初めてのブッキングライブへの出演交渉の中で、
「出演するのは良いのだが、共演者のクオリティーはどうなの?」
と聞いて来る人がいる。
この場合「実力」と「動員」、どちらの事を言ってるのだろう?
「実力は凄いが、動員がまだまだ追いついていない」人と、
「ポンコツだけど、何故か動員は結構ある」人と、
どっちが良いのだろうか?
「意義や意味のあるイベントに出たい」と言う。
きっと皆んな「当然だ」と思っているかも知れないが、
そこには大きなパラドックス、勘違いがある。
出演にあたり、しっかりした共演者を要求する場合、
まず君自身はどうなんだろう?
その素晴らしい共演者達にとって君は「意味のある共演者」なのか?
実力・動員共にあり、堂々と胸を張れるなら構わない。
しかし残念ながら私の経験では、そういう要求をする人は、
大概ポンコツだ。
言い換えると「一緒に共演したく無いアーティスト」とは
君自身の事だったのね、となる。
単なる「勘違い野郎」だ。
よく大きなイベントに皆んな出たがる。
大きな小屋で大きな動員のある各種フェスだ。
もちろんただ「お祭り」をみんなで楽しむのなら良い。
だがもし「お客さんゲット」が目的なら、そこに意味はあるのだろうか?
そこで「伝説のライブ」でも展開出来る、って言うのなら、
もちろん話しは別だが。
例えば全体のキャパの「1%」の新規ファンを獲得出来るとしよう。
100人で1人。10万人で1000人だ。
1回観ただけで、そんなに上手く行くかは分からないが、
大きなイベントに出たいって意味は「確率を上げる」。そこでしょ?
じゃテレビに出て、100万人が観れば、1回で1万人のファンが付く事になる。
一晩でもう「スター」だね。即武道館公演が可能だ。
そんなに上手く行くかな?
じゃあ、実際にはパーセンテージはもっと低いかもしれない。
「0.1%」?
となると常に1000人以上動員してるイベントに出なきゃ意味無いね。
1000人でもやっとファン1人をゲットだから。
「数字や確率じゃ無い!」
そうだね。じゃキャパは、共演者はどうでも良くなる。
大体数字や確率で物事が上手く進むなら、
誰がやっても同じ結果になっちゃう。
「たくさんの人に観てもらいたい」
多くの「一般の人」に、と。
そうすれば即ファンを獲得出来る、は結局妄想だ、幻想だ。
地域のお祭りや、ショッピング・モールのイベントに出て、
一体何人のファンを獲得出来た?
何人がライブハウスまで足を運んでくれた?
経験者なら分かるだろう。
また、少なくともライブハウスには「一般の人」などいない。
そこにいるのは「誰かのファン」だ。
観たいアーティストがはっきりした人達だ。
たとえその数が多くても、君に流れる可能性は低い。
学園祭を軒並み回り、地方のテレビやFMにゲスト出演する、ってのは
メジャーデビューした新人アーティストがよくやるプロモーションだ。
結構な本数の出演をしても、そこからのファン獲得は実は望み薄だ。
「じゃなんで出るの?」目的は単に「認知度を上げる」ただそれだけだ。
しかし実際には「新規」では無く、「既存」のファンの満足は得られる。
自分のヒイキのバンドがこんなに露出している、という安心感は作り出す。
そして既存のファン自身が新規のファンを
口コミで増やしてくれるきっかけにはなり得るから、無意味では無い。
つまりファンを増やすきっかけとは、「既存のファンの満足感」だ。
ファンの想いが強ければ、友達と分かち合いたくなる。
「一緒に行かない?」「凄く良いから」と。
その発想だ。
漠然と「多くの人に観せる」だけじゃ意味が無いんだ。
結局は、スゴくなきゃ。ゴキゲンじゃなきゃ。ビックリさせなきゃ。
ちょっとでも君に興味を持ってライブハウスまで足を運んでくれた人を
説得出来るかどうか、だ。
そして多分チャンスは1回だけだ。
その1回で心を鷲掴みにしなければ、次は無い。
日々のライブは、実はそんな「1回切りのオーディション」の
繰り返しなんだ、という強い意識が必要だ。
つまりここまで来れば「共演者のクオリティー」なんて全く関係無い。
問題は「君自身のクオリティー」だけだ。
よく思う。
有り得ない奇跡が起きて急に「紅白」に出る事になって、
君は大丈夫か?自信あるか?
ファンを獲得どころか、大恥をかかないか?
チャンスを欲しがるなら、チャンスを活かせる自分でいよう。
いつ何時奇跡が降って来ても、それを逃さない自分でいてくれ。
そして見つめるべきは、君を観に来てくれた目の前の人達だ。
2~3人だろうと、30人だろうと、
その人達の「満足」や「感動」が次の誰かへと繋がって行く。伝わって行く。
動員はこうやって増えて行くものなんだ。
勘違いはもう止めよう。
今日、今、目の前の「1人」を掴むんだ。
そのたった1人を掴めなきゃ、何も始まらない。
そのたった1人を、2人に、5人に、10人にして行くんだ。
そのために必要な事を全てやろう。
毎日がオーディションだ。
その覚悟をしよう。