※ 掲載は一人5首にさせていただきます
ゆれやまぬ 渡辺静子
風雪のやまず 堆(うずたか)き雪の山いつもの冬と思えどきびし
ふるさとゆ移しし凌霄花(のうぜんかずら)枯れし春弟逝くと突如知らさる
弟に次ぎ姉逝きてゆれやまぬ如月の日々雪重く降る
明日は父、弟、明後日は子の命日や供花の庭の水仙を剪る
一人(いちにん)の死ありし後にあばかるるカルトと結ぶ政界の闇
雪に埋もれて 渡辺敏子
満天星のからくれなゐに燃ゆる昼を人に逸れてさ迷ひゐたり
少しだけ賑はう酒房の年の暮れ刹那主義が根付きはじめむ
大雪の合間を走る列車の窓に日本海が大きく揺れる
ふる里は化石の貝など抱くまま眠れるならむ雪に埋もれて
昼の雨波瑠窓を流る忘却とふことばは不意にやさしき響き