君の近くにいると

いつもいい匂いがした。


さりげなく香る香水。

でも、それの名前はわからない。


借りたCDを聴く。

CDケースも君の匂いがした。


隣を歩く。

風向きによってたまにふっ、と香る。


ぎゅっ、と、抱きしめられた。

いつもより強く、近くに君の匂いを感じた。




人がごった返す街中を1人、歩く。

ふと、良く知る匂いが過ぎる。


―思わず振り返ってしまう。


君がそこにいるような気がして。

何気なく机の引き出しをあけた。

小箱やノートの下に隠れていたアルバムを見つけた。


アルバムと言っても大げさな物じゃなく、

雑貨屋で買ったプラスチック製のやつだ。


手に取り開く――


1枚目―集合写真。

 クラスで集まって撮ったやつだ。

 みんな笑ってる。

 隣同士で話してたり、別の方向を向いていたり、目が閉じていたり。


2枚目―集合写真。

 そのしばらく後に撮ったもの。

 1枚目より人と人がくっついて、同じポーズをしていたり、ふざけてたり。

 満面の笑み。


3枚目―4枚目―5枚目―・・・


僕が 彼女が 彼が 

あの子が あの人が 


みんな楽しそうに笑ってる。


思わず今の僕も笑ってしまう。


遊んでいるときの

旅行に行ったときの

飲みに行ったときの

誕生日のときの―――


過去の その日の その瞬間を

閉じ込めた1枚。


同じ瞬間は存在しない

大切な思い出。


もう1度最初からめくりなおす。

そしてまた微笑んでしまう。


僕は思い出と共に生きていく。



今も大切にしている。

筆箱に入ってる1枚のメモ。


ただの紙切れであって

それがお金に換わる訳でも

宝石に換わる訳でもないんだ。


でも、僕の宝物。


なんでかって?

それは―――。




学校。

自習の時間。

先生は教室を出ていていない。

クラスはやがてざわめき出し、

休み時間と変わらない雰囲気になった。


僕は何をするわけでもなく

ただただボーっとしていた。


そんな僕の前に友達が現れた。


4・5人の輪になり

いつものように話をした。


楽しかった。


性別が違っても違和感無く話せる。

仲がいい。と思っているのは僕だけか?

いや、本当に良かった。


何気ない会話も笑いに変わる。


僕は幸せ者だ、

なんて大げさにもその瞬間は思う。


そんなとき、僕の手元にあるメモ用紙がスライドした。

僕の手元から消えたその紙に

僕の名前や出席番号、誕生日、歳なんかを書かれた。


笑いながらその光景をみていた。


先生が来た。


みんな席へと戻り

僕はその紙を筆箱へ・・・。


―――――。




いまだに筆箱に入っている

いや、

しまっているそのメモを

見るたび思い出す。


幸せだったあの日々。


他の人から見ればただの紙切れ。

捨てればいいのに。

なんて思うかもしれない。


でも僕にとって

そのただの紙切れが

他の何にも変えられない

大切な宝物になるんだ。

ふと鏡を見た。


そこには僕が映っていた。

不思議そうな顔をしていた。


鏡を見た。


そこには僕が映っていた。

少し、笑っていた。


鏡を見た。


そこには僕が映っていた。

怖い顔だった。


鏡を見た。


そこには僕が映っていた。

悲しそうな顔おしていた。


鏡を見た。


そこには僕が映っていた。

―泣いている。


鏡を見た。


そこには僕が映っていた。

清々しい顔をしていた。




僕は僕であるはずなのに

変な感じだった。


今はどんな顔してるのかな?


そして僕はまた鏡を見る。

ねぇ、何処を見ているの?


僕はここだよ、


ここにいるよ?