谷岡ヤスジ「(仮)サンマの死」(『ヤスジのドッチラケ節』より) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

 秋と言えばサンマ、サンマと言えば秋ですから、10月のうちに載せておきましょう。これは以前ご紹介した、同じ巨匠の手になる生と死の本質を抉った傑作「(仮)ウナギの死」と同工異曲の作品ですが、「ウナギ」の方は『ヤスジのアニマルどー!!』、本作は『ヤスジのドッチラケ節』によって別々の連載で発表されており、出典が明らかではなくどちらが先かは断言できません。「ウナギ」が5ページを費やしていたのに対しこちらは3ページとより簡潔であり、「ウナギ」が盛夏なら「サンマ」は秋で、これほど発想の類似が見られるならば同年の近い時期に執筆されたと見ても見当違いではないとするなら、「ウナギ」→「サンマ」の順で成立したとも推定されます。

 長さもちょうど比例しますが、「ウナギの死」が短歌の気息で詠まれたものであれば「サンマの死」は俳句、しかも季語「さんま」を含む伝統的な有季俳諧で切れ字も入り(最後のサンマの台詞が「~かな」止めの効果を果たしています)オーソドックスな作品になったのは、ウナギとサンマという食材魚の格や身近さにもあると思われます。遠い地平線に傾斜したビル一棟、樹木一本はヤスジ作品ではおなじみの背景であり、この屋外でサンマの七輪焼きを食しているのはやはりヤスジ作品のレギュラー・キャラクターである百姓タゴか、はたまたチクリシェンシェーか、それとも哲人ペタシでしょうか。

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)