※ 掲載は一人5首にさせていただきます
戦(いくさ)はやまず 三井廸子
白樺の梢にかかる金星の吹雪やみたる凍天に光(て)る
この冬は根が生えしやう座りゐて私も古木もよみがへる春
ランドセル重さうに負ひかけてゆく子らの未来は平和であれよ
渡り鳥きたる季は過ぎ白鳥も雁も帰れど戦はやまず
ミサイルの飛びたる空に何ごともなかりしやうに皆既月蝕
坂びより 宮川桂子
五月の陽つよからぬ今日は坂びより小樽駅出で未知の坂ゆく
船見坂いくらも行かぬに脚たゆし斜度か日ごろを籠れるゆゑか
崖に立つアカシアのやはき枝先のおよぶ跨線橋ちり花にほふ
小樽駅出で運河へとゆくらしき一団たのしげ交はすは何語
歌会へと今日は小坂を下れれば高枝の沙羅の花と目が合ふ