先月に受注、完了物件の屋根の板金葺き替え工事。滞りなくご入金も頂き10年保証書もお渡しして無事めでたしめでたしに思えたが雨の度に電話が入り担当していただいた板金屋さんに対応をお願いしてきた。その都度、施工中から「真新しい時には屋根材の滑りが良く、これだけの面積になると半年くらいは雨樋が飲み込めずあふれる」事を重々説明を重ね、ご了承頂いてきた内容だった。
三度目となる先週の連絡で 最近は現場が重なり中々電話に出る事が出来ない(屋根などを施工中は当然高いところにいる訳で電話なんかに気を取られていると怪我をしかねない)場合が多々あるので メールにて対応をお願いしておいた。そして昨日である
「いつまでほっとくつもりだ、このやろー」と第一声からの罵声。
状況など考えられる事をお話してもべらんめー口調は収まらず 終いには父親の話(うちのじいさんはクレーンの運転手で施主である方は大工さんなもんで建前なんかでよく頼まれていたからよく知ってると言うわけだ)に行ったかと思いきや「お前のやり方が間違ってる!」と言ったきり電話を突然切られた。
仕方ないので危ないと知りつつも電話を入れる。案の定なかなかお出にはならなかったが まずは状況確認を専門家に委ねるのが得策と考えた僕はコールし続ける。やっと出て頂いた板金会社社長に電話を入れてもらう事をお願いして電話を切るとすかさずまたお施主さんから
「おめーは報告一つ出来ないのか」と再び言いたい放題で、こうしてる内に板金屋さんから電話が入っててもいけないので口答えはせずに聞いてるとまた一方的に電話が切られる。その五分後
「板金屋さんから電話があってすぐ来てくれるって言うけど、おめーはなんでそのことを伝えね~んだ、ばかやろー」とまた罵詈雑言。僕も他の現場の資料作成や顔出しなどの話をすれば
「じゃ、おめはうちには全然顔ださなかったじゃねーか。俺んとこはどうでもいいんかー、うちには何度来たって言うんだ」
聞き流してればいいものを4~5回はお邪魔させてもらってると遠慮がちに伝えると「ふざけんなー、俺が数えてる限り最初と解体中に飲みもん持って来た時と・・・」ガチャッである。
多分、最低でも11度ほど。ご相談のお電話を頂いてまずは資料提出、職人さんたちの紹介、見積提示、施工中の顔出し(これは3回ほど)、最終現場確認、請求書の提出、二度に分けた入金対応、保証書の提示と実際の事が思い出されたのであろうか また突然のガチャッ!!
1時間ほどした後、担当された社長さんから「前から同じことを何度も言ってきたはずで了承してる事ではないかと俺からよく言っといたから」とお話を頂きまずは一安心である。あまりにも身勝手な行動から隣人からも煙たがられ(解体時や長物部材の搬入で車の乗り入れや通行の妨げになるので、目の前のお宅にご挨拶させて頂いたときに「本人が頭下げて来たら、うちの敷地に入るなと許さなかった」などのお話があった)どなたも腫れ物に触らぬよう、近づかないよう努めてきた環境が改めて知らされる事になったのである。近隣の評判は真摯に受け止め、よくよく周知しておく事が大事だとつくづく思い知らされた。
建匠では主に受注業務(営業)と経理(事務)に携わっている。早いもので数えたらもう丸13年、14年目に入った。最初の内は慣れない仕事に戸惑ってばかりだったが徐々に自分流にアレンジして向き合っている。この仕事を始める前は当店の得意先から頂く新築住宅の内装工事やリフォーム工事で現場に居てなんぼのもんだった。現場オンリーで収入を得ていた僕には事務所で書類に関わること自体、不得意で逆に机上の方々とのやり取りが一番苦手な方だった。
おかしなものでその経験が現場を管理する上でとても役に立っている。受注にあたり当然、見積りなどの打合せから始めるのだが、まずは現場の意見を重視する事にした。各職人の意見を聞き、現場と照らし合わせ 自分なりの考えをぶつけるも(ここはしっかりとやり取りする)顧客(僕も)が納得できる状況にまずは持って行く。そこからは各担当者さん達の言い分がいかに理に適っているかを先方にお伝えし(必要な経費なども認めてもらいの)受注となる。
あとは現場を預かる担当者さんを信頼し、時折顔は出しても、めったなことがない限り口出しはしない。完了したものを最後に見届け、当初の話と相違がない事を確認(おかしいと思えばすぐにチェックの連絡を入れ担当者さんにも再確認する)したら請求→入金確認→支払へと進む。
こうした一連の流れで、各担当者さん達には一層の責任感を持ってもらう事が出来るが 僕が一番大切にしてることが事業を発注するに当たってやっていてだくんだと言う思いである。現場中心に動いていた頃「仕事を出してやってるんじゃねーか」と言ったような傲慢な考え方が大工もしくは工務店側にあり(昔はこんな方々の方が多かった)仕事を与えてるんだからこちらの事だけを考えて(自分のところを一番大事にしろ)言われたとおりにやればいいんだ的な考えにほとほと嫌気がさし そう言った考え方を持ち続ける事業者さんとは距離を取り、お付き合いを辞めさせて頂いてきた。
相互が得意とする分野に力を注ぎ、助け合いながら、双方をリスペクトしてこそ初めていい仕事に繋がり良い仕上がりに導かれるのだと今も強く思っている。発注側はあなたにお願いしたいんだとお伝えして業者側はあなたから仕事を頂くんだと言うウインウインの関係である。
だから、どんな状況でも請け負って頂いた業者さんを一番に信じ、自身が出来る事があれば出来る限りにそれをフォローし 担当された業者さんに最前線にいて頂く事を心掛ける。あくまでも僕は裏方に徹する事だとここまでやってきている。
先日、この春に引退された競走馬の調教師をやっていらっしゃった藤澤さんのドキュメントが再放送されていたが、そのタイトルが「幸せな人間が幸せな馬を作る」であった。
こちらの思いを押し付けるのではなく馬が走りたいように走らせてあげる。調教中はどんな馬にも「馬なりで、馬なりで」とジョッキーに声をかけ調教師はただ見守って、何も話さない馬をどんだけ気遣ってあげるかだけだと言われるお話は実に僕らのような代人稼業にも当てはまるように思える。いやいや、これらはどんな事業、仕事にも当てはまる気もする。
若い仲間が、僕のやっている仕事に興味を持って少しでも挑戦してみようと思ってバトンを受け取ってもらえるようにもう少し頑張るつもりである。