになる人もいれば、完全な静寂が必要な人もいる。常に多様性と変化を必要とする人もいれば、永続性を必要とする人もいる。大きなタスクに対処するのが難しいため、小さなステップに分けるのが有効な人もいれば、感覚的・運動的な活動で休憩が絶対に必要な人もいるのだ。
(以上、記事全文)