大傑作!サン・ラ - 世界の終焉 (MPS, 1971) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

サン・ラ - 世界の終焉 (MPS, 1971)
サン・ラ Sun Ra And His Intergalactic Research Arkestra ‎- 世界の終焉 It's After The End Of The World (MPS, 1971) :  

Released by Polygram/MPS Records MPS 2120748, 1971
Produced by Joachim E. Berendt
All composed and arranged by Sun Ra.
(Side 1)
A1. Strange Dreams - Strange Worlds - Black Myth / It's After the End of the World - 14:40
A2. Black Forest Myth - 9:15
(Side 2)
B1. Watusi, Egyptian March - 2:48
B2. Myth Versus Reality (The Myth-Science Approach) / Angelic Proclamation / Out in Space - 18:22
B3. Duos (Friendly Galaxy No. 2) - 4:42
[ Sun Ra And His Intergalactic Research Arkestra ]
Sun Ra - Farfisa organ, Hohner clavinet, piano, Rocksichord, Spacemaster organ, Minimoog, Hohner electra, vocals
Kwame Hadi - trumpet
Akh Tal Ebah - mellophone, trumpet
John Gilmore - tenor saxophone, percussion
Marshall Allen - alto saxophone, flute, oboe, piccolo, percussion
Pat Patrick - baritone saxophone, tenor saxophone, alto saxophone, clarinet, bass clarinet, flute, drums
Danny Davis, Absholom ben Shlomo - alto saxophone, flute, clarinet
Danny Thompson - baritone saxophone, alto saxophone, flute
Leroy Taylor - oboe, bass clarinet
Robert Cummings - bass clarinet
Augustus Browning - English horn
Alan Silva - violin, viola, cello, bass
Alejandro Blake Fearon - bass
Lex Humphries - drums
James Jackson - percussion, oboe, flute
Nimrod Hunt - hand drums
Hazoume - fireeater, dance, African percussion
Math Samba, Ife Tayo - dance, percussion
June Tyson - vocals 

(Original MPS "It's After The End Of The World" LP Liner Cover & Side 1 Label)
 文句なしにお薦めできる大傑作、しかもメジャーのポリグラム・レコーズ傘下のジャズ・レーベルMPSからのリリースですから演奏や選曲はもちろん、音質・編集も最高で、全国どこのCDショップでも通販サイトでも注文すれは容易に手に入る、よくぞ残してくれたと感謝感激のアルバムです。サン・ラのライヴ盤には決定版とも言える名盤がいくつもありますが、本作『世界の終焉 (It's After the End of the World)』(Polygram/MSP, 1971)はESP盤『Nothing Is...』1966と並んでサン・ラのアルバムとしては珍しく一般的なジャズの名盤ガイドブックなどにも紹介されることもある傑作です。1970年8月のフランスでのライヴ・アルバム『Nuits de la Fondation Maeght』Vol.1&Vol.2と、『Nuits~』からちょうど1年後の1971年8月のカリフォルニア(日付、会場不明)のライヴ・アルバム『Universe In Blue』の間に位置する1970年10月の西ドイツでのライヴ・アルバムで、二つの会場のジャズ祭からベスト・テイクが厳選され、またメジャーのポリドール/ポリグラム傘下のMSPレーベルから発売されたため、発表時から名作と名高いアルバムになりました。邦題は『世紀の終焉』で、'60年代の『サン・ラの太陽中心世界(The Heliocentric Worlds of Sun Ra)』(ESP, '65)と並ぶ代表作として日本盤もLP~CD時代を通して発売されており、演奏のテンションの高さ、選曲、録音いずれも非の打ち所のない完成度の高い作品で、サン・ラにとっては初めての最大手のメジャー・リリースになるべくしてなった感があります。なお本作は1998年に未収録曲を合わせた2回のコンサートのコンプリート版『Black Myth/Out in Space』としても発売されました。2か月前の『Nuits~』は勢い任せな演奏に面白みがあるアルバムですが現在は版権不明で廃盤状態が続いており、また『世紀の終焉』から10か月後の『Universe In Blue』もライヴ・アルバムながら初演曲にコンセプトを持たせた特殊な作品で、やはり『Nuits~』同様海賊盤CDが出回る状態が長く続き、ようやく本家サターン・レーベルから未収録曲・未編集テイクを含む完全版が正規リリースと思いきやダウンロード販売のみの現状を考えると、入手しやすくアーケストラの演奏もまとまりとバランスが良く、録音とジャケットも優れ、サン・ラのライヴ盤でも極上の部類に入る本作はこれからサン・ラの音楽を知りたい方にも文句なしにお勧めできる名盤です。『Nuits de la Fondation Maeght』に収められたサン・ラ初の海外ツアーになった8月のフランス・ツアーは大きな反響を呼び、一旦帰国したアーケストラは10月に今度はフランス、ドイツ、イギリスを回るヨーロッパ・ツアーを行いました。1970年二度目の海外ツアーから2回のドイツ公演を収録したのがこの『It's After the End of the World』で、8月のフランス公演をしのぐ激烈な演奏が聴けます。イギリス公演からの公式ライヴ収録は行われていませんが、この時の初のイギリス公演でデイヴィッド・トゥープは初めてサン・ラのライヴを体験し、トゥープ自身を含むイギリスの観客が受けた大きな衝撃の証言を残しています。

 サン・ラの場合膨大なスタジオ録音アルバムと膨大なライヴ・アルバムがあるのですが、スタジオ録音でもほとんどはスタジオ・ライヴ形式で録音され、ライヴ・アルバムの場合でも録音はライヴが初演になる新曲がほとんどか、再演でもまったくアレンジを一新しているのでスタジオ・アルバムもライヴ・アルバムもあまり区別はないと言えます。ただしサン・ラの自主レーベルであるサターンからのライヴ・アルバムは1971年ツアーのエジプト公演三部作のように数枚に渡るか、同じコンサートから数枚に分けて発売される場合も多いので、1枚だけ聴いてもライヴの全貌に迫れないきらいがあります。仏Shanderレーベルからの2枚組『Nuits~』もコンサート完全収録だけにそうした意味では散漫なのですが、ESPからの『Nothing Is...』や本作はレーベル側のプロデューサーによる編集によって完全版ではLP4枚分におよぶライヴ音源から1枚物に凝縮されています。どちらもこのライヴで初レコード化になる新曲からコンサート極めつけの代表曲をきっちり押さえて、曲順にも配慮し非常に完成度の高く密度の濃い、聴きごたえのあるアルバムに仕上げてあるのが長所になっています。1コンサートから完全収録した2枚組LP『Nuits~』は記録としては良く、優れた演奏が続きますが、ライヴを体験するのとレコード作品として聴くのでは完全収録のライヴはくり返し聴くには焦点が定まらない難点が出てきます。サターンからのライヴ盤でも1枚もののライヴ・アルバムで優れた作品はありますが、録音やジャケットといったパッケージ化では自主制作レーベルではどうしても貧弱になりがちです。それもサターンならではのゲリラ的にリリースされたアルバムならではの味なのですが、ヨーロッパ随一の老舗ポリグラム/ポリドールがクラシックの一流アーティストのアルバムにかけるのと同じくらいの予算と制作スタッフと技術で、1970年10月と11月のドイツの2か所のジャズ・フェスティヴァルを完全収録した上で吟味して選び抜き、1枚のライヴ・アルバムにまとめ上げた本作はレコード作品としてライヴの実体験とは異なる作品的価値があります。B2では2曲を編集して1曲にしてあり、B3は原題を改題して少し短く編集しアルバムのクロージング・ナンバーにしていますが、アーケストラの歌姫ジューン・タイソンのアカペラ・ヴォーカルで始まりバンドのアンサンブルが重なっていく冒頭から圧巻のA面の2曲は10月のフェスティヴァルのハイライト曲、B面の3曲ではB1、B2を11月のフェスティヴァルのハイライト曲とし、B3を10月収録の小曲で締めた構成もうまくいっています。Disc 2しか音源リンクはありませんが、2回のフェスティヴァル出演の完全版2枚組CD『Black Myth/Out in Space』の曲目も参考までに上げておきましょう。『Nothing Is』がのちに2CDの完全版『College Tour: Complete Nothing Is』としてもリリースされたように編集前の2コンサートを完全収録したノーカット版ですが、この完全版『世界の終焉』に当たる2枚組CD『Black Myth/Out in Space』はMPSから1998年にリリースされるもすぐに完売・廃盤になっており、サン・ラ作品のCD化でも中古市場でもっともプレミア価格が高騰しているアイテムながら、サン・ラ史上でも有数の名演ライヴがノーカット完全版最上級音質で聴けるアルバムとして、『世界の終焉』を堪能された方には多少のプレミア価格にひるまず見かけたら入手されるのをお薦めします。
Sun Ra and His Intergalactic Research Arkestra - Black Myth/Out in Space (Motor Music/MPS, 1998) (incomplete)

Disc One Recorded live at the Stadthalle as part of the Donaueschingen Musik Festival on October 17, 1970
Disc Two Recorded live at the Kongresshalle as part of the Berlin Jazz Festival on November 7, 1970.
Released by Motor Music, MPS 15289, 1998
(Tracklist)
(Disc One)
1-1. Black Forest Myth - 3:58
1-2. Friendly Galaxy No. 2 - 5:25
1-3. Journey Through the Outer Darkness - 12:58 (previously unreleased)
1-4. Strange Worlds/Black Myth/It's After the End of the World - 15:18
1-5. We'll Wait for You - 10:13 (previously unreleased)
(Disc Two) :  

2-2. Discipline Series - 3:28 (previously unreleased)
2-3. Walkin' on the Moon... - 9:02 (previously unreleased)
2-4. Outer Space Where I Came From [recitation] - 0:23 (previously unreleased)
2-5. Watusa - 2:44
2-6. Myth Versus Reality - 14:59
2-7. Theme of the Stargazers - 0:42 (previously unreleased)
2-8. Space Chants Medley: Second Stop Is Jupiter/Why Go to the Moon/Neptune - 5:42 (previously unreleased)
2-9. We Travel the Spaceways - 3:02 (previously unreleased)
[ Sun Ra And His Intergalactic Research Arkestra ]
Same as MPS 2120748

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)