2019年3月22日衆議院法務委員会 連れ去り容認は葛藤を生み犯罪をつくる

及び
**************
串田委員 日本維新の会の串田誠一です。

 今回の法案は判事が四十人ふえるということなんですが、
この中で、憲法を守るということを約束してくれている裁判官というのは何人いるんでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今回増員をお願いしております分の裁判官を含めまして、
裁判官はいずれも憲法に従って職責を果たしているものと承知しております。

串田委員 国民は、そう思っていない人は結構多いんですね。

 例えば、私、予算委員会でも質問させていただきましたが、
面会権というのがありまして、審判で裁判官は判断するんですが、
非常に良好な夫婦の中で、審判は、月に一回二時間、面会時間ですよ、月に一回二時間という裁判官が非常に実は多いんです。
この件は、きょう時間が少ないですから、また後日やりますけれども。

 裁判官は、憲法九十八条二項によって条約を誠実に遵守しなきゃいけないと、これは九十九条に示されています。
そして、
子どもの権利条約によると、共同して養育をするという条約を
日本は一九九四年に締結しているわけですよ、批准しているわけです。

 そうだとした場合、
共同で養育をするということを、審判を決定するときにもこれはしんしゃくしていかなきゃいけないんじゃないかと私は思っているんです。
九十八条二項に「誠実に遵守する」と書いてあるわけですから。
条約と法律は、法律の方が上なんでしょうか。
あるいは、勝手に判断していいんでしょうか。

 大臣、
法律の審判を決定するに当たって、
批准をした条約をしんしゃくする必要があるのかどうか、そして、これは
面会に関しても十分配慮しなければいけないのかどうか、
御答弁をいただきたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 憲法九十八条二項によって、
我が国が締結した条約及び
確立した国際法規、
これらを誠実に遵守する義務というのが記載されております。
また、
憲法の尊重義務というのも九十九条等に記載されているところでございます。

 そういったところで、一般的にはそうではございますが、
では、個別の条約においてどのような規範が定立され、あるいは、
この条約はどのような義務づけをしておるのか
ということに関しましては、
これは国際法規を所管する外務省にも確認しなければならないところでございますが、
一般論として申し上げて、
個々の司法権の判断におきましては、
そういった
一般的な憲法の尊重義務、あるいは、
確立された国際法規や
締結した条約
についてを
誠実に遵守しているということで判断されている状況
であろうと考えております。

串田委員 これは、一つ、先ほどずっと試験の問題がありましたが、
裁判官の司法試験の中に条約の問題が出ない、
司法研修所においても個々の条約の指導がない。
ですから、裁判官が、法律とひもづけられた条約の認識が全然ないんだと思います。

 ことしの二月に、
国連の子どもの権利委員会からの勧告の中に、
裁判官はもっと研修を受けさせるべきだと書いてあるわけです。
条約締結された場合には、
自分が今携わっている法律の解釈も、条約に従って非常に考慮しなきゃいけないという
教育あるいは研修をするというのは当たり前だと思うんですよ。
何のために九十八条二項があるんですか。
条約を遵守しろと書いてあるのに、
現場は全くその条約を無視している。
これは憲法違反だと私は思いますよ。この件に関しては後日また触れたいと思います。

 また、ちょっと別の件なんですけれども、ニュースの中で、
裁判官が非常に、そういう意味で、
憲法の問題、
憲法の体制、
特に反天皇制というものをペンネームでずっと書き続けている、あるいは、
自衛隊の派遣に関するデモに参加した上に、実名でそこで発言をしている
というのが報道されました。

 私は、普通の国民であれば、これは自由ですよ。
思想、良心の自由、表現の自由。
自由だと思うけれども、
裁判官は、裁判所法五十二条によって、
積極的な政治活動はできないと書いてある。
デモに参加して発言をする、あるいは
反天皇制をずっと別のペンネームで書き続ける、これは十年間ぐらいやられているという報道がありました。

 こういうことがあると、例えばその裁判官は家裁の裁判官らしいんですが、
片方は、自分と同じデモに参加した人あるいは共鳴している人、
片方はそうでない人
という場合には、やはり公平性は守られていないんじゃないかという国民の心配があるから、
この裁判所法が決められていると思うんです。

 こういうようなことに関して、今、そういうようなチェックをしているのか、
どういうふうにこれについては対応されようとしているのか、
お聞きしたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘の新聞報道の件に関しましては、
裁判官の私生活上の自由や思想、表現の自由にも配慮しつつ、
慎重に調査をしているところでございます。

 現時点では、新聞記事の対象となったと考えられます裁判官からの事情聴取等を行いましたものの、
本人は新聞記事に記載された事実関係を否定しておりまして、
服務規律違反の事実があったことは確認できていないというところでございます。

串田委員 はっきりと、いろいろとビデオも残っているでしょうし、
そういう否定をされたからといってそのままにするのではなくて、
やはりこれは、司法への信頼ということでありますので、
どういう考え方であるかは別にしても、
積極的な政治活動にやはり参加するということは、
裁判官としては適切ではないし、みずからそれを承諾して裁判官の職を選んだ以上は、
やはりこれは法律を遵守していただかなければいけないと思うので、
これは、やはり厳正な審査あるいは調査というものを続けていただきたいと思います。

 もう一つ、これは別の委員からもありました、
東京家庭裁判所の事件がありました。
これは、今、審議をされているところでありますので、もう全く、この問題であるということとは関係がありません。
ただ、私、入管法でも質問しているんです、この件に。
そして通告でも、それに近いものを通告しているので、
それとは関係ないんだけれども、事情がよく似ているので、
ちょっと一般論として質問させていただきたいんです。

 アメリカでは、
両親にいる子供を片方が連れ去った場合は、
これは、拉致だとか誘拐ということで刑事犯罪になるという州が多いですよ。
そしてそれは、全世界的にそういう扱い方になっていますね。
それで、アメリカの国内で連れ去られた場合には、
連れ去った人間は
犯罪人として容疑扱いされるから、
すぐにそれは国家が守ってくれて、戻すというような体制になっている。

 ところが、それがほかの国に連れ去られた場合には、
自分の国の法律は適用できないので、
ほかの国にも、この考え方というものはみんな納得しているので、
みんなで条約を締結しているのがハーグ条約ですよ。
日本は戻さないから、このハーグ条約の不履行国として今認定されているというのは御存じのとおりなんです。

 問題は、国内にいるアメリカ人と日本人が結婚して子供がいた場合です。
この場合に、どういう扱いになるかなんて、事前に勉強もしていませんし、調査もしていません。
そんなことが訪れるとは思っていないんです。

 突如、自分の奥さんが子供を連れ去った場合は、
そのアメリカ人にしてみれば、
自国と同じように、同じような扱い方がなされるだろうと思い込んでいるわけですよ。
だから、これは国が何とかやってくれるだろうと思って、地方の自治体に相談に行く。
ところが、地方の自治体は、日本は御存じのようにそこの点についてはほとんど無関心ですから、何とも返答がない。
そこで、その人はどうするかというと、国務省に相談に行きます。
そうしたら、国務省は、日本はけしからぬのだ、条約違反なんだということで、不履行国として国としては言っていますよと言う。
そして、それでもらちが明かないから、今度は大使館に相談に行っている。
大使館も同じような返答がある。

 私は、EUの代表部にも行きましたが、EUもやはり怒っていましたね。

 私が言いたいのは、こういうようなことが起きているときに、非常に感情的になりやすくなってしまうんですよ。
これは、日本人同士以上なんです。
日本人の場合には、連れ去りも、そんなのよくあるよねというような、それはひどいけれどもねというぐらいで済むんだけれども、
ほかの国からしてみれば犯罪なんですよ。
だから、それを国は守ってくれると思い込んでいたのに、守ってくれないという非常な絶望感、そういうようなものが発生しやすいんですよ。

 これは、それをそのままにしておくということは、
そうされてしまう側だけじゃないんです。
女性に対しても大変な危険が伴うんですよ。
そういう葛藤を生じるような制度のままにしておくということが、事件を発生させる温床になり得るんです。

 そういうような部分に関して、法務大臣、どのようなお考えですか。
こういうような葛藤が起き得るというようなことを、私は入管法でも指摘しましたよね。
文化が違うから、そこに衝突が発生しますよと説明しましたよね。
法務大臣、どうですか。
これは、今回の事件とは関係がない、一般論として質問させていただきます。

山下国務大臣 あくまで一般論でございます。

 アメリカにおいては、ペアレンタルキッドナップということで、
親による誘拐ということが犯罪化されている法制があるということは、一般的に承知しております。
これは、それぞれどのような法規制あるいは強行法規を持つかということは、それぞれの法文化によるところでございますので、そうしたことについてコメントは差し控えますが、
我々も、そういった国際基準というものを配意しながら、それに沿うような必要があれば法律を検討していくということで、
今般、民事執行法の改正案とともに、
ハーグ条約執行法に関しても関連法案を出させていただいているところでございます。
結果としてそういったところにもこの改正案が資するのではないかとも思っておりますので、
今私が申し上げられるのは以上のようなところでございます。

串田委員 この件はまた触れたいと思いますが、一点、こういう事件が起きたときに、
同じ場所に集合させるということは、私は必要ないんじゃないかと思っています。
大変、そういう意味で、
こういう高葛藤になり得るような状況のときの感情的な状況というのを、
再犯を防ぐためには、
同じ場所に集合させる、あるいは、
調停にしても何にしても、成立をするときには両当事者に出頭させることが多いんですよ、
同じ場所に出頭させるというようなことは、
これは考えていかなきゃいけないと思いますので、
提案だけさせていただきまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

2019 04 17衆議院法務委員会 串田議員 親の親権とは

及び
****************
串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 ハーグ条約の実施法も成立をいたしましたが、
これが一区切りではなくて、それこそ本格的に、
国内も条約を遵守した、世界から非難されない国にしていかなければならないんではないかと思いますので、
私は取り上げていきたいと思っております。

 一番最初に、小野瀬民事局長にお聞きをしたいんですけれども、
法律婚でない場合は、一方は子を養育しなくてもいいんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法律婚でない場合、例えば事実婚の場合でありましても、
例えばその父親が子の認知をしているということになりますと、
これは当然、法律上の親子関係はあるわけでございますので、
養育の義務等は負うということになろうかと思います。

串田委員 そうしますと、離婚した場合には親子関係はなくなるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 離婚しましても親子関係はなくなりません。

串田委員 そうすると、今の二つの答えを組み合わせると、
離婚しても、双方ともに子は養育をしなければならないという帰結でよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 離婚をしても、監護をしていない非監護親におきましても、
例えば養育費の支払い義務を負うなどの一定の責任は負うということになろうかと思います。

串田委員 養育をするというのは、養育費を払う、お金を払えば養育をするという、そういう理解を民事局長はされているという理解でよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 父母が婚姻中の場合ですと、共同親権ということになりますし、そこは原則として共同監護ということになります。

 ただ、離婚した場合には、現行の民法では、
その協議で一方を親権者と定めなければならない、また、
裁判上の離婚の場合には裁判所は一方を親権者と定めることになっておりまして、
離婚後は、日本の民法では、監護権という意味では単独になるというふうに考えております。

 ただ、それでありましても、先ほど申し上げましたように、
親であることには変わりはありませんので、
例えば養育費の支払い義務があるということになりますし、また、
例えば面会交流が認められる、
そういうことで子供に対しては引き続きかかわっていくことになろうかと思います。

串田委員 私の質問は、お金を払えば養育になるんですかと聞いたんですよ。その答えを答えてください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 なかなか、お金だけかと言われますと、
先ほど申し上げました面会交流ということもございますので、
そういったようなかかわりも
やはり親としてはしていくということが期待されているものだと思います。

串田委員 その面会も、例えば写真を、相手方が一方的に子供の写真を見せる、これは間接面会と言うんですって。
それは、子供の成長を見ることはできても、
その親は子供を養育しているとは私は思えないんですよ。

 お金を払っているから養育になるんだ、これでいいんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 面会交流の方法につきましては、
どのような方法が子供の利益にかなうのか、
こういった観点から判断されるべきものだと考えております。

 したがいまして、
個別の具体的な事情に応じて、適切な面会交流が行われることが望まれる
というふうに考えております。

串田委員 それでは、個別な具体例、よくある例を挙げますが、
一月に一回、二時間面会ができる、
それ以外は養育費を払うしかない、
これは養育というふうになるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 子供の利益にとってどういった程度のものが養育として望ましいのかというのは、
これはまさにケース・バイ・ケースでございます。

 したがいまして、委員御指摘のような形態のものが
子供の養育として望ましい適当な形態なのかどうかというのは、
そこはやはり、
子供の年齢ですとか、それぞれの生活状況といったものを踏まえた個別の事案における判断になろうかと思います。

串田委員 そうじゃないんですよ。
子どもの権利条約を一九九四年に批准しているわけでしょう。
そうしたらば、十八条で、共同で養育をすることになっているじゃないですか。
個別の具体例じゃなくて、共同で養育をするという条約に批准しているんでしょう、日本は。
違いますか。

小野瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の児童の権利条約の十八条でございますけれども、
児童の養育及び発達について
父母が共同の責任を有するという原則
についての認識
を確保するよう
最善の努力を払うことを規定したもの
と理解しておりまして、
離婚後における父母の共同監護の制度の導入については
明文の規定はないものと承知しております。
 
*注
「子どもの権利条約第18条

1.締約国は、

児童の養育及び発達について

父母が共同の責任を有するという原則

についての認識

を確保するために最善の努力を払う。

父母又は場合により法定保護者は、

児童の養育及び発達についての

第一義的な責任を有する。

児童の最善の利益は、これらの者の基本的な関心事項となるものとする。

2.締約国は、

この条約に定める権利を保障し及び促進するため、

父母及び法定保護者が児童の養育についての責任を遂行するに当たり

これらの者に対して適当な援助を与えるものとし、

また、児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保する。

 
 この条約の条項でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、
非監護親が
養育費の支払い義務を負っていることなどからいたしますれば、
この原則についての認識を確保するための措置
はとられているものと考えております。

 その上で、この条約には、
面会交流に関する具体的な基準等、
具体的な措置
については規定はございません。
面会交流が認められ得るということも、先ほど申し上げましたとおり、
権利条約の十八条に適切に対応していることの根拠となり得るものとは考えておりますけれども、
どのような頻度で面会交流を行うのが適切なのかは、
やはり個別具体的な事案ごとに判断すべきものであるというふうに考えております。

串田委員 そうやって勝手に解釈するのはいいんですが、
ことしの二月に国連から勧告を受けているわけでしょう、
約束を守っていないと。

 これは私が何度も言うと、大臣も余り、耳も痛いのかもしれませんけれども、
私が言わなくても、
諸外国が特集を組んで、
日本は条約を守らない国だ、
子供の権利を守らない国だ
と思って特集を組んで、
ずっと放映されているわけじゃないですか。
世界じゅうの人たちが、
日本は条約を守らない、
子供の権利を守らない、
こうやって、そのテレビを見て、
何て国なんだとほかの国はみんな思っているわけでしょう。
ですから、これを変えていきましょうという話を私はずっとしているわけです。

 ただ、私、非常に
一つは前向きな回答を
きのうの通告の段階で受けたんですが、
諸外国がどういうようなことをやっているのか
ということに関して
法務省は今どういう状況であるのか
ということをお答えいただけないでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、
離婚後の共同親権制度に関しまして
これまでも外国法の調査等を行ってきたところでありまして、
例えば平成二十六年度には、各国の離婚後の親権制度に関する調査研究を委託しております。

 これに加えまして、総理の方から、
民法を所管する法務省において引き続き検討させてまいりますとの答弁がありました。
その答弁を踏まえた大臣の指示に基づきまして、
本年三月二十九日でございますが、
外務省に対しまして、
離婚後の親権制度や子の養育のあり方等について調査依頼をしたところでございます。

 今回依頼した調査でございますけれども、
二十四カ国を対象とする広範なものであります上に、
法制度の調査にとどまらず、
例えば、親権の共同行使に関して
父母の意見が対立して
裁判所による調整が必要となる事案のうち、
裁判官による判断が難しいのはどのような事例か
といったような点ですとか、
裁判所による父母の間の調整は
例えば平均的にどの程度の時間を要するか
といったような、
実際の運用状況についても調査することとしております。

 離婚後共同親権制度の導入につきましては、
父母の間の感情的な対立のために
子供の監護、養育に必要な合意が適時に得られないおそれがあるのではないか
というような指摘もあるところでございますが、
法務省としましては、
今回の調査によって得られます海外における運用状況等も参考にして、
引き続き検討してまいりたいと考えております。

串田委員 山下大臣はやってくれる人だと私は思っていたんですよ。
今まで随分失礼な発言をさせていただきましたけれども、
そういう前向きなやはり答えを聞いて、本当に私は感動させていただいております。

 共同親権を認めない理由として、
一つは高葛藤で話合いができないということと、
もう一つはDVの問題がある。
確かにそういう問題は私はあると思うんです。

 ただし、そうでない夫婦というのがいる。
例えば、今、日本は協議離婚が九割だ。
お互い、離婚はしよう、
しかし子供たちは一緒に育てていこう、それぞれ時間を分けながらも育てていこう、
こういう夫婦を、この夫婦の選択肢を奪うこともないんだと思うんです。
あるいは、
いや、今度はもう全部任せるよ、申しわけないけれども任せるよ、経済的には負担するから任せるよ、
そういう選択肢もあっていいと思うんです。
アメリカは、だから、単独親権と共同親権の選択ができる制度になっている。

 ですから、日本は、わざわざ、夫婦がお互い子供を養育しようよといって覚悟を決めた、
その二人がいるのに、一人に決める必要は私はないと思うんです。

 この男女共同参画社会基本法も、
双方が養育をしよう、それによって女性が社会進出を図っていこう、
こういうようなことですから、
そこで内閣府が事実婚は入るとか入らないとか、私はこれは入るのが当然だと思うんです。
法律婚であろうとなかろうと、親子なんだから子を養育するのは私は当然だと思っておりますので、
ぜひ、山下大臣、どんどんと進めていただきたいと思います。

 詳細的な質問は更に続けさせていただこうとは思いますけれども、
ともに前向きな、ほかの政党の方もどんどんとこれを取り上げていただいているので、
ともに進めて、子供の権利を守るためにやっていきたいと思います。

 ありがとうございました。

2019 05 17衆議院法務委員会 串田議員

 
*************
 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 今、井出議員から性犯罪の問題が質疑されておりまして、私も通告をさせていただいているんですが、冒頭だけ、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。

 前回、法務大臣との質疑が何となくうまくかみ合っていなかったんじゃないかと私は思っているんです。
というのは、懲戒の中に性犯罪というのが入ってはいないという法務大臣の答えで、それはもう当然のことでございまして、
要するに、暴行、脅迫というのが、
懲戒権、これは、
しつけというような言い方で暴行、脅迫を行っている事案
というのが去年もことしも起きたわけでございまして、そういったような、
暴行、脅迫というものが懲戒という形の中で行われて、
その先に傷害やあるいは性暴力というのが行われるのではないかということを質問させていただいたんです。

 八百二十二条の懲戒というものに対して、
子供の側から、
これは正しい懲戒で、
これは正しくない懲戒
というのを、
子供の側からは何を基準にして判別したらよろしいでしょうか。

山下国務大臣 まず、前提として、八百二十二条の懲戒権は子の利益のために行使されるべきものであり、
子の監護及び教育に必要な範囲を超える懲戒
は、懲戒権の行使として許容されない違法なものでありまして、
子もそれに従う義務はないものと考えられます。

 そして、ある行為が
民法第八百二十二条の懲戒権の行使として許容されるか否か
というのは、
社会と時代の健全な社会常識により判断されることになるものと考えられますが、
児童虐待に当たる行為が懲戒権として許容されないものであることは明らかであります。

 もっとも、児童虐待の場面においては、
子供がその判断を適切に行うことができるかどうかにかかわらず、
子供が親権者に対して抵抗することは困難な場合が多いと考えられます。
したがって、児童虐待の防止、これをしっかり取り組む必要があるということで、
その予防、早期発見、発生時の迅速的確な対応など、
総合的な対策を進めていくことが重要である、こう考えておるわけでございます。

串田委員 子供がそれに従う必要はないというところが、
子供としてどうやってそれを、
従う必要のない懲戒であるかどうかというのを判断したらいいのかということをお聞きしているんですね。

 例えば、体を押しつけられた、押さえつけられた。
それで終わる場合もあれば、
その後に殴られる場合もあれば、蹴られる場合もあれば、
その後に性的な暴力を加えられる場合もあるわけです。
体を押しつけられた時点で、子供はこれをはねつけていいんですか、
そして、そういうこと自体を子供ができると思いますか、法務大臣。

山下国務大臣 御質問ではございますが、
体を押しつけられたという、
その押しつけられる部位、あるいは
押しつけられた先の部位、あとは、
時間帯でありますとか、
どういう体勢であるのかとか、
そういったこともございます。ですから、
それは健全な社会常識により判断されることになるということで、
一概に判断基準をここでお話しするということはできないと考えます。

串田委員 仮に、抵抗というのが正当防衛的な意味で、
一般的には殴り返すとか、そういうようなことが通常には考えられたとしても、
子供が親を殴り返すということ自体はしたくないという子供だってたくさんいると思うし、
それはやはり道徳観念からもすべきでないというような考えを持っている子供
もいると思うんですよ。

 だから、どんなに親が、懲戒権の行使が違法であったとしても、
子供が必ずしもそれに抵抗できるとは限らないわけですよ。
その先に性的な犯罪が行われた場合ということが十分に、
犯罪の成否をするに当たっては考慮しなきゃいけない。
その時点での暴行、脅迫が、一般人の、
最高裁の二十四年五月十日の判例、著しく抵抗が困難であるかどうか、そういう暴力であったか、そういう脅迫であったかという、
一般人と同じような基準で
この親権者と未成年者の間の性的な暴力行為を同じように当てはめていくということに対しては、
国民は大変な違和感を持っているということなんだと思います。

 昨日も、あの名古屋の三月の判例を前提にした番組が流されていました。
こういったようなことが何回も流されているということは、
この無罪判決に関して国民はやはり違和感を持っている。
親と未成年者との間は、未成年者は抵抗をすることが大変困難な状況であるということを、
この判例自体が、判断自体が考慮されているのかどうかということに対して、
大変、国民としては違和感を持っているんじゃないかなと私は思います。

 そういう意味では、この最高裁の判例が
親子の関係でも当てはまると言っていない以上は、
一般人と同じような基準で、メルクマールで、これを当てはめる
ということに対しては、
子供の人権を守ることができない
のではないかと、私としては、まあ提案といいますか、
その点についての子供の人権というものの、
懲戒というものは子供が抵抗しちゃいけないんだ
という回答がありましたから、
抵抗しちゃいけないという回答があった
のに、
一線を越えたときは、あるいは何か別の目的のときには抵抗していいんだ
というようなことを言われても、
子供としては現場では非常にそんなようなことはできにくいということを、
これは判例を判断するときには十分配慮していかなきゃいけないんだということを指摘して、
次の、今回の法案について質問をさせていただきたいと思います。

 この特別養子制度は、大臣の趣旨説明ですと、
児童養護施設に入所中の児童等に養育環境を提供する
というふうになっております。
そうであるなら、本法案は
児童養護施設の入所中の児童等に限る、
当面はこれに限る
というように大臣としては断言していただきたいんですが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 私の趣旨説明でそのように申し上げたところですが、
これは、特別養子縁組の対象となる子供は、
保護者がおらず、又は虐待を受けているなどの理由で
児童養護施設に入所中の子供
が多いと思われることから、そのように例示をさせていただきましたが、
これは、
児童等に
ということで申し上げているものでございまして、
それに限るものではなくて、
法律上は
児童養護施設に入所中の児童等
に限定されておらず、
この点は本法律案による改正後も変わらない
ということでございます。

串田委員 といいますのは、今、日本は単独親権下であります。
こういったようなときに、
同居親と新たな再婚相手との間でこの特別養子制度というものが適用される
ということに対しては、
大変不安を持っていらっしゃる別居親
というのがいらっしゃるんですね。

 どうしてかといいますと、先ほど石原委員が大変すばらしい質問をしていただきましたが、
親子の縁を完全に切られるわけですよ。
そして、現在、面会もままならない状況なんです。
ですから、本当は養育を一生懸命やりたいけれども、養育をやらせてももらえない状況の中で、今度は
親子の縁を切られてしまうんですよ。

 それを今、二十四カ国ですか、調査を開始している、
共同親権、共同養育というものを取り入れようと検討している中で、
この単独親権という、
面会をもさせてもらえないような状況で、
親子の縁を切る
という法案を先に成立をさせるということについては
大変問題だと思うんですが、法務大臣の御意見を伺いたいと思います。

山下国務大臣 まず、前提として、串田委員がおっしゃっている例というのは、
子供がいる夫婦が離婚をし、
その一方が親権者となった場合で、
その親権を有する親
相手と再婚した後に、
その再婚相手と子供との間で特別養子縁組を成立させるといった事例
をお尋ねなんだろうというふうに思います。

 いずれにせよ、こういった特別養子縁組の場合には、
第一段階におきまして、そもそも、
実親による子の監護が著しく困難又は不適当であるか、あるいは
実親の同意があるか
といった要件について、
これはしっかり審理をしていただくということになりますので、
その過程で、
不適切な、そういった不当に親子の関係を終了させるといったところは、
家庭裁判所の調査等において、
審理の段階において
適切に対応があるのであろうというふうに考えております。

 実務的なことについては、当局にも答えさせようと思います。

串田委員 ただ、民法の八百十七条の六では、実親の同意がなくてもいい場合が書かれているわけです。

 先ほど、民事局長の回答からも、
原則という言い方をされた。
原則は同意が必要であるという、
この原則というのがくせ者でして、
例外というのが八百十七条の六に書かれているんですけれども、
これは、
虐待や悪意の遺棄その他
養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合はという中で、
養育さえも面会さえもさせてもらえない状況の中では、
これは、
その者との間で親子の関係をずっと続けるよりは
養親の方がいい
だろうという判断をされるおそれがあるから、質問しているんですよ。

 そして、今、
単独親権の場合には、
片方の親が片方の別居親をずっと悪く言い続けるという制度
だから、
これは改正しなきゃいけないというのをさんざん言わせていただいているんです。
 
要するに、争わなくてもいい夫婦が、
別れるときになって、
一人だけ親権者にさせられる、
一人だけ監護者に選定される
という、この極めてまれな制度を我が国がとっているから、
争いを生じさせて、
相手の方を悪く言う、
双方が悪く言って、
自分が親権者になるようなことをさせているのが
今の日本の法律なんですよ。
そういうようなことが成功しているから、一人が監護者になっている。

 この成功するような方法で、八百十七条の六が適用されることがあるんじゃないかということを心配しているんですが、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、原則として、特別養子縁組の成立には実の親の同意が必要でございます。

 例外的な場合としましては、
その意思を表示することができない場合、あるいは、
父母による虐待、悪意その他
養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合
はこの限りでないとなっております。

 いろいろ、当事者間に紛争がある場合に、
一般論として申し上げますれば、
家事審判の手続の中で、
当事者が
自己の主張を正当化するために
他の者を非難したり、あるいは
その主張を否定したりすること、
こういったこと自体はしばしば生じ得る
ものと認識しております。
もっとも、裁判所におきましては、
そのようなことがありましても、
証拠に基づいて適正な判断をすることが期待されており、また、かつ、
現にそのような運用がされているものと承知しているところでございます。

串田委員 今、例外は証拠に基づくという話がありましたが、
そうした場合には、
同意の場合には何ら問題がないのかというところを考えていただきたいんです。
前に大岡裁きの話を予算委員会でさせていただきました。
子供が痛いと言うから手を離した、
今は手を離した方が不利に扱われるのがこの国の制度なんです。

 そして、今回の特別養子制度も、
面会も養育もさせてもらえない、
もう二年間も会わせてもらえないという別居親がざらにいるんですよ。
そういう中で、今度特別養子制度を採用したいといったときに、
自分は子供にも会えない、
この子供にとっては自分という親としての存在を、
この子供の福祉には十分に愛情を注ぐことができない、
泣く泣く同意をする親は結構、私はいると思いますよ。
この制度で、そういうような、
追いやって、諸外国では救われているような親が、
我が国だけは単独親権、単独監護だから子供にも会えない、面会もできない、
だから子供にとっては自分の存在自体が幸せにはできないと思って、泣く泣く同意をする親だってたくさんいると思うんですよ。

 大臣、こういうので同意があるということで、この特別養子制度を採用していいと思いますか。

山下国務大臣 串田委員御指摘のところは、
面会交流、これを、
別れた子供と
親権を持っていない親との間でもしっかり行うべきだというふうな前提に立たれるんだろうと思いますし、
その点においては我々も全く同じでございます。

 ただ、特別養子のこの制度自体においては、
これは第一段階の手続、第二段階の手続に分かれておるわけですが、
その第一段階の審理において、実親の同意が本当にあるのかどうか、真意に基づくものであるのかどうか、そういったものも審理されるでしょうし、
実親の同意がないと判断されるような例外的な場合というのが、これはまさに例外的な場合ですから、
本当にそのような、
監護が著しく困難であるとか、
子供の利益を著しく害する事由があるかどうか
については、
これは家庭裁判所においてしっかりと審理されるというふうに考えておりますし、
そのような運用を期待しているところでございます。

串田委員 そのような運用がなされていないから、国連からも勧告されているんですよ。

 今、エビデンスの話が先ほど民事局長からありましたので、
ちょっと質問の角度を変えさせていただきたいんですが、
外務省のハーグ条約室では、
ハーグ条約は国際結婚に限るものではない、
例えば、日本の夫婦のうちの一方がアメリカに子供を連れ去った場合には、
このハーグ条約によってその子供は連れ戻されるという理解でよろしいんでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、ハーグ条約の対象は国際結婚に限られるものではございません。

 したがいまして、例えば、
子が日本から米国に不法に連れ去られた場合ですけれども、
日本に残された親は、
日本の中央当局であります外務省領事局のハーグ条約室に対して返還援助を申請することができます。
日本中央当局は、援助決定後、米国中央当局と連絡調整を始めるとともに、当事者に対して必要な支援を行うという形になります。

 また、不法に連れ去られた場合でなくとも、
面会交流をしたいという場合には、
同様に、中央当局間の協議によって面会をアレンジするということが可能でございます。

 不法な返還の部分に関して申し上げれば、
最終的に子の返還を求める裁判がアメリカで申し立てられた場合には、
返還命令が確定し、
その場合には、州によって手続は異なりますけれども、
連れ去った親が子の返還に応じない場合には、
裁判所侮辱罪が適用されるなど、
制裁金や身柄拘束が命じられることなどがありまして、
これでもって執行を確保する、そういう流れになってございます。

串田委員 法務大臣もよく聞いていただいたと思うんですけれども、
日本の夫婦の片方の親がアメリカに連れ去ったときには、
しっかりと日本の政府も加わって、子供が連れ戻されるんですよ。
ところが、
日本の夫婦の一方が東京から例えば埼玉だとか千葉だとか神奈川だとかに連れ去ったときに、
日本は返してあげないじゃないですか。
おかしいと思いませんか。
外国に連れ去ったら戻されるのに、何で国内だったら戻されないんですか。

 だから、これを改正しなければ余りにも不平等であり、諸外国から比べればおかしいと指摘されるのは当然なんですよ。

 ところで、返還を拒絶することもできる場合がありますとハーグ条約の質問欄では書かれていて、
子の返還拒否事由を主張する当事者は、
それを裏づける資料を裁判所に提出する必要があります
と書いてありますが、
この裏づける資料というのはどういったものなんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 返還拒否事由、
子の返還が子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険があること、
こういう返還拒否事由がございますが、
その判断に当たっては、
常居所地国において
子が申立人から身体に対する暴力等を受けるおそれの有無や、
相手方及び子が常居所地国に入国した場合に
相手方が申立人から
子に心理的外傷を与えることとなる暴力
等を受けるおそれの有無
等の事情を考慮することとされております。

 そして、
過去における配偶者等からの暴力の被害を立証するための証拠資料
といたしましては、これは個別の事案によるものでございますが、
例えば、
子の常居所地国における医師の診断書ですとか写真、あるいは、
一時避難先の関係者の陳述書
警察や在外公館等に対する相談時の申立人の状況
等の照会結果等が考えられるところでございます。

串田委員 これからいろいろな実務的なものも確認させていただくことは出てくると思うんですけれども、
今、最初の医師の診断書はいいですよ。
だけれども、
相談事例までも裏づけ資料になるから、
現在、日本の場合には、相談するということを勧めるわけでしょう。
そうすると、
相談しただけで証明書が出るから、
それをもって拒絶をすることができるという扱い方をされていて、
別居親としては大変な悲しい思いをさせられているという声が多いわけですよ。

 恐らく、今言われたのも、
その相談事例だけではこのハーグ条約の返還拒否事由には
私は当たらないというふうに思っているんですけれども、
相談事例だけでこのハーグ条約拒否事由ということになる
というふうにおっしゃるんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 証拠資料といたしましては、先ほども申し上げましたように、
さまざまなものが考えられるものでございますので、
そういったものを総合的に判断するということになろうかと思います。

 また、先ほど相談についても申し上げましたけれども、
この相談につきましては、その相談した事実といいますよりも、
相談時の申立人の状況といったようなところが
この考慮事由としては考えられるのかなというふうに思っているところでございます。

串田委員 ハーグ条約の場合には、日本同士の夫婦においても、
これは監護権があるというだけで、このハーグ条約が適用されるわけですよ。
日本の場合には、債務名義がなかったら強制執行してくれないわけですよ。
そして、今言ったようなことで返還もされない。
こういうように極めて不平等な扱い方をされている中で、親子の縁を切られるという不安感を持つのは当たり前なんです。

 ですから、この特別養子制度は、そういう観点から、
児童養護施設というのは私は大いに賛成ですよ、
そういう家庭環境を子供に与えるというのは。
ただ、今のような、
単独親権下の、共同養育をも与えてもらえないような、親の縁を切られるような今の不平等な扱い方をされているのは事実なんですから、
ここら辺についての適用については認めない方向で適用させていただきたいと思っているんです。

 民法七百六十六条の改正のときの趣旨をお聞きしたいと思いますが、
これは連れ去りを阻止するために設けられたと言われていますが、事実でしょうか。

山下国務大臣 平成二十三年に成立した民法等の一部を改正する法律により、
民法第七百六十六条が改正されました。
これは、家庭裁判所における調停又は審判の際のみならず、
当事者間における協議の際にも、
面会交流など、子供の監護について必要な事項を定めるに当たっては
子の利益を最も優先して考慮しなければならないとの理念
を明記することとされております。

 また、これにつきましては、
例えば子の監護費用の負担とか、そういったことも七百六十六条にも含まれているところでございまして、
この二十三年改正は
子供の利益を重視することを示したというものでございまして、
子供の連れ去りの防止そのものを目的とするものではないということでございます。

串田委員 当然なんですけれども、それは。

 連れ去りを少なくすることができるという趣旨というのが
七百六十六条の制定の中では言われていた事実
があるかどうかを確認させてください。

山下国務大臣 一般論としては、
夫婦で離婚について協議している際、また
その協議をする前に
子供を不当に連れ去り、
一方の親と子供との交流を一方的に絶つことにより
子供の利益が害される場合があるものと考えられます。
このような場合においては、
平成二十三年の民法改正の趣旨に照らしても、
不当な連れ去りがあったということは
子の監護者等を定める際に考慮されるべきでありまして、
平成二十三年の国会審議でも
当時の法務大臣から同様の認識が示されておるところでございます。

串田委員 平成二十五年の国会での安倍総理も同じような趣旨であって、
七百六十六条が改正されたときには不当な連れ去りというものをなくすということも制度趣旨の中に入っているというふうになっているわけです。

 とするならば、先ほど言われたような
連れ去ることの正当事由というものが証明できない限りは
連れ去りというのは不当であって、
これは連れ去った側に不利益な扱い方をすべきであるというような運用が現在なされているという理解でよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 国内における子の連れ去りの場面におきましては、
一般に、
連れ去られた親の方は、
子の監護に関する処分の審判を申し立て、
その手続において、
子の引渡しを命ずる旨の審判を求めることになると考えられます。
このように、
国内における子の連れ去りの場面では、
一般に、子の父母のうちどちらを親権者又は監護権者とするのが相当であるかを判断した上で
子の引渡し請求の当否が判断されることとなる点で、
こういった実体的判断を伴わないハーグ条約実施法の適用場面とはその前提が異なるものと考えております。

 したがいまして、子の引渡しが認められるか否かの判断に当たりましては、
現在の実務では、
従前の監護状況、
現在の監護状況や
父母の監護能力等々、
さまざまな事情を総合的に考慮しているものと認識しております。

串田委員 時間ですけれども、七百六十六条は、
正当な理由がない限りは不当な連れ去りであるから不利益にならなきゃいけないんだというのがこの七百六十六条の立法趣旨というか、
その制定過程の中でそうやって議論されているわけですから、
しっかりとこの議論に基づいた運用を実務でもしていただきたいということを申し上げ、
またこれを続けてやらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

20190425 参議院法務委員会 石井苗子議員

 
*************
○石井苗子君 分かりました。ありがとうございます。
 それでは、伊藤参考人にお伺いします。
 先ほどから、家庭裁判所の調査官でいらしたということで、
大変御活躍されていた御経験話、具体的にこういうことを聞くことが少ないものですから大変有り難かったと思うんですけれども、
御自身から、午前中に、我々といいますか私どもの党からの質問なんですが、
共同親権についてなんですけれども、
共同親権が例えば認められるようになった場合、
子供の最善の利益にとって好ましいことかどうかなんですね。
これは、御自身はどのようにお考えですか。

○参考人(伊藤由紀夫君) 私のもう個人的な考えです。
 私は、共同親権という考え方はやっぱり世界的な流れとしてもありますので、
それはやっぱり日本でもそういうふうにしたらというふうに思うところがあります。
それは、やはり一方の親だけが
離婚後は全て何というか
責任があり、子供に対して義務を負う
みたいな、
そういう考え方じゃいけないんじゃないかという、
やっぱりそこを明示するためにはというふうに思います。
 ただ、共同親権にしたからといって離婚時の紛争が鎮火するということは、私は思っていません。
むしろ、そうだからこそ、じゃ、どこで育てるんだとかどこで面会交流するんだとかということについて
むしろ紛争性が高まるということもないわけではないだろうというふうに思っています。
 以上です。

○石井苗子君 ありがとうございました。
 もうちょっと時間がありますので、今の件につきまして、
同じことで、ちょっと意見が違うんじゃないかなと思われるのでお聞きしたいんですけれども、
松下参考人は、この共同親権が認められるようになった場合、
子供の最善の利益にとって好ましいと言えるかどうかという点について御意見ください。

○参考人(松下淳一君) 現状、日本ではそういう考え方は取られていないわけですけれども、
それは恐らく、両親が不仲な中で、そういう中で子供が育てられるのは適切ではないというような御意見があって
現状こうなっているんだろうと思います。
 ただ、そこはやっぱり考え方の発想の転換が必要で、
これは関係者の意見の、
関係者の物の考え方の転換ということですので
なかなか一朝一夕にはいかないと思いますが、
両親は仲が悪くても、
子供との関係では手を携えて子供のために最善を尽くすという、
そういう発想の切替えがあれば、
共同親権というのは非常に、世界的な潮流だというお話もありましたけれども、
よろしいのではないかと個人的には考えておるところでございます。

○石井苗子君 私も、やはり国として
子供の人権というのを真っ先に
子供を先に考えられないのか
というのをずっと思っているのですが、
その点の発想の転換からいけば共同親権というのがいいと思うんですけれども、それでは最後に今津参考人にお伺いします。
 論文を拝読させていただきまして、今津参考人が論文に書いていらっしゃいました家庭裁判所の後見的な役割についてなんですが、
つまり積極的に家族に介入するという役割についてです。
 当事者の考え方や主体性を尊重することと介入していくことというのは、抽象的な質問かもしれません、
どっかで両立させなきゃいけないと思うんですけれども、
その両立というのはどの辺に考えていらっしゃる、
両立点というのはどこら辺に考えていらっしゃいますか。

○参考人(今津綾子君) 論文も読んでいただいたとのことで、ありがとうございます。
 家庭裁判所の後見的な役割というのは、家庭裁判所のつくられた当初からそういった言い方はされてきたんですけれども、
日本の伝統的なというか、実体法も含めてですね、
家庭というものに対して国が何かするということに対して非常に、何というか、抵抗があるという印象を受けております。
なので、家族の問題は家族の中でというのが基本的な伝統的な考え方だったかなと。
 もちろん、審判という形で、裁判所に来ればそこで処理をするという、そういう助けはあるんですけれども、
それ以外の場面で、私なんかが考えているのは、もっと、
例えば紛争の過程で
その紛争処理以外の親への教育とか、そういったことまで含めてやってもいいのではと。
 司法機関というのは基本的に紛争を処理することに役割があるわけですけれども、
実際に、私なんかは仙台にいるんですけれども、仙台の家庭裁判所では、
夫婦関係調整事件が上がってくると、その場合、
子供がいる場合には、夫婦に調査官なりがそれぞれ面接をして、
子供の利益というのはこうだと、
面会交流の重要性というのはこうだということを、紛争処理とはちょっと別枠で
そういった教育をする機会を与えていると。
ほかの家庭裁判所でもそういったプログラムはあるということですので、
そういった方法での支援というのは考えられている。
それは、当事者の自己決定を否定するのではなくて、
自己決定がより良くできるようなサポートという意味かと思いますので、
先ほどおっしゃっていただいた両立というのはその辺りにあるのかなと思います。

○石井苗子君 これからも子供ファーストで考えていきたいと思います。よろしくお願いします。
 ありがとうございました。

20190521 衆議院 財務金融委員会 串田議員
動画( 共同親権は23分から。 )
及び
議事録

 

串田委員  次の質問なんですが、これは全く、またがらっと変わって、

共同養育支援についてお聞きをしたいと思っているんです。

 男女共同参画社会基本法というのが一九九九年に成立をいたしました。

これには、男女が子を養育をするというふうに書かれております。

一九九四年には子どもの権利条約が成立しまして、

そこの十八条ですか、

父母が共同して子供を養育をするということになっているんですが、

前回、一人親家庭についての質問をさせていただきました。

これに対して国が相当程度の予算を支出しているということなんですけれども、

本来、原則は、共同で養育をするということを政府としては推進していかなければならないのではないかと思っているんです。
 この共同養育に関しての

政府の対策、方策、

どんなような形での予算を支出しているのか、

そんなようなところを御説明いただきたいと思います。

渡邉政府参考人 内閣府男女共同参画局でございます。

 私、男女共同参画社会基本法を所管し、また

政府全体の男女共同参画施策の取りまとめを行う立場から、

答えられるところを答えさせていただきます。
 先生御指摘のとおり、

男女共同参画の基本法第六条におきまして、

家族を構成する男女が

子の養育を含む家庭生活における活動と

その他の活動

を両立が図られるようにすることが重要であるというような基本理念

を規定してございます。
 この理念に沿った方策として、

平成二十七年に閣議決定いたしました

第四次男女共同参画基本計画におきましては、

ワーク・ライフ・バランスの実現のための長時間労働の削減、

男性の子育てへの参画促進、

育児休業、

休暇の取得促進

などの取組を掲げて今進めているところでございます。

串田委員 その男女共同参画社会基本法の六条に「家族」と書かれておりまして、

この家族に事実婚が入るのかという質問を法務委員会でさせていただいて、

答えられないということでしたよね。

決まっていなかったということなので、その後、どうですか。
 私自身としては、これは

ILO百五十六号、

女性の社会進出というものを受けて

男女共同参画社会基本法というのはでき上がっているんだと思うんです。

女性の社会進出を考えるならば、

親子であれば

それは男の人も女の人も双方が子供を養育をする

というのは当たり前のことでありまして、

男女共同社会という以上は、

それが

法律婚であろうと事実婚であろうと、

結婚した後であろうと離婚した後であろうと、

親子であれば子供を養育をするという点では変わらないと思うのですが、

男女共同参画の部署としては、

今でも事実婚が入るのかどうかというのはお答えできないんでしょうか、質問したいと思います。

渡邉政府参考人 お答えいたします。
 法務委員会などで先生からたびたび御質問をいただきまして、

明確な答えがなかなかできていないということで

先生には御迷惑をおかけしたと思っております。
 ただ、毎回申し上げておりますとおり、

男女共同参画基本法の第六条は、あくまでも、

男女が共同して

家庭生活における活動と、

その他の仕事ですとか地域活動といった家庭生活以外の活動

を両立させていこう、

そういう基本理念を規定したものでございます。

したがいまして、

基本法という性格からいたしましても、

子の養育に関して

事実婚を含むか含まないか、

そういった権利義務関係をここで規定をするというものではございませんので、

必要があれば個別法で手当てされるべきものではないかというふうに考えてございます。

串田委員 今、私に対する迷惑とかというお話でしたが、

私じゃないんですよね。

共同で養育をすることができなくなっている、

今、

日本の制度、

これによって大変な不幸になっている人たちがたくさんいるんですよ。

それはずっと法務委員会で単独親権について説明をさせていただいているんですが、

ことしの三月二十九日に、安倍総理の答弁を受けて、

今、法務大臣も、二十四カ国の調査を開始して、共同親権を導入するかどうかというのが始まった。

 

 これは、共同で養育をするという基本理念が、

条約が締結をされ、

男女共同参画というのもILO百五十六号で、

女性が社会進出をするんだったら

子供の養育も当然、親子である以上は父母双方が行わなければならないだろうという基本

を当然に遵守していかなければいけないのを、

二十五年間放置しているんです。

 だから、

迷惑をしているのは私じゃなくて、

そうやって、

子供にも会えない、

面会もできない、

養育もできない、

そういう親の方々への思いやり

というものを政府が持っていただかなければならないんだと思いますが、

それに対して政府もいよいよ二十四カ国への調査を開始して

その可否を検討していただけたわけですが、

一九九四年子どもの権利条約が締結されてから、

子供の養育に関して何らかの、

政府がこの条約を受けて政策を開始したという事実はあるんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 母子家庭を含む一人親家庭に対しましては、

すくすくサポート・プロジェクト、

これは平成二十七年十二月に

子どもの貧困対策会議で決定をしたものでございますが、

こちらのプロジェクトによりまして、

親の就業支援を基本としつつ

子育てや生活支援を始め

総合的な支援を行っているところでございまして、

その中で、養育費の確保といたしまして、

養育費相談支援センターや

弁護士による養育費相談等を実施しているところでございます。

 子どもの権利条約を批准をしてそれをきっかけにさまざまな施策を行ってきたというよりは、

こういった施策については、

児童の権利に関する条約の第十八条に

児童の養育及び発達について

父母が共同の責任を有する

という原則

が規定をされているわけでございますが、

こういった権利条約の規定にも資する施策であるというふうに考えております。

 また、このほか、御承知のとおり、前回も御答弁申し上げたかと思いますけれども、

母子家庭対策といたしましては、

子育て・生活支援といたしまして

一人親家庭へのヘルパー派遣ですとか、

ハローワークとの連携による就業支援

といったこと、あるいは

経済的な支援ということで

児童扶養手当の支給や

各種の貸付金の実施

といったことについて、

総合的に支援を行っているという状況でございます。

串田委員 時間になりましたが、

一人親家庭、

父子家庭や

母子家庭というのは、

国が単独親権にして一人親にしてしまっているんだ、

一九九四年子どもの権利条約

共同で養育をするということを全く無視して

国が単独親権にしているんだということを指摘して、きょうの質問を終わります。
 ありがとうございました。

20190529 衆議院 法務委員会 串田議員 の 

動画

及び

議事録

 

○串田委員 日本維新の会串田でございます。

 本日は、事前に配付をさせていただきました
この新聞の記事
を中心にして、まずはお聞きをしたいと思っています。

 その前提といたしまして、
連れ去り
外務省で言うならば、
監護権者の双方の同意を得ないで
一方が連れ去った
不法な連れ去り

に関しては
諸外国では犯罪にしているという国もあるかと確認させていただいていますが、
もう一度、その点について説明をいただきたいと思います。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきまして外国の法制度を網羅的に把握しているわけではございませんが、
参議院の事務局の方で

平成二十四年に作成されました資料

によりますと、
不法な子の奪取について、
例えば、
アメリカでは、
罰金若しくは
三年以下の禁錮又は

その併科

がされ、

イギリスでは、
略式手続による場合は

六カ月以下の拘禁若しくは

罰金又は

その併科

がされ、

正式手続による場合は

七年以下の拘禁に処せられ、あるいは

フランスでは、

一年以下の拘禁又は

一万五千ユーロ以下の罰金

が科されるといった例が紹介されております。

○串田委員 連れ去りということに対して、今のような
犯罪が成立をし、逮捕状が出され、

場合によっては国際指名手配というようなことも行われている

かと聞いております。

 ハーグ条約というのは、このような監護権を侵害するものに対して、原状回復をする、

その原状回復をする前提としては、国内では犯罪になっている、

しかし、国外に連れ去ってしまったときはどうしようもないので、ハーグ条約という条約があるということであります。

 これは、基本は監護権を守るということだと思うんです。

それで、諸外国はこれを犯罪にしているということなんですが、

これは日本という国は違うんですか、大臣、お聞きします。

○山下国務大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のハーグ条約というのは、
正式名称は
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約
ということでございまして、

これは、子の連れ去りを犯罪とすることを加盟国に義務づけているものではございません。

このハーグ条約は、

国境を越えて子の連れ去り等があった場合に、

子を常居所地国に返還することを目的として

民事上の側面に関する規律

を定めるものでございまして、

刑事罰が存在することを前提とするものではないものと認識しております。

 諸外国において子の連れ去りを犯罪としている趣旨については、

一概にお答えすることは困難でございます。

我が国における子の連れ去りについての犯罪の成否というのは、

捜査機関により収集された証拠に基づき

個別に判断されるべき事柄でございまして、

これもまた、一概にお答えすることは適当ではないと考えております。

○串田委員 その今の答弁に関して、私も、基本的には同じ考えなんです。

必ずしも刑事犯罪にすればいいというものではないと思うんですね。

 ただ、民事的にも、原状に回復をするということ自体はやはり一番大事なことなんではないかなと。

民法の改正をして、相互に協議をするというのも、片方が連れ去ってしまうというような、協議ができないような状況をなるべく避けようという意味で民法の改正がなされているわけでございますので、そういう意味では、

連れ去り自体が問題であるということを、これは国としても明確に示していく必要があるんだと思うんです。

 かつて、日本の妻が逮捕状が出されている状況で

アメリカから子供を連れ去ったときに、

アメリカ人が日本で子供を連れ戻そうとして逮捕された事例がありました。

これに関しては、

アメリカの日本の大使館の前でデモが行われ、クローリー国務次官補ですか、

これは妻の方が子供を奪取したのであって、国としてはできる限り父親を支援していきたいという、そういう声明も発表され、そして、

二〇一〇年には、アメリカの下院で、四百十六対一ですか、

圧倒的な数で、日本の今の連れ去り問題について非難決議が出されているというような状況であります。

 そういう状況の中で、今回この新聞記事というものが報道されているわけですけれども、

要は、何が言いたいかといいますと、

本来は、連れ去った方が諸外国では犯罪にしている例もあるし、原状回復というものが当たり前である。

連れ去った側が本来は、いろいろな意味で、国としてもそれはやめなきゃいけないんだということを告知しなければいけないのに、この記事は、連れ戻そうとしているという前提のもとで、こういうような、要するに対象を限定している。

 これを見ると、今、日本のドラマでも出てこないような状況ですよ。

髪の毛が短くて、真っ黒で、サングラスをかけて、真っ赤なシャツを着て、そして皆さんに取り押さえられている、そういう状況であります。

 しかし、連れ去られている人というのは、この霞が関にもたくさんいらっしゃいます。

私のところにも相談に来られている方がいっぱいいます。

そして、民間のサラリーマンもいれば、自由業者もいる。連れ去られるということは、これは職業に関係がないわけですよ。

そして、本来は国が戻さなければいけないにもかかわらず、それを放置しているという状況の中で、

我慢して我慢しているというのが今の現状じゃないですか。

 そして、もしかしたら、幼稚園に顔を見に行きたい、あるいは運動会に顔を出したいというような状況のときに、こんな記事を載せれば、

子供と一緒に暮らしているお母さんのところに父親がやってきたら、こういうような状況の凶悪犯人みたいな形で一般世論は考えてしまうんじゃないですか。

 この訓練というのは八幡警察署が働きかけているということなんですが、

どういう趣旨でこういう取り押さえられている人の人相というか服装を取り決めたのか、説明をお聞きしたいと思います。

○小田部政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の防犯訓練についてですけれども、

御指摘の防犯訓練を行った京都府警察八幡警察署の管内におきましては、

平成三十年中の児童相談所への児童虐待の通告件数が前年よりも大幅に増加し、

また、通告の相当数をいわゆる面前DV等を要因とするものが占めているといったような情勢があったと聞いているところでございます。

 そして、京都府警察の八幡警察署におきましては、このような情勢を踏まえまして、

児童虐待やDVの加害者である親

こども園に押しかけて子供を連れ去ろうとしているという想定で、

子供の安全確保の観点から

職員の対応訓練を実施したものと京都府警察から報告を受けております。

 そして、委員御指摘の訓練におきます加害者役の服装等につきましては、

当該訓練の想定が、先ほど申しましたように、児童虐待やDVの加害者である親がこども園に押しかけ子供を連れ去ろうとしているという想定であったことから、訓練参加者等から加害者役が明確に区別できるようにしたものということで、

父親について悪い印象を与えることを意図するものではなかったと京都府警察から報告を受けているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、警察庁といたしましては、御指摘のような点も踏まえつつ、事例の設定のあり方等については、

個別の訓練に即して適切な防犯教室、防犯訓練が実施されるように都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

○串田委員 ここにも児童虐待というのが出ていますけれども、御存じのように、児童虐待のデータというのが出ていまして、

平成二十六年が最新という形で、今、もっとそれ以降というのはまだちょっと私の手元にはないんですが、

児童虐待の数としては、

父が三四・五%で、

母が五二・四%

児童虐待の数字から見れば、母親の虐待の方が父親よりも上回っているわけですよ。

 これはもう歴年、二十六年までずっとそういう傾向が続いているわけで、

それは、子供と長く接しているからというような事情もあるでしょうけれども、

そこに父親だから虐待が多いというわけではないのに、

この写真から見て、

母親と暮らす子供を別居の父親が連れ去ろうとするというような決めつけの中で、

父親役をこういうようないかにも悪人のような格好をさせ、

そして取り押さえているのが女性だらけというような形で、

女性と男性というような決めつけの中でこういうような訓練を行って、

そしてそれを報道させているということ自体は、

極めて、私、これは誤解を招くようなことになるのではないかと思うんですよ。

 こういうようなことをやれば、本来、

ただ単に、静かな中で遠くから顔を見たいな、運動会に行きたいなと思っても

こういうような非常に凶悪な状況なんだというようなことで、

運動会の連絡も教えなくなる、あるいは来させなくなるというような傾向もあるかと思うんですが、

大臣、率直に、この訓練、大臣から見て適切だと思いますか。どうでしょう。

○山下国務大臣 これは個別の報道に関するお尋ねでございまして、見ておられる方の印象はそれぞれだろうと思います。

また、これは民間の機関で実施された訓練でございますので、法務大臣としては所感を述べることは差し控えさせていただきたいと考えます。

○串田委員 そういう返答であっても、これは京都府警八幡署と府警少年課が指導し、そしてこの犯人役というのは警察官だったというような話も聞いているんですが、そうなんだろうなというふうにはちょっと思うんですけれども、主導しているんですよ、警察署が。

 そして、ここにDVと書いてありますけれども、現在、DVというもの、私は、共同親権を進めるということで、DVに対して安易に進められては困るという声も聞いているわけですが、私は、DVは絶対なくさなきゃいけないということは、これはもう前から申し上げているし、そういうことに対する防止策というのを今いろいろな国に調査をしていただいているというふうに私も認識しています。

 DVというのはなくさなきゃいけないということはもうはっきりしているんですが、一方で、非常にそういう意味では

DVという認定がされやすい状況にあることもこれは事実でして、

警察署なりなんなりに相談に行くと、意見書というのが出してもらえる、相談を受けたという意見書を出してもらう。

そうすると、その意見書がひとり歩きして、DVの被害者と加害者という形になってしまうんですよ。

 前に小野瀬民事局長も、前の質問のときに、ハーグ条約のところで、

返還をしない理由の中で

相談をしたというようなこともおっしゃった中で、

相談だけで拒絶できるんですかということに関しては

私はまだ回答をいただいていないんですが、

相談することだけで不法行為というものを証明できるという判決を

小野瀬民事局長も出されたことはないと思いますよ。

そんなことで立証できるんだったら、もう弁護士は楽でしようがないですよ、

被害者の方が相談すればそれが立証できたということになれば。

しかし、DVに関してはそれがまかり通っちゃっているわけですよ。

 そういう中で、犯人役のような、こういうようなイメージをつくられる別居親というものが世の中にたくさんいる。だから、そこはしっかりと見きわめていくということが必要であるので、現在、諸外国への調査をしていただいていると私も認識しています。

ですから、しっかりとDV対策はしていかなければいけないんですが、
そういうようなことの苦しみを今別居親が感じているということも

しっかりと認識をしていただかなければいけないと思うんです。

 警察庁の方にお聞きをしたいんですが、この新聞記事から、これは何が問題となっているのか。

例えば、塀を乗り越えるというのはとんでもないことだと私も思うんですが、

塀を乗り越えるから、さすまたでとめているのか、

やってきたことがいけないから、さすまたでとめることになるのか

ここら辺、この記事からわからないと思うんですが、訓練の趣旨はどっちなんでしょうか。

○小田部政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の訓練につきましては、
児童虐待やDVの加害者である親
がこども園に押しかけて
児童虐待の被害者である子供
を連れ去ろうとしているという想定
でございまして、
子供が連れ去られた場合、
加害者により児童虐待が行われるおそれがあることから、
子供の安全確保の観点から、
緊急時における迅速な通報、
警察官臨場までの園児の安全確保のための対応要領を確認することを狙いとしたものと報告を受けているところでございます。

 いずれにいたしましても、警察庁といたしましては、先ほども御答弁申しましたけれども、御指摘のような点も踏まえながら、事例の設定のあり方等につきましては、地域の犯罪情勢等を踏まえた適切な防犯教室、防犯訓練が実施されるように都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

○串田委員 その限定を聞いた上でこれを見れば、わからなくはないんですよ。

やってきてDVをするんだというんだったら、とめなきゃいけないというのはわかるんですけれども、この記事だけだと、それはわからないんじゃないんですか、そういう人だということが。

母親と暮らす子供を別居の父親が連れ去ろうとするということを想定しているわけでしょう。

ただそれだけが冒頭の中に出てきて、こういう背景があるということなので、

この人間がDVを日ごろからしているんだという限定がこの記事から読み取れない中で、

こういうような表現というのは極めて誤解を招くんだと私は思うんです。

 ですから、今回は、もう出てしまって、やってしまったことはしようがないんですが、そこら辺の配慮というのを今後していただかないと、こういうのをこれからも行っていくということであれば、私は極めて、これは国際問題にもなりますよ。

今、離婚の中で国際結婚の離婚率も非常に高い中で、

国内でも連れ去られていく人間に対して諸外国ではしっかりと連れ去りに対して対応している国から来ている人たちが、

この日本ではそれに対して十分にまだなされていないという中では

自分たちがすごく被害者だという思いの中で、

こんな記事で書かれてしまっていて、これは国際問題に私はなると思うんです。

 個々の事例に関してはコメントを控えられるということですが、

法務大臣として、これは人権問題としては法務委員会の所管だと思いますので、

今後の訓練の仕方とか、こういうような設定の仕方も含めて、そこら辺の配慮を法務大臣としても表明していただきたいんですが、いかがでしょうか。

○山下国務大臣 民間の施設における、まあ、警察の指導ともこの報道には書いてありますけれども、いずれにせよ、民間施設における対応ということでございます。

 そういったことで、こういった訓練等につきましては、関係機関の適切な指導を行いながら、

こういった子供の連れ去り等が防げるということを期待したいと考えております。

○串田委員 今はちょっと具体的にはなかなか言えないかとは思いますけれども、やはりちょっと、写真を見たら、法務大臣もこれはちょっとやり過ぎだろうと思っていただいていると思いますよ。そういったようなところで、警察の方も、同じ訓練においてもちょっと配慮していただきたいなというふうに思います。

 そして、こういうようなことがあると、学校が、何の、DVでもなければそういう虐待でもないのにかかわらず、

子供を連れ去った側が、学校側から運動会とかに対するいろいろな情報を教えないでくれと言われると、

学校が教えなくなる、場合によっては行けなくなるというようなこともあるんですが、

そういうような法律上の根拠というのはどこにあるんでしょうか。

○丸山政府参考人 お答えをいたします。

 父母間での子供との面会などをめぐるトラブルによって、

連れ去りなどの子供が巻き添えになる事案が発生していることを踏まえれば、

学校としては、子供への安全上の配慮等の観点から、

別居親への対応について慎重に行う必要があるというふうに認識をしております。

 面会交流の権利については、

民法第七百六十六条に根拠がありますが、

父母間の協議、家庭裁判所の審判等によって

具体的な頻度、方法などが決まるまでは、

別居している親は

具体的な面会交流の実施を求めることはできないもの

と解されておりまして、

例えば、

一部の学校においては、学校行事への参加など、子供と面会をする場合には父母間の協議が調っていることなどを前提にするといった事例があると承知をいたしております。

 学校が、教育委員会や福祉部局等と連携をしながら、子供の安全を第一に考え、適切に対応していくということが重要であるというふうに考えております。

○串田委員 時間になりましたので、この点は次の回にもう少し細かくやりたいと思うんですけれども、

連れ去った側が諸外国では犯罪になるんだという国まであるぐらいですよ。

その状況を、この運動会だとかそういったようなことに対して

どういうふうに国が考えていかなきゃいけないのかということを今後はまた問いたいと思います。

 きょうは、どうもありがとうございました。

○葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

平成28年(行ウ)第10号 非開示処分取消請求事件 山口県完全敗訴 判決全文

 

山口県完全敗訴事件。
山口県の闇。
黒塗りは、山口県の闇の色。

児童相談所の元要保護児童が、
不適切に保護を解除された結果、
自殺してしまいました。

 

保護解除は、
児童相談所の判断ミスですので、
検証が必要なのですが、

山口県は、断固拒否。

検証がなされない以上、

児童相談所の判断ミスでつらい目に合う児童

が続出することとなります。

要保護児童に、適切な保護をお願いします。


********************************
平成30年10月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成28年(行ウ)第10号 非開示処分取消請求事件
口頭弁論終結の日 平成30年7月9日

判決
●●市●●丁目●●-●●
原告 ◆◆ ◆◆
同訴訟代理人弁護士 山本 雄大

山口市滝町1番1号
被告 山口県
同代表者兼処分行政庁 山口県知事
村岡 嗣政
同訴訟代理人弁護士 ●● ●●
同指定代理人 ●● ●●
●● ●●
●● ●●
●● ●●
●● ●●

主文

1 山口県知事が
山口県個人情報保護条例に基づき
原告に対してした
平成27年2月13日付け個人情報非開示決定処分
を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求
主文同旨

第2 事案の概要
1 本件は,原告が,山口県個人情報保護条例
(平成13年12月18日山口県条例第43号
(平成27年山口県条例第3号による改正前のもの。以下「本件条例」という。))
10条1項に基づき,
山口県岩国児童相談所が所管する原告の亡長女
(以下「本件児童」という。)
に係る個人情報
の開示を請求したところ,
処分行政庁(山口県知事)から,
本件条例の定める非開示情報
に該当することを理由とする非開示決定処分
を受けたことを不服とし,
これに対する異議申立ても棄却されたことから,
同処分の取消しを求める事案である。

2 本件条例の定め
 本件条例の定めのうち本件に関係するものは,
別紙に抜粋するとおりである。

3 前提事実(証拠の摘示のない事実は当事者間に争いがない。)

(1)原告は,
平成8年●●月●●日,
訴外●●●●と婚姻の届出をし,
平成9年●●月●●日に長女である●●(本件児童)を,
平成13年●●月●●日に二女を,
それぞれもうけたが,
平成18年●●月●●日,
上記二子の親権者をいずれも母である訴外●●●●と定めて調停離婚した
(甲6,弁論の全趣旨)。

 本件児童は,上記離婚後,親権者である母に監護養育されていたが,
平成26年11月●●日午●●●●時頃,
自宅で自殺した。

(2)ア 原告は,
平成27年1月6日付けで,本件条例10条1項に基づき,
山口県知事に対し,
「岩国児童相談所などで所管する●●●●に関する
(◆◆◆◆あるいは●●●●の父親に該当する箇所のほかすべての書類)
書類」
(以下「本件情報」という。)
の写しの交付を求める個人情報開示請求書
を山口県知事あてに提出した
(以下,この請求書による開示請求を「本件開示請求」という。)。
 本件情報は、
本件児童に係る児童記録一式
であり,
本件児童に関する氏名等の基本情報をはじめ,
相談の内容や家族の状況,
具体的な援助方針と
その後の経過,
関係機関又は関係者等からの情報及び
本件児童に係る評価
等が記載されている。
(甲1,2,乙3)

イ 山口県知事は,
平成27年2月13日,本件開示請求について,
本件条例12条1項に基づき,
(ア) 開示請求者以外の個人に関する情報
であり,
開示することにより,
開示請求者以外の特定の個人を識別できる情報
であって、
本件条例16条3号イ,ロ,ハのいずれにも該当しない(同号本文該当)

(イ)開示することにより,関係者,関係機関との信頼関係が損なわれるなど、
今後の児童福祉業務の適正な遂行に著しく支障を及ぼすおそれがある
(本件条例1 6 条8号該当)
ことを理由として,
本件情報の全部を開示しない旨の
個人情報非開示決定処分
(平26岩児第208号。以下「本件処分」という。)
をした。

(3)原告は、
平成27年2月19日,本件処分の取消しを求めて異議申立てをした(甲4)。

(4)上記異議申立てに対し,山口県知事は,
平成28年3月29日,
本件情報が本件条例16条3号に該当し,
同条8号該当性については判断するまでもないとして
これを棄却した(甲5)。

(5)原告は、
平成28年7月28日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。

4 争点及び争点に対する当事者の主張
(1)本件情報が
原告にかかる「自己の個人情報」(本件条例10条1項)
に該当するか(争点1)

ア 被告の主張
(ア)本件情報は,
既に死亡した本件児童の個人情報
であって,
原告の個人情報
ではない。

(イ)本件条例10条1項は,
開示請求権の対象を「自己の個人情報」と定めているところ,
「自己の個人情報」とは,
本件条例2条1項に定める定義によれば
「生存する個人に関する情報であって,
当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により
特定の個人を識別することができるもの
(他の情報と照合することができ,
それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」
であり,
死者に関する情報

本件条例の対象から除外し,
例外として,
死者の相続財産等に関する情報

相続人の情報
と認められることがあるにすぎない。

 本件開示請求の対象とされた
本件児童の個人情報
は,
実施機関の職員が本件児童から直接聴取した情報
のほか,
関係機関又は関係者等から聴取した本件児童に関する情報,
及び
実施機関が本件児童に対する援助業務に必要な情報
として関係機関又は関係者等から取得した文書等
を含めた個人情報
であって,
相続財産等に関する情報
とは認められず,
本件条例10条1項の
「自己の個人情報」
に該当しないことは明らかである。

(ウ)本件情報は,
本件児童の生前の人格の発露としての発言等を含み,
児童相談所において本件児童の福祉の観点から作成されるものとして,
全体として
本件児童に関する個人情報
に該当するところ,
これらが本件児童の死亡によって遺族自身の情報
と評価し得る性質のものに変換されるものではない。

なお,個人情報開示手続上,
遺族の財産に関する情報
であるかが問題となるのは,
前提として
遺族の財産に関する情報
が含まれると
客観的に認められる根拠
が自明であると認められる場合であって,
本件情報自体をもって
それが自明であるとはいえない。

(エ)また,本件児童の死亡当時,
原告が
非親権者でありかつ
非監護親であったこと,
扶養義務を履行していたことや
面会交流の具体的実施状況等
についての具体的主張立証
もないことからすれば,
原告が本件児童との関係で
家族共同体の一員であるとはいえないし,
本件情報の性質に照らしても,
原告が遺族として
その情報を管理することが
社会通念上当然であるとはいえない。

(オ)以上によれば,
本件情報を
原告の個人情報
ということはできず,
原告は
本件情報の開示請求をする資格
を有しない。

イ 原告の主張

以下のとおり,
本件情報は
原告自身の個人情報
であるから,
原告は,本件条例10条に基づき,
実施機関である山口県知事に対し開示請求権を有する。

(ア)死者の個人情報
のうち,社会通念上,
開示請求者自身の個人情報
とみなせるほど開示請求者と密接な関係がある情報,
家族共同体の一員として関心を持ち,
その情報を管理することが社会通念上も当然と認められる情報,
死者である子の成長に関わりのある情報
及び
死者である子に対する不法行為等による被害等に関する情報
については,
遺族自身の個人情報
として開示請求が認められるべきであり,
これが
人格の発露に関わりのない情報
のみに限られる根拠はない。
 本件情報は,
本件児童にかかる児童相談所の児童記録一式
であり,
本件児童の人格的成長に関わる情報
であるから,
原告が
家族共同体構成員の一員である親
として関心を持ち,
管理することが社会通念上も当然と認めしられるものである。

 また,本件情報には,
本件児童がいかなる加害行為を受けていたのかという情報
も含まれていると考えられる。

(イ)原告は,
本件児童の自殺に寄与した者
がいる場合,
同人に対する不法行為に基づく損害賠償請求権

本件児童から相続し,あるいは
同人に対して
固有の損害賠償請求権
を有することとなる。

したがって,
本件情報は,
そのような者の有無を明らかにし特定する資料
となるものとして,
原告の相続すべき財産ないし
原告が有する損害賠償請求権に関する情報
に該当する。I

(2)本件条例16条3号を理由に不開示とすることの相当性(争点2)
ア 被告の主張
(ア)本件情報は,
その全てが
開示請求者以外の個人(本件児童)に関する情報
であるから,
本件条例16条3号の非開示事由がある。

(イ)本件情報に記載された公務員の職又は氏名
についても,
本件情報と不可分一体の情報
であるといえるから,
本件条例16条3号イないしハに規定する事由
は認められない。

イ 原告の主張
(ア)死者に関する情報
については,
当該情報が
同時に
遺族自身の個人情報
に該当する場合には,
本件条例16条3号該当性
は否定される。
親権を有しない親であっても,
養育費支払義務を負い,
面会交流を行うなどして
未成年子との親子関係を継続し,
親権者による親権の行使を是正する立場にあり,
これらのために必要な情報
は,
家族共同体の一員として知っておくべき情報
であり,
親自身の個人情報
に当たる。

特に本件では,
本件児童の自殺の経緯を解明する手がかりとなる事実
が記載されている蓋然性も高く,
近親者自身も固有の損害賠償請求権
を行使することができることからすれば,
原告自身の個人情報
に当たることは明らかである。

(イ)仮に本件情報が
本件条例16条3号本文
に該当するとしても,
同号ハによれば,
本件情報のうち,
児童相談に当たった公務員等の職又は氏名であって,
当該公務員の職務の遂行に係る情報
については,
開示されなければならない。

(ウ)なお,相談受付台帳における「保護者氏名」や
対応に当たった職員の氏名
等の情報は,
本件児童の情報
とはいえず,
容易に区分可能であるから,
すべての情報

本件児童の情報
と不可分一体であるとする被告の主張
は失当である。

(3)本件条例16条8号を理由に不開示とすることの相当性(争点3)
ア 被告の主張
(ア)児童相談所が
個別の相談事案において取り扱う
情報
については,
これを他の公的機関や民間事業者等からも収集しているところ,
関係機関等
は,
それぞれが守秘義務を負う中で,
当該情報が児童相談所から外部に開示されないこと
を前提として収集に応じている。
仮に,このような情報が原則的に開示されることとなれば,
児童相談所は,
関係機関等との間の信頼関係を失い,
関係機関等が心情的あるいは法的に
児童相談所への
情報の提供や
率直な意見の陳述
に抵抗を示すことになり,
ひいては,従前の水準で情報の提供を受けることができなくなり,
個別の相談事案において
具体的な援助方針の決定の基礎となる情報
が不足したり,
情報取得事務に要する手間が増加したりすることにより、
相談援助業務全般に係る事務が滞ることとなる。
 また,児童を担当する公務員の職又は氏名を公表することとなれば,
当該児童に係る情報
を得ようとして,
担当者に対する直接の働き掛けがなされるおそれがある。

 さらに,本件情報は児童の内面を表すものであり,
極めて機微にわたる私的な情報
であるから,
児童にとっては
親であったとしても知られたくない情報
が含まれている。

このような情報

親の請求により開示される可能性があるとなった場合,
児童自身が,児童相談所職員との面接で率直で正直な陳述を行うことができなくなり,
児童相談所の円滑な事務の実施に著しい支障が生じる。
以上のとおり,本件情報を開示した場合,
児童相談所における事務の実施が
著しく困難になるというべきであるから,
本件情報全体が
本件条例16号所定の非開示事由
に該当する。

(イ)なお。本件条例17条は,
非開示情報と
そうではない情報
との区分が容易にできる場合に
部分開示をすべきことを規定しているところ,
これらの区分が容易にできない場合には部分開示をすることはできない。
本件情報は,
不可分一体性を有するのであり,
本件条例第17条で定める部分開示をすべき場合
には該当しない。

児童相談所では,その運営に著しい支障が生じないよう,
外部に開示されることが予定されるものと
そうでないもの
を区分しており,
本件情報は,
全体として児童相談所が内部的に整理する必要のある文書
として区分されているという性質上,
不可分一体性を有する。

 また,児童相談に至る理由,時期,場所,対応した職員,面談方法などは,
児童本人に係る周辺情報を含む
断片的な他の個別情報と結びつき,
一体となって初めて有機的な情報
として意味を有するものであって,
児童相談所の機能からしても
児童本人の立場から考えても
単独や意味を有するものではないから,
項目別に切り分けて考えることは
文書の性質上妥当ではなく,
全体について不可分一体性を有するものである。

さらに,
児童相談所と関係機関等との関係からしても,
連絡,協議等の情報が開示されることとなった場合に,
関係機関等が
児童相談所への情報提供や
率直な意見の陳述
に抵抗を示すことになり,
児童相談所の円滑な事務の実施を著しく困難にする可能性が高いから,
この意味でも
不可分一体性を有する情報
である。

イ 原告の主張
(ア)被告の主張する児童相談所における円滑な事務の実施に対する支障
は,
抽象的なものにすぎない。
また,
本件児童が親に知られたくないとの意向を有していたこと
を裏付ける証拠もない。

(イ)仮に非開示とすべき部分があるとしても,
部分開示の余地があることにつき
前記(2)イ(ウ)のとおり。

第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件情報が原告にかかる「自己の個人情報」(本件条例10条1項)
に該当するか)について

(1)本件条例は,個人情報にかかる本人の権利利益を保護することを目的とす

るものであり(本件条例1条),
死者に関する情報
の保護によって
遺族等の第三者の権利利益を保護すること
は予定されていない。
 しかしながら,
当該死者と特に密接な関係を有する遺族等
については,
社会通念上,
当該死者に関する個人情報
が,
同時に遺族等「生存する個人」自身の個人情報
に当たる場合があり得るから,
そのような情報
については,
当該「生存する個人」に関する個人情報
として,
本件条例による保護の対象となるものと解するのが相当である。

そして,死者が未成年者である場合には,
相続人たる地位を有する父及び母
は,
当該未成年者の権利義務を包括的に承継する者
として,
特に密接な関係を有し,当該未成年者にかかる情報
が,
社会通念上,
相続人たる地位を有する父又は母自身の個人情報
と同視し得る余地があると考えられるから,
原告は,本件条例10条に基づき,
本件児童にかかる個人情報

自己の個人情報
として,
開示請求をする適格を有するものと解するのが相当である。

 なお,生前の親権の有無については,
親権制度が
子を監護養育する者の権利義務を定めて
当該子の福祉・利益を保護するためのものであること
に照らし,
親権に服する子の死亡後は,
親権の有無によって子との関係を別異に扱う必要はない
というべきである。

(2)したがって,争点1についての被告の主張は採用できない。

2 争点2(本件条例16条3号を理由に不開示とすることの相当性)について

(1)認定事実
 前記前提事実に
証拠(甲15ないし20)及び
弁論の全趣旨
を総合すると,
以下の事実が認められる。

ア 本件児童は,小学校2年生の頃から発達障害が疑われ,
小学校
2年及び
5年在学中に児童相談所が関与し,
小学校5年に在学中の
平成20年9月に児童相談所から紹介された
広島西医療センター

●●●●及び
●●●●
と診断され,
外来面談を継続していた。
その後,中学校3年に在学中の
平成24年6月1日に児童養護施設に入所し,
平成26年4月6日,
自宅から通学可能な定時制高校への編入に伴って
同施設を退所した。

イ 本件児童は,
平成26年11月●●日,自宅で自殺した。

(2)ア 前記判示のとおり,
死亡した未成年者にかかる個人情報
については,
その相続人たる地位を有する父又は母自身の個人情報
と同視し得る余地があると考えられるところ,
本件情報は,
家庭及び地域における児童養育を支援するための行政機関である児童相談所
が,
その業務のために作成した児童記録一式
であるから,
その性質上,
子の生前,その養育を直接的又は間接的に担っていた
子の相続人たる地位を有する父又は母
の個人情報
と基本的に同視し得る
ものと解するのが相当である。

イ 他方,本件条例16条3号は,
開示請求者以外の個人に関する情報
が含まれる情報
(事業を営む個人の当該事業に関する情報
を除く。)
について,
同号イないしハに掲げられる情報
を除き,
実施機関が当該個人情報を開示しないことができる旨を認めている。

そして「個人に関する情報」には,
生存する個人に関する情報
のほか,
死亡した個人に関する情報
も含まれるところ,
本件情報には
開示請求者である原告以外の者である本件児童や,
その遺族である本件児童の母
に関する情報
が含まれている可能性のあることは否定できない。

 そこで,上記部分についての開示の可否について検討するに,
本件条例16条3号の趣旨は,
自己の個人情報の開示,訂正及び利用停止を請求するという
開示請求者の権利利益と,
当該個人情報に含まれる自己の個人情報が開示されることにより
プライバシーが損なわれる
第三者の権利利益
の調和を図ることにあると解されるが,

①本件条例が,
上記開示請求者の権利を明らかにすることにより,
県民の権利利益の保護を図るとともに,
県政に対する県民の信頼を保護すること
を目的としていること(本件条例1条),

②実施機関は,
開示請求に係る個人情報

第三者に関する情報
が含まれているときは,
開示するかどうかを決定するに当たって,
第三者に対して意見書を提出する機会
を与えること等ができ(本件条例14条1項),
当該情報を開示しようとする場合であって
当該情報が
本件条例第16条3号口又は同条4号イないしハに規定する情報
に該当すると認められるときは,
第三者に意見書を提出する機会
を与える等しなければならないが(本件条例14条2項),
本件条例において,
提出された意見に対して法的拘束力を認めた規定
はないごと,

③一般に,ある個人情報について,
第三者に関する情報
が含まれることは少なくないと考えられるところ,
そのような場合に原則として当該情報を開示することができないとしたのでは,
本件条例の上記趣旨が没却されるのは明らかであること
からすれば,
本件条例16条3号に基づいて個人情報を開示しないことができるのは,
個人情報に含まれた第三者に関する情報
を開示すると,
当該第三肴の私生活に支障が生じる蓋然性があり,かつ,
部分開示とすることによってはこれを阻止することができないという場合に限られる
というべきである。

そして,本件条例は
およそ死者に関する情報
を適用対象外としているとはいえないものの,
死者自ら開示請求権を行使することが不可能であることに鑑みて
「個人情報」の定義から
死者に関する情報
が除かれていることからすれば(本件条例2条1項)、
本件条例において,
死者に関する情報
は,
死者自身の個人情報としては保護されていないものと解される。

そうすると,
本件条例16条3号が
死者に関する情報
を保護の対象としているのは、
死者自身のプライバシーを保護することではなく,
主として,
死者の親族の名誉及びプライバシーを保護すること
に目的があり,
死者の名誉及びプライバシーに対する一般の国民感情に配慮することに附随的な目的
がある
と解するのが相当である。

以上のような本件条例16条3号の趣旨に照らすと,
死者の遺族が
遺族固有の個人情報
であるとして
当該死者に関する情報
の開示請求をした場合は,
当該死者の他の遺族の名誉及びプライバシーを害する目的,態様でなされる等の
特段の事情
がない限りは,
当該情報に
当該死者に関する情報
が含まれていることを理由として開示をしないことは許されない
と解するのが相当である。

ウ そして,原告は,本件児童が児童相談所の援助を受けながら,
どのような経緯で自殺するに至ったのかを知るため,
平成26年1月1日から
同年12月31日までの期間に限定して、
本件情報の開示請求をしたと認められるのであって,
原告の本件情報に対する開示請求には,
死者である本件児童の遺族の名誉及びプライバシーを害する目的
があったとはいえず,
他に前記特段の事情があったことについての主張立証もない。

したがって,本件情報について
本件条例16条3号の非開示事由があるとする被告の主張
を採用することはできない。

3 争点3(本件条例16条8号を理由に不開示とすることの相当性)について
(1)本件条例16条8号は,
県の機関等が行う事務又は事業に関する情報
であって,
当該事務又は事業の性質上,開示をすることにより,
当該事務若しくは事業の実施の目的を失わせ,又は
当該事務若しくは事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれがあるもの
が含まれる個人情報
について,
これを開示しないことができる旨
を規定する。

 前記のとおり,
本件条例が,
県等が保有する個人情報

開示,訂正及び利用停止を請求する権利
を明らかにすることにより,
県民の権利利益の保護を図るとともに,
県政に対する県民の信頼を保護すること
を目的とすること(本件条例1条),
本件条例16条8号が,
同条5号と異なり,
実施機関に
要件該当性の判断に係る裁量
を認めていないこと
を考慮すれば,
同条8号にいう
「当該事務若しくは事業の円滑な実施を著しく困難にするおそれがある」
というためには,
情報を開示した場合には,
県の機関等の事務若しくは事業の円滑な実施に著しい支障が生じる高度の蓋然性があることが,
客観的かつ具体的な根拠に基づいて認められなければならない
と解するのが相当である。

(2)これを本件についてみると,
本件開示請求の対象たる情報
は,
既に死亡した児童に関する情報
であり,
同時にその親である開示請求者自身の個人情報
でもあるところ,
当該児童に対する相談援助活動

既に終了しているため、
当該事件に関する事務の遂行への支障
は通常は考え難い。
また,児童相談所は,
児童に関する家庭その他からの相談
のうち,
専門的な知識及び技術を必要とするもの
に応ずること,
児童及びその保護者につき,
調査又は判定に基づいて
児童の健康及び心身の発達に関する専門的な知識及び技術を必要とする指導
その他必要な指導
を行うこと
等の業務を行うところ
(児童福祉法12条2項),
かかる業務を行う児童相談所に対して情報を提供する関係機関等は,
一般に,
児童相談所に提供した情報
のうち,
当該情報を開示してもその事務の遂行に著しい支障を生じる高度の蓋然性がないもの
まで
全面的に開示されないこと
を前提としているとは解し難く,
開示によって,当然に,
児童相談所と当該関係機関等との信頼関係が失われる蓋然性がある
とは認め難い。
また,被告は,
児童を担当する公務員の職及び氏名を公表することとなれば,
当該児童に係る情報を得ようとして,
担当者に対する直接の働き掛け
がなされるおそれがあると主張するけれども,
それにより,
高度の蓋然性をもって,いかなる著しい支障が生ずるのか
についての主張立証はない。

(3)さらに,本件条例17条は,
16条各号のいずれかに該当する情報
が含まれている場合において,
その情報を容易に区分することができるときは,
その情報を除いて、
当該個人情報の開示をしなければならない旨を規定する。

そして,上記規定による部分開示の範囲は,
当該情報の作成名義,
作成の趣旨・目的、
作成時期,
取得原因,
当該記述等の形状,
内容
等を総合考慮の上,
独立した一体的な情報
を単位とするものと解するのが相当であるけれども,
本件において,
関係者からの聴取情報,
客観的な資料に基づく生育歴
等の
事実経過に関する情報

検査等にかかる情報,
医療機関から提供された医学的所見
等について,
その独立一体性が否定され,
非開示情報が記載されている部分
を容易に区分することができるときに当たらない具体的な事情
を認めるに足りる的確な証拠はない。

(4)以上によれば,
本件情報について
本件条例16条8号の非開示事由がある
とする被告の主張を採用することはできない。

第4 結論
以上によれば,
本件情報は,
原告の自己の個人情報に該当し、かつ,
本件条例16条3号及び同条8号に規定する非開示事由
はない
と認められるから,
本件処分は取消しを免れない。
よって,
原告の請求は理由があるから認容することとし,
主文のとおり判決する。

山口地方裁判所第1部

裁判長裁判官 福井 美枝
   裁判官 橋本 耕太郎
   裁判官 清水 萌

田川市長あて「DV支援措置運用実態 情報 非開示決定」に対する審査請求。

原則開示なのに、
田川市長は、とりあえず、非開示から始まることが多い。

まあ、無知な担当者や委員の方々に、
議論を尽くさせて、
成長する機会を与えることも必要である。


そもそも論として、
担当者や委員が、
情報開示条例とか

憲法とか、
法律とか
知らんからな~。

*********************
審査請求書
平31年2月28日  

田川市長 殿

審査請求人 ○○県○○市○○
○○ ○○ ㊞
(連絡先 ○○-○○-○○(電話番号))

次のとおり審査請求をします。

1 審査請求に係る処分の内容
田川市長がした平成30年11月29日付けの審査請求人に対する情報非開示決定処分(田市市第243号)(甲第2号証)

2 審査請求に係る処分があったことを知った年月日
平成30年11月30日

3 審査請求の趣旨
「1記載の処分を取り消す」との裁決を求める。

4 審査請求の理由
 審査請求人は、平成30年11月21日に情報開示請求(甲第1号証)をしたところ、
平成30年11月29日、田川市長から1に記載する処分(以下「本件処分」という。)を受けた。
本件処分は、その理由として、

「田川市情報公開条例第10条第1項第4号エに該当
(理由)
本市におけるDV支援措置件数等の具体的な実施状況を開示することにより、
田川市に対する地域的な偏見や社会的差別を助長するおそれがあり、
市民生活の安全と秩序の維持に支障が生じると認められるため。」

という。
しかし、
本件処分の対象となる情報(以下「本件情報」という。)
を開示するにあたって、
上記理由に該当する事実は認められない。 

以下検討していく。 
 
田川市情報開示条例逐条解説(甲第3号証)によれば、
田川市情報公開条例第10条第1項第4号エについて、(甲第3号証下部15ページ)

「開示することにより、~(略)~その他市民生活の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれのあるものは非開示とする趣旨であり、次のようなものをいう。」、

「⑵ 「その他市民生活の安全と秩序の維持に支障が生ずる」とは、
 開示することにより、
 市民生活の安全に対する障害が発生したり、
 社会通念に照らし著しく妥当性を欠き、また、
 社会的差別を助長するような結果が生じたりするおそれのあるもので、
 市行政としてその発生を防止しなければならないと認められるものをいう。」

とある。
 しかし、
本件情報を開示することと、
「市民生活の安全と秩序の維持に支障が生ずる」事
との間には、因果関係が認められない。

田川市情報開示条例逐条解説によれば、
田川市情報公開条例第10条について、(甲第3号証下部9ページ)

「第10条(情報の開示義務)
 第10条 実施機関は、開示の請求に係る情報に次の各号のいずれかに該当する情報が記録されているときを除き、当該情報を開示しなければならない。
【趣旨】
 本条は、開示の請求に対する実施機関の開示義務を明らかにしたものであり、実施機関は、開示の請求に係る情報に非開示情報が記録されている場合を除き、当該情報を開示す
る義務を負うことを定めたものである。
【解釈】
 情報の開示の請求に対しては、原則開示とするものであるが、請求者の権利、請求者以外の個人・団体の権利及び公益のそれぞれが適切に保護されるよう調整されなければなら
ない。」

とあり、原則開示である。
 
 また、原則開示であるにもかかわらず、例外的に非開示とできる場合のひとつとして、
田川市情報開示条例逐条解説によれば、
田川市情報公開条例第10条第1項第4号(行政運営に関する情報)について、
(甲第3号証下部14ページ)

 「【趣旨】
  本号は、第1条の目的を達成するために
  原則として開示すべき市政に関する情報について、開示することにより、
  公益を保護できなくなる情報又は
  保護できなくなるおそれの明らかな情報
  は、非開示とすることを定めたものである。
  【解釈】
1 本号において、
「支障」とは、名目的なものではなく実質的なものであり、
「おそれ」とは、単なる可能性があるだけではなく、支障が起こり得ることが具体的に明らかであることが必要とされる。」

とある。
 
 田川市長は、本件非開示決定の理由として、

「本市におけるDV支援措置件数等の具体的な実施状況を開示することにより、
田川市に対する地域的な偏見や社会的差別を助長するおそれがあり、
市民生活の安全と秩序の維持に支障が生じると認められるため。」

というが、
本件情報を開示することで、市民生活の安全と秩序の維持に

「名目的なものではなく実質的な」支障が生じるとは認められず、また、
田川市に対する地域的な偏見や社会的差別を助長する
「単なる可能性があるだけではなく、支障が起こり得ることが具体的に明らかである」
おそれも認められない。
 よって、本件非開示決定は、
非開示の理由がなく、
開示の義務が課されているにもかかわらず、非開示とされたものであり、不当である。

 次に、「支障」と「おそれ」を解釈するにあたって、実際に公表されている情報を見ていく。
 
 まず、「第2次田川市男女共同参画プラン 平成29年3月 田川市」である。
 
 資料中31ページには、

「何らかのDVを受けた経験の有無について」
というアンケート結果が公表されている。

田川市では全体として、
17.9%の人がDVを経験したと回答していることがわかる。
このことから、
田川市では、DVが少ないと考えるか、DVについての理解が足りていないと考えるかは、個々人次第であるが、
すくなくとも、
非開示とする「支障」と「おそれ」はない事として公表されている。
 
 資料中32ページには、
「経験したことのあるDV被害の種類について」
というアンケート結果が公表されている。

 内容は、田川市の男女別に具体的なDV被害について、アンケートをとったものである。
 アンケートに回答した田川市の女性の1%は、「⑦刃物などをつきつけておどす」、
同じく4.8%は、「①平手で打つ」、
同じく5.1%は、「②足でける」
という被害を受けているなど、
非常に生々しい被害実態が公表されており、
非開示とする、「支障」と「おそれ」はない事として公表されている。
 
 次に、「人権問題に関する市民意識調査報告書 平成29(2017)年12月 田川市」である。

 資料中24ページには、
「問3 あなたは差別や人権侵害を受けたと感じたことがありますか。」
とのアンケート結果が公表されている。
全体的には、
14.3%の人が「人権侵害を受けた」と感じていることがわかる。

資料中25ページには、
「2)中学校区別特徴」として集計結果が公表されており、
金川中学校区は、突出して人権侵害が多いことがわかり、
田川市内においても、
「地域的な偏見や社会的差別を助長する」とも考えられるが、
非開示とする「支障」と「おそれ」はない事として公表されている。
 
 資料中28ページには、
「あなたは結婚や就職のときに、その相手方などの身元調査や信用調査をすることについて、どのように考えますか。」
とのアンケート結果が公表されている。
 
 資料中29ページには、
「2)中学校区別特徴」として集計結果が公表されており、
田川市内においても、
「地域的な偏見や社会的差別を助長する」とも考えられるが、
非開示とする「支障」と「おそれ」はない事として公表されている。

 次に、田川市役所1階通路に掲示されていた
「田川市子どもの貧困対策推進計画での取り組み」
である。

 「子どもの貧困に関する指標」では、
「子どもの相対的貧困率」が
田川市は、全国の1.6倍という不名誉な数字が公表されている。

 田川市の母子世帯の割合は、
全国の2.1倍、
福岡県の3.6倍
という不名誉な数字が公表されている。

 田川市の生活保護率は、
全国の3.5倍、
福岡県の2.3倍
という不名誉な数字が公表されている。

 そのほかの指標も総じて、悪く、
田川市は、「子どもの貧困に関する指標」が
全国的に見ても、
福岡県内においても、
ひどい自治体であると言える。

「田川市の現状(福岡県、国との比較)」では、
田川市のひとり親世帯数の割合が、
国の2倍以上高い割合となっていることがわかる。
 
 また、田川市の生活保護受給者及び受給世帯ともに
県の約5.5倍、
国の約3.5倍
と明記され、
「地域的な偏見や社会的差別を助長する」とも考えられるが、
非開示とする「支障」と「おそれ」はない事として公表されている。
 
 以上、実際に公表されている情報を見てきたが、
これらの情報が、非開示情報に該当しないことから考えると、
本件情報が、
非開示情報に該当すると認められる事実
は認められない。

  また、田川市情報開示条例逐条解説によれば、

「第18条(情報公開制度の総合的な推進)
第18条 実施機関は、この条例に基づく情報の開示を行うほか、
市民が必要とする情報を積極的に提供するとともに、
情報公開制度の総合的推進に努めなければならない。
【趣旨】
 本条は、総合的な情報公開に関する実施機関の基本的な責務について定めたものである。
【解釈】
実施機関は、情報の開示請求を待つまでもなく、
市政に関する情報を本条例の目的に即して積極的に提供することにより、
情報公開を総合的に推進していくことを明らかにしたものである。
なお、本条例の名称は、本条の理念に基づくものである。」

とある。

  田川市長が行った情報非開示決定は、
田川市情報公開条例第18条にも違反しており、大変遺憾である。
 
  また、田川市情報開示条例逐条解説によれば、
  その目的について、(甲第3号証下部1ページ)

 「第1条(目的)
第1条 この条例は、市の保有する情報の公開に関し必要な事項を定めることにより、
市政に関する市民の知る権利
を明らかにするとともに、
市民の市政への理解と信頼を深め、
市政への参加の促進を図り、
もって地方自治の本旨に即した
公正で開かれた市政を推進することを目的とする。
 【趣旨】
 本条は、条例の目的を明らかにしたもので、
条例解釈の指針となるものであり、
各条項の解釈及び運用は、常に本条に照らして行わなければならない。
 【解釈】
1 実施機関においては、
条例に定める要件を満たした情報
の開示の請求に対しては、
その求めに応じなければならない条例上の義務がある。
2 この制度の直接の目的である
「市政に関する市民の知る権利」を明らかにすることにより、
市民の市政への理解と信頼を深め、
市政への参加の促進という目的を達成することができ、
ひいては住民自治を中心とした地方自治の本旨に即した
公正で開かれた市政を推進すること
を究極の目的として定めたものである。」

とある。

 田川市長が行った情報非開示決定は、
「市政に関する市民の知る権利」を侵害するものであり、
市民の市政への参加を拒むものであり、
地方自治の本旨に反しており、
公正で開かれた市政を推進することを拒むもので
大変遺憾である。

  また、田川市情報開示条例逐条解説によれば、
 実施機関の責務について、(甲第3号証下部2ページ)

「第3条(実施機関の責務)
第3条 実施機関は、この条例の解釈運用に当たっては、
情報の開示を求める市民の権利
を十分に尊重するとともに、
個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう
最大限の配慮をしなければならない。
【趣旨】
 本条は、この条例の目的を達成するため実施機関が果たすべき責務
について定めたものである。
【解釈】
1 実施機関は、
情報の開示を求める市民の権利
を保障するため、
全て「公開の原則」の精神に立って、
この条例の解釈運用をしなければならない。
2 実施機関は、
条例に定める要件を満たした情報
の開示の請求に対して、
第10条第1項各号(情報の開示義務の適用除外)及び
同条第6項(情報の存否に関する情報)
に該当しない限り
開示を行わなければならない
との観点から、
条例全体を解釈し、運用しなければならない。」

とある。

 情報開示は、全て「公開の原則」であり、
適用除外については、例外的な取り扱いである。
以上

5 処分庁の教示の有無及びその内容
情報非開示決定通知書(田市市第243号)に記載の通り教示があった。

 6 添付書類
1.情報開示請求書(平成30年11月21日受付) 1枚
2.情報非開示決定通知書(田市市第243号) 1枚
3.田川市個人情報保護条例逐条解説 12枚
4.第2次田川市男女共同参画プラン 平成29年3月 田川市 抜粋3枚
5.人権問題に関する市民意識調査報告書 平成29(2017)年12月 田川市 抜粋5枚
6.田川市子どもの貧困対策推進計画での取り組み 1枚
7.子どもの貧困に関する指標 1枚
8.田川市の現状(福岡県、国との比較)1枚

「田川市に対する地域的な偏見や社会的差別を助長するおそれ」

 

DV支援措置の運用実態についての情報開示請求

に対して、

田川市長は、
非開示決定をしました。

非開示の理由は、

「田川市に対する

地域的な偏見や

社会的差別

を助長するおそれがあり、
市民生活の安全と

秩序の維持

に支障が生じると認められるため。」

だそうな。
 

条例に違反して、情報を開示しないという
隠ぺい体質
があきらかになるほうが、
よほど、

「田川市に対する
地域的な偏見や
社会的差別
を助長するおそれが」
あると思うのだが、
いかがだろうか?。

 

*************************

様式第4号(第2条関係) 

情報非開示決定通知書

田市市第243号
平成30年11月29日

○○ ○○ 様

(実施機関名)田川市長

 平成30年11月21日付けで、請求のあった情報

については、
田川市情報公開条例第7条第1項の規定により、
次のとおり開示しないことを決定したので通知します。

開示の請求に係る情報の件名又は内容

 

DV支援措置(住民票非開示)の田川市における具体的な実施状況がわかる情報。

情報を開示しない理由
① 開示の請求に係る情報を開示できない
2 開示の請求に係る情報を保有していない
3 開示の請求を拒否する

田川市情報公開条例第10条第1項第4号エに該当
(理由)
 本市におけるDV支援措置件数等の具体的な実施状況を開示することにより、
田川市に対する
地域的な偏見や
社会的差別
を助長するおそれがあり、
市民生活の安全と秩序の維持に支障が生じると認められるため。

事務担当課

市民生活部市民課
電話 0947(85)7136

(注)
この決定に不服がある場合は、
この決定があったことを知った日の翌日
から起算して3か月以内に
実施機関に対して審査請求をすることができます。
また、この決定があったことを知った日
の翌日から起算して6か月以内に
田川市を被告として
この決定の取消しの訴えを提起することもできます。
なお、決定の取消しの訴えは、
審査請求を行った後においては、
その審査請求に対する裁決があったことを知った日の翌日
から起算して6か月以内に提起することができます。