シュテーデル美術館 - 025 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 シュテーデル美術館には、バルトロメオ・ヴェネトの『フローラ』(女性理想像)と呼ばれる絵がある。真偽のほどは判らないが、『ルクレチア・ボルジョア』の肖像画といわれるもので、これを見た瞬間、「あっ」と小さな声を発し、思わずドキッとする。「あの絵がここにあるなんて!」という驚きである。


遠い夏に想いを-Flora

 表題にはルクレチアのルの字もない。従って、この絵がルクレチアだという証拠はない。12号くらいの小さな絵だが、不思議な魅力がある絵だ。少女のような左の乳房が白い衣装から露わになり、右手に小さな花束をかざして、こちらを見つめるほっそりした女性の清楚だが冷たい表情はかすかな色気を匂わせている。思わず、その場に立ち竦んでしまうほどだった。


 ルクレチアの父はスペイン生まれのローマ教皇アレクサンデル6世、ローマカトリックが最も腐敗していた頃で、好色で戦闘的であった。兄は悪名高いチェザーレ・ボルジア。彼女は度重なる政略結婚に翻弄され続けて39歳で亡くなった。『世界悪女物語』(澁澤龍彦・河出文庫)の表紙にこの絵が使われている。


 レンブラントやルーベンス、ホルバイン、ブリューゲル、カナレットの有名なヴェネツィアの大作もあり、ボッティチェリのマドンナやマンテーニャまである。それに、以前紹介したティシュバインの『ローマのゲーテ』の本物がある。だがフランドル派の絵画が多いのが目立つ。


 更に、フェルメールの『地理学者』まである。フェルメ-ルの絵は世界中に30数点しか残っていないから、物凄く貴重な絵画である。


 小さいながらとてもいい美術館だ。全部見てもさして時間が掛らない。シュテーデルを出た時はまだ夕暮れまでは充分に時間があった。



 シュテーデル美術館が改装されることになり、これを機に主要な絵画を日本に貸し出すことになった。展覧会が3月3日~5月22日の期間、東京渋谷のザ・ミュージアムで開催されている。フェルメールの『地理学者』の絵も展示されている。但し、『フローラ』は来ていない。


遠い夏に想いを-Ticket

遠い夏に想いを-地理学者

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