テレビで『宇宙戦艦ヤマト』の実写版『Space Battleship YAMATO』をやっていた。アニメ世代の走り、雑誌アニメージュをほぼ初期から購読していた私にしてみると、劇場公開時、行毛なかったのが残念だった。誰もが愛してやまない登場人物を現代の役者で再現するのは、賛否両論あったが、どんな仕上がりかぜひ見たかった。
で、見た。う~ん。
途中で見るのをやめた。一番の理由は、同じ時間帯にやっていた、『所さんの笑ってこらえて』の方が面白かった。世界一のバイオリン製作者菊田浩さん、名曲『イパネマの娘』のモデルの数奇な人生のほうが面白かったからだ。理由②ストーリーのテンポが悪いのと、実写というリアルを追求したしたのに、アニメの時には気にならなかった船内の重力描写とかディテールの甘さが気にかかる。理由③木村拓哉さんが演じたのは古代進ではない。というところ。(案外、韓国や中国の俳優でオーディションすると、面白かったかも。松本零士の描く細い女性は、むしろベトナムあたりにいそう。)
理由の③は、しかたないかも。田村正和さんは、それがどんな役であろうとも田村正和だし、たまにドラマ出演し、話題となる明石家さんまさんは、すべて、明石家さんま。木村拓哉も『木村拓哉の部分』が強すぎて、演じ分けるのが難しいと思う。多分、役者さんは、同じ悩みを抱えているだろうけど、映画やドラマで、役を演じ分けることは至難の業だと思う。デニーロや、山ピーは、ボクサー役で減量という肉体改造でそれまでのイメージを払拭した。デニーロはさらに映画『エンゼルハート』『アンタッチャブル』で自毛を抜いて生え際を後退させた。肉体改造や見た目の印象を変えるのは、わかりやすく、ジョニーデップや、ジムキャリーは、特殊なメイクをする分、この俳優特有のジレンマに悩まされることは少ないかも。ハリウッドの俳優がTVドラマには出演しないのは、自分のイメージが固定化するのを恐れているからかもしれない。
日本の俳優は、この点、苦しい。劇場映画、TVのドラマ、バラエティ、宣伝活動と、露出が多く、素の自分が、露出しまくっている。親しみやすさが増し、人物像が把握しやすくなる分、ミステリアスさは無くなり、そのイメージが強ければ、どんな役柄をやろうと、その役柄のまえに、自分がしゃしゃり出てくる。その分、その俳優が好きという人なら、作品、内容によらず受け入れられるということ。逆に言うと、人気役者をキャスティングできれば作品や役作りは、二の次ということになる。
『男はつらいよ』の渥美清さんは、寅さんのイメージに固定化するのがいやで、他の作品に積極的に出たが、寅さんを超えることができなかった。逆に、自分の手を離れ、国民に絶大な存在感を与えることになった寅さんのイメージを壊さないように、晩年は、TVには出演せず、国民が持っている寅さんのイメージを壊さないようにした。
私くらいの世代は、古代進とか、アムロとか、ルパンとかアニメの登場人物は、寅さんと同じような存在。やはり、実写より、2次元の上で、進化していってほしい。
今春から、『宇宙戦艦ヤマト』のリメイク版が新しく展開されるらしい。興味はあるけど、これに時間を割くのは惜しい年齢になってしまった。