葬儀終へ部屋着に着替へた母がまた喪服着てゐる無限ループか 磯石万里
姿現す同調圧力あなたならきつと心にマスクはかけぬ 那須愛子
横向きのひまはりばかり見つづけて一夏とろとろ闌けてゆきたり 入舟嘉子
ざぶざぶと五臓六腑を洗いたしなんともかぐろき老いの気だるさ 山川有吉
短歌(うた)ありてどうにか狂はず今がありわがひとり娘(こ)の逝きたる後も 湯本恵美子
瀬戸物は星のかけらの芸術かコーヒー飲めば思ふことのひとつ 黒沼友一
温暖化とれる魚も変わるらし食わねばならぬとれる魚を 勝俣征也
冬休み終へて金魚も登校する小学教師の嫁と一緒に 四家不二夫
狂ひ咲きの浜昼顔の一輪の花のさかづき秋風に震ふ 佐藤綾華
返事なく独り言めく言の葉が老いの二人の間さまよう 村沢寿美子