※ 掲載は一人5首にさせていただきます
蕗の薹咲く 吉田理恵
春浅き青い海に浮かびたる二隻のヨットの帆はまぶしき
勢いを増して流れる雪解けの川のほとりに蕗の薹咲く
スカーフをほどいて歩く春の朝川のほとりに水仙の咲く
花の名はわからぬままに春風が小窓に運ぶ香りありたり
憂鬱な雨降る朝は日めくりの今日の言葉をもらいましょうか
どこまでも空 米田浩美
退屈な猫背の冬に終わりを告げ伸ばす指先春のひかりに
土の上尖った身をつき出して春の囁きを待つチューリップ
潮香る故郷の花火はこの夏もしだれ柳のふりそそぐ空
修復の技術で時をまきもどしフェルメールの絵は別物となる
ダンサーの音符をはじく指先を追いかけてゆくどこまでも空