※ 掲載は一人5首にさせていただきます
をりをり 三浦公佐子
だまし絵のやうに繋がる窓あらば奥へ奥へと身を乗り出さむ
をりをりに見あぐる空には鳥のゐて持てる翼を羨む我ゐる
藍液の中に白布染まる間を夕べの空の変化に重ねる
草の間に祈るごとくのネジバナの咲くを見てをり今日終戦の日
筆文字の掠れ具合の良き払ひそんな雲あり秋めく朝(あした)
霜 月 三上糸志
純白をこころの襞にをりこみて罰してをりぬ差別意識よ
シューベルト死したる霜月十九日薔薇株の茎ばつさりと剪る
霜柱あうらに崩るこの大地つづく地平を乱は勢ふ
生むことも生まざることも罪のやう八十億人種子かわく世に
のこりたる沙羅の緋の葉がおちてゆく昨夜蝕月のひかりに触るる