ブルース・クリエイション - 白熱のブルース・クリエイション(Kitty/URC, 1989) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ブルース・クリエイション - 白熱のブルース・クリエイション(Kitty/URC, 1989)
(Reissued Toshiba CD Front Cover)
ブルース・クリエイション - 白熱のブルース・クリエイション (Kitty/URC, 1989) :  

Recorded live at 第3回全日本フォーク・ジャンボリー, August 7, 1971
Released by Kitty/URC H20K-25048, November 25, 1989
Reissued by Toshiba Records TOCT-10296, 「URCレアトラックシリーズ」, June 10, 1998
(Tracklist)
1. Rolling Stone (Morganfield) - 13:43
2. 悪い夢 (K. Takeda) - 7:42
3. Drinkin' Blues (K. Takeda) - 7:26
4. 悪魔と11人の子供達 (K. Takeda) - 8:07
5. Motherless Child (Traditional) / Understand (Lydia J. Miller) - 5:15
6. Tobacco Road (J.D. Loudermilk) - 11:10
[ ブルース・クリエイション Blue Creation ]
竹田和夫 - guitar
大沢博美 - vocal
佐伯正志 - bass
樋口昌行 - drums
with
カルメン・マキ - vocal on "Motherless Child / Understand"
(Original Kitty/URC "白熱のブルース・クリエイション" CD Front Cover & Liner Cover)
 1971年7月25日に日本コロムビア/DENONから同時リリースされた『悪魔と11人の子供たち』『カルメン・マキ / ブルース・クリエイション』から約2週間後に「第3回全日本フォーク・ジャンボリー」に出演した時のブルース・クリエイションをとらえた発掘ライヴ盤の本作こそは、発売即欧米のリスナーの間で大評判を呼び、'70年代初頭のヘヴィ・ギター・ロック最高峰のアルバムとしてたちまち古典的名盤の評価を獲得しヨーロッパ諸国で輸入盤が発売され、デビュー・アルバム『ブルース・クリエイション』(ポリドール, 1969年10月リリース)、ギタリスト竹田和夫以下のメンバーを一新したセカンド・アルバム『悪魔と11人の子供達』、カルメン・マキをヴォーカルに迎えたサード・アルバム『カルメン・マキ / ブルース・クリエイション』の国際的再評価をうながすとともに、ブルース・クリエイションの最高傑作と目されるようになった強烈なライヴ・アルバムです。のちの2005年、URCの版権移動に伴ってエイベックスから本作と2曲のみ重複する同時期の発掘ライヴ『In The Beginnings』がリリースされましたが、音質や内容は本作より落ちるため『白熱のブルース・クリエイション』ほど評価は高くなく、本作の補遺をなす位置づけをされています。1971年夏の時点で、1951年5月生まれのカルメン・マキさんは20歳になったばかり、1952年3月生まれの竹田和夫はまだ19歳でした。

 ヤードバーズやクリームの影響から出発した竹田和夫はデビュー・アルバムの時点でエリック・クラプトン、ジェフ・ベックを完璧に学びつくしており、『悪魔と11人の子供達』の制作時にはセカンド・アルバム『Paranoid』までを発表していたブラック・サバスのトニー・アイオミに傾倒していたのは『悪魔と11人の子供達』の作風からも明らかです。しかしライヴ・アルバムの本作ではクラプトン、ベック、アイオミの影響にとどまらない自由奔放なプレイで世界的にも当時トップクラスのギタリストたる実力を見せつけており、これが竹田を始めメンバー全員19歳のバンドというのは本当に驚異的です。のちにさらにメンバー・チェンジを経てクリエイションと改名し再デビューしたバンドはすっかり'70年代英米ロックの主流に添った作風にシフトしており、より音楽的にこなれた高い水準のアルバムをリリースし続けましたが、作風は次第にハード・ロックからクロスオーヴァーやAORに移行し、ブルース・クリエイション時代のような突出した存在とは見なされなくなりました。ミュージシャンの円熟というのも難しいものです。本作もジュリアン・コープが日本ロック史研究書『ジャップロック・サンプラー』2007(翻訳・2008年)で日本のロック名盤50選の44位に選出していますので(『悪魔と11人の子供達』は17位)、コープのレビューを引いておきましょう。

●ブルース・クリエイション
『白熱のブルース・クリエイション』
 フラワー・トラベリン・バンドの後ろにぴったりつける、野蛮なまでに黙示録的な、サバス風ポスト・オルタモントのブルースとも言うべきこのアルバムは、オリンピック重量挙げ選手のアーティスティックな手腕でプレイされた、工業的な強さを持つ素晴らしい作品だ。わずか6曲の怪物的なワークアウトしか収録していないこの全53分のアルバムで、竹田和夫とその一党は、ヘンドリックスの「ヴードゥー・チャイル」やトニー・アイオミの「眠れる村」のソロ、そしてありとあらゆる古典的な瞬間を臆面もなく引っぺがし、ドラマーの樋口晶之とベーシストの佐伯正志のリズム・セクションが曲をいちいち嵐のような轟音で貫いていくせいで、ヴォーカリストの大沢博美は、フラワー・トラベリン・バンドの最初のアルバム2作におけるジョー山中のように、すっかり孤立してしまう(そうさ、この手のぶっ飛ばし系サウンドは、シンガーがいなくなったって強力さに変わりはないんだ)。『白熱のブルース・クリエイション』は、マディ・ウォーターズによる「Rolling Stone」の15分近いヴァージョンで始まるが、やはり破壊力満点なフラワーの長尺ドローン「ルイジアナ・ブルース」と同様、曲はワン・コードにそぎ落とされている。その後に続く7分間の「悪い夢」も同じような胆汁質のナンバーで、竹田は『悪魔……』の溝という溝に焼きつけた白熱の輝きを、ここにもたっぷり注入している。サイド1を締めくくるのは、ニール・ヤングのようにプレイされる7分半のマイナー・ブルース「Drinkin' Blues」。シンガーの大沢は、「渚にて」を思わせる、か細い、不幸じみたトーンの歌声で、トラックまるごとをなんとも悲劇的な仕上がりにする。ここでの「悪魔と11人の子供達」は、抜群の出来だったオリジナル・ヴァージョンをも上回る出来栄えだが、『幻野コンサート』ヴァージョンの、信じられないようなダイナミズムはない。竹田は退屈そうなカルメン・マキを引きずり出し、5分間の「Understand」を共演する。ここで聴ける彼女のぎくしゃくした歌声は、見事なまでに耳障りだった初期のスージー・スーを思わせるものだ。『白熱のブルース・クリエイション』は、11分にわたる、ラディカルなまでに空っぽな「Tobacco Road」のカヴァーで幕となり、このリリースの直後にこんなにも素晴らしいバンドを解散させるなんて、竹田はいったい何が不満だったのだろう、とリスナーの頭を悩ませるのだった。
 (翻訳・白夜書房2008年)