青森タナゴ釣行記1〜デビュー戦〜 | 弘前大学 フィールドサイエンス研究会(F研)

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弘前大学公認サークル「フィールドサイエンス研究会」(F研)のブログです。 弘前大学を拠点に,海・川・山林で生物の観察や採集をしています。
毎週月曜日18:00~農生棟203で定例会を行っています。

初めまして、今年入学した学部一年のtarponです。

普段はオサムシ科の甲虫や日本淡水魚などを好んで集めています。

 

僕の地元は中部山岳地帯でしたので、青森県、ましてや東北は自分にとって異郷の地です。

また、実家周辺は高標高の溶岩地でカルデラ湖はあったものの、湿地帯や河川に乏しく、青森県に点在する水郷地帯全てが新鮮でした。

 

「地元にいなかった日本淡水魚を見てみたい!」

 

という純粋な感情から、引っ越し準備が終わるや否や『山渓ハンディ図鑑 日本の淡水魚』を隈なく精読し、青森県に分布するニッタン(日本淡水魚の略)を書き出しました。

 

「タナゴ類が生息している!!」

 

地元は国外外来種に埋め尽くされており、小物釣りとはかけ離れていた環境でしたので青森にタナゴが分布していることに大きな衝撃を受けました。

 

兼ねてから”憧れ”の存在であり、ニッタンの”顔”でもあるタナゴ類が青森県に何種もいる…そう思うだけで胸が高鳴ります。

この時、自分のうちに秘めていた”魚への欲動”が微かに動き始めました。(オサムシ採集で抑圧された部分)

 

 

『山渓ハンディ図鑑 日本の淡水魚』によると

青森県には

ヤリタナゴTanakia lanceolata 

タナゴ(マタナゴ)Acheilognathus melanogaster

アカヒレタビラAcheilognathus tabira erythropterus(移入個体群)

シロヒレタビラAcheilognathus tabira tabira(移入個体群)

タイリクバラタナゴRhodeus ocellatus(国外外来種)

の5種が分布しており、

 

秋田県にはキタノアカヒレタビラAcheilognathus tabira tohokuensis、岩手県には在来アカヒレタビラが分布しています。

 

中でもヤリタナゴ、タビラ、バラタナゴは筆者らが通う弘前大学の位置する津軽地域にかけて生息しているそうです。

 

 

また、タナゴ類は三つのグループ(属)に分けることができ、

ヤリタナゴ、アブラボテなどのTanakia

カネヒラ、タビラ系などのAcheilognathus

バラタナゴ、カゼトゲタナゴなどのRhodeus となります。

 

僕的には、

Tanakiaは緩やかな流れのある平野部の河川に生息しているイメージです。

よってヤリタナゴは弘大の位置する内陸部より、岩木川下流域の水郷地帯にかけて分布するはず…

 

一方、タビラ系は緩やかな河川から、湿地帯、湖沼などの止水域と、様々な環境に生息します。

タビラ達ならりんご用ため池などが乱立する弘前市でも狙えると思い、Google マップでひたすらポイント落とし。

 

今まで散々御宅を並べてきましたが、

筆者は今までタナゴを取ったどころか、野外で見たことさえありません。

経験的には、完全に未知な魚でありますが、

「あやふやな所から少しづつ実態を掴み、生息地に迫る」というのは生物採集の醍醐味であるとも言えます。

 

 

早速目星をつけたポイントに釣行へ行きます

 

<ポイント1>りんご公園横ため池

雰囲気的にはバッチしです。120点の見た目。

 

込み上げてくる衝動を抑えて、釣り道具の準備をしていると、水面にモワッと波紋が…

ため池に何かしらの魚がいるという証です。安心と共にやる気が込み上がります。

 

小鳥の囀りを聞きながらタナゴ竿を降り出し、水面にウキを垂らします。

餌はさなぎ粉小麦粉しょうがチューブを適量混ぜたもので、集魚メインの配分にしました。

 

 

そんなこんなで微かなアタリを待つつ、ふと見上げると、

あっ…  

 

あれスピナベとスイムベイト(バス釣り用の擬似餌)じゃね?」

ため池の真上の電線に多くのルアーが引っ掛かってました。

 

そうです。このため池にアメリカンギャング(=ノーザンラージマウスバス)がいるということです。

タナゴ類および日本の淡水魚が生息している見込みは薄くなりました。

 

外来種がいるという事実に圧倒され、半分諦めかけていたら、ウキがピクピク上下に動き、確かなアタリが!!

 

すかさずアワセると、タナゴとは思えないほど引きます。なんだ…?

 

 

 

ギンブナCarassius langsdorfii でした。

ヘラブナよりも体高が低く、金色をうっすら帯びています。確か雌性発生(無性生殖の一種)という特殊な生態を持つフナ属の一種です。一応背鰭軟条数も数えましたが列記としたギンブナでした。

地元には外来ヘラブナしかいなかったので初釣りです。THEフナのこの相貌はコイ科の良さを凝縮した賜物です。

 

その後もポツポツ量型のフナが釣れました。

簡単だけとめちゃくちゃ楽しい。この釣り思ったより奥が深い。

先人に釣りの事を「ふなに始まりふなに終わる」と言わしめただけあります。

そんな中、フナに混じりアタるのにノラない「微小なアタリ」が来ていることに気づきます。

「タナゴかもしれない」という野心を抱き、早速、ハリを小さくしてみたところ、、、

 

タモロコGnathopogon elongatus elongatus

 

田んぼ横の用水路等に生息するモロコの仲間です。この子も初釣り。地元では外来ホンモロコしか釣ったことなかったので新鮮でした。青森県では他県からの移入個体群になります。

侘び寂び溢れる銀白色の体色は、タナゴ類の極彩色と双璧をなす和風な秀麗さが詰まっています。

背鰭の分岐軟条の透け感に加え、胸鰭の黄色が地味な体色の差し色になっていて尚良い。

 

その後もタモロコやギンブナを何匹か釣り、日が暮れてきたので納竿。

 

その後も何度かこのため池に通いましたが、本題のタナゴ類、

ましてや定着を危惧したバスでさえ魚影一つ見ることができませんでした

(あのルアーはなんだったんだ…)

色々疑問点は残りますが、次回は別のポイントにてタナゴを探してみます。

 

                       

 

 

文責 tarpon