『オー・ファーザー』 | 元広島ではたらく社長のblog

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六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。

伊坂幸太郎さんの「オー! ファーザー」新潮文庫を読んだ.


おー

うまいなあ。ため息が出るほど面白い。

今 回も、冒頭から最後まで、伏線、伏線、伏線。登場人物が語るちょっとしたエピソードにも、物語の最後であっと言わす仕掛けがあるのではないかと、見逃さな いよう、忘れないよう、意識を集中して読む。そしてクライマックスに行くにつれて、見事にその伏線が紡ぎ上がっていく様は、もはや芸術の域。そして、いつ もながら飄々とした主人公と、ちょっぴりハートウォーミングなところも垣間見させて無事読了。ごちそうさまでした。

 

  主人公は高校生。お母さんと、無職のギャンブル好きな、居酒屋をしている女たらしな、大学の先生で頭のいい、中学校の先生をしているマッチョな4人?の父 親と一緒に住んでいる。母親が出張中にはトラブルが起こるという不吉な予感が的中し、事件に巻き込まれる。偶然見たカバンすり替え事件、県知事選、地下賭 場の親分、心中事件、不登校のクラスメート、チンピラに追われる友人、そして殺し屋。いかにも伊坂ワールドの住人という人々が織り成すどたばた劇と、どこ か冷めた主人公の飄々としたやりとりが楽しい。

 

  設定や、伏線の織り交ぜ方もそうだが、登場人物に語らす何気ない言葉がグサリとくる。親は、将来、自分の子が、「いじめっ子」か「いじめられっ子」どちら か一方になるとしたら、どっちを望むか?「いじめられる」よりは「いじめる」方がいいだろう。嫌な思いはさせたくないという親心がある限り、いじめは無く ならないかもしれない、と言わすところはなるほどと思わせる。

 

  そんなエピソードもあるのだが、巻末、著者は、この本が伊坂小説の第1期の最後の作品という位置づけだと言っている。その後の「ゴールデンスランバー」が 第2期1号だそうで、著者の中では明確に意識が変わっているらしい。ただ、私は、その段差のようなものは感じられず、相変わらず楽しかった。伊坂さんが、 突然SFや時代小説を書いたりしたら、はっきりわかるけど、私にはちょっとわからなかった。

 

 でも、伊坂さんが書くSFや、時代小説も面白いかもしれない。レーザー銃や火縄銃を持ってる殺し屋が出てくるはず。

 一つ言えるのは、伊坂さんの描く伏線が、宇宙にも大昔にも、時空を超えて張り巡らされることは確かだろう。

 

 5月あたりに映画化もされるらしい
http://oh-father.com/