農援団長日記 -12ページ目

台風15号

一難去ってまた一難。
台風15号が近づいている。

今度はどうにも避けられそうにない。
備えあっても―
憂いばかり―
と言ったところか。

大雨が降ると河川が増水する。
最悪だと決壊し、大きな被害をもたらす。

ここで非常に大切な役割をしているものがある。

それは、水田。
そう田んぼなのだ。

田んぼは、昔から利水と治水の役割を担ってきた。
そう、ダムの役割を果たして来たと言えよう。

水が張られた田んぼの貯水量は、全国でおよそ81億トン。
日本各地に作られている治水ダムの貯水量の実に、3.4倍。

この時期、田んぼには水を張っていないので相当量の雨水を受け入れることができる。
日本の国土面積の概ね7割が山林。と言うことは、河川も比較的に急な流れになる。
水田があることで、その流量を抑制できるのだ。

もっと言うと、水の浄化機能や水生植物や小動物や昆虫の住処であり、酸素を作り出す機能だってある。
棚田は、土砂崩れだって防いでいる。

そして、なんと言っても食糧を生産する場所だ。

この様々な機能をお役人的に言うと「水田の持つ多面的機能」と言う。


マルコポーロが黄金の国ジパングと言ったのは、金の産出量の多さではない。

収穫直前の風にそよぐ稲穂を見たのだろうと思う。

その黄金の国ジパングが消費低迷と担い手不足によりゆっくりと荒廃へとその歩を進めているように思う。













マルシェでの一コマ

今朝のこと。
取引先の社長と電話をしていた。

先週末のマルシェでうちのきゅうりを販売していたときのことだそうだ。
あるご婦人がきゅうりのパックを手にとった。もちろんうちのきゅうりだ。
そのご婦人は、熱心にきゅうりの栽培や食べ方について尋ねてきたそうだ。
会話は概ね5分程度。
にこにこしながら穏やかな感じで説明を聞いていた。

最後に、「このきゅうりは、どこで作られているの?」と。

社長が胸を張って「千葉です」とこたえると、その瞬間、口を真一文字に結び、まるで汚いものでも触ってしまったかの様な素振りでどこかへ消えたと言う。

「放射能を気にしたんだと思うよ。でも、正直あのシーンは、きつかったなあ~」とは社長。

もちろん、そのご婦人がどこのどなたかはわからない。

「千葉で出た」と言うイメージが残り、その後の連続した放射性物質検査の結果などは伝わっていないのだろう。

しかも、きゅうりは出荷制限がかかっていない品目。県の検査でも、うちの自主検査でも不検出だ。

危ないから食べない。

それも正しいのかも知れないが、「危ない」と思う根拠はどこか?。

もちろん、そのご婦人も私たちの生産物を食べていただける大切なお客様である。

しかし、あまりにもわからず屋だと、こっちだって・・・・。

「そんなこと言っていると、食うもん無くなるぞ」って。

もっと勉強して欲しいとつくづく考える。







選択と集中

盆明けから、福島産の玉ねぎの出荷に追われている。
そう、福島の畑で働く社長が丹精込めて作った玉ねぎだ。
総量で17トンくらいか?。これを今、皮を剥いて出荷する作業を順次している。

有機JAS。無農薬栽培。放射性物質検査は不検出。

なのに・・・。

「福島産」と言うだけで販売先にはことごとく断れた。

その数、23社。

それでも、理解ある得意先に恵まれ、なんとかものになりそう。

これだけの不景気。引き取る方もリスクは負えないのはわかる。

例えば、売り上げが1兆円あったとしよう。
粗利を20%だとして、2000億円。
売り上げ原価を除く変動費と固定費が1900億円。
そうすると粗利2000億円-変動費・固定費1900億円で営業利益は100億円となる。

これが、景気が悪く、前年対比で5%減だったとする。
売り上げが9500億円。
粗利20%で1900億円。
企業努力をして変動費と固定費を削ったとしても年50億円が限界だとすると1850億円。
そうすると粗利1900億円-変動費・固定費1850億円で営業利益は50億円となる。

このことから、売り上げが5%落ちると営業利益は半分に落ち込んでしまう可能性が大いにあると言うのがわかる。だから、みんな必死なわけだ。復興支援とは頭でわかっていても数字がとれなければ、やりたくてもやれない状況なのだ。

経産省の商業統計によれば1988年から2004年までの7調査連続で日本の小売業の総売場面積は拡大している。今もなおコンビニやドラッグストアなどのカテゴリーキラー店の出店攻勢は続いている。

小売業は、過当競争が激化の一途をたどっているのだ。
と言うことは、1店舗当たりの享受可能な利益はどんどん減少する。

この前も書いたが、この場合のしわ寄せは製造業の方へ来る。
特に農産物なんぞは、コスト削減を試みるものの「そんなにうまくできるもんじゃない」と言うのが本音。本来、川上産業である私たちが今、小売業の過当競争の渦に巻き込まれ川下に追いやれている。

加えて、2050年には日本の人口が9,000万人を割り込み、店舗商圏内のマーケットが縮小する。シニア向け食材などの開拓等で成長分野はあるもののマクロ視点での絶対消費量の落ち込みは大きなインパクトだ。


要するに日本の小売業は諸外国に比べ圧倒的に多いのだ。

この構図も是正して、適正規模に修正しないと農家は苦しむ。
農家ばかりか、ロープライスでの集客に主眼がおかれるために、クオリティーが下がり消費者の食の安全も担保されにくい状況になる。

誰も得をしない。誰も勝てない仕組みがそこにあるのだ。

選択と集中。

自分ちの食卓からいろいろと見直していかなくてはならないと思う。