※ 掲載は一人5首にさせていただきます
サフラン咲く 松岡美雨
爆音の響くキーウの道端に春の訪れサフランは咲く
去年までは小麦耀ふ畑ありて今日は戦車の轍続きぬ
生まれもせで爆撃受けし命とや抱かるることもなき母と逝く
爆撃は惑ふ人らの叫びさへ消して無情の炎降らせり
反戦のデモに加はる老嫗を打つ警官の若さよ憐れ
ゲルニカ 松川洋子
忿怒と悲しみの筆奔りたるあとに草一本も生えぬゲルニカ
空に地に国境線を作りたる人間を許したる神のあやまち
生還し国賊と言はれし特攻の兵のまなこの清(す)みゐき 恐かり
シベリアより還りし叔父はシベリアを語らず逝きぬ一人の子を残し
飢ゑし子に出ぬ乳やる母 人もけものもまなこつむりて